新規幹細胞解析法、FACS-mQ の開発 幹細胞解析法、FACS-mQ ◎高野 徹1)、前田朋子1)2)、島末安沙美1)2)、渡邊幹夫2)、日高 洋1)、岩谷良則1) 大阪大学大学院医学系研究科臨床検査診断学1)、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報科学講座予防診断学2) 再生医学の急速な進展に伴い、幹細胞および癌幹細胞をタ フィールを解析する、という一連の操作で、種々の臨床検体 ーゲットとした臨床検査法の開発が急務であるが、これらの 中に存在する少数の細胞を任意の遺伝子の発現をマーカー 細胞は組織中に極めて少数しか存在せず解析は困難である。 現行の解析技術としては FACS が知られている。しかし、 FACS には次の2つの欠点がある。1)細胞を分離する際に として分離し、回収された細胞の性質を解析するより汎用性 のある技術の開発を開始し、当方法を FACS-mQ(mRNA quantification after FACS)と名づけた。 2010 年に最初の報告を発表した後、プロトコールの改良 特異的な表面抗原が必要なため応用できる細胞の種類が限 を継続し、1)臨床組織の採取・前処理・保存法、2)免疫 られ、さらに抗原保持のため組織標本から単一細胞を作成す 蛍光染色におけるシグナル/ノイズ比の改善、3)染色後の る場合には酵素処理が使えない 2)分離した後の細胞の性 検体保存法、4)FACS による細胞採取後の細胞内 RNA の 質の解析は細胞を生きた状態で分離した後培養することに 回収法、5)RNA を回収した後での定量解析法、のそれぞれ よるが、操作が煩雑で結果が出るのに時間を要すため臨床検 査としては不向きである。 れと並行して甲状腺細胞株 FRTL-5 における細胞分画の解 析を行い、FRTL-5 における幹細胞マーカーの動態を初めて 我々はこれらの問題を解決するため、1)臨床検体から採 取された細胞を適当な条件で分散・固定・保存 について詳細な検討をし、方法の最適化を図った。また、こ 2)RNA が分解しない条件で目的の細胞が発現する 1 種類または複 数の抗原を蛍光色素で標識 3)FACS で目的の細胞を分離 4)回収された細胞より mRNA を抽出して遺伝子発現プロ 解析することができた。 FACS-mQ は従来法に比べて極めて簡便に幹細胞マーカ ー等の解析が可能であるため、再生医療の進展に伴い、近い 将来には医療現場において広く使われるようになるものと 考えられる。
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