LCA講義全部 東北大学使用版

自動車文化と環境問題
最初は大気汚染、現在から未来は気候変動と資源
東京都庁都民ホール 11月9日
安井 至
(独)製品評価技術基盤機構理事長
東京大学名誉教授
国際連合大学名誉副学長
http://www.yasuienv.net/
1
一般環境大気測定局推移
2
自動車排出ガス測定局推移
3
ディーゼル車の排ガス規制

歴史的な進展






燃料の低硫黄化の推進
NOx偏重の日本
PM重視のヨーロッパ
燃料コスト重視の日本
CO2排出削減のヨーロッパ
無関係のアメリカ
首都圏のディーゼル規制は効果的だった
4
ディーゼルNOx(g/kWh)
NOx
窒素酸化物
8
7
6
5
4
3
2
1
0
1995
EU
日本
2010年
約1/3に
2000
2005
2010
5
ディーゼルPM(g/kWh)
PM
微粒子
0.3
0.25
0.2
EU
日本
0.15
0.1
2010年
さらに1/4に
0.05
0
1995
2000
2005
2010
6
2010年
さらに1/3
から1/4に
ディーゼル車 窒素酸化物と粒子状物質(黒煙)規制推移
7
ダイオキシンとPOPS
日本における環境問題の
推移。ただし、ごみの最終
処分問題を除く。
大気汚染
環境ホルモン
オゾン層破壊
水質&海洋汚染
土壌&底質汚染
資源・エネルギーの消費
地球温暖化
1970
2000
2050
8
1997年に京都議定書が合意さ
れたのは奇跡だった!
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


1989年:ベルリンの壁崩壊
1991年:ソ連邦崩壊
1992年:リオのサミット
1993年:EUの成立
1994年:生物多様性条約発効
1997年:京都議定書合意
2000年:ミレニアムサミット
2002年:ヨハネスブルグサミット
拡
大
期
縮
小
期
世
界
の
環
境
マ
イ
ン
ド
9
475ppm – 国環研によるシナリオ
475ppm Scenario by NIES
10
日本の気候変動防止への対応
温室効果ガスの95%がCO2
2020年中期目標:
-25%(国内・国外)
2050年長期目標:
-80%(国内)
基準年=1990年比
11
CO2排出量とGDPの関係
CO2 vs. GDP per Capita
2050
Japan
2030
Norway
12
経済発展に必要なエネルギー量
Costa Rica
2050
2050年
Japan
13
Energy Consumption
Kg Oil Eq. per capita
石油ショック
1994
1973
1987
バブル経済
1960
岩戸、いざなぎ景気
GDP per capita (PPP in $)
14
Energy Consumption / Capita
従来の経済発展と低炭素経済
先進国型
これは
相当難しい
途上国型
低炭素経済
5%経済成長には
5%エネルギー消費増大
節約型
仙人型
エコプレミアム型
GDP par Capita
15
中期目標2020(-15~25%)の達成
CO2排出量/1人あたり
=CO2発生量/エネルギー量 (a)
×エネルギー量/サービス量 (b)
×サービス量/1人あたり
(c)
 0.85[90年比-15%だとすれば]
=1.08 [2005年で+7.7%]
×0.89 (a) ( 0.83 -25%のとき)
×0.89 (b) ( 0.83 -25%のとき)
×1
(c)

16
CO2発生量/エネルギーの削減


2005年のエネルギー使用量を原油換算で
4.13億kL(16000PJ)とする
11%削減は4500万kL相当の再生可能エネ
ルギーの導入





地熱で1600万kL(ポテンシャル50%)
中小規模水力で700万kL(〃50%)
太陽熱(エコキュート付属タイプ+ガス追い炊きタ
イプ)で300万kL(〃60%)
バイオマス熱利用300万kL
風力・太陽電池その他で1600万kL
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省エネ:エネルギー量/サービス量
11%改善は何とかなるか?








自家用自動車の燃費改善3000万kL
貨物用自動車の燃費改善500万kL
建築・家屋の断熱強化
都市内家庭/業務でのガスコジェネ給湯
(+水の太陽熱予熱)
廃熱利用技術(地域暖房への活用)
エアコン(地中熱利用で北国でも)
照明などの効率向上
産業でも多少:これがどのぐらいか?
18
19
燃費改善技術
自動車工業会HPより
20
ガソリン乗用車車重と燃費推移
http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/201005/05.html
21
京都議定書
自動車:クリーンな排ガス
飛行機:燃費向上
プリウス発売
22
飛行機は、
1970年代に方向転換済み






ボーイング747:初飛行 1969年
747-400:現行モデル
747-8:次世代モデル
超音速機コンコルド
初飛行 1969年
退役:2003年11月
23
世界で自動車は何台になるか?
2000年の7億台が、2050年には3倍の20億台に
24
自動車産業の目論見(2004年発表)
「台数3倍、しかし、燃料2倍。+先端技術で1倍に」
しかし、目論見破算。バイオ燃料は10%まで? 水素は有り得ない。
やはり車重を半分にすることが必要?
さらに、プラグイン・ハイブリッド? 電気自動車か?
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バイオエタノール: Energy Profit Ratios
サトウキビ
テンサイ
トウモロコシ
糖蜜
茎、ワラ
バガス
by Harro von Blottnitz* and Mary Ann Curran
IPCC AR4 WG3:第二世代バイオ燃料が必要
Necessity of 2nd Generation Biofuel
26
日本国内の動き



トヨタ、ホンダは、プラグインハイブリッド車
三菱、日産などの電気自動車
効果:燃費3倍
理由:
ハイブリッド技術が世界No.1
リチウムバッテリーの技術が世界No.1
27
2050年
長期目標 マイナス80%
基準年1990年比
28
2050年に向けて
新コタツ文明項の追加





CO2排出量80%削減
=CO2発生量/エネルギー量 (1)
×エネルギー量/サービス量
(2)
×サービス量/満足量
(3)
×満足量/1人あたり
(4)
×人口 (2050年で30%減)
(1) 再生可能エネルギー、原発、CCS=0.6
(2) 省エネ=0.7
(3) 新コタツ文明項=0.6
(4) 不変とする=1
29
さらなる省エネ・新コタツ文明とは




必要なとき
必要なところに
必要なサービスを
必要な量だけ
cf.西欧流は、
セントラルヒーティング

30
発想の原点となった製品
パナソニック
ビューティートワレ
=便座瞬間加熱
(人感センサーによって
起動:6秒)
=温水瞬間加熱
(使用する水のみ加熱)
「必要なときだけ、
必要なところだけ」
31
電気自動車 2050年予想
二人乗り 電気自動車 航続距離は30km
2020年、2030年、、の選択肢

プラグインハイブリッド(2012年~)


電気自動車(2008年~)



トヨタ、ホンダ、スバル、三菱が表明
日産、三菱が注力
トヨタ、ホンダはカリフォルニア州ZEV(ゼロエ
ミッション車)対応が目的
燃料電池車は復活しても2050年か?

燃料電池自体が、今の形式(高純度水素のみ
が燃料・白金触媒)ではないだろう
33
電気自動車最大の問題は充電時間
16kWh(iMiev)のリチウム電池
普通充電(200V) 充電時間7時間
設置コスト 65~90万。
 中速充電(20kW) 充電時間1時間
設置コスト 250万円+工事費
 急速充電(50kW) 充電時間30分
設置コスト 800~1000万円
cf.5.2kWhのプラグインハイブリッドなら
 普通充電(100V) 充電時間 3~4時間

中部経産局作成の報告書 平成22年3月
クルマの未来とすそ野の広がりを考える懇談会
34
電気自動車普及のシナリオ
小型・軽量、電池搭載量は選択可能
 電池は、長寿命、低価格(1kWh =2万円?
cf.現在、電動自転車用 24V・5Ah=3万)
 5kWh搭載すれば、
航続距離:カタログ上50km、実質30km?
 2時間でフル充電が可能な設備(200V)があ
らゆる駐車場に設置
 カーシェアリングが主流
 長距離用発電ユニット(レンタル)を牽引可能

35
電気自動車が売れるか?

1台目用は、いくら電池を搭載しても無理だろう



なぜ? ワンボックスが売れているから!




テスラ・ロードスター 56kWhの電池=450kg
家庭(200V)で充電:30時間以上?
滅多に7人乗ることはないのに売れるのは?
現在の軽自動車を代替するニーズならOK
1台目は「プラグインハイブリッド車」が2040年
でも主流を占めることがほぼ確実である。
その後、炭素フリー液体燃料ができれば、未来
永劫プラグインハイブリッド車かもしれない。
36
プラグインハイブリッドと類似技術
実は、多種多様の方式がある。




モータ
電池
もっとも完成度高い。
複雑。
発電機
ホンダIMA型


エンジン
トヨタ・プリウス型
簡易型ではあるが、
そこそこ有効。
シボレー・ボルト型
(Extended Mileage EV)

エンジン+モータ
電池
エンジン
発電機
エンジン駆動の発電機を
プラス。性能的には疑問も。
電池 モータ
プラグインハイブリッドの燃費

(代表燃費値)


(ユーザー燃費の算出に必要な基本性能値)




複合燃料消費率=我が国の自動車の使用実態を考慮した平均燃費値
ハイブリッド燃料消費率:ハイブリッド走行時の燃料消費率
プラグイン燃料消費率:プラグイン走行時の燃料消費率
プラグインレンジ:蓄電した外部電力を活用して走行可能な距離
(エネルギー消費効率の評価に必要な基本性能値)



電力消費率:プラグイン走行時の電力消費率
等価EVレンジ:(仮に外部電力のみをエネルギー源とした場合にこれによ
り走行可能な距離)
一充電消費電力量:一回の充電において消費する電力量
http://www.mlit.go.jp/common/000033774.pdf
38
結論:車は化石燃料文明の申し子
BC 10,000
AD 10,000
39
結論:大量の資源も使う

人間(平均体重65kg)を運ぶため、



電気自動車になると、鉄とガラスとアルミとプラ
スチックだけではない。



自転車は6~32kgの道具
自動車は700~3000kg
銅、レアアース、半導体なども。
大量の資源が必要なのは、快適性と自由度を
求めているから。
現状の自動車は、単なる移動のための道具と
しては、効率的ではない。
40
同時に、車は経済の牽引役だった


今後の課題
東京と大都市における自動車のあり方



地方における自動車のあり方




何が本当に必要かの吟味
自転車レーンの整備
車が生活に必須な地域と公共交通
先進国における自動車のあり方
途上国における自動車のあり方
自動車=「経済と地球環境のバランス」
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