テーマ:組合 担当者 石塚 猪瀬 鈴木 松井 1 (1)組合の定義 ➀ 複数の組合員からなる共同の事業の組 織である。 ➁ 組合員となる者の組合契約によって設立さ れる(民667条1項) ➂ 組合員は個人でも法人でもよい。 ➃ 出資は、金銭その他の財産でも労務でもよ い。 2 (2)組合の種類 ・任意組合等 原則として、民法の規定が準用されている。 ①任意組合[民法第667条、第1項] ②投資事業有限責任組合 [投資事業有限責任組合法第2条、第2項] ③有限責任事業組合(日本版LLP) [有限責任事業組合契約法] ・匿名組合 商法上の組合[商法第535条~542条]。 3 ・会社組織の比較[大浦(2005)] 会社の内部関係 物的資産 会 社 と 外 部 と の 関 係 株式 会社 日本版 LLC (合同会社) 日本版 LLP (有限責任事業組合) 最低1人 以上の 無限責任 構成員 - 合資会社 投資事業 有限責任組合 全構成員 無限責任 - 合名会社 民法上の 任意組合 全構成員 有限責任 無 限 責 任 人的資産 法人 組合 4 *従来の「モノ」を中心とした展開では限界 *「モノ」から「ヒト」への流れはグローバルな うねり *「モノ(物的資産)」から「ヒト(人的資産)」へ の移行が必須 「ヒト(人的資産)」 知識、技術 アイデア、ノウハウ 5 ・米国LLCと日本版LLP/LLCの相違 [大浦(2005)] 日本版LLP/LLC 米国LLC LLP LLC 正式名称 Limited Liability Company 有限責任事業組合 合同会社 法人格 有 無 有 最低資本金規制 有 無 無 労務出資 有 無 無 出資者段階での課税 法人課税、 構成員課税 の選択制 構成員課税 法人課税 6 ・背景[大浦(2005)] • 日本版LLPは、平成 17年に、日本版 LLCと並んで国際競 争力維持・向上のた め人的資産を活用す る新形態の新事業 体として創設された 制度である。 ➝新時代のビジネス を担う有用な事業体 として活発に利用さ れることを期待 有限責任で人的会社の潜在的ニーズ 大企業(既存事業の再編) 42% 55% 30% ベンチャーキャピタル 48% 0% 20% 40% 大企業(ジョイントベン チャー) ベンチャー企業 60% 7 成 平 17年 成 8 平 17 月 成 年 9 平 17年 月 成 1 平 17年 0月 成 1 17 1月 平 年 成 12 月 平 18年 成 1 月 平 18年 成 2 月 平 18年 成 3 月 平 18年 成 4 月 平 18年 成 5 月 平 18年 成 6 月 平 18年 成 7 平 18年 月 成 平 18 8月 成 年 9 平 18年 月 成 1 0 平 18年 月 成 1 18 1月 年 12 月 平 ・LLPの設立状況[出所:経済産業省(2007)] 全国LLP登記数推移表 160 144 134 134 140 124 120 110 109 120 96 98 92 89 100 80 82 80 70 80 60 48 51 40 20 0 8 ・業種について[出所:経済産業省(2007)] 業種別登記件数(LLP) 製造業 7 .2 % 小売業 1 2 .0 % その他 1 0 .8 % サービス 業 7 0 .0 % *「サービス業」を細分化すると、経営コンサルタント業、不動産鑑定業、個人 教授所、土木建築サービス業、機械設計業、技術提供業などを含む「専門サー ビス業」が約50%を占めている。 9 (3)有限責任事業組合(日本版LLP) [増井(2006)] 特色 有限責任であるため、様々な事業にチャレンジしやすい ①出資者全員の有限責任 監視機関(取締役会・監査役)設置が強制されない ②内部自治による柔軟な意思決定や 損益分配 二重課税回避 ③課税方法は構成員課税 10 ・出資者全員の有限責任 組合員の有限責任が認められた。 その一方で、組合債権者保護のためいくつか の手当てがされている ⇒・純資産300万円を控除した額を超える組合 財産の分配の禁止 ・分配を受けた事業年度に欠損が生じた場 合の組合員の連帯責任 ・組合債権者へのF/Sの提示 ・濫用禁止 11 ・内部自治による柔軟な意思決定・ 損益分配 • 組合の意思決定につ いては、特別な機関を 設けることは必要とさ れていない。 ⇒業務執行の決定は原 則として総組合員の同 意でよいとされ、決定 用件の緩和 • 損益分配については、 原則出資割合とする。 もちろん別段の定めを することにより割合を変 えることができる。また、 利益分配の割合と損失 負担の割合を別々に定 めることも可能。 12 ・課税方法(構成員課税) • 組合それ自体が法人税の納税義務者となる のではなく、組合事業から生ずる損益は、組 合員に直接帰属するものとして課税 ⇒つまり構成員課税あるいはパス・スルー課税 と呼ばれる取り扱い 【所得税基本通達36・37共ー19】 注意:組合事業から損失が生じた場合の損失 制限規定あり 13 ・有限責任事業組合の事業にかかる損益を 構成員に税務上帰属させる理由 • 組合が法人税法上の「人格のない社団等」に あたらないこと • 組合事業から生ずる利益が組合員に直接帰 属すること ⇒法人税の納税義務者にあたるかどうかの基 準として「収益及び費用の私法上の実質的な 帰属主体を納税義務者とする考え方」が日本 の税制の背景にある 14 ・構成員課税との関係について① <注目すべきポイント> 有限責任事業組合には、「共同事業性」の確保が 要求されている点である。 共同事業性の主な要件は… ①重要な意思決定については全員一致であること [LLP法第4条]。 →組合の事業内容、名称、存続期間、組合員の加入・持分譲渡、重 要な財産の処分及び譲受け、多額の借財など ②全出資者が何らかの業務執行に参加すること [LLP法第13条]。 →単に投資だけを行う出資者は認められない。 15 ・構成員課税との関係について② 共同事業性を満たさない場合は… 有限責任事業組合としては認められず、民法上の 組合として扱われることになり、無限責任を負うこと になる。 →そもそも、有限責任事業組合は民法上の組合の特則であり、組合とし て共同事業性が必要であることは当然といえる。 では、なぜ要求されるのか? その理由は 「租税回避行為を防ぐためである」 そこには、共同事業性を要求することにより、受動 的な損失の利用を目的とした有限責任事業組合の 設立を防げるという趣旨がある。 16 (1)問題の所在 • 現行の法制度の下では実体(新しい事業体)に即した課税 方法が未整備である。 • 仮に実体にあわせた課税が行なわれた場合でも、徴収技術 面等でわが国の制度は未整備である。 17 (2)組合損失の制限規定について • 内容・・・「組合事業から生ずる損失額のうち 一定の金額を超える部分に相当する金額に ついては損金または必要経費に算入しない ものとする。」とするもの • 理由・・・組合事業から生ずる損失を利用して 節税を図る動きが顕在化。このような租税回 避を防止するため。 例:映画フィルム・リース事件 航空機リース事件 18 ・映画フィルム・リース事件➀ 1. 複数の出資者が民法上の任意組合を設立。 2. 当該任意組合が映画販売会社から映画フィルム の所有権を取得。 3. その映画フィルムを映画配給会社にリース。 4. 映画フィルムを減価償却した。 5. 組合員の利益は、投資による受け取るリース料と 減価償却費等の差額から圧縮。 ⇓ 組合での映画フィルムを減価償却することを 課税庁が認めなかったことから裁判となった。 19 ・映画フィルム・リース事件➁ 地裁、高等裁、最高裁ともに同組合の減価償却を否認。 理由 ➀映画フィルムの実質的な所有者は本件組合ではない。 ②本件組合は、単に資金を提供しただけであって、映画 のフィルムそのものを取得していないのであるから、減 価償却費の計上はありえない。 20 ・組合損失制限規定の配置(平成17年度改正) [増井(2006)] 一般の組合 (ア)租特67条の12 法人組合員 *調整出資金額を超える 部分(一定の場合には全 額)の損金算入 *翌期以降に繰越 (ウ)租特41条の4の2 個人組合員 *不動産所得につき損失 が生じなかったものとみ なす 有限責任事業組合 (イ)租特67条の13 *調整出資金額を超える 部分の損金不算入 *翌期以降に繰越 (エ)租特27条の2 *調整出資金額を超える部分 の必要経費不算入 21 (3)私的見解 今回の制限規定は単に一種の損益通算を否定した個別的否認規定に すぎない。 ⇒組合の実体に即した規定が必要と考えられる(法人税と所得税の基本通 達のみで組合の所得計算を定めているだけでは物足りない) 具体的案 • 資料情報制度の整備(組合の所得、財産、利益の分配状況等の内容把 握のため) • 納税者番号制度の導入 • 組合段階での源泉徴収義務 (上記2つはアメリカでは導入済み) ただ・・・ 租税回避の問題は事前の対応が難しいと思われる。 ⇒包括的な否認規定を導入したうえで、個別的に対応していくことが現実的。 22 参考文献等一覧 ・ 野田秀三(2007)『税務会計研究学会 統一論題報告(4)』、 pp.31-36。 ・ 八ツ尾順一(2007)『租税回避の事例研究[三訂版]』、清文社、 pp.323-345。 ・ 経済産業省(2007)「LLP(有限責任事業組合)の設立状況」、経済産業 政策局、産業組織課。 ・ 増井良啓(2006)「有限責任事業組合から生ずる損失と所得税」 『税務事例研究』、Vol.90、pp.48-53。 ・ 飯島智宏(2006)「任意組合等の組合事業に係る個人組合の課税の 取り扱い」『税経通信』、p.45。 ・ 大浦勇三(2005)『[図解]日本版LLP/LLCまるわかり』、PHP研究所、 p.17, 36, 155。 ・ 松嶋隆弘(2005)『合同会社・LLPの法務と税務』、根田正樹・矢内一好 編、学陽書房、pp.88-89。 23 ・ 森信茂樹(2004)「新たな事業体と組合税制構築の論点」『ビジネス・ タックス』中里実・神田秀樹編、有斐閣。 ・ 経済産業省(2004)「有限責任事業組合制度の創設の提案(有限責任 事業組合制度に関する研究会)」、経済産業政策局。 ・ 森信茂樹(2003)「新たな事業体と組合税制」『フィナンシャル・ビレュー』、 第69号。 24
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