RNA interference

RNA i
(RNA interference)
RNAiとは?
RNAi(RNA interference)とは、ある遺伝子と相同な、センスRNAとア
ンチセンスRNAからなる二本鎖RNA(double-strand RNA;dsRNA)が、
その遺伝子の転写産物(mRNA)の相同部分を破壊する、という現象で、
1998年に線虫を使用した実験によりはじめて提唱されました。
(Fire A,et al:Nature(1998)391:806-811)
RNAiは発見された当初、哺乳動物細胞においては、約30bp以上の
dsRNAを細胞内へ導入すると、細胞が本来持っている免疫機能により
アポトーシスを起こし、細胞が死んでしまう為、哺乳動物細胞での利用
は困難と思われていました。
しかし、2000年に、マウス初期胚や哺乳動物培養細胞でもRNAiが起
こり得ることが示され、RNAiの誘導機構そのものは、哺乳動物細胞に
も存在することがわかってきました。
(Ui-Tei K,et al:FEBS Lett(2000) 479:79-82)
2001年、さらに短い(21~23bp)のdsRNA(small interfering RNA;
siRNA)が、哺乳動物細胞系でも細胞毒性を示さずにRNAiを誘導で
きることが示されました。(Elbashir SM,et al:Nature(2001)411:494498)
現在は27bpのsiRNAの方がより効果的であるとの発表もされています。
従来の遺伝子機能解析は、ある表現型に関わる遺伝子をクローニン
グし、塩基配列を調べる、といった手順で進められていました。しかし、ヒ
トを含めたいくつかの生物でその全塩基配列が決定されている現在(ポ
ストゲノム時代)、決定された遺伝子の塩基配列からその機能を解析
するようになってきました。
RNAiは配列が知られている標的遺伝子のmRNAをノックアウト(破壊)
することによりその遺伝子の機能を探索することができる画期的な方法
です。
RNAi法のその他の利点として、低濃度でも効果が期待でき、mRNA
を破壊するだけである為、ゲノム遺伝子には影響を及ぼさない、ことが
挙げられます。
どういうことが起こっているの
か?
RNAi(RNA interference,RNA干渉)とは、
•
2本鎖RNA(double-stranded RNA;dsRNA)が引き金となって
そのアンチセンス鎖<siRNA(small interfering RNA) >と相補的な
配列のmRNAが分解され、それにより遺伝子の発現(形質発現)が
抑制される現象のことです。
2本鎖RNA
Dicer(RNA分解酵素)
siRNA
mRNAを切断する
siRNA
mRNA
RISC
(RNA Induced Silencing Complex)
siRNAによってmRNAが分解される
D
N
A
の
遺
伝
情
報
遺
伝
情
報
の
転
写
m
R
N
A
へ
の
ゾ遺
合ア (
m
)ミ R ー 伝
ノNム情
酸A上報
ととでの
のtのリ
結R
N翻ボ
A訳
タ
ン
パ
ク
質
合
成
形
質
発
現
tRNA
アミノ酸
タンパク質の合成過程
Ala
C GA
アミノ酸の運搬 Ala
Ala
mRNA
Ser
CGA
合成された Gly
タンパク質
Leu
遺伝情報の翻訳と
タンパク質の合成
(ポリペプチド鎖)
Ala
Gly
結合
Ser
Ala
C G A
リボゾーム
Val
A
G
C
G GC U
C G U CA
UC
G
A
G
C
C
U C U A GG U U C
リボゾームの進行方向
塩基3つ分ずつ移動する
設計する際の注意点
1.スタートコドンから、75塩基以上下流の最初のAAを見つけます。
(転写因子の結合部位を避ける狙いがあります。)
2.デザインした塩基配列が他の遺伝子(off-target)のノックダウンを
引き起こさないように、特異性の高い配列を検索する。
3.デザインした塩基配列の中にSNPsの報告がないことの確認。
● (SNP スニップ)
シングル・ヌクレオチド(塩基)ポリモルフィズム(多型)の略称で、
「一塩基多型」とも呼ばれます。 2人以上のヒトのゲノムを比較す
ると3000M(メガ)bpのうち、99.9%は塩基配列が同じです。残
り0.1%(約300万bp)は個人の間で差があると言われています。
約1k(キロ)bpに1つ違いがあるということです。
例えば、Aという人からのある遺伝子DNAの一部分を取り出し
ます(TCGATCGA) 。これとBという人の同じ遺伝子からのDN
Aを取り出し(TCGATTGA)、比較します。両者を比較すると、
同じ遺伝子のDNAでありながら、Aのシトシン(C)の1つが、B
ではチミン(T)に変わっています(ミスマッチ)。これが、Single
Nucleotide Polymorphism (SNP):一塩基の多型性です。SNP
のタイプにより、遺伝子を元に体内で作られる酵素などのタン
パク質の働きが微妙に変わります。
肌の色や体質の違いもSNPが原因と考えられています。
SNPは親から子へバラバラに伝わるのではなく、いくつかまと
まったパターン(ハプロタイプ)で受け継がれると考えられてい
る。このパターンが、病気のかかり易さ・副作用の発生率など
の体質の元になるとされています。このSNPのまとまりが人間
の23対の染色体のどこにあるかは不明です。