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変圧器
•交流電圧および電流の大きさを変成する装置
•1882年,ゴーラード,ギプスらにより作られた.
•現在,電力の輸送,分配に欠かせない.
変圧器の原理(基本法則)
1. アンペアの右ねじの法則
(Ampare’s clock screw rule)
2. ファラデーの法則
(Faraday’s law)
3. レンツの法則
(Lentz’s law)
アンペアの右ねじの法則
導線に流れる電流の向きと発生する磁界の関係
ファラデーの法則
ある閉曲線により取り囲まれる磁
束をΦとするとその閉曲線上に発
生する起電力eは磁束の変化に
比例する.
d
e
dt
レンツの法則
電磁誘導によって閉回路に生ずる起電力の大きさは,
それによって流れる電流の作る磁界がコイルを貫く
磁束の変化を妨げる方向に生じる.
巻線に誘導される起電力
1回巻のコイルに発生する起電力
d
e
dt
Φ:鎖交磁束数
n回巻のコイルではそれぞれのコイルが
直列に接続されるので
d
d
e  n

dt
dt
Ψ:磁束鎖交数
変圧器の構成
鉄心
(材質はケイ素鋼板)
負
荷
入力端子
出力端子
変圧器
一次巻線
二次巻線
変圧器の誘導起電力
次の仮定の下に変圧器の特性を求める.
1. 巻線抵抗は無視できるほど小さい.
2. 鉄心の透磁率は一定,磁気飽和は無い.
3. 磁束は鉄心の外に漏れない.
4. 鉄損は無視できる.
さらに鉄心の透磁率は無限大,励磁電流が無視できる,と
仮定したものを理想変圧器という
励磁電流と主磁束
平均磁気回路長
l[m]
鉄心の透磁率をμ[H/m]とすれば,磁気
回路のパーミアンスは,

A
n1
l
で表される.
一次巻線の自己インダクタンス
L1   n12 
A
l
n12
主磁束
鉄心の断面積
Φ
A[m2]
励磁電流
一次巻線に正弦波電圧を加える.
v1  2V1 sin t
流れる電流は位相が90度遅れる.
2V1

i0 
sin(t  )
L1
2

 2 I 0 sin(t  )
2
i0を励磁電流という
主磁束
i0により発生する起磁力
F  n1i0
これにより生じる磁束
L1 
A
l
n12
2V1

  n1i0  n1
sin(t  )
L1
2
2V1



sin(t  )   m sin(t  )[Wb ]
n1
2
2
Φを主磁束という.
誘導起電力
主磁束の変化により一次および二次巻線に起電力
が生じる.(ファラデーの法則)
d
2V1 d 
 
e1  n1
 n1
  sin(t  ) 
dt
n1 dt 
2 
  2V1 sin t  2 E1 sin(t   )
誘導起電力は加えた電圧と逆位相
e1  v1



sin(t  )  sin t cos( )  cost sin( )
2
2
2
  cost
二次誘導起電力
二次側に誘導される起電力
d
2V1 d 
 
e2  n2
 n2
  sin(t  ) 
dt
n1 dt 
2 
n2
n2

2V1 sin t  2 E1 sin(t   )
n1
n1
主磁束Φ
 2 E2 sin(t   )
n2
E2  E1
n1
v1
e1
e2
巻線比と誘導起電力
2V1
2V1
2 V1
1 V1
m 





n1 2fn1 2 fn1 4.44 fn1
最大磁束密度Φmは磁気回路の透磁率とは無関係
理想変圧器ではV1=E1であるから,
E1  4.44 f  n1  m
Φmは,
•電圧に比例し
•周波数に反比例
する.
同様に,
E2  4.44 f  n2  m
したがって
E1 n1

a
E2 n2
aのことを巻数比という
位相関係とベクトル
理想変圧器の諸量とその位相関係
v1  2V1 sin t

i0  2 I 0 sin(t  )
2

   m sin(t  )


e1  2E1 sin(t   )
I0
2
e2  2E2 sin(t   )
V1
E 2
ベクトル図
E1
励磁電流
励磁電流の近似
励磁電流は正弦波ではないので交流理論から
導かれた便利な計算手法が利用できない.
実効値,鉄損が同じである正
弦波交流とみなす.
鉄損とは?
強磁性体のヒステリシス曲線のために
空間に蓄えられた磁気エネルギーが電
気回路に返還されない現象
i0  2I 0 sin(t  0 )
交流電流計により測定
力率から測定
励磁電流のベクトル図


I0
I
励磁電流
磁化電流
I0  IW  I
P0  V1 I 0 cos  0 
0
V1
IW
鉄損電流
E1
二次電流と負荷電流および一次電流
v1
e2
e1
負
荷
I2


I1
I0
'
I1
V1
IW
1.
二次側に電流が流れると主磁束
を減らす方向に起磁力が発生す
る.
2.
主磁束が減少すると誘導起電力
e1,e2が減少する.
3.
e1が減少すると(v1-e1)が大きくなり
一次側電流が大きくなる.
4.
主磁束はほぼもとの状態に戻る.
二次電流I2で減少した
磁束と,増加した一次
電流I1’で発生した磁
束は等しい.
I
n1 I1'  n2 I 2
E 2
I2
n2
1
'

I


I


I2
E1 1
2
n1
a
巻線の漏れリアクタンス
仮定:「磁束は鉄心の外に漏れない.」
実際には鉄心の外部の空間にも磁束が発生するため,一次側
で発生した磁束の一部が二次側の巻線に鎖交しない.
漏れ磁束Φl1は一次巻線とのみ鎖
交する.




l1


l2
漏れ磁束により誘導される起電力
El1は漏れ磁束より90°遅れ,大き
さは漏れ磁束の大きさに比例する.
一次巻線に誘導される起電力は主
磁束による起電力と漏れ磁束によ
り誘導される起電力を加算したもの
とみなせる.
E1  E ()  E (l1 )  e1  jx1I1
E2  E ()  E (l 2 )  e2  jx2 I 2
x1,x2はリアクタンスと同じ働きをする.
漏れリアクタンスと呼ばれる
巻線抵抗
仮定:巻線抵抗は無視できるほど小さい.
実際の巻線では電気抵抗が少なからず存在し,そのために電圧降
下が生じる.
この抵抗は一次回路,二次回路ともに存在し,その電圧降下により
誘導起電力は低下する.
実際の変圧器と理想変圧器
以上の考察から得られたより実際に近い変圧器の回路
これは
負荷抵抗
この部分は理想
的な変圧器
変圧器のベクトル図


I1
jx1 I1
V1
r1I1
I0
E1'
V1  E1'  r1 I1  jx1 I1
V  E  r I  jx I
2
2
2 2
2 2
I
V2
'
I1
IW
E 2
jx2 I2
r2 I2
I2
E1
等価回路
励磁電流の等価回路
インピーダンスの変換
変圧器の二次側に接続したインピーダンスを一次側から見ると?
したがって一次側から見たインピーダンスは
2
V2 
n2
V1
n1
n2
V1
n
V
I2  2  1
R
R
 n2 
2
 V1 
n2
n2  n1   n2  V1
I1  I 2 
  
n1
n1  R   n1  R




V1  n1 
R1      R  a 2 R
I1  n2 
変圧器を通して二次側のインピーダン
スを測定するとa2倍になって見える.
インピーダンス変換の例
R=10Ω,C=100μF,V=30V(
RMS),60Hzのとき,一次
側に流れる電流を求めよ.
L=15mH,C=60μFのとき,
電源の周波数を変化させ
たとき一次側の電流が最
大になる周波数を求めよ.
変圧器の等価回路(1)
理想変圧器の一次側と二次側
の電圧を等しいと仮定するには
二次側のインピーダンスをすべ
てa2倍すればよい.
理想変圧器の一次側と二次側
の電圧を等しいと仮定できたの
で理想変圧器の一次側と二次
側の回路を接続しても(一次側
から見た特性に)変化が無い.
変圧器の等価回路(2)
変圧器の一次側
から見た等価回路
一次側の巻線抵抗や漏れリアクタンスに
よる電圧降下は小さいので励磁回路を
電源側に接続しても大きな変化は無い
簡易等価回路(L形等価回路)
回路定数の求め方
無負荷試験
簡易等価回路における励磁回路の移動
励磁回路は本来ならば一次側,二次側区別なく同じ特性として表現されるはず.
実際の特性試験では高電圧となる一次側ではなく低電圧の二次側で励磁回路の
測定を行うことが多い.
一次側から見た等価回路
二次側から見た等価回路
二次側から見た等価回路定数の一次側への換算
無負荷試験を一次側で行う場合には高電圧を扱う必要がある(場合が多い)
二次側に定格電圧をかけて無負荷試験を行えば,比較的低電圧で測定できる.
その場合には二次側で測定した励磁アドミタンスを一次側から見た値に変換すればよい.
二次側から測定した励磁アドミタンスをg0’-jb0’
とすると,インピーダンスは逆数なので
1
Z  1 ' '
Y0 g 0  jb0'
'
0
このインピーダンスを一次側に換算すると
2
a
Z 0  a 2 Z 0'  a '  '
Y0 g0  jb0'
2
つまり,二次側から測定した励磁アド
ミタンスを一次側に換算するには励
磁アドミタンスをa2倍にすればよい.
Y0 
Y0'
g0 
g 0'
b0 
b0'
a2
a2
a2
短絡試験
変圧器の二次側を短絡して一次
側に定格電流を流す.
(実際には定格より低くても大丈
夫)
2
2
PS  I S (r1  a r2 )
Z  (r1  a 2 r2 ) 2  ( x1  a 2 x2 ) 2

VS
IS
これらより
(r1  a 2 r2 ) 
PS
I S2
( x1  a 2 x2 )  Z 2  (r1  a 2 r2 ) 2
変圧器の定格
変圧器の定格には,定格電圧(一次,二次),
定格電流(一次,二次),定格容量がある.
定格電圧は絶縁能力,鉄心の飽和磁束で
決まる.定格電圧を超えて使用すると,絶縁
破壊,鉄損の増大による異常発熱が起きる
定格電流は巻線の発熱により決まる.定格
電流を超えて使用すると,巻線の発熱量が
大きくなり,異常発熱が起きる.
定格容量は定格電圧と定格電流の積に
より求まる.だから単位はVAである.
電圧変動率(1)
電圧変動率には,実際に負荷をかけて測定する方法と,
等価回路の定数から計算により求める方法がある.
実際に負荷をかけて測定する方法
必ず定格電流,定格
電圧を通るようにする.
電圧変動率は次の式で与えられる.
V20  V2 n

100%
V2 n
しかしこの方法では大電力を使用す
る必要がある.
電圧変動率(2)
計算により求める方法
二次側に換算した変圧器のイン
ピーダンスをr,xとすると,
r
r1
 r2
2
a
jx1I1
V1
V20  V2n
Oc  Oa
100 
100
V2n
Oa
Oc 
x1
 x2
2
a
Of 2  cf 2
V20  E2

I1
r1I1
x

I0
E1'
2
I
jxI 2 n
V2
'
I1
IW
V2 n a
O
E 2
jx2 I2
r2 I2
c
I2
E1
2
rI 2 n
定格負荷時の二次側
のベクトル図
f
b
e
d
I 2n
電圧変動率(3)
V20  E2
2
Of  Oa  ad  df  V2n  rI 2n cos2  xI2n sin 2
cf  ce  ef  xI2n cos2  rI 2n sin 2
c
jxI 2 n
V2 n a
O
2
rI 2 n
f
e
b
d
I 2n
(V2 n  rI 2 n cos 2  xI 2 n sin  2 )  ( xI 2 n cos 2  rI 2 n sin  2 )  V2 n

100
V2 n
2
2
1


2
2 2
  xI 2 n
 
 rI 2 n

xI 2 n
rI 2 n




 1 
cos 2 
sin  2   
cos 2 
sin  2    1 100
V2 n
V2 n
  V2 n
 
 V2 n



電圧変動率(4)
ここで百分率抵抗降下p,百分率リアクタンス降下qを次のように定義する
rI
p  2 n 100[%]
V2 n
q
xI 2 n
100[%]
V2 n
1


2
2 2


p
q
p
  q
 


  1 
cos 2 
sin  2   
cos 2 
sin  2    1 100
100
100
100
  100
 


上式を二項定理を用いて展開し,高次項を無視すると
(q cos 2  p sin  2 ) 2
  p cos2  q sin 2 
[%]
200
二項定理:
(1  x) n  1  nx 
n(n  1) 2 n(n  1)( n  2) 3
x 
x 
2!
3!
電圧変動率(5)
第三項は他の項より小さいので,
  p cos2  q sin 2[%]
電気主任技術者試験では
この式で計算問題が出さ
れることが多い
力率が1のときは,
q2
  p
[%]
200
この場合,第二項は第一項に比べて小さくなるので
  p[%]
電圧変動率(6)
容量性負荷のとき
(力率が進みのと
き)
sin 2 が負であるとして計算する
  p cos2  q sin 2[%]
V20  E2
jxI 2 n
I 2n
O
2
V2 n a
rI 2 n
損失
•鉄損
•渦電流損
無負荷試験で測定
•ヒステリシス損
•銅損
•抵抗損
rI 22
•漂遊負荷損
•計算式で表現することが困難
効率
規約効率と実測効率
出力  入力 損失
出力
出力

100 
100
入力
出力  損失
出力

100
出力  鉄損  銅損
V2 I 2 cos 2

100
2
V2 I 2 cos 2  W0  rI 2
最大効率
V2 I 2 cos2

100
2
V2 I 2 cos2  W0  rI 2


V2 I 2 cos 2
V2 cos 2

100 V2 I 2 cos 2  W0  rI 22 V cos  W0  rI
2
2
2
I2
max

効率が最大になる電流は上式の分母が最小
になる点を求めればよい.
分母  V2 cos 2 
W0
 rI 2
I2
上式をI2で微分して零になる電流を求めればよい

W
W
d 
V2 cos 2  0  rI 2    20  r  0
dI2 
I2
I2

W0  rI 22
I 2 max
I2
鉄損=銅損
全日効率
変圧器の負荷電流は一日中変化している → 日負荷変動
一日の全出力電力量
100
一日の全入力電力量
一日の全出力電力量

100
一日の全出力電力量 一日の全損失
負荷電流
d 

2 2
V I
2 2
0
12
日負荷変動の例
24
t
V I
cos 2 dt
cos 2 dt   W0 dt   rI dt
2
2
100
連続的に変動している量を積分する
ことは困難なので,実際には数時間
毎に区切って近似的なヒストグラム
を作り全日効率を求める.
全日効率の計算
8
V I
d 
(n)
2 2
n 1
8
V I
n 1
cos 2( n )  3
8
(n)
2 2
cos 2( n )  3  24 W0   rI 2
n
100
力率
80
1
2
3
60
4
5
40
6
20
7
3
6
9
12
100
3
n 1
定格二次電流
に対する出力
電流の割合
0
2(n)
15
18
21
24
8
( n)
( n)
(n)
I2 cos2 3V2 I 2 cos2 3rI 22
W0
変圧器の極性
変圧器を製作するときに一次側の巻線の巻く方向と二次
側の巻線を巻く方向により,対応する一次,二次の巻線の
端子間に誘導する電圧の方向が逆になる.
日本で製造された
変圧器は原則的
に減極性である
V0
右図のように接続し,V1(本当はど
こでも良いが)に交流電圧を加えた
とき,V1,V2,V0の関係により極性
を判別できる.
V0  V1  V2  V1
減極性
V0  V1  V2  V1
加極性
変圧器結線法
三相結線
電力の伝送においてもっとも多く使用されているのは三相交流である.
•伝送効率
•回転機での利用
•直流生成が容易
•相数変換
三相接続の種類
•Y-Y結線
•Δ-Δ結線
•Δ-Y結線
•Y-Δ結線
•V-V結線
配線の表示方法
線だけで表現する場合もある
Y-Δ結線
Δ-Δ結線
Δ結線により3次高調波が打ち消される理由
Y-Y結線
Δ-Y結線,Y-Δ結線
V-V結線
相数の変換
変圧器の構造