マイナスイオンにおい・かおり2004

Ylab
CREST
マイナスイオン現象
市民の科学レベル
国際連合大学・東京大学
安井 至
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Ylab
CREST

論旨
マイナスイオンは未科学
未科学の理由





そもそも実体は(化学種、量)? 定義不明?
測定器は何を測っている?
余りにも微量である
副生成物であり、他の主生成物の効果と分離
不能
現状=未科学商品+詐欺商品(トルマリ
ン)
2
Ylab
CREST
定義がはっきりしない







「マイナスイオン」は世界共通の呼称か?
そもそもイオンの実体とは何か
どんな種類があるのか?
なぜ注目されているのか?
どこに存在するのか?
どんな風に作られるのか?
滝壷の付近にはマイナスイオンが多い?
3
Ylab
CREST
測定器が無いに等しい


物質を測るということ
電荷を測るということ

1フェムトグラムオーダーの物質
1億円掛けても、測れるだろうか?

測定装置は他(湿度・息)の影響を受ける

4
Ylab
CREST
余りにも微量である





1万個/cc程度の量
しかも分解速度が速い
60兆個の細胞からなるヒトに効くか?
医薬品ならミリグラム必要
嗅覚への効果か?
5
Ylab
CREST
副生成物がある
より正しくは、主生成物が別にある




オゾンを生成していて、マイナスイオンが
副生する。
水を大量に使用していて、マイナスイオン
が副生する。
オゾンは活性が高い。有害性あり。
湿度に対してヒトは敏感。
6
Ylab
CREST
歴史




1899年に、ElsterとGeitelが空気イオンを
発見し、分子イオンと名前を付けて以来、
約100年の研究の歴史が有る
1920~30年代、盛んに研究された
確実な結果がでないために中断
20世紀末に蘇った?
7
Ylab
CREST
「マイナスイオン」は世界共通の
呼称か?





日本独自の名称である。
世界的には、負の空気イオンと呼ばれる。
日本では、誰かがマイナスイオンという名
称を発明したようだ。
コロナ、そして東芝が定着に一役
さらに、トルマリンで普及
8
Ylab
CREST
そもそもイオンの実体は何か




イオンとは、荷電を持つ粒子を意味する。
液体中にも、イオンは存在する。それは、
学校で習う陽イオン、陰イオンである。
大気中を浮遊する粒子にも電荷があるも
のがあって、空気イオンと呼ばれる。
空気イオンの実体は、水などの微粒子だ
ろう。
9
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負の電荷を持つイオンを中心に
水分子が10個程度集まったも
の?
10
Ylab
CREST
ただし、不安定で0.01~1秒で
別のイオンに変わる
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Ylab
CREST
なぜ注目されたか







家電製品の成熟性とキャッチフレーズ
癒しを求める社会
新規性を無批判に情報を流すメディア
科学を理解しない記者
新規な言葉を求める量販店
技術者の誇りを失った大企業
世の中の求めるものはそれを供給するの
が正しいことである!!
12
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CREST
どこに存在するのか




負の空気イオンは自然現象でもある
静電気として認識される
嵐の前、水滴の多いところなど
「滝壺にはマイナスイオンが多い」

この言葉が有効だった!?
13
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CREST
何によって生成するか

2種類の方法

高エネルギープロセス




N2
放電・雷
放射線・宇宙線
紫外線
-
水の破砕による静電気


積乱雲の中
滝?
2O
O2
+
-
+
-
+
+
-
14
+ + + +
Ylab
CREST
-
量の測定





V
マイナスイオン測定器なるものがある
しかし、何を計っているのか、かなり難しい
湿度の影響を非常に受けやすい
呼気を吹きかけると大幅に増加する
アルファラボ:「呼気中には大量のマイナス
イオンを含む」
15
Ylab
CREST
量は十分か?
まず量から:マイナスイオン発生量
10000個/ccなら多いほうだ。
 空気1ccに分子はいくつある?
25000000000000000000個
1滴の薬を2500万トンの水に溶かす
2500万トンは小さなダム一つ
 普通に吸っている空気に含まれるダイオキ
シンの分子は?
100000個/cc

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CREST







マイナスイオンドライヤー
出ている物質の量
オゾン 多少臭うので、0.01ppmぐらい
250000000000個/cc=2500億個/cc
マイナスイオンはかなり多いとされているが
500000個/cc=50万個/cc
オゾンは活性の強い分子である
マイナスイオンの活性は「判らない」
さて、量は50万倍違う。どっちが利いているのか?
オゾン水によって髪の毛が溶けてサラサラ?
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CREST
生体への効果(?)と量

疲労回復、反射時間短縮、集中力??
免疫システム活性化?
ホコリの落下
有害性物質の分解?
除菌
(アレルゲン除去)?
血液サラサラ?

量は、大体数1000~1万個/立方センチ






18
Ylab
CREST
医学的な実験は確実か?



かなり心理的な問題!
となると、実験には注意を要する
ダブルブラインドが必要



試験者、被験者のいずれもが、条件をしらな
い状態の実現
現状では、怪しい実験が多い
副生成物の効果を無視
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Ylab
CREST
プラズマ・クラスターイオン




シャープ製の“イオン”
マイナスイオンとプラスイオンを同時に出
す。
プラスとマイナスが放電して、菌を「やっつ
ける」らしい。 → 除菌イオン
プラスイオンは、他のメーカーや研究者に
よれば、健康に悪いはず。
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Ylab
CREST
除菌イオン製品



シャープはさすがに、ヒトの健康によいとは
言わない。
除菌エアコン、除菌空気清浄機
除菌することの意義



病院における院内感染を防止
宇宙船・潜水艦などの閉鎖空間
除菌の副作用


抵抗力の無い子供を作る
O-157騒ぎの反省がない
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Ylab
CREST
見分ける技術 ヒトの細胞数





人間の細胞は60兆個からなる
したがって、人体に影響を与えるには、か
なりの量が必要である
通常、効果の高い薬でも、1mg程度
例外が嗅覚か?
マイナスイオン 500万個の重さは、
=1fg =0.000000000001mg
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Ylab
CREST
見分ける技術
分子数とヒトの細胞2






人間の体は60兆個の細胞を持つ
180gの水を飲むと、
6×10の24乗個の分子を体に入れる
もしも均等に分配されれば、細胞一つあたりに、
1000億個の水分子が入る
1日2Lの水分を取るので、1兆個/1日
酸素は、1日に細胞一つあたり、
なんと1.5兆個呼吸するが、実際に使われる
のは、やはり1000億個程度
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Ylab
CREST


シックハウス対策もマイナスイオン
80ppb(規制値)=2兆個/ccのホルムアル
デヒド
マイナスイオン・クラスターイオンで処理可能?





数が足らない
2万個/ccだとし、1個対1個で分解と仮定
部屋の10億倍の体積を放出する必要あり
部屋を50立米とすると、500億立米
1分間に500リットルを放出したとして 20年かかる
80ppb=1ng/cc=1μg/立米
≒100μg/大きな部屋
 もしも、部屋全体で1gのホルムアルデヒドが使用
されていたとしたら、1万回分処理することに!

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Ylab
CREST
トルマリンと催眠販売詐欺
=非常に高額な布団など



トルマリン 「マイナスイオンと遠赤外線」
全く実体が無い場合と
微量放射線を含む場合がある?
いずれにしても、量は極めて少ない。
遠赤外線は、「トルマリンだから」、ではない。
しかも効果は無いと判定できる
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Ylab
CREST





トルマリンは圧電性がある
圧電性・焦電性 例:水晶発振子
歪 ←→ 電気 の変換
携帯電話のマイク、スピーカ
電子着火装置
実用材料
Pb(Zr,Ti)O3
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Ylab
CREST
トルマリンの圧電性と外力





焦電体に歪を与えると電圧が出る。
しかし、石は硬い。歪まない。
マイナスイオン発生には数1000V必要。
電圧は、単結晶なら大きいが、粉では×。
しかも、方位がばらばらの粉では打ち消す。
+++
+++
---
---
+++ ---
---
+++
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Ylab
CREST
“トルマリン”は、結局詐欺である。




トルマリンでマイナスイオン
もしも、何か効果があるとしたら、トルマリ
ンが放射線を出している場合のみ
トルマリンで遠赤外線効果
これも詐欺用語!
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Ylab
CREST
効果のあるマイナスイオン(?)

いずれも、静電気制御



物質分解、細菌不活性化



マイナスイオンドライヤー(オゾン)
掃除機(摩擦)
冷蔵庫(エチレンの分解)
エアコン(ただし、一般家庭には不要というより
も悪影響が心配)
水破砕型加湿器(加湿効果)
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Ylab
CREST
マイナスイオンか?静電気か?
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Ylab
CREST
良く分からない説明図
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Ylab
CREST
最近の加湿器




加熱型/ハイブリッド型
超音波型の欠点は克服している
欠点は消費電力 大きいと400W
加湿の必要性




インフルエンザ防止!
花粉症の低減:埃の減少
水破砕型の加湿器
松下の昨年モデル

騒音が大きいが、低消費電力
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Ylab
CREST
2002年モデル さて、今年のモデルは?
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Ylab
CREST

社会現象としてのマイナスイオン
問題発生の社会的原因








(1)市民社会と自然科学との乖離
(2)健康な市民に普通に見られる超健康指向
(3)市場を支配している量販店の存在
(4)「マーケットからの要求には応えよ」という消費原
理主義。 これは抗し難い神話である
(5)一流電機メーカーの技術者倫理の堕落
(6)経営者の信じがたい倫理低下と無知
(7)メディアの商業主義
(8)研究者(学者)の倫理
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Ylab
CREST
日本社会の自然科学のレベル





OECD14ヶ国の科学技術に対する理解度
結果:14ヶ国中の12~13位
下には、ポルトガルのみ。
大学の文系で、理科教育が全く無いに等し
いのが原因ではないか?
新聞記者のレベルが問題?
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Ylab
CREST
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

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




OECDの科学常識テスト
(1)大陸は何万年もかけて移動している。
正答率:83%
(2)現在の人類は原始的な動物種から進化した。 正答率:78%
(3)地球の中心部は非常に高温である。
正答率:77%
(4)我々が呼吸に使う酸素は植物から作られた。 正答率:67%
(5)すべての放射能は人工的に作られたものだ。 正答率:56%
(6)ごく初期の人類は恐竜と同時代に生きていた。 正答率:40%
(7)電子の大きさは原子の大きさよりも小さい。
正答率:30%
(8)レーザーは音波を集中することで得られる。
正答率:28%
(9)男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子だ。正答率:25%
(10)抗生物質はバクテリア同様ウィルスも殺す。 正答率:23%
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Ylab
CREST
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rla
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科学・技術に関心ありの割合
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Ca
Ylab
CREST
100
0
環境問題
新規医用
新規技術
新規科学
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Ylab
CREST
複雑な科学技術的問題の発生






遺伝子科学、遺伝子工学、遺伝子治療
脳科学の発達
環境問題
地球環境問題
化学物質管理
情報化による差別の発生
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Ylab
CREST
量販店の影響?




現時点で、商品企画を支配しているのは、
恐らく営業関係者なのではないだろうか。
量販店を回って、「某社のマイナスイオンエ
アコンが売れているよ。お宅も作らないか。
売ってやるよ」
技術者は逆らうことができない
会社人としての技術者でも、多少の気概と
倫理感が残っていると仮定してみたい気が
する。
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Ylab
CREST
効用をうたうなら解明すべし!


なぜ、そんな少ないモル数で有効なのか
臭覚に対する作用ではないのか



フェロモンの効果
アロマテラピーは効果的であることが分
かっているが、その一種か?
誰が解明する責任者か=製造する企業
である。これを満足しないと非難される。
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Ylab
CREST
似非科学者の跋扈

「学会」という名前の効果





マイナスイオン?学会
サ??エネルギー学会
「東京大学医学博士」の質
教授も偉いとは限らないが、教務員は?
環境科学でも、
「ダイオキシンメディア御用学者」
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Ylab
CREST
メディアの報道特性





そもそもメディアが正しい報道をするため
に存在すると考えている
メディアも商売であり、競争をする主体
新聞でも朝刊と夕刊では商売が違う
テレビはエンターテイメントである
テレビにとって、ニュース番組以外は、真
実は不要
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Ylab
CREST
マイナスイオンとの戦い

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





2000年12月9日 あるある大事典
2001年8月 「マイナスイオンはインチキ
か」なる記事を掲載
2002年1月27日 再度あるある大事典
2002年2月24日 トルマリンは効果なし
その後、全新聞に取り上げられる
8月23日、朝日新聞Be(土曜版)
それ以後、マイナスイオン推奨記事は激減
しかし、テレビしか見ない人へは、浸透!
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Ylab
CREST
まとめ




21世紀は、科学がますます高度になって、一般
市民にとってその内容を詳細に理解することは、
完全に不可能な時代になる。
今のまま放置すると、科学を使い、技術を売るこ
とを商売とする人間・企業には、「一般市民に正
しいことを伝えていること」、「市民を裏切らないこ
と」を宣誓するように求められるだろう。
すなわち、FairnessとJusticeを保証できる人間・
企業だけが、科学・技術を使うことが許容される
社会になる。
逆に言えば、科学・技術に対する不信が高まり、
そのぐらいの制限を課すことによって、はじめて
科学・技術を使うことが許される。
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