鉄筋コンクリート工学Ⅰ

-摩擦- 箱の横滑り
●滑りのメカニズム
・下図で
T:滑動力(すべり面に平行な力/せん断力) ・・> T=横力F
N:拘束力(すべり面に垂直な力/垂直力) ・・・> N=自重W
Tf:摩擦抵抗力(箱に床から作用する滑り抑止力)
・・・ 拘束力Nに比例する ・・・> Tf=μN
μ:摩擦係数(μ=tanφ,φ:摩擦角)
横力F
T
N=W(自重)
Tf=μN
※φ:「すべり角」に対応
次図でブロックがすべり
出す時の傾斜角
θ=φ (Fs=1)
※摩擦抵抗力Tf は、滑り面に働く垂直力N(拘束力)に比例する
-摩擦- ブロック滑り
●ブロック滑りのメカニズム
・滑動力成分:T=Wsinθ
・拘束力成分:N=Wcosθ
T=Wsinθ
θ
θ
Tf=μN
・摩擦抵抗力:
Tf=μN=μWcosθ
N=Wcosθ
W
●すべり安全率:
W cos tan tan
Fs 


T
W sin 
tan
Tf
※Fs=1 (θ=φ)
で滑る
・・・> 摩擦抵抗はブロック重量W,接触面積Aに無関係
※斜面上のブロックは(外力の作用がなくても)自重だけで滑る
-摩擦- 例題-(1)-
●問題
重りQが角α傾斜する床上で重りPと滑車を介して連結
されている。床の摩擦角をφとして、滑り出す限界の力
比P/Qを求めよ。α>φ とする。
*P/Q大の時
*P/Q小の時
Q
P
α
※重りQは、P/Q大のとき滑り上がり、P/Q小のとき滑り落ちる
-摩擦- 例題-(1)解答-
①P/Q小 ~ Qが滑り落ちる
②P/Q大 ~ Qが滑り上がる
P-T-μN=0
T-P-μN=0
↓ 両条件とも、T=Qsinα,N=Qcosα ↓
(P/Q)min=sinα-μcosα
P/Q小
P
T
Tf=μN
R
(P/Q)max=sinα+μcosα
P/Q大
Q
N
α
α
P Q N
落ちる
T
Tf=μN
(反力:R=N)
R
α
上がる
α
※P/Q値により2つの滑り出し条件(摩擦抵抗力の方向が異なる)
-摩擦- 例題-(2)-
●問題
重さW1及びW2の2つのブロックを糸でつなぎ、上のブ
ロックを図のように引張るとき、滑りを発生させる引張力
Pの最小値とその方向αを求めよ。
Pmin
W1
α
W2
※各ブロックに作用する力を矢印で描くことが解答の第一歩
-摩擦- 例題-(2)解答-
*各ブロックが滑り出す条件式
①: Pcosα-Fcosβ=S1=μ(W1-Psinα+Fsinβ)
②: Fcosβ=S2=μ(W2-Fsinβ)
両式からF,βを消去し、Pの最小条件を調べる (①+②)
P=(W1+W2)・sinφ/cos(α-φ)
→ Pmin=(W1+W2)sinφ (α=φのとき)
① W1
② W2
F
β
S2
α
F
S1
Pmin
・糸の張力F
・傾角β
※①,②を結ぶ糸の張力Fと傾斜角βは、Pminを代入して逆算する
-摩擦- 例題-(3)-
●問題
2つのブロックが糸に結ばれて角度αの斜面上にある。
各ブロックの摩擦係数が異なるとき、W1=W2=Wとして、
ブロックが滑り始める角度αを求めよ。
②
W2
①
μ2
W1
μ1
α
※ブロック①,②が滑り出す2つの条件式を立て、連立して解く
-摩擦- 例題-(3)解答-
*糸の張力をFと置くと、各ブロックのすべり条件は
①: T-F=μ1N
← T=Wsinα,N=Wcosα
②: T+F=μ2N
①+②でFを消去して整理すると
2tanα=μ1+μ2 → tanα=(μ1+μ2)/2
W
T
μ2N
N ②
F
W
F
N
①
T
μ1N
α
※式①,②とも、すべり面に平行な方向の力のつり合い条件式
-図心・荷重中心- 単純図形の図心
*長方形
*三角形
b/2
C
b/2
h
C
C
h/3
b/2
a/2 a/2
*2つの対称軸
C
*楕円形(円形)
b/2
*直方体
*点対称
C
※図心=幾何学的な中心、重心=重力の中心(自重の合力が通る点)
-図心・荷重中心- 任意形状の図形
●断面一次モーメントと図心位置
・個々の要素のモーメントの和
・全面積×図心位置
Gx  ( x  dA)   x  dA  A  xc
 xc
x  dA


 dA
yc
y  dA


 dA
・同様に
dA
y
c(xc,yc)
・全面積: A  dA
x
  dA
※個々の要素のモーメントの和は、図形全体のモーメントに等しい
-図心・荷重中心- 三角形の図心-(1)-
●三角形の図心位置を求める
*三角形頂点からの図心位置
h
ay
図心:yc
y
2
A  yc  M  yc  h
3
dy
Ay
・三角形の全面積: A 
ah
2
・頂点から y位置の微小面積Ay
a
・三角形の頂点回りの断面一次モーメント
a 
Ay  a y  dy   y   dy
h 
h
a 2
a  y3 
ah2
a 
M   Ay  y   Ay  y    y   dy  y   y dy    
h 
h0
h  3 0
3
0
0
h
h
h
※全面積A×図心yc=全図形の断面一次モーメントM(微小Mの和)
-図心・荷重中心- 三角形の図心-(2)-
●下辺からの図心位置 ~ 二等分線との関係
二等分線
*下辺からの図心位置
h
Ay
図心:yc
dy
y
ah
1
 yc  M  yc  h
2
3
・下辺から y位置の微小面積Ay
a

Ay   (h  y)   dy
h

a
・下辺回りの断面一次モーメント
h
a
a  hy
y 
ah2
a

M    (h  y ) dy  y   (h  y ) y  dy  
  
h
h0
h 2
3 0
6

0
h
h
2
※三角形の図心高さycは、辺に垂直な線上で(h/3 or 2h/3)
3
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(1)-
●2つの三角形に分割
a
・三角形(1) 面積:A1=ah/2
図心:y1=(2/3)h
・三角形(2) 面積:A2=bh/2
h
A1
1
図心:y2=(1/3)h
*全面積:A=A1+A2
=(a+b)h/2
*図心計算:A×yc=A1×y1+A2×y2 →
(断面1次モーメントのつり合い)
AA2
2
yc
b
2a  b
yc 
h
3(a  b)
※複雑な図形の図心は、図心が容易に知れる図形に分割して求める
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(2)-
●2つの三角形と四角形に分割
・三角形(1) 面積:A1=b1h/2
図心:y1=(1/3)h
・四角形
面積:A2=b2h
h
図心:y2=(1/2)h
A1
A2
A2
yc
A3
・三角形(2) 面積:A3=b3h/2
図心:y3=(1/3)h
b1
*b2=a, b1+b3=b-a として →
b2
b3
2a  b
yc 
h
3(a  b)
※ycを求める場合、分割した各図形の図心(yi)も下辺から測る
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(3-1)-
●図形の”和” として求める場合 (①=②+③)
10
①
xc
yc
8
10
22
30
8
26
②
③
③A3=220
x3=21,y3=19
②A2=208
x2=13,y2=4
26
428×xc=208×13+220×21 → xc=17.1
428×yc=208×4+220×19
※xc,ycは左下隅点から測っている
→ yc=11.7
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(3-2)-
●図形の”差” として求める場合 (①=②-③)
xc
10
③A3=352,x3=8,y3=19
①
③
yc
8
26
30
②
26
16
②A2=780, x2=13,y2=15
428×xc=780×13-352×8 → xc=17.1
428×yc=780×15-352×19 → yc=11.7
※面積も断面1次モーメントも差で計算する
22
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(4-1)-
●図形の和・差として求める
・面積: A1=A2+A3-A4
・図心: A1×xc=A2×x2+A3×x3-A4×x4 → xc
①
xc
=
②
x2
x3
③
-
④
x4
※面積・図心とも、図形①=三角形②+四角形③-三角形④ で求める
-図心・荷重中心- 図心の求め方-(4-2)-計算例
(問)擁壁の図心位置(xc,yc)を例示した方法で求めよ。
(H=5.4m,B=3.0m,b=0.6m)
b
*数値表
Ai (m2)
xi(m)
yi (m)
Ai・xi
Ai・yi
図形②
図形③
H
1
0.3
yc
図形④
合計
A
O
xc
B
A・xc
*答え
xc=2.60m,yc=2.10m
※数値表を作成して、穴埋め整理しながら計算する
A・yc
-図心・荷重中心- 合力と荷重中心-(1)-
荷重強度 q(x)
q
●合力Q → 分布の面積
Q   dQ   dQ   q ( x)dx
A
B
●合力Qの作用位置 xc
→ 分布の図心
Q  xc   dM  dQ  x
x
q(x)
  q( x)dx  x   q( x) x  dx
xc
q( x) x  dx  q( x) x  dx



Q
 q( x)dx
xc
x
Q
a
dQ
q(x)
A
b
dx
※分布荷重の合力は分布の面積、荷重の中心は分布の図心で求まる
B
-図心・荷重中心- 合力と荷重中心-(2)-
xc
●不連続荷重
Q  Q1  Q2
Q1  x1  Q2  x2
xc 
Q
x2
x1
Q1  x1  Q2  x2
xc 
Q
・合力もモーメントも符号を考慮
して加算する
Q2
Q1
●正・負の荷重
Q  Q1  Q2
Q
Q1:正荷重
x1
Q
Q2:負荷重
xc
x2
※不連続や正負の分布荷重は、分割して個々の合力の加減算で求める
-図心・荷重中心- 例題-(1)線荷重-
●線荷重の中心:xc
Qi (kN)
xi(m)
Qi・xi
左分布
7.68
3.2
24.6
右分布
3.84
5.6
21.5
合計
11.5
46.1
3.2kN/m
*左分布の計算:
4.8m
2.4m
x
4.8
Q=11.5kN
Q1=7.68kN
2 x 7.68kN
 3. 2 
q( x)  
x 
3
 4.8 
Q2=3.84kN
Q
4.8
0
 x2 
 2x 
 dx   
 3 
 3 0
 q( x) xdx  
4.8
0
3.2m
4.01m
5.6m
 2x2 

dx
 3 
24.6kN-m
4.8
 2x 


9

0
3
※分布荷重の合力は分布の面積、荷重の中心は分布の図心で求まる
-図心・荷重中心- 例題-(2)水圧合力・作用位置-
●問題
図の水門に作用する水圧の合力と作用位置を求めよ。
h1=10m,h2=20m とする。
●水圧分布
h1
z
・深さzの水圧pw(z)
pw(z)=γw×z
(γw=9.80kN/m3)
pw1
h2
H
水門
・pw1=98.0kPa
・pw2=196.0kPa
pw2
※水門に働く水圧は、上下辺が(pw1,pw2)、高さHの台形分布
-図心・荷重中心- 例題-(2)水圧合力・作用位置-
●(分割1)三角形と四角形
Pw1=pw1×H=980kN/m
z1=H/2=5m
Pw2=(pw2-pw1)×H/2=490kN/m
z2=(2/3)H=6.67m
●(分割2)2つの三角形
Pw1=pw1×H/2=490kN/m
z1=H/3=3.33m
Pw2=pw2×H/2=196kN/m
z2=(2/3)H=6.67m
→ Pw=Pw1+Pw2=1470kN/m
zc=(Pw1×z1+Pw2×z2)/Pw=5.56m
pw1
Pw1
z1
Pw2
pw2
pw1
Pw1
z
z1
z2
2
Pw2
pw2
※上記の深さ(z1,z2,zc)は、分布の上面から測った値とする
-滑動・転倒- 滑動-せん断すべり-
●滑動(摩擦抵抗と粘着抵抗)
・すべり抵抗力Tf (滑動阻止力)
Tf  cA   N  cA  N tan
N:垂直力(拘束力)
A:構造物の底面積
c:粘着力・付着力(kPa)
μ:摩擦係数(=tanφ)
(φ:摩擦角)
※N=W(自重)
T=F(横力)
c,μ(φ)
F
N
T
すべり抵抗力:Tf
*滑動安全率: Fs 
Tf
T
← 滑動力T
(水圧・土圧など)
※土質力学の安定問題は、構造体の「滑動(横滑り)」と「転倒(倒壊)」
-滑動・転倒- 転倒-回転倒壊-
●転倒 (構造物の倒壊)
・転倒(左回り)モーメント
MD=F×h
転倒:MD
抵抗:MR
a
・抵抗(右回り)モーメント
W
MR=W×a
F
※a,h:モーメントの足の長さ
h
*転倒安全率:
MR
Fs 
MD
A
回転軸
※図の転倒は、点A回りのモーメントを比較して安全性を評価する
-滑動・転倒- 例題-(1)水圧による滑動・転倒-
●問題
コンクリート壁の水槽に満水状態で貯水があるとき、壁の滑
動と転倒に関する安全率を求めよ。
60cm
γc=24kN/m3
3m
壁重量:W
H
xc
3m
水圧合力:F
zc
A
底面接触抵抗
c=48.0kPa
μ=0.450
3.2m
※壁に働く力は水圧Fと壁の自重Wで、Fが滑動・転倒の作用を及ぼす
-滑動・転倒- 例題-(1)水圧による滑動・転倒-
*壁に作用する水圧
・p=γwH=58.8kPa の三角形分布
・合力:F=γwH2/2=176kN
6m
F=176kN
・作用位置:zc=H/3=2m
zc=2m
*壁の重量と作用位置(点Aから)
58.5kPa
・四角形:W1=86.4kN/m,x1=2.9m
・三角形:W2=93.6kN/m,x2=1.73m
x1
↓
壁の全重量:W=180kN/m
図心:xc=2.29m
W1
x2
A
W2
※壁は図心が明確な三角形と四角形に分割してWとxを計算する
-滑動・転倒- 例題-(1)水圧による滑動・転倒-
①滑動安全率
cA    (W1  W2 ) 48 3.2  0.450 (86.4  93.6)
Fs 

F
176
235

 1.34
176
②転倒安全率
W1  x1  W2  x2 86.4  2.9  93.6 1.73
Fs 

F  zc
176 2
412

 1.17
352
※壁の効果は(W1,x1)と(W2,x2 )に分割したまま計算する
-滑動・転倒- 例題-(2)土圧による滑動・転倒-
●問題
L型壁の土圧に対する滑動・転倒安全率を求めよ。
50cm
γc
h/4
=24kN/m3
h=5m
3h/4
50cm
A
3.0m
pa=20kPa
※壁は直立部と前底部の2つの四角形に分割して計算
底面接触抵抗
c=27.0kPa
μ=0.340
-滑動・転倒- 例題-(2)土圧による滑動・転倒-
x1
*壁の重量と作用位置
x2W2
・W1=bhγ=60kN,x1=2.75m
・W2=b(B-b)γ=30kN,x2=1.25m
A
*壁に作用する土圧
P1
・P1=pa・(h/4)/2=12.5kN,y1=4.17m
・P2=pa・(3h/4)=75.0kN,y2=1.88m
Fs (滑動) 
cA    (W1  W2 ) 166

 1.90
P1  P2
87.5
W1  x1  W2  x2 203
Fs (転倒) 

 1.05
P1  y1  P2  y2 193
※土圧分布も三角形と四角形に分割して計算
W1
P2
y1
y2
※W,Pは単位奥
行当りで計算