電子マネーが消費者 行動に与える影響 拓殖大学 田嶋ゼミナール 大貫 順也 馬場 正信 斉藤 大樹 宮下 英子 中山 春香 1 発表の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 2 電子マネーに着目 90年代後半に登場し、失敗。 → 利用箇所が少ない → 現金の代用として、電子マネーを使うという インセンティブの低さ 利用箇所が増加 → 身近な決済手段の1つとして定着した 3 Edyの発行枚数と利用件数の推移 電子マネーの動向と将来展望 2005 ビットワレット株式会社 http://www.cs.waseda.ac.jp/project/050518Edy1_7.pdf 4 電子マネーの利用状況 前払い方式の主要電子マネーの普及状況 名 称 Edy Suica PASMO 発行枚数(万枚) 3,520 1,953 621 利用できる店舗数(店) 70,000 月間決済件数(万件) 2,250 26,240 1,883 304 nanaco WAON 517 190 13,926 12,700 3,000 非公開 6801万枚 7437万件 (注)11月末。スイカの発行枚数は買い物の支払いできない分を除いた。 日経MJ 2007年12月9日11面 5 近年の電子マネー プリペイド 交通系 買い物系 ポストペイ 6 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 7 決済に着目 •生活していく中で「決済」は、切り離せない行為で ある。 •モノに対する代価として行う行為である。 •決済手段が年々、増えてきた。 疑問点 こうした決済手段の多様化は、消費者の行動 や心理に影響を与えているのだろうか 8 決済手段の多様化 決済とは・・・ 「売買取引及び金融取引において 貸借関係を終えること」 (小山 2004) 9 決済手段の多様化② 現金に変わる決済手段が登場 電子決済 現金を用いずに電子的データを交換することにより 商品の代価を支払うこと Yahoo JAPAN IT用語辞典 10 先行研究のレビュー クレジットカードの先行研究 「クレジットカードの所有で異なる消費者の価格感」 (恩蔵・1991) 価格感とは・・・・ これ以上だと高いと感じる価格(上限価格)と これ以上だと安いと感じる価格(下限価格) クレジットカードの所有により、 消費者の「価格感」は上昇し、購買を促進させる 11 先行研究のレビュー 不明点 カードの所有 価格感の上昇 心理的メカニズ ムは明らかにさ れていない 購買の促進 心理的メカニズ ムは明らかにさ れていない 12 問題意識 決済手段の変化 カードの所有 金銭的価値の変化 価格感の上昇 購買行動の変化 購買の促進 決済手段が変化することで、 金銭的価値はどのように変 化し、それにより購買行動は どのように変化をするのか 13 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 14 研究目的 決済手段の変化が、消費者の購買行動に どのような影響をもたらすのかを明らかにする 電子マネーの使用により消費者の購買行動は どのような変化をするのかを明らかにする 15 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 16 概念上の定義 電子マネーとは 「金銭的な価値をもつ電子的なデータ」 (日本銀行) 17 電子マネー(広義) 電子的決済 手形・小切手・クレジットカード、振替・振込 ポストペイ型 iD ・スマートプラス ・ クイックペイ 等 電子マネー(狭義) ICカード型 Suica ・ PASMO ・ Edy ・ nanaco 等 サーバー管理型 Webmoney ・ ちょコム ・ BitCash 等 2015/9/30 18 研究上の定義 電子マネーとは・・・ 19 電子マネー(広義) 電子的決済 手形・小切手・クレジットカード、振替・振込 ポストペイ型 iD ・スマートプラス ・ クイックペイ 等 電子マネー(狭義) ICカード型 Suica ・ PASMO ・ Edy ・ nanaco 等 サーバー管理型 Webmoney ・ ちょコム ・ BitCash 等 2015/9/30 20 仮説の導出にあたり 疑問点 決済手段の多様化は、消費者の行動や心理に影 響を与えているのだろうか 先行研究 クレジットカードの所有により、消費者の「価格感」 が上昇し、購買を促進させる 問題意識 決済手段が変化することで、金銭価値はどのよう に変化し、それにより購買行動はどのように変化を するのか 21 仮説導出のプロセス 認識の変化 電子マネーの使用 決済手段の変化 金銭価値の変化 購買行動の変化 22 ソシュールの記号論 記号は記号表現と記号内容を同時にもつ二重 の存在である 記号表現と記号内容は、互いの存在を前提とし てのみ存在する相互に依存する関係である 記号表現と記号内容は、互いに分離できない (有馬 2001 ) 記号 記号表現 (見た目、文字、音声) 記号内容 (概念、イメージ) ※実際は、この線は存在しない 23 ソシュールの記号論 記号表現 (見た目、文字、音声) 記号内容 (概念、イメージ) 何らかのつながりが あるのではないか? つながりの強弱により 認識にも違いが生じるのではないか? 24 パースの記号論 記号表現は記号内容をたずさえつつ常に 前進して次の記号表現にずれていく 対象と記号と解釈項という三項関係による 記号論である 対象と記号をつなぐのは解釈項である (有馬 2001) 25 パースの記号論 知識、経験 記号内容 記号表現 (概念、イメージ) (見た目、文字、音声) 知識や経験が豊富になればなるほど 記号表現と記号内容のつながりが強くなる 26 記号論のまとめ ソシュール 記号は記号内容と記号表現に よって構成される パース 記号内容と記号表現は 知識や経験により結びつけら れつながりが強化される 27 現金の場合 知識・経験が豊富 千円の価値 強い 記号内容 記号表現 28 電子マネーの場合 知識・経験が浅い 千円の価値 弱い 記号内容 記号表現 29 記号論のまとめ 電子マネーは経験が浅いの で、記号表現と記号内容の 結びつきが曖昧になる 30 仮説導出のプロセス 認識が変化 電子マネーの使用 金銭的価値が曖昧 金銭的価値が変化 購買行動の変化 31 ここまでのまとめ① 電子マネーは 金銭的価値を曖昧にする 32 仮説導出のプロセス 認識が変化 電子マネーの使用 金銭的価値が曖昧 個人的要因 購買行動の変化 意識が変化 33 個人的要因① -主観的割引率- 主観的割引率は、将来に比べ現在をどの程度 重視するかを示す経済主体の効用パラメーター であり、それが高ければ高いほど、将来に比 べて現在を重視する傾向の強いことを意味する 高い主観的割引率を持つ消費者は、現在の 楽しみを先に延ばすことが難しく即時的な満足 を重視する傾向が高い (晝間文彦 2001) 34 個人的要因① ー近視眼的選好ー 近視眼的選好とは現在を将来よりずっと重視するという こと。目先のことに目をとらわれること。 (友野、2006) 欲しいものを後先考えず今買ってしまう 「近視眼的選好」 主観的割引率が高ければ高いほど 近視眼的選好が強くなる 35 個人的要因① 主観的割引率が高い 主観的割引率が低い 近視眼的選好が強い 近視眼的選好が弱い より今を重視 より将来を重視 36 個人的要因② 小額決済の場合の方が 主観的割引率が高くなる (晝間文彦 2001) 37 個人的要因② 電子マネー利用状況 1回の利用で、いくらぐらい使うことが多いですか? 調査日時:2007年6月6日~14日 小額決済として 利用されている http://www.dims.ne.jp/timelyresearch/2007/070719/ Dimsdrive 38 個人的要因② 小額決済の場合の方が 主観的割引率が高くなる (晝間文彦 2001) 小額決済の多い電子マネーでは、 消費者の主観的割引率は高くなる 39 メンタルアカウント 金額の多寡によって消費者がその金額 をどの心的勘定に記入するかが異なる。 晝間文彦 2001 40 個人的要因②メンタルアカウント 小額 多額 経常的な消費へ 貯蓄勘定へ 消費を我慢 する心理的コ ストが高い 消費を我慢 する心理的 コストが低い (晝間文彦 2001) 41 仮説導出のプロセス 認識が変化 電子マネーの使用 金銭的価値が曖昧 近視眼的選好の 個人的要因 強さ 購買行動の変化 購買の促進 意識が変化 42 ここまでのまとめ② 金銭的価値の曖昧性により、 個人的要因の影響を受け 意識を変化させる 43 仮説導出のプロセス 認識が変化 電子マネーの使用 金銭的価値が曖昧 近視眼的選好の 強さ 購買の促進 意識が変化 44 仮説 近視眼的選好の強い人が電子マネーを 使用することで購買を促進する 45 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 46 調査概要 調 査 対 象 有効回答数 年 代 調 査 時 期 調 査 方 法 電子マネーで買い物をしている人 160サンプル 男性101人 女性59人 20代 30代 40代 50代 79人 48人 24人 9人 2007年12月11日~12月19日 ・質問紙調査 ・ネットアンケート調査 47 調査概要 職 業 学 生 21人 社会人 123人 自営業 3人 フリーター 3人 主 婦 3人 その他 3人 合計 160人 48 仮説の検証 グ ルー プ 統 計 量 計画購買 計画使用 金額変化(増VS他) 金額増加 変化なし・減少 金額増加 変化なし・減少 N 34 126 34 126 平均値 3.00 3.15 2.41 2.39 標準偏差 1.37 1.40 .99 .81 平均値の 標準誤差 .24 .12 .17 7.21E-02 非有意 近視眼的選好は購買に影響を与えない 意識に影響は? 49 仮説の検証 グ ル ー プ 統 計量 計画購買 値段意識 電子マネーの方が 値段を 意識しない その他 N 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 56 2.59 1.385 .185 104 3.40 1.311 .129 独立サンプルの検定 等分散性のための Levene の検定 計画購買 等分散を仮定する。 等分散を仮定しない。 F値 .066 有意確率 .798 2 つの母平均の差の検定 t値 -3.675 -3.614 自由度 158 107.490 有意確率 (両側) 平均値の差 差の標準誤差 .000 -.815 .222 .000 -.815 .225 差の 95% 信頼区間 下限 上限 -1.252 -.377 -1.261 -.368 近視眼的選好の強い人は、現金と比べ 電子マネーのほうが値段を意識しない 1パーセント水準で有意 50 仮説の検証 グ ル ー プ 統 計量 計画購買 合計額に対する 関心度 電子マネーの方が合計額に 対して関心度は低い その他 N 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 52 2.58 1.126 .156 108 3.38 1.432 .138 独立サンプルの検定 等分散性のための Levene の検定 計画購買 等分散を仮定する。 等分散を仮定しない。 F値 有意確率 12.921 .000 2 つの母平均の差の検定 t値 -3.546 -3.854 自由度 158 125.156 有意確率 (両側) 平均値の差 差の標準誤差 .001 -.803 .226 .000 -.803 .208 差の 95% 信頼区間 下限 上限 -1.250 -.356 -1.215 -.390 近視眼的選好の強い人は、現金と比べ電子マ ネーのほうが合計額に対する関心度は低い 1パーセント水準で有意 51 仮説の検証 グ ル ー プ 統 計量 計画購買 お金が減る ことに対する 心 理的苦痛 電子マネーの方が心理的苦 痛を 感じない その他 N 平均値 標準偏差 平均値の 標準誤差 68 2.57 1.111 .135 92 3.52 1.441 .150 独立サンプルの検定 等分散性のための Levene の検定 計画購買 等分散を仮定する。 等分散を仮定しない。 F値 有意確率 15.622 .000 2 つの母平均の差の検定 t値 -4.522 -4.700 有意確率 自由度 (両側) 平均値の差 差の標準誤差 158 .000 -.948 .210 157.702 .000 -.948 .202 差の 95% 信頼区間 下限 上限 -1.362 -.534 -1.347 -.550 近視眼的選好の強い人は、現金と比べ電子マネーの ほうがお金が減ることに対する心理的苦痛を感じない 1パーセント水準で有意 52 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 53 結論 意識の段階では、近視眼的選好の 影響を受け、現金と電子マネーに 意識の違いが見られた。 しかし、購買の段階では、それらは 作用されず、現金と電子マネーに 購買行動の違いは見られなかった。 54 結論 認識が変化 購買の促進 電子マネーの使用 金銭的価値が曖昧 近視眼的選好の 強さ 意識が変化 55 反省点 意識の変化から購買の変化へのプロセスに も何らかの要因による影響や、意識の変化と 購買の変化をつなぐ他のプロセスがあったの ではないか アンケートの設問は仮説を検証するものとし て不十分であったのではないか 56 研究の流れ ①主題の決定 ②問題意識 ③研究目的 ④仮説の導出 ⑤仮説の検証 ⑥結論 ⑦インプリケーション 57 学術的貢献 私たちの研究 購買行動の変化 決済手段の変化 手段の変化 個人的要因 認識の変化 近視眼的選考 主観的割引率 価値の認識 他の現金に代わる決済手段(キャッシュレス) にも応用が可能である 58 インプリケーション 購買を促進するためにはキャッシュレス であることが大事である コンビニなどの小売店は消費者にキャッシュ レスの決済手段を選択させることで、消費者 の購買を促進させることができる 59 参考文献 石井慎二 (1997) 「わかりたいあなたの現代思想入門」 宝島社 有馬道子 (2001) 「パースの思想」 岩波書店 晝間文彦 (2001) 「消費者の主観的割引率について」 早稲田大学消費者金融サービス研究所 晝間文彦 (2002) 「消費者の主観的割引率について」 消費者金融連絡会 小山嘉昭 (2004) 「詳細 銀行法」 金融財政事情研究会 友野典男 (2006) 「行動経済学」 光分社新書 岩田昭男 (2007) 「電子マネー&クレジットカード完全活用ガイド」 ダイヤモンド社 恩蔵直人 [クレジットカードの所有で異なる消費者の価格感」 日経消費経済フォーラム 日本経済新聞 (2007年6月14日) 日系MJ新聞 (2007年12月9日) JCCA日本クレジットカード協会http://www.jcca-office.gr.jp/ JR東日本:Suicahttp://www.jreast.co.jp/suica/ 電子マネー種類と比較 http://degimoney.super-jiten.com 60 参考文献 日本経済新聞 (2007年6月14日) 日系MJ新聞 (2007年12月9日) 電子マネーの動向と将来の展望 (2005) ビットワレット株 式会社 http://www.cs.waseda.ac.jp/project/050518Edy1_7.pdf http://www.dims.ne.jp/timelyresearch/2007/070719 Wisdom http://www.blwisdom.com/itbz/03/ Yahoo JAPAN IT用語辞典 http://kaden.yahoo.co.jp/dict/ 61 ご清聴ありがとうございました。 62
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