カンボジアにおける日本語教育

カンボジアにおける日本語教育
日本語教育学講座
M1年細井駿吾
研究背景
・教室活動や教授法の不一致は学習速度阻まれる
→言語学習ビリーフ調査の重要性 (Horwitz1987)
・教師の意志決定にはその教育観・学習観が反映(学習者も同様に)
・学習者と教師の学習像には文化的な違いがある
・日本語の学習に最も影響するのは教師に対する受容態度
・否定的な受容態度は学習者の学習意欲や集中力を減退させる
→学習者のビリーフを知る必要性(尾崎2002)
・学習者のビリーフは所属している社会や文化に影響(水田他1995)
→カンボジア人日本語学習者のビリーフを知る必要性
カンボジアの教育
1970年代のポル・ポト政権によって「教育制度」が崩壊
ポル・ポト政権以前は約2万人いた教師が約6千人まで減少
ポル・ポト政権崩壊後、教育再建に努める
→しかし未だ多くの問題が残されている
(川畑2008)
カンボジアでは日本と同様に6・3・3制
2008年の就学率は小学生93%、中学生34%、高校生15%、大学5%
(ただし小学校卒業できるのはそのうちの約半数)
6割以上が中学校を卒業した時点で小学校教師に
→教師のレベルはあまり高くなく、教師不足や教室が足りない
カンボジアでは約半数の小中学校で二部制
(CIESF2008)
純就学率
100
93%
小学校教員の最終学歴
90
80
大学
6%
70
60
50
40
高校
30%
34%
中学
校
59%
30
20
小学
校
5%
15%
5%
10
0
小学校 中学校 高校
大学
就学率
小学校
高校
中学校
大学
CIESF(2008)URLhttp://www.ciesf.org/index.html
カンボジアの日本語教育
2012年のカンボジア人日本語学習者数は3881人
高等教育で日本語を学習しているのは619人で全体の15.9%
一番多いのは学校教育以外の1988人で全体の51.2%
2003年は2309人から2006年は5431人と倍増したが、
2009年は2882 人と大幅に減少(国際交流基金)
2006年12月にカンボジアで始まった日本語能力試験の当初総数は665名
そのうち1、2級の受験者は97名
2012年度の応募者数は年間累計でN1 123名、N2 321名、N3 508名、N4
415名、N5 225名、総計1,592名で毎年着実に増加(JLPT)
5431
6000
5000
3811
4000
3000
2822
2309
2000
1000
63
206
0
1993 1998 .2003 2006 2009 2012
年
年
年
年
年
年
学習者数
(国際交流基金:1993、1998、2003、2006、2009、2012年)
高等教育での日本語教育
現在王立プノンペン大学外国語学部にカンボジア唯一の日本語学科
2005年に正規の日本語学科が開設した。
王立法律経済大学では2008年9月から名古屋大学日本法教育研究セ
ンターにおいて4年間日本語および日本の法律に関する教育
・メコン大学
・国立経営大学
・アンコール大学
・ザマン大学
・ノートン大学
・国立農業大学
・州立バッタンバン大学
・パンニャサストラ大学
(国際交流基金2012)
学校教育以外での日本語教育
カンボジアの日本語学習者全体の51.2%にあたる1988人
「カンボジア日本人材開発センター(CJCC)」
民間の中とても大きい学校
初級から中級までの定期コース、短期のビジネス日本語コース、
教師養成コースなどを平日昼休みと夜間のコース設置
シェムリアップなどにも民間の日本語学校がある。
学習者は大学に通いながら通う人や、働きながら勉強する人もいる。
昼や夜の2部制や、朝から夜までと1日中開いている学校もある。
(国際交流基金2012)
研究目的
・カンボジアの日本語学習者は多様な学習環境・学習背景
・今後も増加すると予想される高等教育・学校教育での日本語学習者
・学習者がどのような言語学習ビリーフを持っているか調査する
→教師に何を求めているかということを明らかにし良い授業を提供
・他国との比較
→カンボジア人学習者の特徴を見つけていきたい。
(年齢、学歴、日本語力、地域差、専門分野での違い)
教師のビリーフ
→学習者とのズレを明らかにする
先行研究
・水田、黄 、張 、伊藤 、細田(1995)
・国 :台湾とオーストラリア
・対象者:台湾の大学1年生46人と、オーストラリアの大学1年生65人
・目的 :漢字圏の日本語学習者と英語圏の日本語学習者との日本語に対する
ビリーフの相違
学習ストラテジーの差異を明らかにすること
・方法 :BALLIという質問紙を使い32項目の質問調査を行った
・結果 :「日本語は難しい言語であるか」
「読み書きは会話よりも容易であるか」という質問に
漢字圏と非漢字圏という違いを明確に反映している。
「日本語の学習には日本文化を知ることが大切である」
「外国語学習で一番大切なことは新出単語を覚えることだ」
「外国語学習で一番大切なことは文法規則をたくさん学ぶことだ」
「私は日本人をよりよく理解できるようになるために、日本語を学
んでいる」という質問に有意差
先行研究
・和田(2007)
・国
:スリランカ
・対象者:スリランカの2つの大学の2、3年生86人
・目的 :スリランカ人の言語学習ビリーフを明らかにし、スリランカの
日本語教育の問題点と照らし、問題を解決する
・方法 :外国語学習の適性、言語学習の本質、言語学習の困難さ、学習
とコミュニケーションストラテジー、言語学習の動機、教師の
役割、教授法・教室活動、媒介語、言語学習と文化の関係につ
いてBALLIをベースにし52項目の質問調査を行った。
・結果 :「自国の学習者、自身についての外国語学習に自信あり」
「日本語は他の言語よりも容易に学習できる」
「コミュニケーション能力の向上を重視そのための教授法や
教室活動を望む」「教師依存の傾向が強」
「教師とその教授法に対して信頼と期待」
「媒介語として使用することを望まない」
「母語の文法解説もとくに望んでいない」
「日本文化の学習は学習の助けになる」
先行研究
・片桐(2009)
・国
:カンボジア
・対象者:プノンペン大学3年生48名
・目的 :カンボジア学習者のピーアールに対するビリーフを含む作文学
習ビリーフを明らかにすること
:ピーアールを取り入れた授業を経験することがどのような影響
を与えるかを調べた。
・方法 :作文学習への態度、作文学習の適性、作文学習の性質、
作文の書き方、教師指導、自己推敲、ピーアールの領域に関し
てBALLIという5段階で回答する質問紙を使った32項目の質
問調査とインタビュー調査を行った。
・結果 :「ピーアールに対しては肯定的」
「ピアよりも教師のフィードバックを重要視」
「教師への期待は大きい」
先行研究
・髙崎(2014)
・国
:メキシコ
・対象者:メキシコの大学、語学学校の初級クラスの243人
・目的 :スペイン人、フィリピン人日本語学習者と比較することでメキシコ人日
本語学習者の特性を明らかにしコース編成やカリキュラム改定への手
助け
・方法 :BALLIをベースとした5段階で回答する質問紙を使った51項目
の質問調査を行った。
・結果 :「日本文化に強い関心」
「日本語で会話することを期待し、日本語で話すこと、聞くことを好み」
「参加型の教室活動を指向する傾向」
「初期の間違いを訂正されないと後で直しにくい」という項目は他の国よ
り賛成度の度合いが低く、「語彙は重要」と言いながらも「上達させたい」
希望や「知らない単語を辞書で調べるべきだ」と考える度合いは低いな
ど学習について楽観的な側面が見えた。
「直接の教授、チェック、助言、評価を受けたい」
「自律学習よりも教師依存の傾向が強い」
先行研究
・國友(2012)
・国
:フランス
・対象者:フランスの大学、語学学校の学習歴2年、1年57人
・目的 :フランス人日本語学習者が日本語教師や授業に求めることを明らかに
し、より効果的な日本語の授業を行うため
・方法 :BALLIをベースとした5段階で回答する質問紙を使った48項目の
質問調査を行った。
・結果 : 「日本語や日本人、伝統文化への興味関心から」
「日本語話者と円滑なコミュニケーションが取れること」
「目標とした4技能の習得」
「外国語学習に対して自ら積極的に取り組む姿勢」
「日本語学習において正確さ」
「教師のサポート」
「学習内容ごとの適切な授業の選択」
先行研究の問題点
・国によるビリーフの違い
→本当にその国のビリーフであるのかどうか分からない
・学生へのビリーフ調査
→教師のビリーフは未実施
教師のビリーフを調査をしない限り学習者とのズレを把握できない
・学習者の学習背景・環境が不明確
→学習者の学習背景・環境も調査する必要性
・ビリーフ研究の結果が具体的にどのように今後いかされていくかが
分かっていない。
→ビリーフ調査がどのように授業等でいかされるか
研究方法
調査対象・・・大学や日本語学校で日本語を学習している学習者
またそれらの大学や日本語学校で働いてる教師
(ネイティブ、ノンネイティブの両方の先生)
調査方法・・・調査はHorwitz のBALLI(beliefs about language
learning inventory)や先行研究のビリーフ調査の質問項
目を参考にし新たにクメール語版BALLIを作成し、
それを用いて調査する予定である
今後の研究課題
調査方法について
・今回挙げた以外のビリーフ研究について調べる。
・他のビリーフ研究を参考にし、ビリーフ調査の質問を検討し、作成する。
・質問紙以外のビリーフ調査方法について検討する。
参考文献
Horwitz,E.K(1987)
(1988)
(1995)
“Surveying Student Beliefs About Language Learning”
In Wenden,A.amd Rubin,J.(ed) Learner Strategies In Language
Learning.pp.119-129 Prentice-Hall International
“The Beliefs about Language Learning of Beginning University Foreign
Language” The Modern Language Journal 72.pp. 283-294
“Using Student Beliefs About Language Learning and Teaching in the Foreign
Language Methods Course” Foreign Language Annals,18,no4,pp.333-340
水田直美、黄 其正 , 張 金塗 , 伊藤 克浩 , 細田 和雅(1995)
「日本語学習に関するビリーフ-台湾とオーストラリアの大学生日本語学習者の
比較-」 『広島大学日本語教育学科紀要』 5, 61-66
尾崎明人(2002)
「日本語教師のエンカレッジメントとディスカレッジメント」
『ことばと文化を結ぶ日本語教育』 凡人社 第12章 188-203
和田衣世(2007)
「スリランカの大学生の言語学習ビリーフから日本語教育の改善を考える」
『国際交流基金日本語教育紀要』第3号13-28
川畑貴子(2008)
「カンボジアにおける日本語教育の現状と課題-
「カンボジア-日本友好学園」での授業を通して-」
『総合政策学会総合政策研究』 11(1), 53-61
片桐準二(2009)
『アジアにおける日本語教育「外国語としての日本語」修士課程設立一周年セ
ミナー論文集―』「カンボジア日本語学習者の作文学習ビリーフ―ピア・レス
ポンスを中心に―」29-48
國友麻美(2012)
「フランス人日本語学習者が日本語教師と授業に求めるもの-フランス人日本
語学習者へのビリーフ調査を通して-」『姫路獨協大学大学院日本語教育論
集』第21号17-25
髙崎三千代(2014)
「メキシコにおける日本語学習者の特性」-ビリーフ調査結果を中心に-
『国際交流基金日本語教育紀要』第10号23-38