2001年度 経済統計処理講義内容

産業連関分析入門
(第9章 国民経済計算 補論)
ー 経済統計 ー




産業連関表を用いた分析のことを産業連関分析と
いう。
産業連関分析には、産業間の経済相互依存関係、
生産誘発などについての経済構造分析と、均衡産
出高モデルなどを用いた経済波及効果の分析など
がある。
産業連関表には基本となる取引額表以外に、投入
係数表、逆行列表など数多くの表が示されているこ
とがおおく、それによって分析をおこなうことができ
る。
産業連関表で示される表と、それらによってどのよう
なことがわかるかについて説明していく。
<取引額表>

産業間の取引を金額で表示したもの。産業連関
分析をおこなうための出発点である。

2002年のSNA産業連関表の産業について3部
門にまとめたのが下の表である。
1次
1次
産
2次
業
3次
固定資本減耗 税
純付加価値
合計
15
23
22
19
2
41
122
産業
2次
78
1397
727
209
171
968
3550
3次
14
509
1374
758
202
2606
5463
消費
33
587
3082
投資
3
1007
211
輸出
1
457
121
輸入
-22
-430
-74
合計
122
3550
5463
<投入係数表>
 投入係数表はそれぞれの原材料の投入額を産出
額の合計で割ったものである。たとえば、第1次産
業1単位生産のためには、第1次産業の中間投入
が 15÷122=0.122 必要となる。
 第2次産業で100億円の最終需要があり、そのた
めの生産をおこなうとき、原材料として第1次産業に
2億円、第2次産業に39億円、第3次産業に20億
円の生産波及効果が生じることがわかる。
投入係数表
1次
1次
0.122951
産
2次
0.188525
業
3次
0.180328
固定資本減耗 0.155738
税
0.016393
純付加価値
0.336066
合計
1
産業
2次
0.0219718
0.3935211
0.2047887
0.0588732
0.048169
0.2726761
1
3次
0.0025627
0.0931722
0.2515102
0.1387516
0.036976
0.4770273
1


生産波及効果は次々と新たな波及効果をよぶこと
になる。先ほどの例で生じた、第3次産業の原材料
費20億円の生産には、第1次産業に20億円
×0.0025=500万円、第2次産業に20億円
×0.093=1.86億円、第3次産業に20億円
×0.25=5億円の生産波及効果をおこす。
これらが、各産業の原材料生産においておこり、連
鎖的に発生していく。
投入係数表
1次
1次
0.122951
産
2次
0.188525
業
3次
0.180328
固定資本減耗 0.155738
税
0.016393
純付加価値
0.336066
合計
1
産業
2次
0.0219718
0.3935211
0.2047887
0.0588732
0.048169
0.2726761
1
3次
0.0025627
0.0931722
0.2515102
0.1387516
0.036976
0.4770273
1
<逆行列表>
 生産波及効果を合計していったものは、逆行列表の形で表
される。逆行列表の考え方をあらわすために、取引額表を下
のように単純化する。
1次
産
2次
業
3次
付加価値
合計
1次
x11
x21
x31
V1
X1
産業
2次
x12
x22
x32
V2
X2
3次
x13
x23
x33
V3
X3
最終需要
合計
F1
F2
F3
X1
X2
X3
このモデルにおいて、行の需給バランスは次のようになる。
x11  x12  x13  F1  X 1
x21  x22  x23  F2  X 2
x31  x32  x33  F3  X 3
投入係数は次のように表される
 a11  x11 / X 1

A   a21  x21 / X 1
a  x / X
31
1
 31
a12  x12 / X 2
a22  x22 / X 2
a32  x32 / X 2
a13  x13 / X 3 

a23  x23 / X 3 
a33  x33 / X 3 
投入係数を用いて、行の需給バランスをあらわすと、
a11  X 1  a12  X 2  a13  X 3  F1  X 1
a21  X 1  a22  X 2  a23  X 3  F2  X 2
a31  X 1  a32  X 2  a33  X 3  F3  X 3
となる。これを行列であらわすと次のようになる。
 a11

 a21
a
 31
a12
a22
a32
A
a13  X 1   F1   X 1 
     
a23  X 2    F2    X 2 
a33  X 3   F3   X 3 
X + F =X
これをXについて解くと
X  ( I  A)1 F
1
となる。この行列 ( I  A) のことを逆行列係数といい、
表にまとめたものが逆行列表である。
逆行列表
(I-A )-1
1次
産
2次
業
3次
1次
1.15181
0.418253
0.391932
産業
2次
0.0449494
1.7375321
0.4862225
3次
0.0095389
0.2177206
1.3978905
<輸入を考慮した逆行列表>
( I  A) 1 の逆行列は輸入を考慮しない単純なモデルによるもの
である。国内生産に関する誘発分を推計するには、この輸入分
を除外する必要がある。
最終需要Fを国内最終需要(Fd)と輸出(E)に分け、輸入をMで
あらわすと、需給バランスは次のようになる。
AX  Fd  E  M  X
ここで、国内需要に占める輸入の割合を M とあらわすと、
M  M ( AX  Fd)
となるので、需給バランスの式に代入すると
AX  Fd  E  M ( AX  Fd)  X
となる。これをXについて解くと、
X  ( I  ( I  M ) A)1 ((I  M ) Fd  E)
となる。この (I  (I  M ) A)1 が輸入を考慮した逆行列である。
逆行列表
-1
(I-(I-M )A )
1次
産
2次
業
3次
列和
産業
行和
1次
2次
3次
1.182482 0.0584763 0.0128983 1.2538564
0.529861
1.915421 0.2708709 2.7161529
0.43774 0.5480213 1.4208202 2.406582
2.150083 2.5219185 1.7045894
これを見ると、第2次産業に100億円の需要が生じると、第1次
産業に100億×0.058=5.8億円、第2次産業に100億
×1.915=191.5億円、第3次産業に100億×0.548=54.8
億円、合計で252.2億円の生産誘発が生じることがわかる。
なお第2次産業の生産誘発には、直接の需要100億円が含ま
れている。