第7章 戦略的計画

第7章 戦略的計画
1.戦略的プランニングの本質
・戦略形成との関連
・戦略計画の進化
・戦略計画の便益と限界
・プログラム構造とコンテンツ
・組織の関係性
2.新プログラムの分析
・資本投資分析
・分析のための組織
3.継続プログラムの分析
・価値連鎖分析
・活動基準分析
・活動基準分析からの情報利用
4.戦略的計画プロセス
・戦略的計画のレビューと更新
・仮定とガイドラインの決定
・戦略的計画の第1次素案
・分析
・戦略的計画の第2次素案
・レビューと承認
要約
1 戦略的プランニングの本質
プランニングとプランとは区別すること。
プランニングは、計画を作る過程であり、
その過程ででてきたアウトプットがプランである。
・戦略形成との関係
戦略形成(戦略フォーミュレーション)と戦略的プランニングとも区別され
る。前者は、戦略を決めるプロセスであり、後者はその具体的戦略実施
の方法を決めるプロセスである。
後者の課題は、プログラムを決めることである。
前者は、ゴールをその手段を決めること。
後者は、システム志向のプロセスで公式化されている。
前者は、トップの思考・創造過程である。
1 戦略的プランニングの本質
・戦略的プランニングの進化
1950年代に長期計画の考えは企業に導入された。
しかし、当時は、予算を延長することが、長期計画と
された。例えば、Long-range Planningなどというこ
とが一般的な戦略的プランニングの用語であった。
しかし、今では、長期の課題とその解決方法の選択、
プログラムを作ることが、プランニングとされている。
1 戦略プランニングの本質
・戦略的プランニングの便益と限界
その意義は、1)年次予算展開の枠組み。2)マネジャーが長期課題を考えるメカ
ニズム。3)マネジャーを企業戦略に参加させる。
戦略的プランを作る重要な意義は、それが、効果的な業務予算の形成を容易にす
ること。
戦略的プランニングの重要な意義は、キーとなる戦略オプションの支援に必要な最
適資源配分決定を容易にすることである。
図7-1を参照
戦略的プランニングの限界は、いくつかあげられる。
1)官僚的な作文化、2)思考の不足、3)戦略的スタッフとラインとの関係、
4)それに費やす機会と時間の問題
とりわけ次のような組織では、公式の戦略的プランニングはいらない。
1)将来が確実である、2)組織が小さい、3)まったく先が読めない環境である。
1 戦略的プランニングの本質
・プログラム構造とコンテンツ
戦略的プランであるプログラムは,さまざまな単位で作られる。
GEでは、SBUはBUなどの単位でプログラムを作る。P&G
では、製品がプログラムの単位である。
・組織的関係性
戦略的プランニングプロセスは、上級マネジャー、BUのマネ
ジャーを中心にして、相互に合意した目的や目標に至る一連
の活動の集合(プログラム)を提供することにある。
そこに関連して、本社スタッフ、コントローラー(これは、経理・
財務を担当する本社、SBUスタッフ)があるが、後者は、活
動の性格上、戦略の策定支援にはなじまない。
2.新プログラムの分析
・プログラムの提案は、本質的にリアクティブであるか
プロアクティブである。すなわち、SWOTで示しよう
に、さまざまな脅威やうわさ、社内の隠れたアイデア
の拡大が基本である。
例えば、大抵のアイデアは、プログラム化されても一
度の決定で、フルスケールのプログラムにはならな
い。試行研究、技術研究、生産研究、パイロットプラ
ント・コスト調査、消費者調査、フル開発。
2 新プログラムの分析
・資本投資分析
1)プロジェクトのNPV分析、2)IRR分析、などを行う
が、それらを全ての戦略的提案に利用しない理由
は、
1)明らかに、NPVをしなくても魅力的な案の存在、
2)回収期間法が利用され、NPVを利用するには、
あまりに、信頼できる推定値が得られないケース、
3)収益性を上げる目的以外の案も存在する、4)実
行可能な代替案がほかにない。
2 新プログラム分析
資本投資評価のための考察ポイント
1)ルール:採択をするうえで、基準となるルールを決
めておく。
2)意図的操作の排除:数値についての意図的なゆが
みを何らかの方法で見抜くあるいは、その意図を弱
める。過去の提案者の履歴と成果、信頼できる数値
での裏づけなどの補助資料。
3)モデル:さまざまな補完的手法・モデルの活用、最
近では、リアルオプション、シナリオ分析、意思決定
分析、AHPなど。
2.新プログラム分析
・分析のための組織
シュミレーションを利用して対話から、プロジェ
クトを評価する方法など、組織とモデルとコン
ピューターを融合した方法などが提案されて
いる。
各年度ごとに、デッドラインを設定し、次年度
も審査される方法。
3.継続プログラム分析
・価値連鎖分析
各企業の活動は、全体の生産財から消費財、顧客までの間のどこにあるのか、全
体の流れを理解しておくことが重要。
1)供給業者とのリンケージ:チョコレート原料会社とお菓子会社での原料提供方法
の事例。
2)顧客とのリンケージ:ウィンとウィンの関係づくり。
例えば、重くてかさばる、紙コンテナーのサプライヤー工場をビール会社の隣で、
コンベヤーでつなげた。
3)企業内のプロセス間のリンケージ:原価企画の事例、VCR。
生産活動の効率性向上、購買・検査活動の効率性、販売・ロジスティクスの効率
性向上。
以上の効率性の向上については、トレードオフが存在する。小口・多頻度配送を実現
することと、社内のさまざまな切り替えコスト(段取り、事務処理、補修点検)
3.継続プログラム分析
・活動基準原価計算
活動基準原価計算により、さまざまな活動のコストを製品やS
BUに正確に跡付ける必要が増えている。これまでの原価計
算は、直接費用中心で、間接費は、一括で製品に配賦基準
で割り振られた。ABCでは、材料費を除く全ての加工費を正
確に計算する。
コストドライバー(原価作用因)、活動がキーワード
・ABC情報の利用:戦略的なABC情報の活用が必要な場合が
ある、製品ラインの拡大か縮小か、製品価格、購入・内製か、
製品ミックス、製品種類の追加か減少、付加価値活動か非
付加価値活動か。
4.戦略的プランニングプロセス
戦略的プランニングプロセスは、事業年度が、1月ー12月の場合で、春にはじまり、秋に終わる、
長い活動である。その冬には、年次予算が策定される。
ステップ:
1)昨年の戦略的プランのレビューと更新:実行途中でバリューベースを満たさない場合には、
年度内のプログラムの変更が行われる。フォーマルなプログラムはいじらない。
2)仮定とガイドラインの決定:戦略プランが更新されたときに、それは、さまざまなガイドライン
の変更がなされる。ガイドラインは、仮定であり、賃率、給与総額、製品単価、製品別予定数
量の実行可能な数量幅。
3)新戦略プランの第1回意見交換:BUでの完成された戦略的プランは、損益計算書、在庫量・
価格、受取勘定、その他。
4)分析:BUのプランを統合化して、本部は、企業戦略プランを策定する。その場合に、BUの
計画の首尾一貫性、BUの合計と本社の方針とギャップ解消方法、計画を達成するための
資金総額と調達方法。
5)2回目意見交換:公式的な改訂と非公式で、プランはそのままという2つがある。
いずれにしても、戦略的プランは、少数の仮定や目標、資金量、プロジェクトスケジュールなど
を変更する必要性がある。
6)レビューと承認:戦略的プランは、年次予算に先立ちCEOにより最終承認がなされる。
要約
戦略的プランは、企業戦略を実行する意義を
もっている。
BUとSUとは、新しい戦略的プランを提案する
上で、CEOと論議し、2回の意見交換により、
ファイナルプランとして策定される。
ここで、N社の事例を見ることにする。
N社は、1999年にルノーに買収され、6430億円の資金が、投
入され、株式の36.8%が、ルノーに渡った。COOには、ル
ノーのコストキラーと呼ばれ、ブラジル子会社の建て直しに
成功した、カルロスゴーン氏が就任した。
1999年10月のサバイバルプランの内容
2000年4月から実行に移す戦略的計画で、3ヵ年計画、実際は、
2001年3月の1年前倒しで達成された。
内容:3つのコミットメント
1)2000年度に連結当期損益を黒字化する。
2)2002年度に連結売上高営業利益率を4.5%以上にする。
3)2002年度末までに、自動車事業の連結実質有利子負債を
7000億円以下に削減する。
プログラム・手段・方法
1)グローバル購買プログラム:
購買原価の20%一律削減する。手段としては、ルノーとグローバル購買することで1145社あったサプラ
イヤーを600社に絞り、1社あたりの購入量を増やし、単価を20%下げる。
2)製造設備リストラクチャリングプログラム:
資産ベースとしては、自動車以外の事業の売却、自動車工場の集約と売却(2001年3月までに、2つの
パワートレイン工場と2つの主力工場を売却、これで、有利子負債を7000億円へらす。
フローの部分:従業員を21000人減らす。(当期は、2000億円のリストラ費用が発生:資産売却で対
応)
3)営業・本社コスト削減プログラム:国内販売ネットワークの削減と再編
4)開発・マーケティングプログラム:
99年度43車種中、利益4車種、を2000年度で、40車種中11車種にする。2001年度に38車種中18車種
にする。(車種の統合と利益化)、開発スピードを24ヶ月から、16ヶ月から18ヶ月に、デザイナーの若手へ
の切り替え
5)財務成果:
2000年度末の税引き後純利益は、3311億円、2001年度末で、3723億円、2001年度末で4317億円を
達成。
売上高営業利益率は、2001年度で、7.9%となった。
6)業績改善の切り口:売上高の増加、コストの削減、品質・事業スピードの向上、ルノーとの提携によるシナ
ジー。
N自動車の戦略マップ
財務の視点
株主価値の改善
収益成長戦略プログラム
顧客価値の増大
顧客の視点
生産戦略プログラム
チャネル別収益性
改善
デザインの一新
車種別収益性、販売台数の増加
資産リストラクチャリング
コスト構造の改善
一台当製造原価削減、人数の削減
稼働率向上、
コア以外の売却
製品リーダーシップ
顧客親密性
製品・サービス属性
内部の視点
価格
品質
新製品開発
学習と成
長の視点
イメージ
顧客価値の提示
機能
顧客価値の増大
サービス
関係性
製造工程の改善
ブランド
サプライヤー関係
従業員・役員・経営者のコミットメント
戦略的能力
戦略的技術
企業文化