定量分析 その2 pHメーター その2 10mMの酢酸が完全に電離している時のpHは? ここでのポイントは酢酸が弱酸であること! 酢酸は弱酸なので、完全に電離した状態を下記のように表す。 酢酸の濃度をCとして、その時の電離度をαとすると平衡時の各々の濃度は、 CH3COOH (平衡時) α C-Cα H+ + CH3COOCα Cα 〔CH3COOH 〕=(1-α)C 、〔 H+ 〕=〔 CH3COO- 〕=Cα 水溶液中では上記の平衡状態が成り立っている。 この平衡に対して、次に示す平衡定数が存在する。 質量作用の法則より 〔H+〕〔CH3COO-〕 〔CH3COOH〕 =Ka (酸解離定数) 酢酸分子を CH3COO H と表すと 電離して いる分子 10mM 0.01M 10mM酢酸では 電離している分 子は約4% 平衡状態 10mMの4%=0.4mM 0.01Mー0.0004M=0.0096M Ka= 〔H+〕〔CH3COO-] 〔CH3COOH〕 (Cα)2 = (1-α)C 酢酸は弱酸なので完全に電離していても電離度はきわめて小さい(α<<1) ので1-α≒1とおくと (Cα)2 Ka= = Cα2 C よって10mMの酢酸のpHは以下のように表される 〔 H+ 〕=Cα= pH=-log 〔H+〕 Ka C = 1/2 Ka1/2・C1/2 1/2 =ーlog 〔Ka ・C 1 1 〕= 2 pKa ー 2 log C ただし、pKa=-log KaとするとpKa=-log Ka=-log(1.75×10-5)=4.757 1 1 (4.757) pH= 2 ー 2 log(10-2)=2.3785+1=3.3785 よって、 10mMの酢酸が完全に電離している時のpHは3.3785 pHという概念 pH=-log 〔H+〕 ・・ Sorensen(デンマーク)がまとめた考え。 1 = log 〔H+〕 〔H+〕=1×10-7 mol/l pH 7・・・中性 〔H+〕=1×10-7 mol/l = 0.0000001 mol/l 0 僅かな量 14 pH7 酸性 中性 さらに考え 塩基性 を進めて・・・ セーレンセンは最初水素イオン濃度〔H+〕の表示法としてpHを定義しましたが, 間もなくこれを修正し,水素イオン濃度の代わりに水素イオン活量aH+を用い ることにしました.それは同じ水素イオン濃度の溶液でも他の電解質や有機 物が存在すると電位差計の目盛り位置が変わるからです.そこで修正式は, pH=-log aH+ となります.希薄で単純な酸,塩基の溶液(理想溶液)では活量と濃度は近い 値ですが,いろいろ他の物質が溶けていると活量のほうが小さい値になりま す.生体液などは電解質やタンパクが多く含まれているので、そのpHは水素 イオン濃度をあまり正確に表していません. 定義 「活量」 または「活動度」(aで表す)(=「活量係数」×「濃度」) 溶液中の溶質の濃度が低い場合は、溶液は「理想溶液」とみなしても良いが、濃度が 高くなると溶質どうしの相互作用が無視できなくなり、物理化学的性質には理想溶液 からのずれが生じてくる。活量係数はそのずれを補正する係数であり、活量は一種の 熱力学的濃度である。通常、活量係数は1に近い値をとる。 理想溶液では、 aH+=[H+] イオン活量 理想溶液:活量=濃度 =イオン 実際の溶液:活量<濃度 活量が濃度より小さくなるのは,測定イオン が他の電解質 などで安定化して,本来の電気化学反応の活力を低下させるか らです 少し乱暴に例えるならイオン活量とは・・・ 300km/hのスピード を出せる能力がある。 理想溶液 300km/hを出せる。 =イオン 実際の溶液 30km/h程度しか出せない。 イオン(車)の能力を発揮できる or できない 活量が濃度より小さくなるのは,測定イオンが他の電解質 などで安定化して,本来の電気化学反応の活力を低下さ せるからです。 実際に測定イオンが、どの程度、他の電解質との関係で安 定化しているかどうか、活量を知ることは、とても大変です。 pHを実用的なものにするためには、基準となるものを決め て、それと比べることで値を決めることにする。 基準は? 標準水素電極(0ボルトの基準) 白金線 1mol/l HCl (1mol/l H+) 白金黒電極 H2 (gas:1atm) 白金電極は上半分 を水で飽和させた (1atmの水蒸気分 圧が必要)、1atm H2ガス (101.325kPa)の水 素ガスを流し、下半 分を1mol/lの塩酸溶 H2O 液につける。水素ガ スが電極として働き、 白金電極に電子が 集められる。 2H+ (aq:1M)+ 2e- pHの測定ごとに0Vと規定した標準水素電極を用いるのは煩雑なので、 扱いやすい「銀・塩化銀電極」が参照電極として用いられる。 銀・塩化銀参照電極 Ag 予め「銀・塩化銀電極」を標準水 素電極と組み合わせて電池とし、 一度その起電力を測定しておけ ば、「銀・塩化銀電極を標準電極 と同じように利用できる。 AgCl 飽和KCl 1/2H2 (gas:1atm)→H+ (aq:1M)+ eAgCl(s)+e-→Ag(s)+Cl- AgCl(s)+1/2H2(gas) H++Cl-+Ag(s) 電池全体としての反応 電池に利用される化学反応から、得られるエネルギーをギブ ス自由エネルギーに換算して起電力からpHは・・・ 電池の系で 電気として取り出せる(ギブス自由エネルギー) 熱 系のエンタルピー変化量=仕事に使える自由エネルギー+仕事に使えない束縛エネルギー ⊿H=⊿G+T・⊿S ⊿G= ⊿H- T・⊿S エンタルピーの定義式から⊿H=⊿U+ ⊿ (V・P)= ⊿U+ V・⊿P +P・⊿V よって⊿G= ⊿U+V・⊿P+P・⊿V - T・⊿S エネルギー保存則からQ=⊿U+P・⊿V ⊿U=Q-P・⊿V したがって⊿G= Q - T・⊿S +V・⊿P エントロピーの定義式からQ=T・⊿S まとめると⊿G= V・⊿P ⊿G= V・⊿P 理想気体を考えると状態方程式 PV=nRTよりV=nRT/Pを代入して圧 力P0からP1までの変化量を求める(モル数n=1とする)と ∫ P1 P0 RT/P・dP=RT ln P1 P0 ⊿Gは状態G0(P0,T)からG1(P1,T)の変化なので P1 G1(P1,T)-G0(P0,T) =RT ln P0 P1 G1(P1,T) = G0(P0,T)+ RT ln P0 特にG0の状態を標準状態(25℃、P0=1atm)とする と標準生成ギブス自由エネルギーをG0として G1(P1,T) = G0+ RT ln P1 標準状態から圧力の変化を伴う過程で、理想気体のギブス自由エネルギーは、圧 力の対数に比例して上昇する。 理想気体を想定したように、理想溶液を仮定すると、「系」の圧力温 度を一定に保つなら体積、内部エネルギー、エンタルピー、ギブス 自由エネルギーなどは溶液を構成する物質のモル数に比例すると 考えられる。モル濃度をCとすると下記のように表される。 G(C,T) = G0+ RT ln C 一般化してaA+bB→cC+dDで表す反応について考えてみると・・・ ギブス自由エネルギー変化量は、標準状態⊿G0からの変化量を考えて ⊿G=⊿G0+RT(ln aCc・aDd-ln aAa・aBb) aCc・aDd aAaは成分Aのイオン活量とする理 ⊿G=⊿G0+RT ln 想溶液なのでモル濃度=イオン活 aAa・aBb 量とする。その他の成分も同様 得られたエネルギーを電気エネルギーに変えるなら 電極反応が仕事として放出するエネルギーはW=nFV=-⊿G ⊿G=-nFVより E=E0-RT/nF ln V=-⊿G/nF aCc・aDd aAa・aBb 標準状態における電位 E0からの変化量として 表す事ができる ここで「水素ー銀・塩化銀電池」について考えてみると aH+1・aCl-1・aAg1 E=E0-RT/F ln aAgCl1・aH2 1 2 熱力学にしたがって固体の純物質の活量は1として扱い、水素ガスを 理想気体とみなして活量を1とすると、 E=E0-RT/F ln aH+・aClここでイオン活量aH+とaCl-が残ってしまい、互いに相手を知らなければ自 分を決めることができず、起電力が分かっても水素イオン濃度を導くこと ができません。このように掴みどころのない活量ですが,何か標準がなく ては困るので,pH標準液というものを作ってこれでpH計の目盛りを合わ せます.これは決められた処方の溶液で,わが国ではJISと薬局方が制 定しています.この内よく使われるのはフタル酸塩標準液(25℃でpH 4.01),リン酸塩標準液(pH 6.86),ホウ酸塩標準液(pH 9.18)で,それぞ れ酸性域,中性域,塩基性域の目盛り合わせに用いられます.pH計を 使う前には必ずこれら標準液で校正しなければなりません. 実用的pH測定 ガラス電極法とは、ガラス電極と比較電極の2本の 電極を用い、この2つの電極の間に生じた電圧(電 位差)を知ることで、ある溶液のpHを測定する方法 です。ガラスの薄膜の内・外側にpHの異なる溶液 があると、薄膜部分に、pHの差に比例した起電力 が生じます。この薄膜を電極膜といいます。電極膜 に生じた起電力を測定すれば、被検液、つまりpHを 求めたい溶液のpH値がわかります。 同温度の2種類の水溶液:被検液X及びpH標準 液SのそれぞれのpHを、pH(X)及びpH(S)で表わす と、それらのpHの差は、下の式で定義されます。 Ex-Es pH(X)-pH(S)= 2.303RT/F
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