防災塾・だるま 第119回談義資料

防災塾・だるま 第119回談義資料
中小企業の災害耐力強化
のポイント
2015年5月29日
A&Msコンサルティング株式会社
青野秀夫
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本日の要点
• 中小企業の「事業継続(BCP,BCM)」は大企業と
大きく異なりはるかにハードルが高い
– 大企業は別地域にある本社・他事業所から応援をだ
し、資材や資金の投入が外から可能なので事業全体
の部分解で復旧が可能
– 中小企業は事業の再立ち上げをゼロベースで実施
する為資源の制約が厳しいが、必要な事業基盤を入
り口まで準備するのが鍵
– 投入資源を渋って準備が遅れると、不意の災害で立
ち上がれない被害を受け、壊滅してしまう恐れがある
⇒生活に根差した「自助」を先行し、新たな競争状
況 に先手を打つのが生き残るコツとなる
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東日本大震災からの学び(1)
• 災害発生から72時間経過し命が助かった時
次に待っていたことは何か?
– 「災害復興法学」注1よりビッグデータを活用した被災
後の現実
– 大規模災害の被害を自分事として実感
– 平常時に出てこないトラブルが発生し被災者を悩ま
せている
• 賃貸借契約の借家被災 ・隣人とのトラブル
• 自己資産と負債に関して ・自分の家族に関する相談
• ローン・リース、公共料金
– 生活の再建に一歩踏み出すきっかけづくり
– 法律専門家に自分事に関し詳しく相談する
注1:岡本正(2014) 『災害復興法学』慶應義塾大学出版会
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東日本大震災からの学び(2)
• 「危機と雇用」注2による失われた雇用の規模
– 東日本大震災で225万人の雇用が失われた(注2)
注2:玄田有史(2015)『危機と雇用・災害の労働経済学』岩波書店
• 名古屋市の人口と同等の労働人口にあたる
• 家族を入れるとその2倍
– 自宅と仕事場がなくなる恐怖
• 避難所では事業の再建はできない
• 生き残った翌日から生活とお金の心配が迫る
– 住宅ローン、学費・教育費、公共料金など
銀行引き落としは確実に実行される
– 勤めている中小企業は事業を継続できるのか?
– 経営者は事業を再建する意思があるのか?
– 社内では事業再構築できるよう準備をしているか?
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東日本大震災からの学び(3)
• 従業員の家族の安全確保と
事業を続ける経営者の意思から
生活の安心が生まれる
・出勤指示だけでは集中できない
・事業継続はその先にある
事業継続
出勤・事業所整理
法務トラブルなどは
災害時の事例から
類推可能で、相談で
対応の早期化
家族の安全確保、生活の
法務トラブルなど取組
72時間サバイバル
災害発生
注1:岡本正(2014) 『災害復興法学』慶應義塾大学出版会
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中小企業の事業継続はまず
従業員とその家族ありきで始まる
• 事業継続を被災した翌日から取り組むには
• まず従業員の心配をし、お客様を気遣い、
自助で立ち上がる意欲を発揮する経営者が
必要
• 明日から会社の再建に取り掛かれるように
全員で今日から準備しておく
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事業継続の構造
人と行動
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モノと資金
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知恵と情報
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まとめ
• 中小企業においてBCPの浸透・普及率が低く30年以内に
発生が予想されている大規模災害に対して脆弱であると
言わざるを得ない。
• 事業所間での相互扶助が行われている大企業や先進的
中堅企業と異なり、中小企業や小規模事業者に対する積
極的なBCP構築の動きを加速する必要がある。
• 労働人口とその家族の約98%が中小企業に支えられてい
るわが国では、失業・生活保護の激増で自然災害による
社会福祉予算支払額の増大を招く前に、中小企業各社の
脆弱性を解決するよう支援努力を集中していきたい。
注1:岡本正(2014) 『災害復興法学』慶應義塾大学出版会、
注2:玄田有史(2015)『危機と雇用・災害の労働経済学』岩波書店
講師:青野秀夫 A&Msコンサルティング株式会社、防災塾・だるま会員
ASIS会員、早稲田大学理工学部・大学院修士、MIT修士
連絡先:090-4968-7466, Mail: [email protected]
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