行列式の成立について 基礎数学I の補助教材 総合科学部 2015/9/30 大渕 朗 1 目的 行列式の定義式(教科書p.42)は大変解 りにくい どう言った理由でこの定義式が考えられ たかを解説する 定義式に抵抗感がなくなって欲しい 2015/9/30 2 ライプニッツ 行列式と言える概念を最初に考えた人 物はライプニッツである。 2015/9/30 3 百科辞典記載内容 ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ (Gottfried Wilhelm Leibniz, 1646年7月1日 - 1716年 11月14日)はドイツのライプツィヒ生まれ。哲学 者、数学者、科学者として有名だが、また政治 家であり、外交官でもあった。17世紀の様々な 学問(法学、政治学、歴史学、神学、哲学、数 学、経済学、物理学、論理学等)を統一し、体 系化しようとした。その業績は法典改革、モナ ド論、微積分法、微積分記号の考案、論理計 算の創始、ベルリン科学アカデミーの創設、 等々、多岐にわたる。ライプニッツは稀代の知 的巨人といえる。 2015/9/30 4 同時代者 同時代者にはアイザック・ニュートンが いる。 2015/9/30 5 微分積分学での貢献 一般にはニュートンは微分法の発見者 ライプニッツは積分法の発見者と言う言 われ方をしている(いろいろ「しがらみ」 はあるようだが)。ちなみに積分記号 はライプニッツに由来する記号である。 2015/9/30 6 1683年ロピタルへの手紙 ライプニッツの公刊されなかった原稿や手紙に 行列式の概念に相当するものが見られる。 1683年の手紙に以下の記述がある。 10 + 11x + 12y = 0 20 + 21x + 22y = 0 30 + 31x + 32y = 0 には解がある。なぜなら 10.21.32 + 11.22.30 + 12.20.31 = 10.22.31 + 11.20.32 + 12.21.30 だからである 2015/9/30 7 消去法 ライプニッツが言っていることは連 立方程式の消去法という技法に関 する記述である。 消去法とは、連立方程式の未知数 を消去していく方法のことで、通常 我々が用いる方法である。 2015/9/30 8 消去法を使ってみよう 消去法を使って良く知られた連立 二元一次方程式 ax+by=e cx+dy=f を解いてみると このようになります 2015/9/30 9 連立三元一次方程式のとき この消去法は連立三元一次方程式でも、 複雑だが、同じように考えることは可能。 ライプニッツが言っていたのは、 このような変形原理 に基づく計算だった。 最後の式をライプニッツは「Resultant」と 言っていた。 これが現在の行列式のこと。 2015/9/30 10 問題点 この変形消去で重要なのは、式の 各項に+と-が大変上手に振り分 けている点です。 この+と-の付く原則が解れば一 般的なResultant(現在の行列式)を 考えることが出来るでしょう。 2015/9/30 11 三次の行列式 ラグランジュの得た式(三次の行列 式と呼ばれるもの)を再度書いてみ ましょう。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 12 式の解説 式の中でどこに+、どこに-をつけ るかが問題なので、そこを見てみ よう。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 13 転倒数 添え字の右と左の入れ変わり方に 注目した「転倒数」という数(教科書 p.41)があり、+-はその転倒数で キッチリ決まる。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 14 転倒数 例えば三つ目の項は右側(赤)が 231 になっている a11a22 a33 a13a21a32 a12 a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22 a31 2015/9/30 15 転倒数 左の青の数字は1<2<3にならんで いるが、この順番の大小関係 1<2 1<3 2<3 は右の 2 3 1 では順番が狂って a11a22 a33 a13a21a32 a12 a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22 a31 2015/9/30 16 転倒数 1 2 3 では 1<2 1<3 2<3 右の 2 3 1 では 2<3 2>1 3>1 左の a11a22 a33 a13a21a32 a12 a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22 a31 2015/9/30 17 転倒数 という具合に二箇所大小関係が逆 転します。この「二箇所」ということ から「転倒数2」と言います。 a11a22 a33 a13a21a32 a12 a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22 a31 2015/9/30 18 実は 変数消去を行う際に行った+と- の附け方というのは、この転倒数 が偶数個か奇数個かで決定してい たのです。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 19 実際に計算しました 配布した資料にこの6個の項全て で転倒数を計算した式をつけてみ ました。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 20 実際に計算しました 下の+-と、転倒数から計算した +-が完全に一致していることを 確認してみて下さい。 a11a22 a33 a13a21a32 a12a23a31 a11a23a32 a12 a21a33 a13a22a31 2015/9/30 21 行列式 三元、四元などの一次方程式で 変数消去を行う際に 自然に出てくる関係式が行列式な のです。 定義式は残念ながら大変複雑です ただ・・・ 2015/9/30 22 行列式 三次の行列式は公式(サラスの公 式)として扱われかつその公式は 多用されます 四次以降の行列式は定義式を使う ことは滅多にありません(記憶しよ うと試みる事自体狂気の沙汰)。 2015/9/30 23 要求事項 講義で学んで欲しいのは 行列式が計算できるようにること (三次はサラスp.43、四次以降は p.47のテクニックにより) 2015/9/30 24
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