「在宅医療と 家族の位置/中立性」 京都橘大学看護学部看護学科 老年看護学 立命館大学大学院先端総合学術研究科 博士課程後期課程 仲口 路子 Eメール:[email protected] 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 1 「ケアの社会化」 介護保険法(2000年施行) 障害者自立支援法(2006年施行) 「措置」から「契約」へ 「施設」から「在宅」へ 「介護の社会化」 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 2 「家族の位置」:1 1.身体を動かす(フィジカルな支援) 身体のままならなさを「補う」介助・介護・援 助・ケアを行うこと. 社会化された介助・介護・援助・ケアを「使う」 ことを行うこと.(情報収集・ネットワーク(ひと のつながり)形成・手続き・在宅リハビリテー ション等) 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 3 「家族の位置」:2 2.「意思決定」に関わる 「終末期医療の決定のプロセスに関するガイドライ ン」 厚生労働省 2007年5月 (1)患者の意思の確認ができる場合 (2)患者の意思の確認ができない場合 (3)複数の専門家からなる委員会の設置 「救急医療における終末期医療に関する提言(ガイ ドライン)」 日本救急医学会 2007年11月 「家族」を重視し,決定権を認める 「意思決定に関わる家族」 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 4 事例1 患者:A氏 ALS療養者 入院から在宅への経過:「家族」不在のなか, 「家族」同然の関係にあると認識される「仲 間」が「家族」の役割を担わざるを得ない状況 があった.またどうしても本人でなければなら ない場合は出向くための問題もあった. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 5 事例2 患者:60代後半の女性 現病歴および入院経過:深昏睡により救急搬 送された.気管内挿管など救命処置.その後 本人には延命拒否の事前指示があることが 家人から表明される.その後患者の意識が 戻り,さまざまな説明の結果,本人から延命 拒否は翻意された. 中島弘・飯原弘二・宮本亨「延命拒否事例に見る患者の自己決定権と 生の尊厳に関する考察」脳外誌18巻1号. 2009年1月. pp35-40. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 6 事例3-1 患者:70歳代男性(透析歴14年) 現病歴および入院経過:数年前から認知症 が進行し,車椅子による全介助の状態となり, 老健施設での生活を送っていた.就寝時に嘔 吐し急速に意識障害におちいった患者を施 設のスタッフが発見し,救急隊を要請,救急 救命センターへ搬送された.開頭して血腫除 去術を行うならば脳死を回避できる可能性が 考えられたが,遷延性意識障害が残る可能 性が高く,また人工透析にともなう頭蓋内再 出血,脳浮腫増悪も懸念された. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 7 事例3-2 結局,患者家族が,脳出血発症以前の患者 との会話の記憶から,延命治療拒否の意向 があったとして,血腫除去術は行わず人工透 析も中止,第5病日に腎不全による高カリウ ム血症が明らかとなり,第6病日に患者は死 亡した. 松本直也・小川尚子・松嶋麻子・田中裕・京力 深穂・霜田求「重症脳出血を発症した慢性透析 患者に対する透析の是非が問われた症例」救急 医学.第33巻第2号.2009年2月.pp239-244. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 8 「家族」は「中立」か‥? 看護専門職→「家族の介護力」のみきわめ a)「運命共同体」「(在宅での)介護の担い手」として 「積極的介入」が期待され,求められもする. →事例1 b) また,「本人に成り代わって」「本人が考えるように」 判断することも期待され,求められもする. →事例2 c)また異なる場面では専門職の意見や本人の意見を も踏まえて「客観的に」判断することも期待され,求 められもする. →事例3 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 9 まとめ:その1 しかし,以上a) ,b) ,c)はそれぞれ対立す る場合がある. さらに対立するだけにとどまらず,すべての 判断に「負担」という関数が関与せざるを得な い,すなわち「家族は最大の利害関係者であ る」1)という危うさにも配慮しなければならない. 1)立岩真也「ALS不動の身体と息する機械」 医学書院. 2004.11.15. p135. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 10 まとめ:その2 こういった「家族」の限界を踏まえて, さらに「介護の社会化」そのものを問う必要が ある. つまり, →「ケア(介護)」を「出す」 :社会化 しかし社会化されたとされる「ケア(介護)」は 細切れでしかないので,「選択」が余儀なくさ れる.またその逆の作用もありうる. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 11 まとめ:その3 現状の問題として「フィジカルな支援」も不足 するなか, 先に見たように,終末期医療,脳死・臓器移 植にかかわる場面など,「家族」の「意思決 定」が重要視される傾向がますます強化され ているが, さまざまな制度・施策・資源などを「利用する ための調整や選択」にかかわる問題はまった く未解決な状態であるといわざるを得ない. 2009/05/16-17 第35回保健医療社会学会 熊本大学 12
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