バードレポート

2005年10月10日
第564号 株式会社バード財産コンサルタンツ
バード レポート
160-0023東京都新宿区西新宿7-15-8 ニッパンビル
電話 03-5389-0988 FAX 03-5389-0933 月額2100円
月8回 FAX発行 http://www.bird-net.co.jp/
有限責任事業組合契約(日本版LLP)での事業メリット
無限責任の個人事業
個人で事業を始めます。
個人事業は無限責任です。と
ことん責任を負います。例えば
製造物責任とか爆発等突発的事
故を起こせば破綻でしょう。
株式会社で行う事業なら無限
責任ではなく有限責任です。倫
理的心情的な責任はともかく、
法的には出資額以上の責任は問
われません。
銀行取引をすれば代表者の個
人保証が前提とされ、形式的に
は有限責任であっても、実質的
には無限責任なのは事実です。
しかし個人保証をするか否か
は自らコントロールできます。
株式会社は二重課税
それでは有限責任の株式会社
として事業を始めます。すると
二重課税の問題が生じます。
会社に多額の利益がでれば、
法人税が課されます。その税引
後が株主への利益配当になりま
す。そして株主が受け取る利益
配当には更に所得税の課税です。
これが二重課税です。
中小企業では二重課税の回避
のため株式配当などせずに役員
報酬額で調整するのが常識です。
しかしこれは本来おかしなこ
となのです。業務執行に対する
役員報酬と株主への利益配当は
別のものですから。そして損益
に予想外のブレが生じれば節税
への対応はなかなか困難です。
有限責任事業組合契約LLP
経済産業省は起業支援の立場
から、この問題を解決しようと
しました。「有限責任事業組合
契約」、日本版LLP(Limited
Liability Partnership)と呼ば
れる制度を用意しました。
個人事業を有限責任にした上
で、法人のような二重課税を排
除するという仕組みです。
ただし「組合契約」なので一
人ではダメ。二人以上必要です
が、夫婦でも親子でも可能です。
「有限責任事業組合に関する
法律」は2005年4月に国会を通
過し8月に施行されています。
新制度への税務の扱いも定まっ
ています。
共同してビジネスを始めよう
とする複数の人(法人も可)が集
り、それぞれ出資をして、組合
をつくります。この組合は法務
局に登記がなされるので、それ
なりの信用力があります。
名刺で の会社名 のところは
「○○有限責任事業組合」とな
ります。「○○株式会社」のよ
うに法人格はありませんが、登
記がなされた正式名称です。
三人でのレストラン経営
店舗オーナーと料理人と有機
野菜農家の三人が出資をして有
限責任事業組合をつくり、オー
ガニックレストランをオープン
させます。このレストラン経営
の組合です。
お店(=組合)の利益そのもの
に法人税は課されません。その
利益は三人で分配され、三人そ
れぞれが確定申告をします。つ
まり二重課税は生じません。
利益の分配は自由に設定でき
ます。出資割合が6:1:3ですが
利益配分を2:5:3としました。
金はないけれど才能あるシェ
フに報いることができます。
シェフは給料を受け取るので
なく経営の成果配分なのでやる
気もでます。それに有限責任な
ので大きなリスクは負いません。
大学の研究者と企業とが出資
1:9で利益配分5:5とする、とい
うことを想定しているようです。
なお親:子が出資99:1で利益
配分1:99とすれば抜群の相続税
対策になりそうですが、その割
合に合理性がなければ税務否認
の覚悟が必要です。
利益が出れば利益配分ですが、
損失がでれば、出資額を限度に、
それぞれに損失額が配分され、
本業等他の所得の所得があれば
それと通算されます。本業の利
益調整に使う余地があります。
不動産流動化の受け皿には?
この制度は組合員つまり出資
者全員が業務を行うという組合
であり、お金をだすだけの投資
目的出資は趣旨からはずれると
され、不動産共同投資の受け皿
としてはふさわしくないと言わ
れています。
弁護士税理士等の専門業務や
宝くじ等ギャンブル投資業務は
この組合にはできません。