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21世紀経済産業政策の課題と展望
-第一回検討資料-
平成11年9月21日
通 商 産 業 省
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目次:
•
(論点1) 21世紀に向けて変化する時代環境をどうみるか。
•
(論点2) 新たな時代にどのような経済社会を目指すべきか。
•
(論点3) 新しい「日本システム」の方向性如何。
•
(論点4) 経済産業政策の基本的方向性は如何にあるべきか。
•
(論点5) 経済社会システムの如何なる好循環を築くべきか。
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(論点1) 21世紀に向けて変化する時代環境をどうみるか。
時代環境の変化が生む諸課題
我が国をとりまく時代
環境の変化
1.経済成長
●人口減少下での成長の意義を如何に考えるか。
●持続的成長を確保するために、TFP等の生産性の向上を如何に達成す
るか。
●経済のフロントランナー化の中で、不透明、不確定な時代に適合する経済
社会システムの方向性とは何か。
○高成長の終焉
・50~60年代(9.6%)、70~80代(4.2%)
→90年代(1.7%)
・バランスが崩れつつある財政
→債務残高GDP比110%(1998年)
・経済のフロントランナー化
○世界に先駆ける高齢化の進展
2.少子高齢化
●創造性・専門性・国際性豊かな人材を如何に育成していくか。
●如何にして少子化傾向を反転させ、女性の一層の社会参画を図っていく
か。
●高齢者の知見・経験を如何に最大限に活用していくか。
・総人口は2004年をピークに1000万人減少、
労働人口は約600万人減少(2025年)
・地域コミュニティの崩壊の恐れ(過疎化、農
業等の担い手不足)
・世界高齢化時代の到来(65歳以上人口の
割合…日本:28%、米:18%、独:22%)
○長期的により厳しくなる環境
制約
・IPCCレポート(2100年)
地球の平均気温 1.0~3.5℃上昇
海面水位 15~95㎝ 上昇
→CO2現状水準確保のためには、
長期的には▲50~70%要削減
・化石エネルギーは価格制約から量
的制約へ
・長期的には石油の供給不安定性顕
在化の恐れ
○地球的規模での市場の一体
化と多極的国際システム時
代の到来
・APEC、大西洋市場等でのより
自由な市場形成 (EU,NAFTA等)
・強力な競争力を有する者の市場
の争奪、棲み分け、絶えざる主役
交代
・米国が圧倒的地位を占める時代
から多極的時代へ
○技術の大幅な革新による経済社会の変容
・情報技術の進展による個人、企業、社会の相互関係、経済社会
システムの変革
・バイオ、エネルギー、環境、素材技術等が相互に刺激・融合しダ
イナミックに進展
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3.環境制約
●資源の大量摂取・物質の大量廃棄排出型の経済社会システムを如何に
変革するか。
●環境、エネルギー供給不安が成長制約要因となりうるアジアに対し、如何
なる対応をとりうるか。
4.市場の一体化
●市場一体化に対応して、如何に我が国企業の競争力強化と我が国経済
社会の魅力向上を図っていくか。
●多極化の中で国際秩序形成に我が国は如何に参画していくか。
5.技術革新
●如何に技術革新を活性化するシステムを構築するか。
●如何に技術革新の成果を活かす経済社会システムを構築するか。
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(論点2) 新たな時代にどのような経済社会を目指すべきか。
目指すべき姿…「躍動する個人と確かな国家」
基本認識
○来るべき四半世紀
・国際環境は、多極化と相互依存の中
で新たな秩序形成を行う時代
・国内環境は、技術革新による活発な
産業・企業活動を通じ、自らの力でフ
ロンティアを切り開く時代
○国民国家は存続し、国家の意義は
失われず
・現代はグローバル化が常態となった時
代。しかし、人の国際移動は依然限定
的。国家間の制度の国際競争は厳然と
して存在。
・国家は個人の生活の場、経済主体によ
る国際競争の側面で、極めて重要な役
割を果たし続けている
○日本らしく対応することが世界への
価値発信
・今後直面する諸課題への対応は、我々が、
拠って立つ歴史、文化、国民性、経済社会
の構造を踏まえつつ模索することが必要。
そのような対応自体が、世界への新たな価
値発信につながる。
・企業に埋もれる勤勉なる社員
の時代(会社中心社会)は変容
し、高まる不確実性、少子高齢
化の進行の下で個々人の能力
の最大限の発揮による活力あふ
れる経済社会を目指す。
○個人の躍動
・自己が確立した個々人が自らの個性や能力を活かして自己実現
を図り、新たな価値創造の積極的担い手となる
○確かな国家
・経済分野における各種障害の除去、ルールの構築、セイフティ
ネッ トの整備、国際秩序形成への主体的参画等を行い、個人及
びその集合体である企業の躍動に必要な環境を整備
新たな時代の目指すべき経済社会の姿
1.国際社会における国家の姿
新たな時代の「国家」には、①安全保障、エネルギーセキュリティ、セイフティネット(社会保障等)等のナ
ショナル・オプティマムを確保し、グローバルに競争し得る経済環境を国民に提供すること、②米欧との関
係の能動的深化、アジア経済圏の生成への対応、国際ルール・国際システム・国際標準の創造等により、
国際秩序形成に主体的に参画し、多極化する世界の中で確固たる地位を目指すこと、が必要ではないか。
2.社会の姿
個々人が自己実現を図りつつ社会全体の活力を維持するため、社会参画、就労機会等の面で多様な
選択肢のある社会の形成を目指すべきではないか。また、そうした社会は、適正な評価に基づく公平な格
差を許容する社会ではなかろうか。
3.経済の姿
個々人の創造性が遺憾なく発揮され、新たなレント創造を行う起業や技術革新が恒常的になされる新陳
代謝の盛んな経済社会システムの構築と、財政面でも持続性(サステイナビリティ)が確保された経済を実
現することではないか。
4.個人の姿
国民の多くが「無責任の風潮が強い」、「自分本位である」と感じる中、自己実現を図ったり、新たな価値
創造の積極的担い手となる個人は、司馬遼太郎氏がいうところの「自分に厳しく、他人に優しい個人」、「自
己の確立した、頼もしい個人」、即ち、他者へのいたわりを理解し、責任感ある自己を確立した個人ではな
いか。
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(論点3) 新しい「日本システム」の方向性如何。
従来のシステム
○自己完結型システム
・各組織がその内部に、人材、技術、情報等諸資源を
個別固定的に保有し、評価、リスク対応を独自に措置
●諸前提の変化
●先の見える時代から
不透明・不確定な時
代へ
●経済のフロントラン
ナー化によるモデル
なき時代へ
●多様な価値の実現へ
○開放・分散型(オープン)システム
○高成長前提・若年依存型
・高成長の継続を前提とした経済シ
ステム(規模拡張指向、「過当競争」
が特徴的な産業組織、積極的社会
インフラ整備等を重視した財政運
営)
・ピラミッド型人口・労働力構成を前
提とした、多数の若年者が少数の
高年者を支えるシステム
(長期雇用・年功序列制度、年金、
医療等の世代間所得移転の社会
保障制度)
○官民二元論的組織原理
・行政(官)と企業(民)が主たる
社会機能集団
新しい「日本システム」
・様々な機会、情報、評価等がオープンで、種々の費用、
リスクを社会全体で分担・最小化すべきではないか。
→ 予見できない様々な変化に迅速・柔軟に創造性
をもって対応、個人の能力を最大限発揮
1.成長持続・高年者参画型
○大量摂取・大量廃棄排出型
・エネルギー等の諸資源を大量に
消費し、CO2、使用済み消費財、
産業廃棄物等の物質を大量に廃
棄・排出
→環境コストは供給される財・
サービスから大部分外部化
●フロンティアの絶え間ない開拓による成長のサスティナビリティの確保。そのための
各種改革の実施(次世代発展基盤への重点的投資 等)
●年功序列は能力評価へ移行、長期雇用は基幹的社員を中心に継続されつつ、各種
制度を転職に対し中立化
●起業、直接金融、資本市場、情報公開の重視
●社会で大きな比重を占める高年者の知識と経験を最大に活用するための多様な就
業・社会参画機会の創出
2.少廃棄排出型=循環型
●生産・流通・消費の各段階において、環境コストを内部化する新たな物質の循環メカ
ニズムの構築により、生活環境の保全と経済性を両立(経済と環境の統合)。
(リサイクル(再資源化)の強化とリデュース(省資化)・リユース(再利用)の促進)
3.NPOを加えた三元論的組織原理
●多様な社会参画・自己実現機会の提供、官だけでは効率的に対応できない公共サー
ビスの拡大から、地域コミュニティやボランタリー組織等のNPOの役割が増大。
(GDPに占めるNPO(90年)米6.3%、独3.6%、日本3.2%)
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(論点4) 経済産業政策の基本的方向性は如何にあるべきか。
経済産業政策の目的 ・・・次世代に継承できる持続的発展基盤の構築
○経済産業政策の役割
・・・国富の拡大を念頭においた政策展開
・「新たなレント(創造的稀少価値)」の拡大
目指すべき姿…「競争力ある多参画社会」の形成
○競争力ある経済社会システムの上に、個々人が自らの希望と能力を活かせる多様な就業・社会参
画機会を創出
→個々人が未来を切り拓き、躍動するための多様な選択肢のある、また、高齢者にとっても社会参画
や趣味的生活等を通じて自己実現機会の多い生き甲斐のある社会
→こうした社会は、少子高齢化社会の到来の中で高齢者を含め就業率の高い我が国の特質にもあっ
た日本らしい社会
→過度にセイフティネットに依存しなくて済むという意味で国民負担のより少ない効率的な社会
→また、少数の勝者と多数の敗者の社会ではなく、公平な格差を許容しつつ皆が勝者となりうる社会
二つの基本座標軸
→起業支援、技術開発、知的財産権保護、標準、人材育成 等
・コストの低減
→規制改革、産業構造調整円滑化、貿易自由化、産業インフラ
整備 等
・リスクの最少化
→エネルギー・セキュリティ、貿易保険、国際経済ルール、
安全・環境 規制 等
※国民への明確な選択肢の提示、透明性の確保、事前・事後
の政策評価
●個人が輝く多参画社
会の構築
●経済社会システムの
競争力の強化
・経済社会のダイナミズムの
維持・発展を図る観点から
、我が国の様々な経済社会
システムを、新たな時代環
境に適合し、国際ルールと
も整合性がとれ、かつ諸外
国をリードするより競争力
のあるものとする
・多様な参画機会の中で、創
造性・国際性ある日本人が
多数輩出され、その能力が
最大限発揮され適正に評
価される社会、即ち、個人
が輝く多参画社会を構築
⇒高齢者・女性の就業・社
会参画機会の創出、NP
O支援、人材育成等
経済産業政策の方向性
・政策客体:業種単位から、企業・NPO・個人へ [事業・就業形態
の多様化、業種区分の流動化]
・政策視野:国境を意識しつつも地球大へ、経済主体が安心 して活
動できる経済運営へ [国内・国際問題の連動、マクロとミクロ政策の
連携]
・政策手法:国民の前での開かれた政策協創へ [広範な検討を求
められる課題の増加、市場・国民による評価の中で、透明な政策
論争とその実施]
⇒経済構造改革等の加速
(過度の規制・財政への
依存体質の改革等)、技
術革新システムの刷新、
情報インフラ整備等
二つの基本座標軸の相互関係
・「経済社会システムの競争力強化」の政策が経済効率性の向上・供給基盤の強化を目指すのに対して、「個人が輝く多参画社会の構築」は、経済外にも
広がる個々人の自己実現の欲求に応え、将来への希望、社会参画に基づく充足感などからの、過度の自己生活防衛・縮み思考の回避による消費の刺
激、いわば需要を生み出す厚い市場を根付かせる力。
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⇒双方の政策軸が好循環を形成して初めて、経済は自律的に持続可能となる。
(論点5) 経済社会システムの如何なる好循環を築くべきか。
戦 後 の 好 循 環
21世紀に目指す好循環
・戦後我が国は、生産技術を中心とした生産性向上(コストダウン)に
より、飛躍的な経済発展を達成。また、この過程では、農村から都市
へと流入した低廉・豊富な労働力、比較的容易であった欧米からの
先進技術の移入が大きな役割を果たした。
・また、高い就業率と年功序列、終身雇用等の「日本的」と言われる
システムが、勤労者の所得及びその家族の生活を保障し、将来へ
の安心感を提供。
・生活充足型の消費需要の拡大と相俟って需要サイドと供給サイド
が好循環を形成。
・経済のフロントランナー化、国際競争の激化等により、創造的レント
の創出が我が国経済の競争力向上にとって重要化。このためには、
技術革新の活性化等を通じたTFPの上昇、個々人の持てる多様な
能力の最大限の発揮が必要。
・今後は、少子高齢化の進展、多様な価値観に基づく自己実現要求
の高まりの中にあって、個々人が多様な参画機会を見出せる社会の
実現が能力発揮のために特に重要。
・こうした多様な形態による社会参画を通じた充足感、将来への希
望、社会的セイフティネットへの信頼感によって、多様なニーズに応
える需要が生み出され、供給面の競争力強化と相俟って新たな好
循環を形成。
コストダウン(生産効率)
レント(創造的稀少価値)
による競争力ある
創出が拓く競争力ある
経済社会システム
経済社会システム
供給
需要
供給
需要
・低廉・豊富な労働供給
・生活充足型
・全要素生産性(TFP)向上
・自己実現型
・欧米からの先進技術の移入
=多様な価値観と多様な
=三種の神器、3C、住宅
ニーズ(高齢、環境)
高成長・若年依存型
個人が輝く
会社中心社会
多参画社会
(※セイフティネット機能は主に会社が引き受け。)
確かなセイフティネット
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