公共経済学 (第1講 Introduction) 今日の講義の目的 (1)この講義の進め方・ルールを理解する (2)公共経済学のイメージをつかむ (3)ミクロ経済学の体系を概観する 公共経済学 第1講 1 この講義の目標 (1)ミクロ経済学の道具を使います。しかしミクロ経済 学の予備知識が無くても、予習しなくても、講義を 90分間真剣に聞けば理解できる授業を目指します。 (2)欠席した場合には自助努力で補ってください。配布 したファイルはHPで公開します。また欠席・遅刻・ 早退した場合にはHPを訪れ注意事項がないか確認し て下さい。 (3)HPにある文献リストは予習のためでなく、講義を休 んだ場合の補充用、あるいは更に進んだ勉強をした い人のための資料です。リストにある本を読まなく ても理解できる講義を目指します。 公共経済学 第1講 2 この講義のルール ・詳しくは「成績評価の方法及び受講の際の注意点」を よく読んでください。最重要!! (1)平常点で採点します。出席を取るわけではありませ ん。→講義中当てます。これが一つ一つ小テストです。 これを採点して成績を付けます。従って出席していて も解答しなければ無意味です。間違っていても点数が 付くことはあります。 (2)できるだけ多くの人に多くの回数指名するために原 則として同じ問題を複数の人にあてます。他の人が考 えている間自分もキチンと解答を考えていて下さい。 公共経済学 第1講 3 この授業のルール (3)講義中いつでも質問・発言して下さい。よい発言に 関しては指名された上で回答したものと見なして点数 を付けます。→よい発言が多くあれば、一度も指名さ れないのにA+の成績がつくこともあり得ます。 (4)配布物・スライド等の誤字・タイポの指摘も、最初に 指摘した一人のみ点数がつきます。 (5)難問に正解すれば高い点数がつくことがあります。 (6)講義終了後の質問も受け付けますが、講義と直接 関係ない質問は受け付けません。講義と直接関係な い質問はメールで許可を得た上で予約し、研究室ま できてください。 公共経済学 第1講 4 小テストの注意 (1)指名され解答するのは試験です。隣の人等に答 えを聞くのはカンニングです。教員からは会話が私 語なのか答えを教えているのか区別できないので、 指名時点で周りの人と話していれば点数を失います。 他の人の迷惑にならないよう私語は厳禁です。 (2)携帯メールによるカンニングを防ぐために、携 帯は授業開始前に目に付かない所にしまうこと。指 名時に目に付くところに携帯があれば、その人の携 帯であろうとなかろうとカンニングと見なします。 (3)代返は替玉受験と同じでカンニングよりも更に 重い不正行為です。絶対にやめてください。 公共経済学 第1講 5 提出書類 (1)欠席・遅刻・早退することが事前に1週間以上 前にわかっている場合には事前提出用の届を提出す ること。事前届があった回にはなるべく指名しない ように努力する(指名しないことを確約はしない)。 (2)当日やむを得ない理由で欠席・遅刻・早退した 場合には事後提出用の届を提出すること。理由に応 じて最終的な成績評価時に考慮する。加算される得 点は(一枚あたりでなく合計で)最大で9点である。 説得力のない届がある場合には点数を加算しない。 (3)提出は講義終了後ないし開始前に教室で教員に 直接提出すること。事務等に提出した場合には、注 意書きを読まなかったものと見なす。 公共経済学 第1講 6 公共経済学(Public Economics) Public ⇔Private 市場経済の主役→民間経済主体(Private) しかし公的部門(Public Sector)も重要な役割 (1)民間経済主体が活動する基盤になるルールの設定 (2)ルールの遵守を担保する司法の役割 (3)治水、道路、警察、消防等のサービスの提供 (4)税の徴収、所得の再分配、セーフティ・ネットの供給 (5)民間活動の公益目的への誘導 公的部門の機能・役割を分析する経済学=公共経済学 公共経済学 第1講 7 財政学(Public Finance) 公共経済学とかなり重複した分野 ・公共経済学に比べると、政府支出・税収の議論のウェー トが高い ・公共経済学と比べるとマクロ経済学との関連が強い ←財政政策が景気との関係で論じられることが多かった から 本講義~公共経済学←ミクロ経済学の視点 ←マクロ経済学に関連する公共政策は通常マクロ経済学 でカバーされるから 公共経済学 第1講 8 公共経済学で主に使う経済学 ミクロ経済学、マクロ経済学、ゲーム理論 ・厳密にはゲーム理論と経済学は異なる分野で、ゲー ム理論はあらゆる社会科学の分析に不可欠な道具 になりつつある。 ・ゲーム理論は現代の経済学には必要不可欠な分析 道具になっている。 →残念ながら2単位の授業ではここまで教えられない。 →ミクロ経済学に焦点を絞る。 公共経済学 第1講 9 ミクロ経済学の特徴 個々の経済主体の意思決定(選択) →社会全体の構造 大げさに言うと方法論的個人主義 一方で個々の経済主体の選択は社会全体の構造に 依存する 個々の経済主体の意思決定は社会全体の構造が 決まらないと決められないが、個々の経済主体の意 思決定なしには社会全体の構造も決まらない ⇒同時決定の体系 公共経済学 第1講 10 ミクロ経済学の体系 原理的にはあらゆる意思決定を分析できる まず何をどれぐらい生産して消費するかという選択か ら出発 ・消費者の理論・生産者の理論(個人の意思決定) ・市場均衡の理論(同時決定の体系を閉じる) →市場均衡は以下の3条件が満たされていれば効率 的である (a)完備市場(b)完全競争(c)完備情報 (第5、6講で詳述)。 公共経済学 第1講 11 市場均衡の効率的の3つの条件 (a)完備市場:市場がちゃんと存在している (b)完全競争:全ての経済主体が価格受容者(価格受 容者の定義は第2、3、4講で詳述) (c)完備情報:全ての人が同じ情報を持つ =情報の格差、偏在がない 市場の失敗: 3条件の少なくとも一つの条件が満たさ れない結果として市場均衡が効率的にならない ⇒政府が積極的に介入する必要がある 公共経済学 第1講 12 市場の失敗1 (a)の条件が満たされないために起こる市場の失敗の 典型例 外部性(公害など)、公共財 ⇒政府か直接規制したり、税などで間接的に民間経 済主体個をコントロールする必要性 第9、10講で取り上げる 公共経済学 第1講 13 市場の失敗:不完全競争 (b)の条件が満たされないことによる市場の失敗 ⇒不完全競争 完全競争:全ての経済主体が価格受容者 価格受容者:自分の行動が価格に影響を与えないと 思っている経済主体 不完全競争:少なくとも1人価格受容者ではない者 (価格支配者)が存在する ⇒独占禁止法、事業法などでの対応 この講義では残念ながら扱わない 公共経済学 第1講 14 不完備情報による市場の失敗 完備情報:全ての人が同じ情報を持っている 完全情報:全ての人が全ての情報を持っている 情報が不完備・情報が非対称的・情報が偏在 ・情報の偏在による市場の失敗の典型例 (a)モラルハザード (b)逆淘汰 ・情報の偏在への対応 ⇒シグナリング⇒これが新たな市場の失敗を生む (第13、14講で再び取り上げる) 公共経済学 第1講 15 情報の経済学 情報が不完全なだけでは市場は失敗しないが、不完 備だと市場は失敗する 不完備情報の重要性の発見⇒経済学の革新 不完備情報を扱う経済学=情報の経済学 情報の経済学は契約理論、組織の経済学などの現代 の経済学の母体となる 同時に産業組織、企業金融、法と経済学、公共経済 学、国際経済学、環境経済学などの分野の発展に も大きな貢献 公共経済学 第1講 16 ゲーム理論 相互依存関係にある合理的な主体の意思決定を科学 的に分析する →ミクロ経済学の発想と似た面を持つ ・ゲーム理論の発展とともに経済学も発展 ・逆に経済学の発展がゲーム理論の発展にも貢献 ~ミクロ経済学の不可欠な分析道具に 残念ながらこの授業では取り上げない 公共経済学 第1講 17 ミクロ経済学全体の構造 ミクロ経済学の5つの柱 (1)生産者理論・消費者理論 (2)市場均衡の理論 (3)市場の失敗 (4)情報の経済学 (5)ゲーム理論 公共経済学 第1講 18
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