シナプスにおける局所的翻訳と可塑性の制御 ―CPEB と FMRP― 名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学 宇田川 剛 博士 記憶の分子基盤であるシナプス可塑性の制御には、樹状突起スパイン(シナプス後部) における局所的な翻訳が重要な役割を果たすと考えられている。シナプス可塑性の異常 は記憶障害を引き起こすだけでなく、ヒトにおいては様々な精神神経疾患を伴う。しか しながら、シナプスにおける翻訳調節機構の詳細は未だ充分に解明されていない。特に RNA 結合タンパク質を介した特異的 mRNA の局所的翻訳の制御、そのmRNA ターゲット、 さらに、その制御が障害を来すことにより惹起されるシナプス機能異常や個体レベルで の行動への影響を系統的に解析した例はこれまで存在しなかった。今回のセミナーでは、 その一例として我々が行ったポリ A 鎖の長さを調節する RNA 結合タンパク質である CPEB、 及びその複合体による翻訳制御機構の解析、mRNA ターゲットの同定、シナプス可塑性 の双方向性制御について解説する。さらに、最も多い遺伝性精神遅滞症候群であり、自 閉症の主要な原因と考えられる脆弱 X 症候群(FXS)の原因である RNA 結合タンパク質、 FMRP と CPEB が翻訳のバランスを相互に調節するメカニズムと、CPEB を介した FXS への 治療介入の可能性について議論する。 参考文献 Udagawa T, Farny NG, Jakovcevski M, Kaphzan H, Alarcon JM, Anilkumar S, Ivshina M, Hurt JA, Nagaoka K, Nalavadi VC, Lorenz LJ, Bassell GJ, Akbarian S, Chattarji S, Klann E, Richter JD. Genetic and acute CPEB1 depletion ameliorate fragile X pathophysiology. Nat Med. 2013 Nov;19(11):1473-7. Udagawa T, Swanger SA, Takeuchi K, Kim JH, Nalavadi V, Shin J, Lorenz LJ, Zukin RS, Bassell GJ, Richter JD. Bidirectional control of mRNA translation and synaptic plasticity by the cytoplasmic polyadenylation complex. Mol Cell. 2012 Jul 27;47(2):253-66. 日時:2月21日(金)午後3時~ 場所:6-13棟 1Fラウンジ 問い合わせ先:富田 耕造 (バイオメディカル研究部門、RNA プロセシング研究 RG、 Tel:029-861-6085 Email: [email protected])
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