1 2014 年 6 月 2 日 総合科目 C「経済学を考える、経済学で考える」松島斉 2.3.完全競争(続き) パレート効率的配分は複数存在する あきらかに「不平等」だがパレート効率的である配分もある 2 例:消費者2人(1, 2)、2種類の財(A, B)のケース 消費者 i {1, 2} の初期保有量ベクトル: 消費者 i {1, 2} の消費量ベクトル( i への配分): 純粋交換: ( yiA , yiB ) ( xiA , xiB ) x1 A x2 A y1 A y2 A x1 B x2 B y1 B y2 B 消費者 i が全て消費する配分はパレート効率的である: ( xiA , xiB ) ( y1 A y2 A , y1 B y2 B ) 、 ( x jA , x jB ) (0,0) (Why?) 3 パレート効率的配分の全体集合を知りたい! (以下、どの教科書にも書いてある説明) 消費者1の無差別曲線 財B x1B 限界代替率 (無差別曲線の傾き) 0 財A x1A 4 消費者1の無差別曲線群 0 5 消費者2の無差別曲線 x2B 限界代替率 0 6 エッジワースのボックスダイアグラム x1B+X2B 0 7 パレート効率的配分の全体集合: 契約曲線上の点すべて x1B+X2B 0 8 完全競争均衡 厚生経済学の第一定理: 完全競争均衡はパレート効率的配分を達成する y1B+y2B x1B y1B 価格比率 (=限界代替率) 0 x1A y1A y1A+y2A 9 任意のパレート効率的配分は、所得再分配を適切におこなえば 完全競争均衡として達成できる 「効率性と平等は分離して検討できる(厚生経済学の第一定理)」 x1B+X2B 0 10 2.4.効率と平等のトレードオフ 厚生経済学の第二定理の政策的含意: 「効率と平等は分離して検討できる」 理論としては正しいが、 現実の政策問題としては成り立つと言えない Why? 政府が、市場に介入することなく 所得再分配を実践することは難しいから 11 消費者1から消費者2に所得を100万円移転させたい 何を根拠に 消費者1から消費者2に所得を100万円移転させることができるのか? 例:累進所得税 (高所得者には高い税率を) 結果として 生産性の高い人の労働インセンティブ低下 所得と余暇(労働せずに過ごす時間)の限界代替率非均等 ⇒配分は非効率に 12 例:Lump-Sum Transfer 所得に無関係に、固定金額(Lump-Sum)を 消費者1から消費者2に移転させる 消費者1は稼ぐ所得に関係なく徴税される 労働インセンティブにあまり影響を与えずに所得が再分配される しかし、現実問題として 消費者1がなぜ消費者2に支払わなければならないのか の根拠付けが必要不可欠 (そうでないと現実には実行できない) 13 今日の「平等」に関する様々な視点 結果の平等: 行き過ぎた所得格差は、社会問題、政治問題を誘発 暴動、治安悪化、国際問題 機会の平等: 自由、教育、社会保障、最低限の収入、治安 本人の能力や意欲の違いによって「結果の不平等」は生じうる 14 格差原理(Difference Principle)by John Rawls: 恵まれた人たちは、最も恵まれない人たちに、できる限り、Primary Good(基本財) を提供すべし Primary Goods(基本財):自由、教育、社会保障、最低限の収入、治安 能力や意欲の違いによる「結果の不平等」は容認しない 無知のベール:「私はただ生まれつき頭が良かっただけです」 Capability(潜在能力)by Amartya Sen: たとえ Primary Goods が十分に提供されたとしても それを、自身の幸福や価値に変換する能力(Capability)には個人差がある。 (いったいどういう意味??) 15 John Rawls (1921/2/21~ 2002/11/24) Amartya Sen (1933/11/3~) 哲学者 “A Theory of Justice” (74) ノーベル賞(1998) “貧困と飢饉(Poverty and Famines)”(82) 「1943 年のベンガル飢饉は、不平等による 人災だった」 16 ケニアの事例 Michael Kremer et al. “Worms: Identifying Impacts on Education and Health in the Presence of Treatment Externalities” Econometrica (2004) いくら高額の開発援助をしても貧困から抜け出られない どうしたらいいか? 「虫下し」の薬(安上がり)を各家庭に配布 ⇒ 教育、経済発展に大きな効果 Why? 学校:病気感染の巣窟だった ⇒ ⇒ ⇒ 虫下し後に登校するようになってから状況改善(学校で感染しなくなる) みんな学校に行くようになる 教育水準アップ 経済発展につながる 金銭的援助だけでは効果上がらない:Capability 大事 17 アフリカ全土の事例:マラリアと蚊帳 ハマダラカ防虫剤を練りこんだ蚊帳を開発(日本人)、現地に援助 しかし就学年齢のマラリア感染には効果うすかった Why? 毎晩蚊帳を吊らなければならない 乳飲み子は親と寝るからよし 就学年齢児は自分で吊らないといけない ⇒ 背が届かない ⇒ 台を持ってくるのが面倒 ⇒ 蚊帳吊りが生活習慣にならない(結局マラリアにかかって学校にいけない) (どうすればいい?) 18 アフリカの経済援助 「アジアはテイクオフした。次はアフリカだ。」 アジアとの重要な相違:難しい伝染病がとりわけ深刻 マラリア、眠り病(家畜にも感染、ナガナ病) 問題解決には「学際的プロジェクト(現在進行中)」必要 (医学、経済学、昆虫学,…) 次回:完全競争をさらにさらに詳しく:部分均衡分析
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