ミクロ経済学 第8回 生産の理論: 生産関数・限界生産 規模の経済・範囲の経済 等生産量曲線 1 生産の理論: 企業って何? • 資本・労働・土地などの生産要素を用いて生産 – 生産関数:生産要素の投入量と生産量の関係 – 費用最小化:生産要素の価格を考えて最も安く生 産できるように投入量を選択 – 費用曲線:生産量と(最小化された)費用の関係 • 利潤を最大化 – 社会的責任・従業員の満足→長期的な利潤 今日やること 1.生産関数 2.限界生産 3.規模の経済と範囲の経済 4.等生産量曲線 生産関数 Y=f(x1, x2, …, xn) 生産要素(input)の投入量 (x1, x2, …, xn) と生 産量(output)Yの関係 生産関数はあらかじめ決まっているものとして扱う (前提: 利用可能な技術のもとで効率的に生産) マジシャンの使う「ブラックボックス」 単純化のために、生産要素は資本Kと労働Lの二 つだけと仮定することが多い → Y=f(K, L) 生産関数の例 0.5 0.5 Y = K L KL K: 資本の投入量 L: 労働の投入量 資本 (K) 1 2 3 4 1 1 1.41 1.73 2 労働 2 (L) 3 1.41 2 2.45 2.83 1.73 2.45 3 3.46 4 2 2.83 3.46 4 5 生産関数のグラフ (立体図) 6 効用関数は序数的・生産関数は基数的 • 効用関数: どちらの配分がより好ましいかわかれば 効用の大きさはどうでもいい U x1 x2 U 2 x1 x2 どちらでも消費者の行動は全く同じ • 生産関数: 実際の数値が大事 Y KL Y 2 KL 企業による生産量の選択が全然違う 今日やること 1.生産関数 2.限界生産 3.規模の経済と範囲の経済 4.等生産量曲線 短期と長期 チョコレートへの需要増加→生産拡大 • 人手はすぐに増やせるけど、工場設備を増やす にはすごく時間がかかる・・・ 短期:労働や原材料などの調整は可能、資本の調 整は不可能 長期:資本を含むすべての生産要素が調整可能 ⇒短期で資本投入量を一定にしたまま、労働だけ を増やしたり減らしたりするとどうなるか? 限界生産 生産関数: Y=F(K, L) 限界生産: ある生産要素の数量だけを限界的に (1単位)増やしたときの生産の変化分 労働の限界生産: Y L • • 生産関数をLで偏微分 (Kを定数として扱ってLで 微分) Y=K0.5L0.5 のときの労働の限界生産は? 10 資本の投入量が1の時の生産関数のグラフ (立体図をK=1で上から横に切った断面図) 11 限界生産は逓減する 労働投入量が1から2に増えると、生産量はどれ だけ変化する? 労働投入量が2から3に増えた時は? 労働投入量が3から4に増えた時は? (資本投入量Kが一定のまま)労働投入量Lが増 えると労働の限界生産 K は減る 2 L ⇒限界生産は逓減する(=その生産要素の投入が 増えると少しずつ減っていく) 12 限界生産と平均生産 労働の平均生産: 労働投入量1単位あたりの生産量 Y/L 労働の限界生産: 労働投入量を限界的に1単位増やすと生産はど れだけ増えるか Y (生産量の変化分÷労働投入の変化分) L 混同しないように! 今日やること 1.生産関数 2.限界生産 3.規模の経済と範囲の経済 3.1 規模に対する収穫⇒規模の経済・不経済 3.2 範囲の経済(≠規模の経済) 4.等生産量曲線 生産規模と生産量 すべての生産要素の投入量を2倍にしたら、 生 産量はどうなるか? 資本 労働 (工場) ケーキ100個 ケーキ何個? 規模に対する収穫 すべての生産要素の投入量を2倍にしたときに 生産量はどうなるか? 生産量もちょうど2倍になるなら収穫一定 生産量が2倍より大きくなれば収穫逓増 生産量が2倍未満にしか増えなければ収穫逓減 例題 次の生産関数は収穫一定・逓増・逓減のどれか? 0.1 0.4 Y x1 x2 Y x1 x2 Y x1 x2 限界生産逓減と収穫逓減は違う 労働の限界生産が逓減 資本(例:工場設備)を変えずに労働だけ増やして いくと、労働を1単位増やすことによる生産量の増 加分は減少 収穫逓減 資本も労働も2倍にしたのに生産量は2倍未満に しか増えなかった ⇒収穫一定&各生産要素の限界生産逓減を仮定す ることが多い (例: Y x1 x2 ) 規模の経済性・不経済性 収穫逓増≒規模の経済 大規模生産: 規模を拡大することで巨大設備が利用 可能になったり分業が可能になったりする 収穫逓減≒規模の不経済 農業: 資本と労働を増やしても土地が増えてない 組織の肥大化: 資本と労働を増やしても社長は一人 ⇒実は固定された生産要素が隠れている 大学はどっち? (大学のアウトプットは何か?) 範囲の経済性≠規模の経済性 企業の多角化 ←異なる財を一緒に製造することで生産を効率化 まったく無関係な財ではなく、同じ生産要素を使 うなどの共通項が必要 例) 鉄道事業と百貨店 車とオートバイ フィルムと化粧品 異なる診療科 今日やること 1.生産関数 2.限界生産 3.規模の経済と範囲の経済 4.等生産量曲線 等生産量曲線 (isoquant) 立体的な地形を地図で表す→等高線 効用関数を2次元で表す→無差別曲線 生産関数→等生産量曲線 等生産量曲線: 生産量を一定の水準に保つ生産要素の投入量の 組み合わせ 21 生産関数を二次元で表したのが等生産量曲線 Y KL Y=3 Y=2 Y=1 22 等生産量曲線の一般的な性質 1.右下がり (よくやる間違いに注意) 生産量を一定に保つためには、どちらかを減ら したらもう一方を増やさないとだめ 2.原点にむかって凸 バランスよく生産要素を投入したほうが生産量 が大きくなる 3.右上方にある等生産量曲線ほど高い生産量 投入量を増やせば生産量は増える 4.等生産量曲線どうしは絶対に交わらない 交差すると矛盾 23 生産関数が収穫逓減の時の等生産量曲線 生産関数のグラフ 等生産量曲線 K 幅が 広い Y=4 K L 幅が 狭い Y=1 Y=3 Y=2 L 生産関数が収穫逓増の時の等生産量曲線 生産関数のグラフ 等生産量曲線 幅が Y=4 狭い Y=3 K Y=2 K 幅が 広い Y=1 L L
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