スライド 1 - 静岡大学 桑原義彦 研究室

5.6 アンテナの配列
5.6.1 配列と指向性
2本の半波長アンテナA1,A2をz軸に平行に距離dだけ離したときの
xy面指向性
E T
原点から十分離れたxy面内の観測点Pでの電界
E1 E 2 :アンテナA1,A2からの電界
I2 I1 :アンテナA1,A2に流れる電流
アンテナA1,A2からの電界は,ダイポールアンテナの放射界
と
を使って
指向性係数
その絶対値は
Ds    1  cos   j sin  
1  cos 2  sin 2 
 1  2 cos  cos2   sin 2 



2
 2  2 cos  2  2 2 cos  1  2 cos
2 
2

[1] d=λ/2, δ=0の場合
1 
2 



Ds    2 cos  0 
cos   2 cos cos 
 2

2

2 
(5.61)
ϕ=±π/2のとき,アンテナ1本のときの2倍の電界強度になる。
ブロードサイドアレー:アンテナ配列に垂直な方向で強く放射
[2] d=λ/4, δ=π/2の場合
 1   2 



Ds    2 cos  
cos   2 cos 1  cos 

4

2  2  4
ϕ=0のとき,アンテナ1本
のときの2倍の電界強度になる。
ϕ=πのとき,電界は0になる。
エンドファイアアレー:
アンテナ配列方向で強く放射
5.6.2 アンテナの自己インピーダンスと相互インピーダンス
アンテナA1の電圧 V1 は隣のアン
テナA2を流れる電流 I2 の影響を
受ける.
各アンテナの給電点インピーダンス
Z12 , Z 21 :相互インピーダンス,2つのアンテナの結合の度合いを表す。
Z12  Z 21 アンテナの配置のみによって決定される
Z , Z
:自己インピーダンス,単独に存在した場合のインピーダンス
11
22
考えているアンテナの電流が基準
アンテナの数がn本の時
V1   Z11
  
V2    Z 21
  
  
Vn   Z n1
Z12
Z
22

Z
n2
 Z1n   I1 
 
 Z 2 n   I2 
    
  

 Z nn   I n 
5.6.3 半波長アンテナの自己インピーダンスと相互インピーダンス
2本の理想的なアンテナが間隔dで配置され,それぞれに正弦波状の
電流が流れているときの相互インピーダンスは起電力法を使って計算
できる。
自己インピーダンス:導体表面で境界条件を設定
相互インピーダンス:隣のアンテナで境界条件を設定
Z nm
j30 h  e  jkr1 e  jkr2
e  jkr0



 2 cos(kh)
2


h
r2
r0
sin kh  r1
r0  z  a
2
2
r1 
z  h2  a 2
r2 

 sink h  z dz

z  h 2  a 2
aを導体半径の代わりに素子間隔とする。
例題5.11 半波長アンテナを
2本間隔dで平行に配置した
アンテナアレー
最大放射方向
δによって最大放射方向が
変わる。δ=0のときϕ=±π/2
d=λ/2の時の最大放射方向の
相対利得
単素子のアンテナに電流I0が
流れているとき入力電力は:
Wr=73.13I02[W]
(5.16)
同相の同じ大きさの電流が流れている場合,入力抵抗は
I2 


Z1  Z11  Z12 (5.65) より R1=73.13+R12=R2
I1
アレーアンテナ全体への入力電力:W=2I2(73.13+R12)[W]
最大放射方向の電界強度はdの値に関係なく,1本の半波長アンテナの
2倍なので
( 2 E0 ) 2
2 I 2 73.13  R12 
E 2 /W
2  73.13
Gh  2


 2.41  3.82dB
2
73.13  12.5
E0 / W0
E0
73.13I 2
6. アンテナの実際
線状アンテナ,アレーアンテナ,平面アン
テナ,開口面アンテナ,アンテナの計測
6.1 線状アンテナ
6.1.1 半波長アンテナ
アンテナへの給電:平行2線式線路,同
軸ケーブル
用途:八木・宇田アンテナの放射器,パ
ラボラアンテナの1次放射器,
標準利得アンテナ(VHF,UHF帯):周波
数にあわせてアンテナの長さを調整
[1] 同調給電
平行2線式線路(特性インピーダンス300Ω)で給電.アンテナから給電
点までの長さがλ/4の整数倍の位置(共振位置)で給電する.
定在波による伝送損失が発生するが,アンテナと給電点間の整合回
路が不要.
送信アンテナとして整合回路なしで用いる場合
電圧給電:電圧最大点で給電,
送信機の給電回路は給電電圧を最大にするた
め並列共振回路で構成
電流給電:電流最大点で給電,
送信機の給電回路は給電電流を最大にするた
め直列共振回路で構成
[2] 非同調給電
アンテナに整合回路を接続し,給電線路上に定在波が存在しないよう
にして給電
6.1.2 垂直アンテナ
垂直偏波,水平面内で無指向性
MF, HF, VHFの基地局用送信アンテナ
中波放送
第1サービスエリア:近距離,地表波を利用
第2サービスエリア:遠距離,電離層反射を利用
フェージング:打ち上げ方向の放射が強いと近距離で地表波と
電離層の反射波と干渉する
フェージング防止アンテナ:
アンテナ上部に頂冠をかぶせ打ち上げ方向(60º以上)の放射を抑制
効率は大地の接地抵抗に依存, 利得は5.4dBi
6.1.3 逆Lアンテナ
垂直アンテナの先端部を含む一部を水平に折り曲げ,垂直高を抑える
水平部の電流と大地中の影像電流は逆位相になって打ち消しあい放射
しない
例題6.1 逆Lアンテナの実効高(l1=λ/6, l2=λ/4)
電流分布 I( x)  I 0 sin(kx)
l1  l 2
I 0 sin kxdx  
5  / 12
 
 2 
 2 
sin 
x dx 

cos
x 



2





  / 6

he 
1
I0



2

 2 5 
 2   

cos

cos



 

  12 
  6  2

l1
 /6
5  / 12


 5 
  

cos

cos

1
.
366






6
3
2






λ/4垂直設置アンテナの実効長の1.366倍になる
6.1.4 ループアンテナ
円形または正方形にコイルを巻いたアンテナ
x方向に電界を持つ電磁波がz方向に伝播するときab, cdのみに起電力
が発生する。アンテナ端子に誘導される電圧Vは、受信電界強度E[V/m
波長λ,ループの面積A[m2],巻き数Nとすれば
θ=0,πのとき誘導電圧が最大,θ=±π/2のとき最小。実効長は
例題6.2 ループアンテナの最大受信電圧
E=200μV/m、直径1m、N=20,f=5MHz(λ=60m)
he 
2 (0.25 )20
 1.645[m]
60
最大受信電圧:Vmax=heE=1.645・200☓10-6=329☓10-6[V]
ループアンテナの用途:方向探知(ヌル走査)
180ºの不確実性を消すために垂直アンテナを追加
6.1.5 ヘリカルアンテナ
同軸線路の中心線を螺旋状にまく
同軸線路の外導体に半径λ/2程度
の地板を取り付ける
アンテナの設計パラメータ:
へリックスの直径D,ピッチP,1まきのアンテナの導体長L,円周長C,
巻き数N,ピッチ角α
アンテナの特性はこれらのパラメータによって変化する
[1] エンドファイアヘリカルアンテナ
0.24≤D≤0.42λ, 12º≤α≤15º
,N>3
軸モード:へリックス上に進行電流
が流れる。偏波の回転方向はへリ
ックスのまく方向
特徴:広帯域,安価,11-15dBd
用途:人工衛星の追尾アンテナ
[2]ブロードサイドヘリカルアンテナ(垂直モード)
L, πD<<λ,楕円偏波
[3]サイドファイアヘリカルアンテナ
地板を取り除いて円柱導体の外側に
上下逆方向にへリックスをまく
水平偏波サイドファイアヘリカルアンテナ
進行波型アンテナ,広帯域,水平面無指向性,
給電点インピーダンス50〜100Ω
用途:UHF帯テレビ放送アンテナ
垂直偏波サイドファイアヘリカルアンテナ