第4章 不静定問題,熱応力 圧力容器,弾性エネルギ 4.1 静定問題とは 4.2 不静定問題とは 4.3 熱応力問題 4.4 内圧を受ける円筒や球殻 4.5 弾性エネルギとは 第4章 総合演習問題 2015/9/30 材料の力学第4章 1 4.1 静定問題 (statically determinate) 不静定問題(statically indeterminate) • 材料の力の釣り合い条件 F 0, F 0, F 0 ( ) (4.1) • モーメントの釣り合い条件 Mi 0 ) ( (4.2) i xi i yj j zk k 式(4.1)と(4.2)だけで,材料の応力,ひずみ,変位が求めら れる問題を→静定問題という 式(4.1)と(4.2)に加えて材料の変形も加味しないと応力,ひず み,変位が求められない問題を→不静定問題という 2 4.2.1 不静定問題の例題(その1) 不静定骨組構造 A C B θ θ L ☆求める,求めたい未知量: 部材に働く張力(内部抗力)T1,T2,T3 O 荷重P A C B 未知数3つ,したがって,式3つ必要 T2 ・第1の関係式 T3 T1 L Ty1 Ty 3 Tx1 Tx3 O 垂直方向(y)の力の釣合い式 ・第2の関係式 荷重P A C 水平方向(x)の力の釣合い式 ・第3の関係式 部材の伸びλ,δに関する式 B θ θ’ L O 伸びλ 荷重P θ≒θ’ 変位δ 3 4.2.1 不静定問題の例題(その1) (1)不静定骨組構造の解き方 T1 cos T2 T3 cos P ①力のy方向の釣合い式 T1 sin T3 sin ②力のx方向の釣合い式 (4.3) ∴ T1 T3 (4.4) ③部材の伸び(変位)と力の関係式 図から明らかなように, cos , T1 L T3 L T2 L cos , AE AE AE (4.5) (4.6) 証明 T2 L cos T2 L cos2 cos AE AE 2 T1 T3 T2 cos 式(4.5)と式(4.6)の関係を考慮すれば, ∴ T1 T2 cos2 (4.8) さらに,力のy方向の釣り合い式(4.3)に式(4.8)の関係を代入して T1 cos T1 T1 cos P 2 cos ∴ 2T1 cos T1 P cos2 (4.9) 以上から,部材OA,OBおよびOCの張力T1,T2はそれぞれつぎのようになる。 2 cos 1 P ∴ 3 T1 2015/9/30 cos 2 T1 T3 P cos 2 cos3 1 2 (4.10) ∴ T2 T1 P cos 2 2 cos 3 1 (4.11) 4 4.2.1 不静定問題の例題(その2) (円柱とその周りに配置された同心中空円柱の組合せ問題) ①力の釣合い式 Pa Pb P ②部材の変形の関係式 未知数2つ,Pa,Pb (4.14) a b Pa L PL , b b Aa Ea Ab Eb したがって, a b の関係から a Pb Pa Ab Eb Aa Ea Pb Pa 中空管B Pb L 丸棒A (4.16) 剛体壁面 断面積Ab ヤング率Eb (4.18) この結果を,力の釣合い式(4.14)に 代入して, Pa 剛体壁面 (4.15) (剛体で固定されているから) ここで,材料の縮みλは Pa L PL b ∴ Aa E a Ab Eb 圧縮荷重P 断面積Aa ヤング率Ea Pa Ab Eb P Aa E a より(・・・次へと続く・・・・・) 2015/9/30 材料の力学第4章 5 4.2.1 不静定問題の例題(その2,続き) (円柱とその周りに配置された同心中空円柱の組合せ問題) これらの結果を,力の釣合い式(4.14)に代入して, 圧縮荷重P 剛体壁面 Pa Ab Eb Pa P Aa E a Pb Pa 中空管B PAa Ea Aa Ea Ab Eb PAa Ea PAb Eb Pb P Pa P Aa Ea Ab Eb Aa Ea Ab Eb P Pa AE 1 b b Aa Ea また,縮みはλは式(4.16)と上式から,つぎのよ うになる。 a Pa L PL , b b Aa Ea Ab Eb a b Pb L 丸棒A 剛体壁面 断面積Ab ヤング率Eb 断面積Aa ヤング率Ea (4.16) PL Aa E a Ab Eb 6 ☆不静定の演習問題 1.例題1に示した3リンクの問題における部材 の伸びλおよび垂直方向変位δを求めよ。 T L cos PL cos T L PL cos ) (解答: AE AE 1 2 cos , AE AE 1 2 cos 2 2 1 3 3 2.例題2に示した同心円筒の問題における応 a , bを求めよ。 力, P PE P PE (解答: A A E A E , ) A A E AE a a b a b a 2015/9/30 b a a b b 材料の力学第4章 a a a b b 7 4.2.1 不静定問題の例題(その3) (丸棒の途中に軸荷重を受ける両端固定の不静定問題) ○既知量 丸棒の断面積A,軸力(荷重)P, 軸力の位置L1,丸棒の長さL(一定) ○求めたい未知量(2つ) 反力:R1,R2 求める手段 ①力の釣り合い式 R1+R2=P ②丸棒の変形の関係式 L1部分の伸びλL1=L2部分の縮みλL2 すなわち, L1 ∴ R1 L1 R L L2 2 2 AE AE R1 L1 R2 L2 2015/9/30 (4.25) (4.26) 材料の力学第4章 反力R1 剛体壁面 断面積A ヤング率E L1 L L2 荷重P 剛体壁面 反力R2 8 4.2.1 不静定問題の例題(その3,続き) (丸棒の途中に軸荷重を受ける両端固定の不静定問題) ここで,反力 R1 P R2を式(4.26)に代入して P R2 L1 R2 L2 (4.26)’ 式(4.26)’より,反力R1,R2は次のようになる。 R2 L1 L2 PL1 R2 PL1 PL 1 L1 L2 L R1 P (4.27) (4.28) PL1 PL2 L1 L2 L このようにして,軸反力R1,R2が求められた。 2015/9/30 材料の力学第4章 9 ☆4.2 ニ箇所から軸力をうける丸棒の不静定問題 (例題3) L a ☆反力R1,R2はいくらか。 剛体壁 ☆伸び(または縮み)λa,λb,λcはいくらか。 解答:考え方 1)軸力荷重P1のみが作用した時の反力 を,R1’,R2’とし, 2)軸力荷重P2のみが作用した時の反力 を,R1”,R2”として 3)合計反力は, R1=R1’+R1” R2=R2’+R2” このように,合成和が成立する問題と考える。 b c 剛体壁 断面積 A ヤング 率E 荷重 荷重 P1 P2 反力R1 反力R2 L b+c a 剛体壁 反力R1’ 剛体壁 断面積 荷重 A ヤング P1 率E 反力R2’ L a+ b c 剛体壁 具体的解法:各自講義ノート(プリント)で確認 2015/9/30 材料の力学第4章 反力R1’’ 剛体壁 断面積 A ヤング 率E 荷重 P2 反力R2’’ 10 ☆4.2 ニ箇所から軸力をうける丸棒の不静定問題 (例題3の続き) • 考え方の具体図 L a 剛体壁 反力R1 b c 断面積 A ヤング 率E 荷重 荷重 P1 P2 剛体壁 反力R2 L a 剛体壁 反力R1’ 2015/9/30 L a+ b b+c 剛体壁 断面積 荷重 A ヤング P1 率E 反力R2’ c 剛体壁 反力R1’’ 剛体壁 断面積 A ヤング 率E 荷重 P2 反力R 2’’ 11 4.3 熱応力(thermal stress) ☆金属材料の温度による自由膨張 一般的に,金属材料の温度変化 に伴う自由膨張の伸び変位λは T=T0からT=Tに変化した場合, 両端固定,剛体壁面 両端固定(初期温度T=T 0) λ=αL0(T-T0) L0 α:線膨張率(1/℃);10-5 伸びλ ☆細線または丸棒の自由膨張に よる膨張後の長さLは次式で表さ れる。 自由膨張(温度T=Tまで上昇) L0 L=L0{1+α(T-T0)} ☆これは,両端固定であれば, λの変位分相当の圧縮荷重P を受けたことと等価 2015/9/30 α(T-T0)L0 -α(T-T0)L0 (圧縮したことと等価) 材料の力学第4章 荷重P 12 熱応力(thermal stress)の続き ☆両端固定の時の熱膨張に伴う,熱ひずみεは L0 L0 L0 T T0 T T0 L L0 1 T T0 この時,熱応力は,σ=Eεより ☆熱応力の結論 E T T0 分母のL0>>L0α(T-T0) で,あるから分母は≒L0 に なることに注意してね。 この-(マイナス)符号の 意味は? 2015/9/30 材料の力学第4章 13 表4.1 金属材料の線膨張係数の一例 (引用:機械工学便覧から) 材 料 材 料 線膨張係数(×10-6) 「1/℃」 線膨張係数(×10-6) 「1/℃」 炭素鋼(~0.12c) 11.3~11.6 7/3黄銅 炭素鋼(~0.12c) 6/4黄銅 ねずみ鋳鉄 10.7 9.2~11.8 19.9 20.8 Sus410 9.9 アルミニューム 23.6 Sus304 ジュラルミン 23.4 17.6 珪素鋼 17.3 12~15 8.4 銅 2015/9/30 純チタン 材料の力学第4章 14 熱応力(例題1) ☆冬,ー2℃で両端固定された直径30mmの鋼材が夏に32℃ まで暖められた。このとき丸棒に生じる応力および棒が壁面 を押す力を求めよ。ただし,材料のヤング率および線膨張率 はそれぞれ,E=206GPa,α=1.16×10-5(1/℃)とする。 解答: 応力 E T T0 206109 1.16105 32 (2) 8.125107 ( Pa) 注意)-の記号は圧縮応力であることを意味する 壁面を押す力Pは, 2 P A d (8.125) 107 302 106 5.742 104 ( N ) 4 4 注意)-の記号は圧縮荷重であることを示す。 2015/9/30 材料の力学第4章 15 熱応力(例題2) (解答は次のスライド) L ☆図に示すように,長さLの 棒Aと,同じく長さである2本 の棒Bを対称に並べ,片方の 端を剛体壁に固定,他端を自 由に移動可能な剛体壁面に 取り付け,棒材を加熱した。 上昇させた温度差をT℃とし た時,これらの棒A,Bに生じ る熱応力を求めよ。ただし, 棒A,B の断面積を, Aa, Ab ,ヤング率をEa,Eb,線膨 張率をαa,αb,とする。 解答:( a 2015/9/30 X Pb=σbAb Pb Pa Aa,Ea,σa Pa=σaAa 丸棒A 剛体壁面 Pb 丸棒B Ab、Eb、σb Pb=σbAb X b Aa Ea EbT 2 b a Ab Ea EbT b a Aa Ea 2 Ab Eb ) Aa Ea 2 Ab Eb 材料の力学第4章 16 ☆力の釣り合い式は (4.45) b Ab a Aa b Ab 0 ,∴ a Aa 2 b Ab 0 構造物が幾何学的に対称であるから,温度上昇による伸びは, La=Lbである。ここで,La,Lbの長さは元の長さLに,熱膨張によ る 伸びと,熱応力による伸びを加えることによって得られるから, aL La L aTL a L L aTL (4.46) Ea Lb L bTL b L L bTL bL Eb (4.47) ここで,式中のひずみεa,εbは熱応力に伴うひずみであり この問題では,L a a=Lbより aT bT b (4.48) Ea Eb となる。さらに,式(4.45)および式(4.48)を解くと,各応力は a b Aa Ea EbT 2 b a Ab Ea EbT a b (4.49) Aa Ea 2 Ab Eb A E 2 A E ; a 2015/9/30 a b b 材料の力学第4章 17 ☆4.3 熱応力(演習問題) ☆気温0℃のとき,長さ1 mの材料を図に示すよう に壁面との間に1mmの 隙間を設けて取り付けた。 温度が100℃になったと き,この材料に生じる圧 縮応力はいくらか。ただし, 材料のヤング率はEは E=206GPa,線膨張率は α=1.15×10-5(1/℃)とす る。 2015/9/30 剛体 温度0℃から100℃まで加熱 剛体 1m (Ans: 1mm 3.090107 (Pa)) 材料の力学第4章 18 4.4 内圧を受ける薄肉円筒容器の応力 ☆薄肉円筒とは,円筒の板厚 が円筒の内径Dの約12% 以下の場合を想定する。 ☆したがって,内径Dの円筒 が図のように板厚tであると きの断面積は,近似的に, A=πDtとみなせる。 ∵ A D 2t 4 2015/9/30 2 D2 4 Dt 4t 4 2 4 D 2 4 Dt 4t 2 D 2 D t 薄肉円筒のように D t であれば, 4Dt 4t 2 となり, 円筒の断面積は A Dt 材料の力学第4章 A Dt 19 薄肉円筒(例題1) ☆下図に示すように,半径r,長さLの圧力容器に,圧力Pの気 体が封入されている。このとき,容器をr軸方向(紙面上方向) に破壊しようとする流体が壁面を押す力(全流体力)を求めて みよう。 r方向全流体力 F r P 内部圧力P dθ θ θ dA=rdθL 微小面積dA 長さL 板厚 t 半径r 20 薄肉円筒(例題1の続き) ☆全流体力F: 円周の微小角度をdθとすれば,微小面積dAはdA=rLdθであり,この 部分に働く紙面上方向の微小な力dFは, dF=PsinθdA したがって,全気体が容器に与える流体Fはつぎのようになる。 F dF A P sin dA 0 P sin rLd Pr L cos 0 2rLP DLP この式から,全流体力Fは,半割円筒の投影面積DL(直径×長さ) に圧力Pをかければよいことがわかる。 ☆薄肉円筒が受ける応力σ: 円筒の板厚をtとすれば,全流体力を 受ける断面積は2tLであるから(円筒の両側面の面積は無視する。),薄 肉円筒が受ける応力は, F 2rLP PD A 2tL 2t (4.51) となる。ただし,Dは円筒の内径を表す。この応力をフープ応力という。 21 4.4.2 薄肉球殻 ☆つぎに,下記図に示すような中空の薄肉球殻に働く 流体力について考える。ただし,球の内半径をr,球 内部の流体の圧力Pは一定と考える。 微小面積dA dA=2πrsinθrdθ 板圧t 半径r r方向全流体力 内部圧力P r θ dθ rdθ θ 2015/9/30 22 P 薄肉球殻(続き) ☆全流体力F:図に示された,微小はちまき状の面積dAは, dA 2r sin rd であり,半径方向に働く微小な力dFはつぎのようになる。 dF P cosdA 中空の半割球に働く全流体力Fは, F dF 2 A r P 2 P cosdA 2 0 0 sin 2 d 2 P cos 2r sin rd r 2 P 0 2 sin cosd 1 2 r P cos 2 0 2 r 2 P 2 ☆薄肉球殻が受ける応力σ:球の板厚をtとすれば,全流 体力を受ける断面積A=2πrt=πDtであるから,結局, 薄肉球殻が受ける応力は, 2015/9/30 F r 2 P rP PD A 材料の力学第4章 2rt 2t 4t 23 4.4.1 薄肉円筒(演習問題) 1.図において,薄肉円筒を軸方向に破壊しようとする 力Pおよび軸方向の応力σtはいくらとなるか。ただし, 薄肉円筒の内部圧力はPとする。 全圧力を受け る断面積 W D t W P D t (Ans: t 2015/9/30 PD 4t ) P t このように,薄肉円筒に働く軸方向の応 力は円筒に働くフープ応力(式(4.51)の 半分(1/2)であることを記憶にとどめてお こう。 24 4.5 弾性エネルギ(elastic energy)とは ☆材料に外力(荷重)を加えて変形 させれば,外力も変形に伴う変 位によって移動するから,外力 (荷重)は材料に対して仕事をし たことになる。この外力による仕 事は材料の変形に伴い材料の 内部にひずみエネルギとして蓄 えられる。変形が弾性限度の範 囲内では,外力を取り除くと吸収 されたエネルギを全部放出する。 このように,弾性限度内でのひ ずみエネルギを弾性ひずみエネ ルギまたは弾性エネルギという。 荷 重 P 弾性エネルギ U pd 伸び d 25 4.5.1 弾性エネルギの計算方法 ☆弾性エネルギU:図に示した 荷 重 荷重-伸び線図をもとに,弾性エ ネルギの計算方法を解説する。 元来,仕事(エネルギ)は力×変 位(距離)で与えられるから,長さ Lの材料に荷重Pが働いて,λの 変位が生じたとき,材料に蓄えら れる仕事量U(弾性エネルギ)は P 弾性エネルギ U pd 伸び d U dU 0 1 Pd P 2 (4.54) 2015/9/30 ☆ここで荷重Pの加わり方に注意が必要 である。図から明らかなように,荷重 は伸びdλに比例して増加し,最終的 にPの加重となり,そのとき,全体の伸 びがλとなることに注意しよう。した がって,弾性エネルギの積分において, 係数0.5(1/2)が現れるから注意。 材料の力学第4章 26 ☆4.5.1 弾性エネルギ(演習問題) 1.断面積A,長さL,縦弾性係数Eの材料に荷重Pが働いて, λの伸びと材料内部にσの応力が生じた。このときの弾性 エネルギUを記号A,L,σおよび縦弾性係数Eを使って表せ。 (解答:U 2E ALJ ) 2 2.式(4.54)で与えられたU=Pλ/2は材料全体に吸収され た全弾性エネルギである。問題1.における単位体積当たり に吸収されたエネルギuはいくらか。ただし,材料の断面積を A,長さをLとする。 (解答: u 2 J 2E m3 ) コメント:この値(u)を最大弾性ひずみエネルギという。 2015/9/30 材料の力学第4章 27 4.6 衝撃応力(impact stress)と伸び 4.6.1 衝撃応力とは 衝撃応力とは,材料に衝撃荷重を加えたとき に生じる最大瞬間応力を意味する。 4.6.2 衝撃応力の計算 衝撃応力によって生じる伸びの計算は,多く の場合,弾性エネルギから解くことが可能で ある。 2015/9/30 材料の力学第4章 28 4.6.3 衝撃応力の例題1 (失った位置エネルギ) 例題1:図に示すように, 断面積A,長さLの棒の 下端に剛体のつばをつ け,荷重(重さ)Pの物 体を高さHから棒に 沿って落下させた。こ のとき,棒は瞬間的にλ だけ伸びた。このとき荷 重Pの物体が失った位 置エネルギUを求めよ。 (Ans: U PH ) 2015/9/30 物体(荷重) P Uの単位に注意(N・m) L H 29 4.6.3 衝撃応力の例題2 (吸収される弾性エネルギ) 例題2: 例題1において,荷重(重さ)Pの物体を落下さ せ,長さLの棒が最大λだけ伸びた瞬間,棒 に生じた最大応力をσ,断面積をA,ヤング率 をEとすると,このとき棒に吸収された弾性エ ネルギUをσ,A,E,Lで表せ。 解答:次のスライドを参考 2015/9/30 材料の力学第4章 30 4.6.3 衝撃応力の例題2 ・解答:長さLの材料に荷重Pが働いて,λの変位が生じたと き,材料に蓄えられる仕事量(弾性エネルギ)Uは U dU 0 1 Pd P 2 であるから,これに伸びλに関してフックの法則を適用して, P L E E , , P A A L E ゆえに,弾性エネルギUは 1 1 L 2 U P A AL 2 2 E 2E 2015/9/30 材料の力学第4章 (N・m) 31 4.6.4 衝撃荷重によって生じる応力 ☆ここでは,先の例題1, 2で求められた物体が 失ったエネルギ,棒に 蓄えられたエネルギか ら,衝撃荷重によって 生じる応力の式を導い てみよう。 1 1 2 H (解答: ) 物体(荷重) 0 P L H 0 2015/9/30 材料の力学第4章 32 ☆解き方:弾性エネルギ=失った位置エネルギであるから, 2 AL PH ∴ 2E ☆ ここで,フックの法則から。 L L E を代入すれば, (4.55) 2 L AL P H 2E E この式を通分して整理すれば, (4.56) AL 2PL 2EPH 0 2 式(4.56)は応力σに関する2次方程式であり,これを解くと PL PL2 2 ALEPH AL P 2 AEH 1 1 A PL となる。ところで, P 0 A (静荷重における応力), PL 0 (静荷重における伸び) AE (4.57) と定義して,式(4.56)の2次方程式の解に式(4.57)を代入すれば, P 2 AEH P 1 1 1 1 2 H PL AE A PL A 2H 0 1 1 0 となる。式(4.58)の±のうち(--)は意味を持たないから,結局応力は 2 H 0 1 1 0 2015/9/30 材料の力学第4章 (4.58) (4.59) 33 4.6.5 衝撃荷重によって生じる伸び ☆この章の最後の課題として,衝撃荷重によって生じる伸びλがどのよ うになるか考えよう。衝撃荷重による伸びは, L L E の基本式に式 (4.59)で求められた次式 L L 2 H 1 1 2 H を代入して 0 E E 0 1 1 0 0 と表せる。ここで,静荷重のときの伸びλ0は 意すれば,上の式は結局, 2H 0 1 1 0 0 L 0 E であることに注 前の場合と同様に,H=0,つまり,重さPの物体を図のつばに接触しない 程度に近づけ,急に物体を離したとき棒に生じる伸びは, 0 1 1 2 H 20 0 となり,急速荷重による伸びは,静荷重による伸びの2倍である。 34 第4章 総合演習問題(その1) 剛体壁面 1.図に示す段付き丸棒にお いて,丸棒の両端を剛体壁 面に固定する際に,段付丸 棒は正しい長さ(L1+L2)より も0.05%だけ長い寸法では め込んだ。このとき棒に生 ずる応力σ1,σ2を求めよ。 ただし,棒の縦弾性係数は 206GPaとする。 解答: A1 A2 L1 L2 L2 60cm L1 40cm A1 5cm 2 A2 10cm2 1 147.1( N / mm2 ), 2 73.56( N / mm2 ) 2015/9/30 材料の力学第4章 35 第4章 総合演習問題(その2) 2.物体の線膨張率をα,体積膨張率をβとするとき, β≒3αとなることを証明せよ。(解答:別紙参照) 3.長さ40mの鉄道レ-ルが,隣のレ-ルとの間に気 温10℃のとき,0.4cmの隙間を空け,両方のレール の一方の端が剛体に固定されている。このレ-ル の温度が35゚Cになったとき,両レール間の隙間は いくらになるか。もし,レ-ルに隙間がなくなってい れば,レ-ルに生じる熱応力はいくらになるか。た だし,レ-ルの線膨張係数は,縦弾性係数をとする。 (解答:隙間はない。) 5.15107 ( Pa) 2015/9/30 材料の力学第4章 36 第4章 総合演習問題(その3) 4.軟鋼の弾性限度200MPa,縦弾性係数 206GPaとするとき,最大弾性ひずみエネル ギ(単位体積あたりの弾性エネルギ)はいくら か。 (解答: 97.1(kJ / m3 ) ) 5.ゴムの最大弾性ひずみエネルギは軟鋼の それの何倍か。ただし,ゴムの弾性限度を, G 8MPa,縦弾性係数を E 1.0MPa,軟鋼の弾 性限度を 200MPa,縦弾性係数をE 206GPa と する。 (解答:329.6倍) G S 2015/9/30 S ☆以下演習問題省略,テキスト参照のこと 37 第4章 総合演習問題(その4) 6.図4.12において,断面積A=1000mm2,長 さL=5000mm,縦弾性係数E=206GPaの軟 鋼棒に沿って,質量80kgの物体を高さ H=200mmから落下させた。このときの衝撃 応力と最大伸びはいくらか。 (解答: 114.5(MPa), 2.78(mm) ) 7. 静荷重5kNで4mm伸びる材料がある。重 さ4kNのおもりを100mmの高さから落とした らどれほど伸びるか。 (解答: 28.7(m m) ) 2015/9/30 材料の力学第4章 38 第4章 総合演習問題(その5) 8.図4.12において,断面積A=1000mm2,長 さL=1500mm,縦弾性係数E=206GPaの軟 鋼棒に,P=2kNの急速荷重を加えた。このと きの衝撃応力と最大伸びはいくらか。 (解答: 4(MPa), 0.02912(mm) ) 9.内径400mmで,内圧2Mpaを受ける薄肉 球の肉厚はいくら以上必要か。ただし,材料 の許容応力は60MPaとする。 (解答: t 3.33mm ) 2015/9/30 材料の力学第4章 39
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