通貨統合の理論 国際金融論2006 1 欧州通貨同盟 単一共通通貨ユーロの導入 EUの経済通貨同盟(EMU)の最終段階 1999年1月1日よりEU(発足当時11か国、現在、12か国) が金融取引においてユーロを導入。2002年1月1日より ユーロ紙幣・硬貨が流通。 通貨同盟参加のための収斂条件 ①インフレ率、②為替相場の安定、③金利、④財政赤字 と政府債務 欧州中央銀行制度(ESCB) 欧州中央銀行(ECB)と各国中央銀行によって組織 国際金融論2006 2 ユーロとその導入国 国際金融論2006 3 バラッサの経済統合の諸段階 自由貿易協定:加盟国からの輸入品に対する関税 及び数量割当の撤廃 関税同盟:非加盟国に対する関税の均等化 共同市場:生産要素移動に対する制限を除去した 関税同盟 経済同盟:各国経済政策の調和化を伴った関税同 盟 完全な経済統合:金融政策、財政政策、社会政策 の統一 国際金融論2006 4 収斂条件 インフレ率が最も低い3か国の平均値+1.5%以 内であること 為替相場が、少なくとも2年間、ERMの許容変 動幅内にあって、切り下げがないこと 金利については、インフレ率が最も低い3か国 の長期金利の平均値+2%以内であること GDPに対して財政赤字が3%以内であり、GDP に対して政府債務が60%いないであること 国際金融論2006 5 最適通貨圏 最適通貨圏とは、通貨同盟に参加して、 共通通貨を利用することが適している地 域。 各国間で非対称的ショックが発生したとき に、通貨統合後は、為替相場以外の手段 で非対称的ショックによって生じる各国経 済間の不均衡を調整する必要がある。 国際金融論2006 6 非対称的ショックに対する対応 A国 好況 為替相場による調整 労働の移動 A国通貨増価 貿易 B国通貨減価 財政移転 労働者不足 B国 不況 失業 国際金融論2006 7 最適通貨圏の基準 ショックの対称性 労働の移動性 貿易面における経済の開放度 財政移転 国際金融論2006 8 ショックの対称性 非対称的な供給ショック 為替相場以外の調整が必要となる。 非対称的な需要ショック 自然失業率仮説から言えば、長期的な非 対称的な需要ショックは消失する。 国際金融論2006 9 労働の移動性 非対称的な供給ショックに対して、労働の 移動性によって対応可能。 国際金融論2006 10 生産ショックに対する反応(1) 経済全体の生産関数(コブ-ダグラス型) y AL K 1 利潤最大化の条件 1 AL K 1 w (1 ) AL K 国際金融論2006 r 11 生産ショックに対する反応(2) 労働は国際的に移動しない。 資本は国際的に移動する。 rr * 国際金融論2006 12 生産ショックに対する反応(2) 生産性ショック(技術係数Aの低下)に対 する反応 資本は、 K0 K2 だけ外国に流出する。 労働は、外国に流出・吸収されない。 もし賃金が伸縮的であれば、完全雇用では あるが、雇用量が L0 L2 だけ減少する。 もし賃金が硬直的であれば、失業が発生。 国際金融論2006 13 図6 -4 a w D S L0 LD1 LD2 L A K L2 L1 L L0 図6 -4 b r K0D K1D K2D A L r r* K K2 K1 K0 国際金融論2006 14 貿易面における経済の開放度 需要増大ショック←輸入増で対応 需要減少ショック←輸出増で対応 貿易面において経済が開放されていない と、需要ショックを国内で吸収。GDPや物 価水準が変動。 国際金融論2006 15 図6 -5 p AD0 AS AD1 A B p0 p p* C p1 y y1 y2 y0 国際金融論2006 16 財政移転 好況の国で得られた租税を不況の国に補 助金として支払う。 国際的な財政移転が可能となるためには、 財政政策における国際政策協調や各国 の財政主権の統合が必要。 国際金融論2006 17 通貨統合の便益・費用 通貨統合(通貨同盟やドル化)と固定為替 相場制度の区別 ①通貨統合は恒久的固定相場。制度の信認 が高い。(固定為替相場制度は固定相場 の調整の可能性がある) ②通貨統合は各国の中央銀行(の裁量)は 事実上存在しない。 国際金融論2006 18 通貨統合の費用 最適通貨圏の条件を満たさない場合にお えける非対称的供給ショックの影響 通貨主権の放棄、金融政策の独立性の 放棄、「最後の貸し手」の不在。 財政収入源の1つである通貨発行利益 (seignorage)の放棄。 国際金融論2006 19 通貨統合の便益 通貨交換に関わる取引費用の節約。 交換手段としての機能(ネットワーク外部 性) 価値尺度としての機能 外国為替リスクの除去。 国内金利のリスク・プレミアムの軽減 ペソ問題の解消 国際金融論2006 20
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