歴史教育と生活指導

授業における「発言」の活用
主体的に考え・生きる子どもの育成
これまでの確認
• 人間は社会的動物 人間の相互関係の中で
生きる。
• 社会集団の形成とその中での生活
• 学校では基礎単位としての学級集団
• 集団的関係からの排除→いじめ
• 集団的関係の崩壊→学級崩壊
• 集団形成に必要なこと 民主主義・コミュニ
ケーション・公的な関係
今日の課題
• 受動的・傍観者的→主体的な人間の育成
• 集団の運営の民主主義と相互の意思疎通
学級運営や行事等で主に学ぶ
• 教科の中でどう学ぶか
歴史教育の中で
自然科学教育の中で
ハナ・アレント再論
• すべての人にとって共通のものの現れ(共通世界)
• 共生する共同体であり、同時に各人の唯一性を尊
重する
• 自由における平等
• 暴力ではなく、言論と説得によって決定される。
• 自ら進んで活動し、語り、自身を世界の中に挿入し、
自身の物語を始める自発性の下に、私的な隠れ場
所を去って、自分を曝すこと。
アレント的公共空間と学級
• 学級の問題は
公共空間の崩壊=学級崩壊
唯一性の尊重の欠如=同質性の強要
暴力の支配と私的領域への逃げ込み=いじ
め
・ どのような学級を育成するのか
共生・公開・平等・自由・言論や討論・唯一
性(個性)の保証・活動
歴史教育・科学教育と生活指導
• 通常は無縁と思われているが、深い関係
• 授業がアレント的「公共空間での活動」として
成立するか、「一方的伝達」となるか
• 優れた授業は、アレント的活動の実現が可能
• 一方的授業は、生活指導的にはゼロかマイ
ナス
• 岐路は発言=自己表現と、相互のやりとりの
組織にある
歴史教育と生活指導
• 戦前の歴史教育は愛国心教育であり、道徳
教育であった。
– 事実とはない「立場」の授業(古代・南北朝)
– 暗記の強要(歴代天皇名)
• 望ましい歴史教育は
– 事実のみを伝達
– 民主主義的愛国心教育
– いずれとも違う歴史教育(安井俊夫)
安井俊夫の歴史教育(1)
• 系統的な歴史観と民衆史観にたっていた。
-専制的な王と虐げられた民衆
• 生徒からの疑問
なぜ東国の農民が都の天皇の墓を作るの
か。松戸の湿地帯をどのように埋め立てたの
か。→水を抜いたのではないか。
• 民衆の生活実感からの把握の必要性の自覚
安井俊夫の歴史教育(2)
• 権力の強大さを強調 → 何もできないという
諦観だけを生む。
• 「できない子の論理」をすっきりした説明で済
ませてしまう。 → 一種の差別観につながる
上に、歴史の原動力をみることができない。
• 「生活」から歴史を見ていく。
• Cf 何故「生活指導」的機能をもつのか考え
てみよう。
科学的認識と生活指導1
• 個人は「科学的認識」をもつと、モラルを尊重
した行動をとるようになるのか。
a 正しい認識が正しい行動の基礎となる。
b 認識と行動は全く別ものだ。
• 他の個人の行動を変える(改善する)のに、
科学的認識は有効か。
a 本人の内的意思こそが行動を変える。
b 科学的認識に基づいた「働きかけ」で行
動を変えることができる。
科学的認識と生活指導2
• 自然科学教育のパターン
– 確定した真理の教授
– 発見学習・実験
• 生活指導との関連
– 事実を分析する能力
– 因果関係を把握する能力
• 仮説実験授業は更に「自己表現」を付加
仮説実験授業とは何か
• 科学的認識は、科学的真理の獲得の筋道を
できるだけたどって到達するような教育方法
によって学ぶのが、効果的である。
• 科学の発展の歴史を踏まえながら、科学的な
方法(実験的な方法)によって、科学的知識を
獲得していくのが効果的である。
• 科学を学ぶ目的は、知識の獲得だけではなく
、科学や生活に対する主体的な態度を育てる
ことも含む。
仮説実験授業の方法
• 教材を分野別に「系統的」に配列する。(学習指導
要領とは異なる。)
• その系統性に沿って、学ぶべき知識とそれを確かめ
る実験を配列する。
• それぞれの知識を確認するための「問題」を配置し
、過去の科学研究の歴史を踏まえた「選択肢」を3
つ程度与える。
• はじめに「選択肢」にそって意見分布をとり、その後
討論をする。
• 討論の結果を踏まえて、意見分布を再度とる。
• 実験で確認する。
仮説実験授業の意味
• 系統的に学ぶので、理解しやすいし、高度な
ことを学ぶことができる。
• 過去の科学史を踏まえた選択肢が構成され
ているので、「間違った意見」も説得力をもつ
ことが多い。また、正しい選択よりも、相手を
説得することを高く評価するので、成績にか
かわらず、討論に参加できる。
• コミュニケーションをとり、主体的な関わりを
成長させることができる。