中野区民環境学習講座その3 持続可能な社会 定義と究極の問題 国際連合大学・東京大学 安井 至 http://www.yasuienv.net 1 Ylab CREST Millennium Development Goals ミレニアムサミット(2000年9月)におい て、世界的な合意を得た達成目標。 貧困の撲滅、生活の改善。 2015年を達成時点として、1990年比で 各種目標数値が設定されている。 2 Ylab CREST 8種のゴール in MDG 1.貧困と飢餓の克服 2.初等教育の世界的実現 3.性の平等、女性の活力増大 4.幼児乳児死亡率の改善 5.妊婦の健康 6.HIV/エイズ、マラリアの克服 7.環境面での持続可能性の確保 8.開発のためのパートナーシップ 3 Ylab CREST 18 の目標と 48 の指標 Goal 7: 環境面での持続可能性の確保 目標 9: 持続可能性の原理を国の政策に 盛り込み、環境資源の損失を止める。 25. 森林被覆率 26. 生物多様性を維持するための保護地域 27. エネルギー使用効率(対GDP) 28. 一人当たりのCO2発生量 [Plus two figures of global atmospheric pollution: ozone depletion and the accumulation of global warming gases] 4 Ylab CREST 目標 10: 2015年までに、安全な水道を 使えない人の数を半分に 目標 11: スラムの住民1億人の居住環境 の改善。2020年まで。 29. 改善された水資源の持続的利用可能率 30. 改善された衛生施設を使用可能の割合 31. 安定な職に就いている人の割合 [Urban/rural disaggregation of several of the above indicators may be relevant for monitoring improvement in the lives of slum dwellers] 5 Ylab CREST GDP vs. Life Expectancy 6 Ylab CREST GDP vs. Life Expectancy 7 Ylab CREST 8 Ylab CREST 寿命・健康 教育 そして 経済 UNDP 国連開発計画の「発展」 本当の発展は、「人間開発」。 経済的な発展は、そのための必要条件で しかない。 真の「人間発展」は、自己開発のための自 由度の獲得である。 9 Ylab CREST ヨハネスブルグWSSD2002 持続可能な開発の課題 (1)貧困の克服 (2)非持続可能型の生産と消費パターンから の離脱 (3)経済発展と社会発展の基盤である自然資 源の管理 (4)グローバリゼーション化と持続可能な開発 (5)健康と持続可能な開発 10 Ylab CREST (9)持続可能先進国型問題 ヨハネスブルグサミットWSSDでの指摘 持続可能でない生産・消費形態の変更 先進国が主導し、すべての国が持続可能な生 産・消費形態を促進しなければならない。 そのための10 年事業計画の策定を促進す る。 途上国の持続可能な生産・消費を阻み、環境 に有害で貿易をゆがめる補助金の改革を促 進する。 環境コストの内部化や経済的手法を促進す 11 る。 Ylab CREST 続き 環境管理システム等を通じた企業の社会的・環境 パフォーマンスの向上促進。公共調達のグリーン 化促進。 環境上健全で社会的に受け入れられやすい自動 車技術の開発。 予防的アプローチに留意しつつ2020 年までに化 学物質の使用・製造による健康や環境への重大な 悪影響を最小限に抑える。 再生可能なエネルギーを各国の自主性を確保しつ つ、全世界に占める割合を十分に増大させる。 12 Ylab CREST 持続可能型社会 1984~87年のブルントラント委員会の最 終報告書で、「持続可能な開発 (Sustainable Development)」という言葉 が使用された。 「われわれが必要なものを考えると同時 に、将来世代が必要なものを考えて行動 する=未来世代に地球を残す!」 1992年の地球サミットでは、標語になり、 アジェンダ21のなどの規範となった。 13 Ylab CREST 日本の「循環型社会」 循環型社会基本法 2000年6月 「現在の経済システムの根幹をなす、大量生 産・大量消費・大量廃棄型の経済システムか らの転換が迫られている」。 「環境制約や資源制約への対応を産業活動 や経済活動のあらゆる面にビルトインした、い わば環境と経済が統合された新たな「循環型 経済システム」を構築することが急務である」 循環型社会基本計画 2003年3月 3種類の指標を提示 14 Ylab CREST 「1Rから3Rへ」 Recycleだけの社会から、 Reduce>Reuse>Recycle社会へ。 廃棄物の? Reduce:省資源、長寿命化、リペア Reuse:製品リユース、部品リユース Recycle:マテリアルリサイクル、サーマル リサイクル(=高度エネルギー回収) 15 Ylab CREST 目標 16 Ylab CREST 目標 17 Ylab CREST 目標 18 Ylab CREST 今後の「環境」の方向性 6つの条件+1責任に集約できるだろう 1.資源生産性=GDP/資源採取量 循環型 社会 2.(1)循環利用率の向上 基本計画 (2)最終処分量の大幅削減 京都議定書 (3)二酸化炭素排出量の削減 (4)有害物質削減への適切な対応 健康問題 (5)生態系の保全 自然共生 3.「排出者責任」「拡大製造者責任」 社会的責任 19 Ylab CREST 1970年頃の日本の問題意識:環境汚染 汚染はゼロにした。 By大量の物資と エネルギー投入 Economic Aspects Environmental ヒトの健康影響 Aspects 地域生態系 生態系への影響 資源/エネ ルギー限界 2種の 地球 限界 生態系限界 20 Ylab CREST オゾン層破壊問題の意識 特定フロン類の使用禁止 しかし、他のフロン使用。 最近、自然冷媒・洗浄。 Economic Aspects Environmental Aspects ヒトの健康影響 資源/エネ ルギー限界 2種の 地球 限界 地球生態系 生態系への影響 生態系限界 21 Ylab CREST 地球温暖化問題の意識 Economic Social Aspects Aspects 二酸化炭素排出規制:京都議定書 資源/エネ ルギー限界 資源/ エネルギー消費 Fairness & Justice 貧困の撲滅 生態系への影響 途上国 2種の 地球 限界 Environmental Aspects ヒトの健康影響 公平性 生態系限界 先進国 22 Ylab CREST 過 去 の 温 度 変 化 23 Ylab CREST モデル計算との一致 計算の難しさ 24 Ylab CREST Scenario by IPCC. B1 is the Target? Emission B1 25 Ylab CREST 温 度 上 昇 予 測 26 Ylab CREST 海 面 上 昇 予 測 27 Ylab CREST 二酸化炭素国別排出量 28 Ylab CREST Total CO2 Emission(Global) Now JAPAN 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 29 Ylab CREST 輸送機関別にみた二酸化炭素 30 Ylab CREST 日本の京都議定書対応 31 Ylab CREST 1990以降の排出のトレンド 32 Ylab CREST ロシアの調印の背景 33 Ylab CREST 削減義務量 34 Ylab CREST 環境省案 増 加 量 産業経済省案 森林吸収 3.1% 環境税4% 14.1% 自主的取組4% 増 加 量 省エネ法強化5% 11.0% その他 2% 京都議定書の目標値 90年比 -6% 代替フロン2% 京都メカニズム1.6% 35 Ylab CREST 京都メカニズムとは 排出権取引 ロシアなどから排出権を買う 金額は全く不明ながら、 ¥1000~¥2000/トンか クリーン開発メカニズム CDM 途上国の二酸化炭素排出を支援し、排出権 を得る方法。ODAなどとの関連 共同実施 JI(Joint Implementation) ロシアなどの先進国(Annex1諸国)との協調 作業で減少させる。 36 Ylab CREST 各セクター別の増加量 2003年排出量速報値 13億3600万トン 前年比+0.4% 1990年比で+8.0% 産業部門 業務部門 家庭部門 運輸部門 +1.7%(1990年比 +0.1%(1990年比 +0.1%(1990年比 -0.8%(1990年比 -0.02%) +36.8%) +28.9%) +19.5%) 2004年の排出は、非常に多いだろう。 37 Ylab CREST 各セクターからのCO2排出量 38 Ylab CREST それぞれの増加要因 業務部門 家庭部門 エアコンの増加、パソコンの増加、残業の増加 エアコンの増加、オール電化、大型テレビ、夜 型の生活習慣、お湯使用量の増加、 自家用車の台数増加:+60%(1990比) 減少要因:冷蔵庫、エアコンの効率増大 運輸部門 物流量の増大(通販の増加) 39 Ylab CREST ヨーロッパの対応 英国式: 自主的目標と達成義務 排出権取引価格は、 ¥600~1000/t-CO2ぐらい 2002年に目標を383万トン上回る削減 EU全体方式に移行 EU全体式: 対象施設排出上限を合意 キャップ(CAP)制と呼ばれる 違反すれば、¥14000/t-CO2 達成すれば、税制的な優遇 現在の先物の排出権取引価格は、¥1200/t-CO2 程度で推移中 40 Ylab CREST EUから各国への割り当て量 各国から国内排出量割当計画の提出を求め、そ れに対して、欧州委員会が審査を行う。 審査済み:14カ国(オーストリア、デンマーク、ド イツ、アイルランド、オランダ、スウェーデン、英国、 スロベニア、ルクセンブルグ、ポルトガル、ベル ギー、スロベキア、エストニア、ラトビア) 提出済み:6カ国(フィンランド、スペイン、イタリア、 フランス、ポーランド、リトアニア) 計画公表:2カ国(チェコ、ハンガリー) 計画未公表:3カ国(ギリシャ、マルタ、キプロス) 41 Ylab CREST 意見広告 11月12日2004年 42 Ylab CREST 石油生産の予測とOPECシェア 43 Ylab CREST 石油発見量、産出量 44 Ylab CREST エネルギー使用量の長期推移 45 Ylab CREST 石油の可採量(GTOE) 年間使用量 8.5GTOE 石油 在来型 非在来型 確認可採埋蔵量 150 193 潜在可採埋蔵量 145 332 追加不確実資源量 1900 46 Ylab CREST 天然ガス可採埋蔵量(GTOE) 天然ガス 在来型 非在来型 確認可採埋蔵量 141 192 潜在可採埋蔵量 279 258 追加不確実資源量 400 47 Ylab CREST 石炭・メタンハイドレート (GTOE) 石炭 在来型 確認可採埋蔵量 606 潜在可採埋蔵量 2794 追加不確実資源量 3000 メタンハイ ドレート 18700 48 Ylab CREST ウランの可採埋蔵量(GTOE) ウラニウム 軽水炉 高速増殖炉 確認可採埋蔵 量 57 3390 潜在可採埋蔵 量 203 12150 追加不確実資 源量 150 8900 49 Ylab CREST ドイツが原発を止めた理由 EUができたから EU全体でのエネルギーミックス ノルウェーの水力 フランスの原子力 100万ボルト送電網 50 Ylab CREST バイオマスエネルギーの見通し 1990年 0.82GTOE 2050年 残渣系 残渣系 エネルギー作物 4.1GTOE 2.6GTOE 2100年 残渣系 エネルギー作物 6.3GTOE 0.5GTOE 51 Ylab CREST 水素:風力と太陽光発電 太陽光発電の効率 10%程度 バイオマス発電の面積効率の80倍 日本だとバイオマスエネルギーは期待がで きない。5%未満。 間欠性のエネルギーを蓄積する手段として 水素はあり得る 間欠性(風力・太陽光)は電力系統の10% 消費地に電線で送り水素化+定置型の燃 料電池 52 Ylab CREST 3種類のシナリオ? 自然エネルギー依存型シナリオ 超省エネルギー型シナリオ 風力:日本は風が弱い 太陽光:高価だが、日本の選択? 太陽熱:今後、再度の見直し バイオマス:日本は無理みたい 地下熱の利用、ヒートポンプ、ハイブリッド車 技術的には様々な可能性がある しかし、化石燃料はいずれ枯渇 原子力依存型シナリオ 53 Ylab CREST 原子力依存型シナリオ 軽水炉:比較的短期で資源枯渇 問題:使用済み核燃料をどうするか 現在、ワンスルー論が勢力 個人的には、再処理以外には無いと思う その後は高速増殖炉で当分の間 最後は、核融合 もしも、これが可能かつ問題が発生しないの なら、人類の未来は明るい。熱暴走するまで 持続が可能になる。しかし、なんらかの問題が でることは確実。 54 Ylab CREST 原子力シナリオのリスク 最終処分? NO! 最大のリスクは意図的な破壊ではないか 処理場の規模は、3km×3km×3km 現在510基程度 これが2000基になれば。。。 特に破壊的な国が、、、 プルトニウムは? 兵器級と原子炉級の違い 55 Ylab CREST 再生可能エネルギーシナリオ 再生可能エネルギーは、他のエネルギーが使え ることが必須。すなわち、電力系統が無いところ では、風力・太陽電池などの再生エネルギーは 使えない。 電力貯蔵が技術的にも、経済的にも困難だか ら。 例外は、地熱、バイオマス。 世界的には、バイオマス依存の社会になる。しか し、日本は量的にも、また、経済的にも難しい。 日本:地熱の暖房・給湯用途はもっと可能性あり 全力を上げての、様々な可能性の検討が必要 長期的には、宇宙発電まで 56 Ylab CREST 太陽光 太陽熱 大 風力 電力系統のある地域の技術 ミニ水力 間 欠 性 バイオマス 海洋温度差 小 地熱 小 規模 大規模水力 大 57 Ylab CREST 大 ミニ水力 バイオマス 途 上 国 適 性 海洋温度差 地熱 大規模水力 小 電力系統のない途上国での適性は無い 太陽光 太陽熱 小 風力 規模 大 58 ほぼ横一線 Ylab CREST 大 ミニ水力 バイオマス 途 上 国 適 性 海洋温度差 地熱 総合点 電力系統のない途上国 での適性は無い 大規模水力 小 が電 必力 要貯 蔵 間欠性 風力 太陽熱 太陽光 59 Ylab CREST 結論 持続可能とは、未来世代のために地球を 残すこと。 様々な問題があるが、最終的には、エネル ギー/資源の供給問題に帰結する。 日本のエネルギー使用は、今後、50年間 で半分程度にはする必要があるだろう。 60
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