環境評価論 - 厳網林研究会 Wanglin Yan Seminar

環境評価論

自然をみつめなおして
担当
ゲン
モウリン
厳
網林
環境評価とは

環境評価とは


評価の視点(目的):




何らかの尺度を用いて環境価値の順位付けや
値付けをおこなうこと
開発事業論:事業評価(環境影響評価制度)
計画政策論:(戦略的環境アセスメント)
環境経済社会の構築(エコシステムサービス)
評価の主体


国や地方の政府、事業者、学識者、住民、・・・
(社会一般)
環境(=生態系)価値
自然資源価値
(鉱物資源,木材資源)
直接利用価値
(資源の採集,能動
的に使うこと)
間接利用価値
(森林浴,海水浴)
オプション利用価値
(別の使用に回した場合)
生態系価値
受動的利用価値
(直接意識しないが,
問われるときにその価
値を認めるもの)
遺贈価値
(次の世代に残した場合)
存在価値
(水涵養・気候安定など)
なぜ,環境評価をするのか
利用
利用
環境
環境
経済社会システム
環境
循
環
経済社会
システム
利用
循
環
廃棄
経済社会
システム
廃棄
廃棄
最近まで
現在
将来
環境評価の問題

自然科学的な客観的評価か経済社会的な主観評価か.

多次元的な環境を単一なものさしで評価できるか.

有機的な集合体としての環境はパーツに分解してから
合計して評価としていいのか.

順序付けによる評価(指数),物量による評価(面積,エ
ネルギー量など),貨幣評価は互換性あるか.

正しい評価ってありうるのか.
環境評価の方法
選択・ランキング型
分解型(プロフィール
データのみ)
ペアワイズ評定型
完全評点型
混合型(自己申告及び
プロフィールデータ)
合成型(自己申告デー
タのみ)
評価結果のかたち:指数,物量,貨幣
効経
用済
理学
論の
な経
し済
学
の
理
論
背
景
環境影響評価とは
Environmental Impact Assessment

環境アセスメントとは、開発事業の実施が環
境にどのような影響を及ぼすのかについて、
事業者自らがあらかじめ調査、予測、評価を
行い、その結果を公表して住民等、知事、市
町村長などから意見を聴き、それらを踏まえ
て環境の保全について十分な配慮を行ない
事業に反映させるための制度です。
環境影響評価の対象
Environmental Impact Assessment
環境影響評価の手順
(三重県の例)
(埼玉県の例)
戦略的環境影響評価

●戦略的環境アセスメントとは●
(埼玉)県が策定する計画を対象として環境への影響に
ついて、あらかじめ調査・予測・評価を行って、その結果
を公表して広く意見を求めることで環境に配慮したよりよ
い計画をつくるための新しい仕組みです。
戦略的環境アセスメントの対象
環境影響評価と戦略的環境アセスメントの関係
戦略的環境アセスメントの手順
ミレニアムエコシステムアセスメント
人間の求める開発と、自然の許容度を調和させる方策を探るため、生態系のぜい弱性と回復力
を理解するためのツールとなるもの。2001年6月に国連が4年計画での事業実施を発表した。生
物の種類、個体数、森林や海が吸収・放出する二酸化炭素量など地球上の生態系の現状を調査
し、生態系からどのような利益・影響を受けているのかについて、2005年3月をめどに報告書を策
定する。
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


エコシステムのサービスをよく理解する
人間福祉との関係を解明する
人間活動の影響を評価する
将来のシナリオを分析する.
エコシステムアセスメントの対象
エコシステムサービス
Provisioning
(生産)
Regulating
(制御)
Cultural
(文化)
Goods produced or
provided by ecosystems
Benefits obtained from
regulation of ecosystem
processes
Non-material benefits
obtained from
ecosystems
• climate regulation(気候)
• disease regulation(疾病)
• flood regulation(洪水)
• spiritual (精神)
• recreational (余暇)
• aesthetic(美観)
• inspirational(霊感)
• educational (教育)
• communal(共有)
• symbolic(信仰)
• food (食料)
• fresh water(水)
• fuel wood(薪)
• fiber(繊維)
• biochemicals(生物化学)
• genetic resources(遺伝子)
• detoxification (解毒)
Supporting(基盤)
Services necessary for production of other ecosystem services
• Soil formation(土壌形成)
• Nutrient cycling(栄養循環)
• Primary production(一次生産)
エコシステムアセスメントの手順
エコシステムとエコシステ
ムサービスの定義と分類
エコシステムとエコシステム
サービスの実態と動向の評価
開発シナリオの分析
リスポンスの分析
エコシステムサービスの人
間社会との関連性の定義
直接・間接駆動要因の定義
評価指標の選定
人間福祉への影響の評価
不確実性の分析
世界中に行われているエコシステムアセスメントのプロジェクト

環境影響評価・戦略的環境アセスメント・エコシ
ステムアセスメントの違いはなんでしょうか.
この授業のアプローチは
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

戦略的環境アセスメントのための基本的な知識
と経験
ミレニアムエコシステムアセスメントへ展開する
視点
エコロジカルプラニングというエコシステムアセ
スメントの手法(完全評点法)
エコロジカルプラニングの源流



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1970年代にイアン・マクハーグ教授によって提唱さ
れたエコロジカルプラニング。
地域の自然条件をレイヤ・ケーキ・モデルで表現
各レイヤの自然条件(供給)の優劣(制約条件)を判
定
土地利用・開発などの目的(需要条件)の検討
需要・供給をバランスさせる環境マトリックスの作成

「量的バランス」だけではない

マトリックスによる土地適性条件を総合的に判定

この評価の手法は,完全評点法に当たる.
エコロジカルプラニングの意義
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顕在化する開発の代償
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都市再生、自然再生の機運
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エコシステムのしくみ、恵みに対する理解の欠陥
技術への過信、芸術優先思考のこだわり
芸術主義から機能主義へ
機能主義から環境主義への時代転換
洗練されたエコロジカルプラニングの手法


レイヤモデルと評価マトリックス
GISとデジタル地図による効率化の可能性
エコロジカルプラニングの手順
A
生態的資源
目録=調査
地域の自然
条件
D
目的別土地
利用のため
の可能性/
限界マトリッ
クス
AA
地域の設定
STUDY AREA
C1
新しく計画さ
れる土地利
用
D’
土地利用競合
の現状
B
社会生活を影
響する環境因
子
C2
インパクトをも
たらす行為と
しての土地利
用
G
小スケー
ルでの環
境事前影
響調査
E
土地利用の適
性の判断
Mapping Land
Use Suitability
E’ 計画地区内
の適正複合土
地利用
F
小スケー
ルでの環
境事前適
性調査用
敷地スケール
地域スケール(分析)
地域スケール(統合)
(予測)
この講義で、なにを学ぶのか



地域開発と環境保全をバランスさせる考
えの理解
地図情報から複雑な地域の自然システム
を読み取るスキル
エコプラニングを具体的に進めるスキル
基本情報図
地形・地質分類図
傾斜区分図
内容
一次評価図
下末吉台地
山麓の堆積地(崖水地)
武蔵野台地(相模台地)
低段丘
台地斜面
二次評価基準
傾斜による崩壊性
地盤の安定の観点
からの可能性
地形による浸水性
川が見える斜面
谷地
尾根
急傾斜
穏やかな斜面
地下水保全の観点
からの制約性の高い地域
富士山が見える
田
畑
樹木畑
果樹園
荒れ地
広葉樹
針葉樹
竹林
市街地
地質の浸食性
地盤の安定性
地下水涵養性
斜面の崩壊性
総合条件図
浸水性
土地利用の保水性
景観保全の観点
からの制約性の高い地域
生物多様性
水文図
流域区分
河川
池
湧水
河川の生態系保全の
観点からの制約性の高い地域
川の流域
埋蔵遺跡
埋蔵・文化財分布
文化財分布
土地利用動向図
生物多様性保全の観点
からの制約性の高い地域
文化財保全の観点から
制約性の高い地域
動植物分布図・植生図
災害実績図
生活のしやすさ図
安全性の観点から
制約性の高い地域
地質の透水性
土地利用植生図
三次評価図
がけ崩れ
浸水
農業振興地域
市街化区域、調整区域
自然環境保全地域
市街化道路
公的開発地
災害安全性
生活の利便性
開発予定地
利便性
自然環境保全図
授業の進め方
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講義:
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演習の内容
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第2~10回 :60分+演習30分
第10~12回:演習課題の完成
第13回
:ポスター発表
キャンパス周辺地域を対象として
地域環境の特性を評価する
土地利用の方針を考える
成績の付け方
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課題を作るプロセス(出席,作業記録等)
最終課題
この授業の学び方
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授業に欠かさずに出席すること。
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課題を確実に消化する
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人数確定次第、人数分用意する
課題用地図資料代
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
できるだけ課題を減らしますが,
最低限のことを確実にやってもらわないと困る
教材(演習要領)
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
各回の授業は前後に関連性あるため
3回以上欠席したひとは,単位を与えない
A4サイズのトレーシングペーパ10枚程度各自用意
カラーコピー代(必要に応じて徴収.多分100~200円程度)
授業のHP:
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http://ecogis.sfc.keio.ac.jp/
フィールドワークがあること
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5月21日(土) 10:00~14:00
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小出川上流域を歩く
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(授業1回分と振り替え.)
授業で配った資料を手にしながら、みんな一緒
に対象地域を歩きます。
目的:地形、地質、植生、土地利用、水等を身近
に観察し、自然の仕組みを理解してもらいます。
欠席は認めません.
環境評価を実践するために
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フィールド体験
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キャンパス周辺を歩く.
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砂漠緑化フィールド研究
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中国内蒙古自治区ホルチン砂地
8月下旬~9月上旬に実施(5月連休明けに募集開始)
チンハイ・チベット高原の環境と社会調査
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5月14日(土)に実施.全員参加
7月末~8月中旬に実施(厳研履修生限定)
都市・地域環境の調査・評価・計画
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厳研関連プロジェクト(火5・木4.見学・参加歓迎)
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都市ヒートアイランドと環境都市の評価(アジアの大都市対象)
砂漠植林効果の評価と京都議定書CDMの適用(乾燥半乾燥地域)
里山環境の評価と景観保全(キャンパス周辺,都市近郊地域)
高原生態環境の評価と社会の再編(チンハイ・チベット高原)