2014 全道大会 テクニカルスタディ 高校選手権北海道大会 2014年10月11∼13日,25,26日 会場:中札内交流の杜,帯広の森,札幌厚別公園 【報告者】HFAテクニカルスタディグループ 優勝:北海道大谷室蘭高校 準優勝: 旭川実業高校 3位:札幌大谷高校 東海大第四高校 個と関わり∼自立した選手の育成を目指して∼ 各地区予選や長期リーグを闘って、28チームが全道大会に臨んだ。今回は5日間にわたる戦いの うち準決勝2試合の観戦と決勝の詳細な分析を通して、北海道の個の育成についてまとめた。 1. 大会の概要 道内各地区予選からの20チーム、 プリンスリーグ参加の8チーム、計28 チームが参加した。試合時間は80分 (40分ハーフ)。準決勝からは20分 の延長がある。 今大会で優勝したチームは12月か ら関東で行われる全国大会に出場す る。 2. ゲームの傾向 (1)決勝戦のデータ ボールポゼッションの回数(4本以 上連続してパスが通った回数)につ いて、決勝1試合を通した両チーム の合計は43回(前半27、後半12、 延長4)、回数の多いチームは22回 であった。 シュートの本数は合計30本(公式 記録では27)で、得点は0であっ た。 ミスパスの軌跡を解析すると、ハ ーフウェイラインをまたいだミドル パス(30m前後)を奪われる回数が圧 倒的に多いチームと、幅広い地域を 使い、様々な角度から攻撃している ことが読み取れるチームに分かれて いた。 スローインは、成功22回(前半 11、後半8、延長3)、失敗29回 (前半8、後半13、延長8)であっ た。前半は成功回数の方が失敗より 多かったが、徐々に失敗の回数の方 が増えていった。 REGULATION スケジュール (2)試合展開 お互いのチームコンセプトがはっ きり現れた試合内容であった。 片方のチームは守備ブロック(D F・MFの2ライン)を形成し奪っ [1] 10/11∼13:1∼3回戦 10/25:準決勝 10/26:決勝 試合時間:80分(40−10−40) たボールを素早くFWへつなぐショ ートカウンターに迫力があった。守 備は低めの2ラインでライン間の距 離は短い。FWの個の能力で突破す る場面が多く見られた。 もう一方のチームは背後を取らせ ないポジションからグループでボー ルを奪い、奪ったボールを保持しな がら相手の変化を見て攻撃を仕掛け る意図がみられた。また、中央が固 められているときはサイドからの攻 撃も見られた。 3. 個とその関わりの分析 (1)攻撃の優先順位と崩し ・フィニッシュの精度 FWの速さを生かした鋭いショー トカウンターの攻撃が数多く見られ た。精度の高いパスでボールを保持 し失わずにボールを前へ運び、相手 の守備ブロックの攻略を試みること も見られたが、バイタルでの崩しの アイディアがやや不足しているよう に感じた。さらなるレベルアップと して、今後は攻撃時に多くの選手が 関わった連動性のある攻撃にも期待 したい。 シュートの精度については、お互 いに決定機が数多くあったが、決め きれていない。スピードに乗った時 のシュートの精度、GKやDFに的を 絞らせない多彩な攻撃にはまだまだ 課題が残る。GKのシュートストッ プの技術も高かったが、やはりスキ ルの問題が大きい。北海道の課題と して指導者間で共有したい部分であ る。 WE ARE A TEAM (2)ビルドアップ GKからのビルドアップの場面は 非常に少なかった。ロングフィード からチャンスを作る場面もあった が、ロングボールを使うことによっ てボールを失う場面が多く見られ た。また、DFからの組み立てがあ れば攻撃の幅が広がった場面が多く あり、幅広く攻撃を組み立てるため にはボランチの関わりに工夫が必要 であった。 たとえば、センターバックがボー ル保持しているときに、ボランチが 半身の体の向きで受けようとした り、タイミングよくアクションを起 こすだけでギャップを利用できる場 面は多くあったであろう。 数は少なかったが、 ビルドアップ からフィニッシュへ持ち込んだり、 DFのオーバーラップなどにより空 いたスペースを効果的に使ったりす る場面もあったので、状況によって 攻撃の戦術を使い分けられるよう期 待したい。 (3)守備・守➡︎攻の切り替え ディフェンディングサードでの2 ラインの守備ブロックを形成し奪う チャンスがあれば集中集結して奪う 「プレーに対するねらいやイメージの向上」 北海道大谷室蘭高校監督 及川 真行 KEEP RUNNING! (試合前)攻撃のコンセプトは相手の背後をまずねらうこと、相手が下 がればしっかり組み立てて崩していきたい。相手の守備の特徴をとらえ てチームとしてのコンセプトを共有しプレーを選択していきたい。個の 育成についてはベースとなる「止める•蹴る」はもちろん、動きながら 周りを見て質の高い判断を求めるようにしている。ただ、ゲームとなる と慌てたり、周りが見えなかったりなど課題がある。また、全国と比較 してスピード(判断・切り替え)、両ゴール前での質、選手個々の「プ レーに対するねらい・イメージ」はまだ不足していると感じている。 (試合後)ねらい通りのプレーができた面が多 かったが、最後のところで慌ててしまった。守 備はまずしっかりポジションをとることを意識 した結果、奪うべきときを逃さずボールを奪う ことができた。今後の課題はハイプレッシャー 下でのプレーの質、決定力の向上であり、その ために攻撃にかける人数も増やしていきたい。 [2] REGULATION ようなプレーと、速攻を消し、深め のディフェンスラインを保ち、中盤 選手の戻りを待ちながらボールを奪 うタイミングを探るという方法が多 く見られた。 ペナルティーエリア内及びエリア 付近での守備は両チームとも集中力 を持続し粘り強いプレーが見られ た。 しかし、相手の状況に応じた細か なポジション修正についてはまだ課 題がある。例えば、相手のプレーを 遅らせるためにただ下がるだけにな ってしまったり、奪うのが難しい状 況でも不用意にDFラインを高く保 ったままなときもあった。今後に向 けて、前線と連動した組織的かつ積 極的な守備を心がけ、攻守の一体化 が見られることを期待したい。 4. GK (1)守備のプレー 1)シュートストップ ゴールを守ることは大きな成果が 見られた。状況に応じた良いポジシ ョニングを意識しシュートに対して タイミングよく構え、PK戦も含め 甘いコースのシュートに対しては余 裕を持って落ち着いて対応できてい た。守備から素早く攻撃につなげる ため一度でボールを掴むことの徹底 も必要である。 2)ブレイクアウェイ ボールの位置やボール保持者の状 況に応じて、ポジショニングを修正 する動きが見られ、ディフェンスラ インの背後を広く守ろうという意識 は高まっている。ディフェンスライ ン背後へのロングボールやスルーパ スに対して、判断を誤るシーンがあ ったが、素早く次のプレーに備え、 シューターにプレッシャー(アプロ ーチ)をかけてシュートコースを消 していた。ロングボールやスルーパ スに対する判断についてはボールの 軌道をしっかりと見極めてから動き 出す必要がある。指導者は日々のト レーニングから選手に試合状況のイ メージを提示し、選手は常に試合の イメージを持ちプレーし、味方とコ ミュニケーションを取りながら正し いポジションを取り続け、しっかり とボールの軌道を見極めてからプレ ーすることを習慣づけることが必要 である。 3)クロス クロスが蹴られる位置やボール保 持者の状況に応じて、スタートポジ ションや身体の向きを細かく修正す る姿が見られた。一方、ボールウォ ッチャーになりゴール前の状況を把 握できていないため、コーチングに より守備を整えられない、クロスボ ールに対して積極的にプレーできな いという課題も見られた。パンチン 「全国で勝つことを目標に」 旭川実業高校監督 富居 徹雄 (試合前)全国大会で上位進出のためのチーム作りを始めている。 数年前のプレミア参入の経験から、守備の精度はもちろんだが、得点 を奪う攻撃の工夫が必要であると感じている。特に攻撃ではカウンタ ーだけに頼らないボールをつなぎ相手を崩すことの重要性を感じてい る。目指しているサッカーで勝利を収めたい。 (試合後)守備はある程度計算通りであったが、相手の守備ブロッ クを崩しきることが出来なかった。サイドからの攻撃に加えて、中央 を崩すことで打開を図りたかったが、それがで きなかった。パスをもっとテンポよくできれば よかったが、慎重になってしまった。基本的な ことだが、プランを持ったファーストタッチな どのスキルの獲得・習慣化が重要であり、それ ができていれば、このことも改善できたのでは ないか。また、お互いに決定力不足は課題であ る。 [3] FOR YOUR DREAM グで安全確実なエリアまでボールをは じく技術も求められる。 (2)攻撃参加 1)パス&サポート 成功率75%(8本中6本成功) ハーフウェーラインより短いパスは 全て成功していた。一方ハーフウェ ーラインを越えるパスは全て失敗し ていた。 2)ディストリビューション 成功率16%(31本中5本成功) GKの配球からボールを失っている ことが分かる。またスローによる配給 は見られなかった。 (3)GKのまとめ GKの関わる範囲は年々広がってい る。ボールが相手コート内にあるとき から、GKはボールの動きに応じてポ ジションを修正していた。このことか ら、ゴール前だけの関わりではなく攻 守にわたって関わり続けることが習慣 化されてきていることが分かる。さら に効果的な関わりを見せるためには、 攻撃時からリスクマネジメントを徹底 し、味方選手と常にコミュニケーショ ンを取り続けることが求められる。 また、GKの攻撃参加に関しては北 海道の大きな課題となりそうだ。攻撃 の起点としての役割を果たすため、ま ずはキック、スローの基本技術の向上 が必要である。そして、GKがボール を持ったとき、チーム全体が素早く切 りかえ、GKから効果的なパスを引き 出しゴールに結びつくようなプレーを 期待したい。ゴールキックについては 素早くボールをセットし味方へ配球す ること、ラインを押し上げてからまた ボールを受けてもらうことなどの工夫 が必要だろう。 5. まとめ 昨年と比較して、両チームともチー ムコンセプトを共有しつつ、状況に応 じた的確なプレーへの実行力が向上し ていると感じた。ノージャッジで前線 へロングボールを送るようなプレーは 減少したととらえている。ボールを失 わずに前に進むことにトライしている プレーが増え、北海道のこの年代の進 歩を感じた。しかしながら、まだ発展 途上の段階であり、北海道代表が全国 で活躍するにはもっと質を追究する必 要がある。勝負にとって肝心なフィニ ッシュにつながるプレーはまだ物足り ない。 2種委員長の言葉にもあるように、 コンサドーレ札幌が抜きん出ている状 況から一歩進んで、北海道全体の底上 げが必要である。 最後に、このTSGレポート作成にあ たりまして協力いただきました大会及 びチーム関係者の方々 に感謝申し上げ、お 礼のことば PLAYERS といた FIRST しま す。 TSGメンバー • 桜庭 慎二郎 • 小林 俊也 • 尾見 秀樹 (チーフ・恵庭南高校) • 舟田 彩一朗 (GK・浦河高校) • 國田 英一郎 (ゲーム分析・遠軽南中学校) • 菅田 浩之 (データ解析・伊達中学校) • 藤代 隆介 ( データ解析・FCフォルテU18) ( データ解析・岩見沢明成中学校) 主催者コメント 北海道サッカー協会 2種委員長:荒 忍 プリンスリーグの上位2チー ムが選手権大会の決勝に駒を進 めていることを考えると、道プ リンスの拮抗したゲーム環境が 選手・チームの成長の場になっ ていると考える。 また、今大会の攻撃の特徴と して、準決勝に残ったチームは 特に攻撃の優先順位を意識し、 相手のバイタルエリアを崩す攻 撃が多く見られた。ポゼッショ ンの質の向上についても、ねら いをもってよくトレーニングし ていることがうかがえる。 決勝に残った選手のスキルは ある程度高いが、全国で勝負す ることを考えるとさらにレベル を上げる必要がある。 北海道としては、コンサドー レ札幌Uー18のみがプレミア に参入している。今後はそれ以 外のチームがもっと力をつけ て、 プレミアで闘うチームが複 数現れることが重要である。現 段階では、コンサドーレとそれ 以外のチームとの差が開いてい るので、北海道プリンスリーグ のレベルアップを目指していき たい。 • 東海大四高校(札幌) • 札幌新陽高校(札幌) • 札幌第一高校(札幌) ( 映像分析・岩見沢光陵中学校) • 帯広北高校(十勝) • 旭川実業高校(旭川) • 山下 真慶 ( 映像分析・蘭越少年団) ベスト16チーム • 札幌西高校(札幌) • 札幌日大高校(千歳) • 北海高校(札幌) • 北海道大谷室蘭高校(室蘭) • 函館大有斗高校(函館) • 紋別高校(網走) • 駒大苫小牧高校(苫小牧) • 札幌光星高校(札幌) • 札幌大谷高校(札幌) • 静内高校(苫小牧) • 北照高校(小 ) [4]
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