歴史教育と生活指導

授業における「発言」の活用
主体的に考え・生きる子どもの育成
歴史教育・科学教育と生活指導
• 通常は無縁と思われているが、深い関係
• 授業がアレント的「公共空間での活動」として
成立するか、「一方的伝達」となるか
• 優れた授業は、アレント的活動の実現が可能
• 一方的授業は、生活指導的にはゼロかマイ
ナス
• 岐路は発言=自己表現と、相互のやりとりの
組織にある
科学的認識と生活指導1
• 個人は「科学的認識」をもつと、モラルを尊重
した行動をとるようになるのか。
a 正しい認識が正しい行動の基礎となる。
b 認識と行動は全く別ものだ。
• 他の個人の行動を変える(改善する)のに、
科学的認識は有効か。
a 科学的認識に基づいた「働きかけ」で行
動を変えることができる。
b 本人の内的意思こそが行動を変える。
科学的認識と生活指導2
• aの認識は「道徳は知を基礎にする」という流
派(ソクラテス)
– コールバーグ ジレンマ教材を成長に則して扱っ
ていくと、道徳的認識が次第に深化していく
– フロイト 根源的欲望(イド)を現実的判断(エゴ)
と規範的判断(スーパーエゴ)が抑える
• bの認識は教化(ある教義をうえつける)
– 伝統的な道徳教育
仮説実験授業とは何か
• 科学的認識は、科学的真理の獲得の筋道を
できるだけたどって到達するような教育方法
によって学ぶのが、効果的である。
• 科学の発展の歴史を踏まえながら、科学的な
方法(実験的な方法)によって、科学的知識を
獲得していくのが効果的である。
• 科学を学ぶ目的は、知識の獲得だけではなく
、科学や生活に対する主体的な態度を育てる
ことも含む。
仮説実験授業の方法
• 教材を分野別に「系統的」に配列する。(学習指導
要領とは異なる。)
• その系統性に沿って、学ぶべき知識とそれを確かめ
る実験を配列する。
• それぞれの知識を確認するための「問題」を配置し
、過去の科学研究の歴史を踏まえた「選択肢」を3
つ程度与える。
• はじめに「選択肢」にそって意見分布をとり、その後
討論をする。
• 討論の結果を踏まえて、意見分布を再度とる。
• 実験で確認する。
仮説実験授業の意味
• 系統的に学ぶので、理解しやすいし、高度な
ことを学ぶことができる。
• 過去の科学史を踏まえた選択肢が構成され
ているので、「間違った意見」も説得力をもつ
ことが多い。また、正しい選択よりも、相手を
説得することを高く評価するので、成績にか
かわらず、討論に参加できる。
• コミュニケーションをとり、主体的な関わりを
成長させることができる。
仮説実験授業と生活指導
• 仮説実験授業で大切なこと(板倉)
– 一人の百歩前進によって百人の百歩前進
– 自分が自分の主人公であること
– 間違える権利
• 槌田君の例
歴史教育と生活指導
• 戦前の歴史教育は愛国心教育であり、道徳
教育であった。
– 事実ではない「立場」の授業(古代・南北朝)
– 暗記の強要(歴代天皇名)
• 望ましい歴史教育は
– 事実のみを伝達
– 民主主義的愛国心教育
– いずれとも違う歴史教育(安井俊夫)
安井俊夫の歴史教育(1)
• 系統的な歴史観と民衆史観にたっていた。
-専制的な王と虐げられた民衆
• 生徒からの疑問
なぜ東国の農民が都の天皇の墓を作るの
か。松戸の湿地帯をどのように埋め立てたの
か。→水を抜いたのではないか。
• 民衆の生活実感からの把握の必要性の自覚
安井俊夫の歴史教育(2)
• 権力の強大さを強調 → 何もできないという
諦観だけを生む。
• 「できない子の論理」をすっきりした説明で済
ませてしまう。 → 一種の差別観につながる
上に、歴史の原動力をみることができない。
• 「生活」から歴史を見ていく。
• Cf 何故「生活指導」的機能をもつのか考え
てみよう。
仮説実験授業と安井実践
• 共通点(そのまま生活指導的効果を発揮)
– 多様な見解を是認
– 表現することを重視
• 相違点
– 安井実践は、「多様性」をそのまま是認するが、
仮説実験授業はひとつの正解を実験で確定
– 安井実践は、素材から主体的な類推や判断を行
うが、仮説実験授業は、問題から予想し、それを
根拠づける