富士山の雲形と気象条件

富士山の雲形とその発生要因
日本大学大学院 総合基礎科学研究科
地球情報数理科学専攻
博士前期課程1年
清 水
崇 博
日本大学富士山観測プロジェクト
↑実際に使用した山中湖の
カメラ
←全5箇所のカメラ位置
笠雲写真代表例
1月1日
2月2日
5月26~27日
• 以上が期間中に現れた笠雲の例である。
• 山頂付近に表面が滑らかな積雲(レンズ状雲)が
存在した場合を笠雲と分類した。
旗雲写真代表例
1月4日
2月15日
2月18日
• 以上が期間中に発生した旗雲の例である。
• 富士山中心を軸に風下側に旗がなびくように発生し
た雲を分類した。
笠雲・旗雲の発生と相当温位
• 相当温位のアイソプレスを見てみると,通常の状態下で
は上層が相当温位が高く,下層で低くなっている。よって,
通常状態では大気は安定と考える。しかし,笠雲発生時
のみに注目すると,相当温位が上下層で中立状態になっ
ているときに発生している。このことは,笠雲は通常より
もやや不安定になった気層中で発生することが分かる。
• 各月,発生した中立層の内の60~70%で笠雲が発生して
いて,成層状態を見ただけでも笠雲の予測はある程度で
きる。しかし,それだけではまだ不十分であり,この不十
分な点を解消するのは,のちに出てくる風速である。
• 反対に旗雲は,安定状態で発生していることが分かる。
風速と笠雲の発生
• 浜松における高層風を南北成分と東西成分に分けて
解析した。すると、特に500hPa面に注目すると、笠
雲発生時の南北風は南風成分が0~15m/s、東西風は
西風成分が30~40m/s付近である。次に700hPa面に着
目すると南風成分が0~15m/sであり、西風成分が15
~20m/sであった。よって、笠雲発生に最適な風は、
風向が両気圧面共に西から南南西で、風速は500hPa
で30~40m/s、700hPaで15~20m/sであるとされる。
もっと下層に注目しても南風傾向と西風傾向が強く、
西から南西方向の風が卓越した時に発生している。
笠雲発生日
旗雲発生日
地上天気図と笠雲・旗雲,そして観天望気
• 古くから言われている天気俚諺では,笠雲は雨を呼ぶ雲
と言われており,旗雲は風を呼ぶ雲と言われている。こ
れらの理由を考察した。
• 笠雲発生時の天気図を見ると,日本海に低気圧があるの
が分かる。ここで,笠雲の発生に必要な条件を思い出す
と,相当温位の中立層と700~500hPa高度における
30~40m/sの西南西風であった。これらの条件をみたすに
は,日本海低気圧は重要な役割を果たすはずである。そ
して,のちに通過する寒冷前線が降雨をもたらす。
• 旗雲発生時の天気図は西高東低の冬型配置になる直前
の気圧配置である。よって,旗雲発生のあとには本格的
な冬型気圧配置になり,風が強くなると考えられる。