第4章 引張・圧縮の不静定問題

第4章 不静定問題,熱応力
圧力容器,弾性エネルギ
4.1 静定問題とは
4.2 不静定問題とは
4.3 熱応力問題
4.4 内圧を受ける円筒や球殻
4.5 弾性エネルギとは
第4章 総合演習問題
2015/9/30
材料の力学第4章
1
4.1 静定問題 (statically determinate)
不静定問題(statically indeterminate)
• 材料の力の釣り合い条件
F  0,  F  0,  F  0

(
) (4.1)
• モーメントの釣り合い条件
Mi  0 )
(
(4.2)
i
xi
i
yj
j
zk
k
式(4.1)と(4.2)だけで,材料の応力,ひずみ,変位が求めら
れる問題を→静定問題という
式(4.1)と(4.2)に加えて材料の変形も加味しないと応力,ひず
み,変位が求められない問題を→不静定問題という
2
4.2.1 不静定問題の例題(その1)
不静定骨組構造
A
C
B
θ
θ
L
☆求める,求めたい未知量:
部材に働く張力(内部抗力)T1,T2,T3
O
荷重P
A
C
B
未知数3つ,したがって,式3つ必要
T2
・第1の関係式
T3
T1
L
Ty1
Ty 3
Tx1
Tx3
O
垂直方向(y)の力の釣合い式
・第2の関係式
荷重P
A
C
水平方向(x)の力の釣合い式
・第3の関係式
部材の伸びλ,δに関する式
B
θ
θ’
L
O
伸びλ
荷重P
θ≒θ’
変位δ
3
4.2.1 不静定問題の例題(その1)
(1)不静定骨組構造の解き方
T1 cos  T2  T3 cos  P
①力のy方向の釣合い式
T1 sin  T3 sin
②力のx方向の釣合い式
(4.3)
∴ T1  T3
(4.4)
③部材の伸び(変位)と力の関係式
図から明らかなように,
 cos   
,

T1 L T3 L
T2 L cos

,  
AE AE
AE
(4.5)
(4.6)
証明
T2 L cos
T2 L cos2 

  cos   
AE
AE
2
T1  T3  T2 cos 
式(4.5)と式(4.6)の関係を考慮すれば,
∴ T1  T2 cos2 
(4.8)
さらに,力のy方向の釣り合い式(4.3)に式(4.8)の関係を代入して
T1 cos 
T1
 T1 cos  P
2
cos 
∴
2T1 cos 
T1
P
cos2 
(4.9)
以上から,部材OA,OBおよびOCの張力T1,T2はそれぞれつぎのようになる。
2 cos   1  P ∴
3
T1
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cos 
2
T1  T3 
P cos 
2 cos3   1
2
(4.10)
∴
T2 
T1
P

cos 2  2 cos 3   1
(4.11)
4
4.2.1 不静定問題の例題(その2)
(円柱とその周りに配置された同心中空円柱の組合せ問題)
①力の釣合い式
Pa  Pb  P
②部材の変形の関係式
未知数2つ,Pa,Pb
(4.14)
a  b
Pa L
PL
, b  b
Aa Ea
Ab Eb
したがって, a  b の関係から
a 
Pb 
Pa Ab Eb
Aa Ea
Pb
Pa
中空管B
Pb
L
丸棒A
(4.16)
剛体壁面
断面積Ab
ヤング率Eb
(4.18)
この結果を,力の釣合い式(4.14)に
代入して,
Pa 
剛体壁面
(4.15)
(剛体で固定されているから)
ここで,材料の縮みλは
Pa L
PL
 b ∴
Aa E a Ab Eb
圧縮荷重P
断面積Aa
ヤング率Ea
Pa Ab Eb
P
Aa E a
より(・・・次へと続く・・・・・)
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材料の力学第4章
5
4.2.1 不静定問題の例題(その2,続き)
(円柱とその周りに配置された同心中空円柱の組合せ問題)
これらの結果を,力の釣合い式(4.14)に代入して,
圧縮荷重P
剛体壁面
Pa Ab Eb
Pa 
P
Aa E a
Pb
Pa
中空管B
PAa Ea

 Aa Ea  Ab Eb


PAa Ea
PAb Eb
Pb  P  Pa  P 

 Aa Ea  Ab Eb  Aa Ea  Ab Eb
P
Pa 

AE
1  b b
Aa Ea

また,縮みはλは式(4.16)と上式から,つぎのよ
うになる。
a 
Pa L
PL
, b  b
Aa Ea
Ab Eb
   a  b 
Pb
L
丸棒A
剛体壁面
断面積Ab
ヤング率Eb
断面積Aa
ヤング率Ea
(4.16)
PL
Aa E a  Ab Eb
6
☆不静定の演習問題
1.例題1に示した3リンクの問題における部材
の伸びλおよび垂直方向変位δを求めよ。
T L cos PL  cos 
T L PL  cos  




 )


(解答:   AE  AE  1  2 cos   ,
AE
AE  1  2 cos  
2
2
1
3
3
2.例題2に示した同心円筒の問題における応
 a , bを求めよ。
力,
P
PE
P
PE






(解答: A A E  A E ,
)
A
A E AE
a
a
b
a
b
a
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b
a
a
b
b
材料の力学第4章
a
a
a
b
b
7
4.2.1 不静定問題の例題(その3)
(丸棒の途中に軸荷重を受ける両端固定の不静定問題)
○既知量
丸棒の断面積A,軸力(荷重)P,
軸力の位置L1,丸棒の長さL(一定)
○求めたい未知量(2つ)
反力:R1,R2
求める手段
①力の釣り合い式
R1+R2=P
②丸棒の変形の関係式
L1部分の伸びλL1=L2部分の縮みλL2
すなわち,
 L1 
∴
R1 L1
R L
 L2  2 2
AE
AE
R1 L1  R2 L2
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(4.25)
(4.26)
材料の力学第4章
反力R1
剛体壁面
断面積A
ヤング率E
L1
L
L2
荷重P
剛体壁面
反力R2
8
4.2.1 不静定問題の例題(その3,続き)
(丸棒の途中に軸荷重を受ける両端固定の不静定問題)
ここで,反力 R1  P  R2を式(4.26)に代入して
P  R2 L1  R2 L2
(4.26)’
式(4.26)’より,反力R1,R2は次のようになる。
R2 L1  L2   PL1
R2 
PL1
PL
 1
L1  L2
L
R1  P 
(4.27)
(4.28)
PL1
PL2

L1  L2
L
このようにして,軸反力R1,R2が求められた。
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材料の力学第4章
9
☆4.2
ニ箇所から軸力をうける丸棒の不静定問題
(例題3)
L
a
☆反力R1,R2はいくらか。
剛体壁
☆伸び(または縮み)λa,λb,λcはいくらか。
解答:考え方
1)軸力荷重P1のみが作用した時の反力
を,R1’,R2’とし,
2)軸力荷重P2のみが作用した時の反力
を,R1”,R2”として
3)合計反力は,
R1=R1’+R1”
R2=R2’+R2”
このように,合成和が成立する問題と考える。
b
c
剛体壁
断面積
A
ヤング
率E
荷重
荷重
P1
P2
反力R1
反力R2
L
b+c
a
剛体壁
反力R1’
剛体壁
断面積
荷重
A
ヤング P1
率E
反力R2’
L
a+
b
c
剛体壁
具体的解法:各自講義ノート(プリント)で確認
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材料の力学第4章
反力R1’’
剛体壁
断面積
A
ヤング
率E
荷重
P2
反力R2’’
10
☆4.2
ニ箇所から軸力をうける丸棒の不静定問題
(例題3の続き)
• 考え方の具体図
L
a
剛体壁
反力R1
b
c
断面積
A
ヤング
率E
荷重
荷重
P1
P2
剛体壁
反力R2
L
a
剛体壁
反力R1’
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L
a+
b
b+c
剛体壁
断面積
荷重
A
ヤング P1
率E
反力R2’
c
剛体壁
反力R1’’
剛体壁
断面積
A
ヤング
率E
荷重
P2
反力R 2’’
11
4.3 熱応力(thermal stress)
☆金属材料の温度による自由膨張
一般的に,金属材料の温度変化
に伴う自由膨張の伸び変位λは
T=T0からT=Tに変化した場合,
両端固定,剛体壁面
両端固定(初期温度T=T 0)
λ=αL0(T-T0)
L0
α:線膨張率(1/℃);10-5
伸びλ
☆細線または丸棒の自由膨張に
よる膨張後の長さLは次式で表さ
れる。
自由膨張(温度T=Tまで上昇)
L0
L=L0{1+α(T-T0)}
☆これは,両端固定であれば,
λの変位分相当の圧縮荷重P
を受けたことと等価
2015/9/30
α(T-T0)L0
-α(T-T0)L0 (圧縮したことと等価)
材料の力学第4章
荷重P
12
熱応力(thermal stress)の続き
☆両端固定の時の熱膨張に伴う,熱ひずみεは
L0  L0  L0 T  T0 
 
  T  T0 
L
L0 1   T  T0 

この時,熱応力は,σ=Eεより
☆熱応力の結論
  E T  T0 
分母のL0>>L0α(T-T0)
で,あるから分母は≒L0 に
なることに注意してね。
この-(マイナス)符号の
意味は?
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材料の力学第4章
13
表4.1 金属材料の線膨張係数の一例
(引用:機械工学便覧から)
材 料
材 料
線膨張係数(×10-6)
「1/℃」
線膨張係数(×10-6)
「1/℃」
炭素鋼(~0.12c)
11.3~11.6
7/3黄銅
炭素鋼(~0.12c)
6/4黄銅
ねずみ鋳鉄
10.7
9.2~11.8
19.9
20.8
Sus410
9.9
アルミニューム
23.6
Sus304
ジュラルミン
23.4
17.6
珪素鋼
17.3
12~15
8.4
銅
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純チタン
材料の力学第4章
14
熱応力(例題1)
☆冬,ー2℃で両端固定された直径30mmの鋼材が夏に32℃
まで暖められた。このとき丸棒に生じる応力および棒が壁面
を押す力を求めよ。ただし,材料のヤング率および線膨張率
はそれぞれ,E=206GPa,α=1.16×10-5(1/℃)とする。
解答:
応力
  E T  T0 
 206109 1.16105 32  (2)  8.125107 ( Pa)
注意)-の記号は圧縮応力であることを意味する
壁面を押す力Pは, 2
P  A   d  (8.125)  107    302  106  5.742 104 ( N )
4
4
注意)-の記号は圧縮荷重であることを示す。
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材料の力学第4章
15
熱応力(例題2)
(解答は次のスライド)
L
☆図に示すように,長さLの
棒Aと,同じく長さである2本
の棒Bを対称に並べ,片方の
端を剛体壁に固定,他端を自
由に移動可能な剛体壁面に
取り付け,棒材を加熱した。
上昇させた温度差をT℃とし
た時,これらの棒A,Bに生じ
る熱応力を求めよ。ただし,
棒A,B の断面積を, Aa,
Ab ,ヤング率をEa,Eb,線膨
張率をαa,αb,とする。
解答:( a 
2015/9/30
X
Pb=σbAb
Pb
Pa
Aa,Ea,σa
Pa=σaAa
丸棒A
剛体壁面
Pb
丸棒B
Ab、Eb、σb
Pb=σbAb
X
   b Aa Ea EbT
2 b   a Ab Ea EbT
b  a
 Aa Ea  2 Ab Eb  )
 Aa Ea  2 Ab Eb 
材料の力学第4章
16
☆力の釣り合い式は
(4.45)
 b Ab   a Aa   b Ab  0 ,∴  a Aa  2 b Ab  0
構造物が幾何学的に対称であるから,温度上昇による伸びは,
La=Lbである。ここで,La,Lbの長さは元の長さLに,熱膨張によ
る
伸びと,熱応力による伸びを加えることによって得られるから,
aL
La  L   aTL   a L  L   aTL 
(4.46)
Ea
Lb  L   bTL   b L  L   bTL 
bL
Eb
(4.47)
ここで,式中のひずみεa,εbは熱応力に伴うひずみであり
この問題では,L
a

a=Lbより
 aT 
  bT  b
(4.48)
Ea
Eb
となる。さらに,式(4.45)および式(4.48)を解くと,各応力は
 a   b Aa Ea EbT
2 b   a Ab Ea EbT


a 
b
(4.49)
 Aa Ea  2 Ab Eb 
A E  2 A E  ;
a
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a
b
b
材料の力学第4章
17
☆4.3 熱応力(演習問題)
☆気温0℃のとき,長さ1
mの材料を図に示すよう
に壁面との間に1mmの
隙間を設けて取り付けた。
温度が100℃になったと
き,この材料に生じる圧
縮応力はいくらか。ただし,
材料のヤング率はEは
E=206GPa,線膨張率は
α=1.15×10-5(1/℃)とす
る。
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剛体
温度0℃から100℃まで加熱
剛体
1m
(Ans:
1mm
  3.090107 (Pa))
材料の力学第4章
18
4.4 内圧を受ける薄肉円筒容器の応力
☆薄肉円筒とは,円筒の板厚
が円筒の内径Dの約12%
以下の場合を想定する。
☆したがって,内径Dの円筒
が図のように板厚tであると
きの断面積は,近似的に,
A=πDtとみなせる。
∵
A
D  2t 
4


2015/9/30

2

 D2 
4 Dt  4t 
4
2

4
D
2

 4 Dt  4t 2  D 2

D
t
薄肉円筒のように D  t
であれば, 4Dt  4t 2 となり,
円筒の断面積は
A  Dt
材料の力学第4章
A  Dt
19
薄肉円筒(例題1)
☆下図に示すように,半径r,長さLの圧力容器に,圧力Pの気
体が封入されている。このとき,容器をr軸方向(紙面上方向)
に破壊しようとする流体が壁面を押す力(全流体力)を求めて
みよう。
r方向全流体力 F
r
P
内部圧力P
dθ
θ
θ
dA=rdθL
微小面積dA
長さL
板厚 t
半径r
20
薄肉円筒(例題1の続き)
☆全流体力F:
円周の微小角度をdθとすれば,微小面積dAはdA=rLdθであり,この
部分に働く紙面上方向の微小な力dFは,
dF=PsinθdA
したがって,全気体が容器に与える流体Fはつぎのようになる。

F   dF  A P sin dA  0 P sin rLd  Pr L cos 0

 2rLP  DLP
この式から,全流体力Fは,半割円筒の投影面積DL(直径×長さ)
に圧力Pをかければよいことがわかる。
☆薄肉円筒が受ける応力σ: 円筒の板厚をtとすれば,全流体力を
受ける断面積は2tLであるから(円筒の両側面の面積は無視する。),薄
肉円筒が受ける応力は,

F 2rLP PD


A
2tL
2t
(4.51)
となる。ただし,Dは円筒の内径を表す。この応力をフープ応力という。
21
4.4.2 薄肉球殻
☆つぎに,下記図に示すような中空の薄肉球殻に働く
流体力について考える。ただし,球の内半径をr,球
内部の流体の圧力Pは一定と考える。
微小面積dA
dA=2πrsinθrdθ
板圧t
半径r
r方向全流体力
内部圧力P
r
θ
dθ
rdθ
θ
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22
P
薄肉球殻(続き)
☆全流体力F:図に示された,微小はちまき状の面積dAは,
dA  2r sin rd
であり,半径方向に働く微小な力dFはつぎのようになる。
dF  P cosdA
中空の半割球に働く全流体力Fは,
F   dF  
 2
A
 r P 
2
P cosdA  
 2
0
0
sin 2 d 
 2
P cos 2r sin rd  r 2 P 
0
2 sin  cosd
1 2
r P cos 2 0 2  r 2 P
2
☆薄肉球殻が受ける応力σ:球の板厚をtとすれば,全流
体力を受ける断面積A=2πrt=πDtであるから,結局,
薄肉球殻が受ける応力は,
2015/9/30
F r 2 P rP PD
 


A 材料の力学第4章
2rt
2t
4t
23
4.4.1 薄肉円筒(演習問題)
1.図において,薄肉円筒を軸方向に破壊しようとする
力Pおよび軸方向の応力σtはいくらとなるか。ただし,
薄肉円筒の内部圧力はPとする。
全圧力を受け
る断面積
W
D
t
W
P
D
t
(Ans: t 
2015/9/30
PD
4t
)
P
t
このように,薄肉円筒に働く軸方向の応
力は円筒に働くフープ応力(式(4.51)の
半分(1/2)であることを記憶にとどめてお
こう。
24
4.5 弾性エネルギ(elastic energy)とは
☆材料に外力(荷重)を加えて変形
させれば,外力も変形に伴う変
位によって移動するから,外力
(荷重)は材料に対して仕事をし
たことになる。この外力による仕
事は材料の変形に伴い材料の
内部にひずみエネルギとして蓄
えられる。変形が弾性限度の範
囲内では,外力を取り除くと吸収
されたエネルギを全部放出する。
このように,弾性限度内でのひ
ずみエネルギを弾性ひずみエネ
ルギまたは弾性エネルギという。
荷
重
P
弾性エネルギ
U   pd

伸び
d
25
4.5.1 弾性エネルギの計算方法
☆弾性エネルギU:図に示した
荷
重
荷重-伸び線図をもとに,弾性エ
ネルギの計算方法を解説する。
元来,仕事(エネルギ)は力×変
位(距離)で与えられるから,長さ
Lの材料に荷重Pが働いて,λの
変位が生じたとき,材料に蓄えら
れる仕事量U(弾性エネルギ)は
P
弾性エネルギ
U   pd

伸び
d
U   dU  

0
1
Pd   P
2
(4.54)
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☆ここで荷重Pの加わり方に注意が必要
である。図から明らかなように,荷重
は伸びdλに比例して増加し,最終的
にPの加重となり,そのとき,全体の伸
びがλとなることに注意しよう。した
がって,弾性エネルギの積分において,
係数0.5(1/2)が現れるから注意。
材料の力学第4章
26
☆4.5.1 弾性エネルギ(演習問題)
1.断面積A,長さL,縦弾性係数Eの材料に荷重Pが働いて,
λの伸びと材料内部にσの応力が生じた。このときの弾性
エネルギUを記号A,L,σおよび縦弾性係数Eを使って表せ。

(解答:U  2E ALJ  )
2
2.式(4.54)で与えられたU=Pλ/2は材料全体に吸収され
た全弾性エネルギである。問題1.における単位体積当たり
に吸収されたエネルギuはいくらか。ただし,材料の断面積を
A,長さをLとする。
(解答: u 
2

J
2E

m3 )
コメント:この値(u)を最大弾性ひずみエネルギという。
2015/9/30
材料の力学第4章
27
4.6 衝撃応力(impact stress)と伸び
4.6.1 衝撃応力とは
衝撃応力とは,材料に衝撃荷重を加えたとき
に生じる最大瞬間応力を意味する。
4.6.2 衝撃応力の計算
衝撃応力によって生じる伸びの計算は,多く
の場合,弾性エネルギから解くことが可能で
ある。
2015/9/30
材料の力学第4章
28
4.6.3 衝撃応力の例題1
(失った位置エネルギ)
例題1:図に示すように,
断面積A,長さLの棒の
下端に剛体のつばをつ
け,荷重(重さ)Pの物
体を高さHから棒に
沿って落下させた。こ
のとき,棒は瞬間的にλ
だけ伸びた。このとき荷
重Pの物体が失った位
置エネルギUを求めよ。
(Ans: U  PH    )
2015/9/30
物体(荷重)
P
Uの単位に注意(N・m)
L
H

29
4.6.3 衝撃応力の例題2
(吸収される弾性エネルギ)
例題2:
例題1において,荷重(重さ)Pの物体を落下さ
せ,長さLの棒が最大λだけ伸びた瞬間,棒
に生じた最大応力をσ,断面積をA,ヤング率
をEとすると,このとき棒に吸収された弾性エ
ネルギUをσ,A,E,Lで表せ。
解答:次のスライドを参考
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材料の力学第4章
30
4.6.3 衝撃応力の例題2
・解答:長さLの材料に荷重Pが働いて,λの変位が生じたと
き,材料に蓄えられる仕事量(弾性エネルギ)Uは
U   dU  

0
1
Pd   P
2
であるから,これに伸びλに関してフックの法則を適用して,

P

L
 E  E ,   , P  A
A
L
E
ゆえに,弾性エネルギUは
1
1
L  2
U  P  A  
AL
2
2
E 2E
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材料の力学第4章
(N・m)
31
4.6.4 衝撃荷重によって生じる応力
☆ここでは,先の例題1,
2で求められた物体が
失ったエネルギ,棒に
蓄えられたエネルギか
ら,衝撃荷重によって
生じる応力の式を導い
てみよう。


1  1  2 H 



(解答:

  )

物体(荷重)
0
P
L
H

0
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材料の力学第4章
32
☆解き方:弾性エネルギ=失った位置エネルギであるから,
2
AL  PH   
∴
2E
☆ ここで,フックの法則から。   L  L E を代入すれば,
(4.55)
2
L 

AL  P H  
2E
E

この式を通分して整理すれば,
(4.56)
AL  2PL  2EPH  0
2
式(4.56)は応力σに関する2次方程式であり,これを解くと

PL 
PL2  2 ALEPH
AL

P
2 AEH 
1  1 

A 
PL 
となる。ところで,
P
0
A
(静荷重における応力),
PL
 0 (静荷重における伸び)
AE
(4.57)
と定義して,式(4.56)の2次方程式の解に式(4.57)を代入すれば,


P
2 AEH  P
1  1 
  1  1  2 H PL AE 

A
PL  A


2H
  0 1  1 
0





となる。式(4.58)の±のうち(--)は意味を持たないから,結局応力は

2 H 
   0 1  1 
0 
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材料の力学第4章

(4.58)
(4.59)
33
4.6.5 衝撃荷重によって生じる伸び
☆この章の最後の課題として,衝撃荷重によって生じる伸びλがどのよ
うになるか考えよう。衝撃荷重による伸びは,   L  L E の基本式に式
(4.59)で求められた次式
L L 
2 H 




1

1



2 H  を代入して
0
E
E 
0 
   1  1 
0



0 
と表せる。ここで,静荷重のときの伸びλ0は
意すれば,上の式は結局,

2H
  0 1  1 
0


0 
L 0
E
であることに注




前の場合と同様に,H=0,つまり,重さPの物体を図のつばに接触しない
程度に近づけ,急に物体を離したとき棒に生じる伸びは,

  0 1  1 

2 H 
 20
0 
となり,急速荷重による伸びは,静荷重による伸びの2倍である。
34
第4章 総合演習問題(その1)
剛体壁面
1.図に示す段付き丸棒にお
いて,丸棒の両端を剛体壁
面に固定する際に,段付丸
棒は正しい長さ(L1+L2)より
も0.05%だけ長い寸法では
め込んだ。このとき棒に生
ずる応力σ1,σ2を求めよ。
ただし,棒の縦弾性係数は
206GPaとする。
解答:
A1
A2
L1
L2
L2  60cm
L1  40cm
A1  5cm
2
A2  10cm2
 1  147.1( N / mm2 ),  2  73.56( N / mm2 )
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材料の力学第4章
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第4章 総合演習問題(その2)
2.物体の線膨張率をα,体積膨張率をβとするとき,
β≒3αとなることを証明せよ。(解答:別紙参照)
3.長さ40mの鉄道レ-ルが,隣のレ-ルとの間に気
温10℃のとき,0.4cmの隙間を空け,両方のレール
の一方の端が剛体に固定されている。このレ-ル
の温度が35゚Cになったとき,両レール間の隙間は
いくらになるか。もし,レ-ルに隙間がなくなってい
れば,レ-ルに生じる熱応力はいくらになるか。た
だし,レ-ルの線膨張係数は,縦弾性係数をとする。
(解答:隙間はない。)
  5.15107 ( Pa)
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材料の力学第4章
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第4章 総合演習問題(その3)
4.軟鋼の弾性限度200MPa,縦弾性係数
206GPaとするとき,最大弾性ひずみエネル
ギ(単位体積あたりの弾性エネルギ)はいくら
か。
(解答: 97.1(kJ / m3 ) )
5.ゴムの最大弾性ひずみエネルギは軟鋼の
それの何倍か。ただし,ゴムの弾性限度を,
 G  8MPa,縦弾性係数を E  1.0MPa,軟鋼の弾
性限度を  200MPa,縦弾性係数をE  206GPa と
する。
(解答:329.6倍)
G
S
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S
☆以下演習問題省略,テキスト参照のこと
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第4章 総合演習問題(その4)
6.図4.12において,断面積A=1000mm2,長
さL=5000mm,縦弾性係数E=206GPaの軟
鋼棒に沿って,質量80kgの物体を高さ
H=200mmから落下させた。このときの衝撃
応力と最大伸びはいくらか。
(解答:   114.5(MPa),   2.78(mm) )
7. 静荷重5kNで4mm伸びる材料がある。重
さ4kNのおもりを100mmの高さから落とした
らどれほど伸びるか。
(解答:   28.7(m m) )
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材料の力学第4章
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第4章 総合演習問題(その5)
8.図4.12において,断面積A=1000mm2,長
さL=1500mm,縦弾性係数E=206GPaの軟
鋼棒に,P=2kNの急速荷重を加えた。このと
きの衝撃応力と最大伸びはいくらか。
(解答:   4(MPa),   0.02912(mm) )
9.内径400mmで,内圧2Mpaを受ける薄肉
球の肉厚はいくら以上必要か。ただし,材料
の許容応力は60MPaとする。
(解答: t  3.33mm )
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材料の力学第4章
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