立教大全カリ『近代社会システムを問う』アマルティア・センの潜在能力アプローチー環境平和学からの批判的検討ー（テキスト第３章） H18.10.24 潜在能力アプローチとはアマルティア・セン（経済学者）による理論。 1998年ノーベル経済学賞受賞。アマルティア・セン（Amartya K. Sen）インド・ベンガル出身(1933－) ＜主な研究領域＞厚生経済学が基盤。倫理・哲学、貧困・不平等研究など１．「貧困問題」の現状 ■経済的視点からみた場合 1日1ドル以下で生活する人口割合(1998) 1日1ドル以下で生活する人口推移(1987～ 98) 出所）世界銀行『世界開発報告2000/2001』2001． ■社会指標からみた場合 ※国連ミレニアム宣言 2000年９月のサミットにおいて採択。2015 年までに一定の数値目標を達成することを、 189の加盟国が公約。出所）世界銀行『世界開発報告書2000/2001』2002,p.7. ミレニアム開発目標(MDGs) 目標１．極度の貧困と飢餓の撲滅１ 2015年までに1日１ドル未満で生活する人口比率を1990年と比較して半減させる。２．2015年までに飢餓に苦しむ人々の割合を1990年と比較して半減させる。目標２．普遍的初等教育の達成３. 2015年までに、すべての子供が男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。目標３．ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上４．初等・中等教育における男女格差の解消を2005年までには達成し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。目標４．幼児死亡率の削減５． 2015年までに５歳未満児の死亡率を1990年と比較して3分の 2減少させる目標５．妊産婦の健康の改善６． 2015年までに妊産婦の死亡率を1990年と比較して４分の３減少させる。目標６． HIV/ エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止目標７．環境の持続可能性の確保 HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。マラリアおよびその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後発生率を下げる。 2015年までに安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減する。 2020年までに最低１億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。現在用いられている「貧困」の尺度＜世界銀行＞絶対的貧困（poverty）＜国連開発計画＞人間貧困（HumanDeprivation) １日1.08ドル以下で生活する人々平均余命、識字率、所得による複合指数市場への参加による貧困の克服「貧困問題」のもつ多面性（１）絶対的貧困・・・人間として最低の生活水準が満たされない状態（２）相対的貧困（格差）（３）従属性＜従来の開発＞「貧困」の克服欠如・不足しているものの充足 ※ビデオ参照・・・NHK教育地球データマップ「飢える国・飽食の国」より２．センによる問題提起経済成長、所得の増加を重視してきた「開発」の目的を問い直す開発理論・貧困(poverty)：基礎的な潜在能力の欠如・潜在能力とは・・・人々が持ちうる手段を用いて様々な行為を達成する能力・開発とは・・・潜在能力の拡大過程潜在能力アプローチの基本概念栄養を満たす権利や機会を使って自由に使える財貨の組み合わせ教育を受ける潜在能力（capability）病気を予防する治す社会に参加する・・・・・様々な制約手段：権原（entitlements) 機能（functionings）開発：潜在能力の拡大＝様々な生き方を選び取る選択肢の拡大＝自由の拡大機能手段潜在能力の拡大達成可能な機能の幅の拡大３．環境平和学から見ると・・（１）市場経済、私的所有を前提とした手段（権原関係）の捉え方では不十分（２）際限なき潜在能力の拡大は不可能格差拡大の放任自然環境の有限性結局、資源の奪い合いになるのでは？ ※ビデオ参照 NHKスペシャル「WATER CRICIS」より２つの視点の比較資本主義市場経済が土台手段潜在能力（capability）地域社会・生態系によって様々な形態個々人が「よく生きること」開発による拡大生存基盤（サブシステンス）潜在的実現可能性脱「開発」による奪還、修復、再創造（potencial realizations）人間の生存、再生産Ｑ１．途上国での「貧困問題」と私達の生活が、どのようなところで関わっているのか、具体的な例をあげて話し合ってみよう。Ｑ２．質問や感想など