5月28日 第5回発表

6月11日 第7回発表
藤井 海太
国の競争優位
マイケル・E・ポーター
概要
 特定産業において、企業が競争に成功するのに、国の経
済環境、制度、政策が果たす役割はなにか
 国の競争優位、すなわち特定の産業において競争優位を
促進する国の特性とはなにかを理解する
 また、その特性が企業ならびに政府にとってどんな意味を
持つのかを理解する
本書の構成
 4パート、13章で構成されている
 パートⅠ;基礎理論
 理論について。競争戦略の原理と必要な基礎知識。
 パートⅡ;産業
 理論を応用し、四つの代表的な産業について説明する
 パートⅢ;国別研究
 国に対する理論の応用。
 パートⅣ;提言
 企業の戦略および政府の政策に対する理論の意味について
今回の範囲
 1章;新しいパラダイムの必要

パートⅠ;基礎理論
 2章;グローバル産業における企業の競争優位
 3章;国の競争優位の決定要因
 4章;国の優位のダイナミックス
国の優位の決定要因
1. 要素条件
ある任意の産業で競争するのに必要な熟練労働またはインフラストラ
クチャーといった生産要素における国の地位
2. 需要条件
製品またはサービスに対する本国市場の需要の性質
3. 関連・支援産業
国の中に、国際競争力をもつ供給産業と関連産業が存在するかしない
か
4. 企業の戦略、構造およびライバル間競争
企業の設立、組織、管理方法を支配する国内条件および国内のライバ
ル間競争の性質
関連・支援産業
 競争力のある供給企業や関連産業と競争優位には、どの
ような関係があるのか
 関連産業;企業が競争をするとき、価値連鎖の中の活動を
調整したり分担することのできる産業、あるいは補完関係
にある製品を製造する産業
供給産業
関連産業
供給産業の競争優位
 国際競争力をもつ供給企業が存在すると、川下の産業にも
優位を創造する
 機械・資材を入手しやすい(コストや品質面、優先度)
 供給企業との調整が容易(効率的に使用できる)
 イノベーションとグレードアップの過程
イノベーションとグレードアップの過程
 競争優位は、世界クラスの供給企業と産業の間に密接な業務関係が
あって生まれる
企業
供給企業の技術努力にアドバイス
情報、新しいアイディアや洞察、供給企業
の実行するイノベーションを素早く知る
開発作業の試験場所としての役割
新しい生産方法や新技術を採用する機会
供給企業
産業
企業から企業へと情報やイノベーションを伝える
国の産業全体のイノベーションのペースが加速化
イタリアの例
皮革履き物産業では、新スタイルや製造技術について、皮革メーカーと定期
的な交流をもつ
履き物メーカー
ファッション傾向
皮革についての情報
皮革メーカー
国内に競争力のある供給業者がある利点
 供給企業が市場を把握しやすい
 文化が同じである
 オープンな情報の流れをつくりやすい
 取引コストが安くなる
 本国に供給企業の研究施設があることで、早期に情報が入手で
き、共同開発など密接な形で交流できる
 外国の供給企業では、新しい参入企業を誕生させない
関連産業の競争優位
 国が関連産業において国際競争力を持つケースは多い
日本における例
関連産業の存在の影響
 供給産業のように、情報の流れと技術交流の機会が生ま
れる
 近接していることと、文化が類似であるので、外国企業よりも
容易に交流ができる
 産業内の新しい機会を認識する可能性が高くなる
 新しい競争のアプローチを持ち込む新規参入企業の源泉
となる
 一つの産業での国際的成功は、補完製品やサービスの需
要を喚起する
 アメリカのコンピュータ→周辺機器やソフトウェア
 「引き出し効果」の強さは、当該製品間の技術的相互依存
関係の程度と比例し、産業によって異なる
 「引き出し効果」は、ライフサイクルの初期段階で強くなりが
ちである。しかし、補完製品との連結が強いと、先発企業優
位を生む
 ある産業での国の成功は、もし国が多くの関連産業で競争
優位を持つとしたら、とくに間違いない
 最も大切なのは・・・
 産業のイノベーションにとってかけがえのない関連
産業
 ある産業にとって重要な技術に関連する産業
 ファクシミリ産業←複写機や通信設備
企業の戦略、構造およびライバル間競争
 四つ目の要因は、企業がつくられ、組織され、経営される
状況、および国内のライバル間競争の性質である
 企業の目標、戦略、組織体制は、国によって大きく異なる。
これらの選択と、特定産業における競争優位の源泉とがう
まく合致すると、国の優位が生まれる。
 国内のライバル間競争のパターンが、イノベーションの進
め方と、国際的成功の可能性を大きく左右する
国内企業の戦略と構造
 国の環境は、企業の管理方法と競争の仕方を傾向づける
 イタリアー中小規模、個人経営で家族の延長
 ドイツー技術畑出身のトップ、階層がはっきりした組織
 国による傾向が、競争優位の源泉にちょうど良い産業にお
いて、国は成功する
 イタリアー細分化された産業
 ドイツー高度な技術内容をもった産業
影響を与える国の側面
 権威への態度、個人間交流の規範、労働者の経営者に対
する態度、個人主義的行動か集団行動かの社会規範など
 目には見えない国の特異性から育つ
 教育制度、社会と宗教の歴史、家族構造など
 イタリア:家族所有企業ー家族の絆・生誕地への愛着ー歴史
的背景
政府の政策の影響
 国内企業の国際化の難易を左右し、成功する産業のタイプ
を決める
 イタリアの海外直接投資の制限→直接投資が競争に不可
欠な産業では成功していない
 スイスの中立政策→政治に敏感な産業で、国際的ネット
ワークをつくるのに有利に
目標
 国の内部および国の間には、企業が達成しようとしている
目標、また個人の動機に、違いが存在する
 目標と動機が、競争優位の源泉と調和している産業におい
て、国は成功する
 継続的投資が、優位を達成し持続させる要素となる
企業の目標
 企業の目標の決定に影響する要因





オーナーシップ構造
オーナーおよび債権者の動機
企業支配の性質
上級経営者の動機を形成する報酬制度
資本市場の特徴
アメリカの例
 株の大部分を機関投資家が保有。四半期ごとの株価上昇
を基準に評価。
 すぐに高騰する株を求める
 機関は資本の増価を現金に換えるため、頻繁に株を売買
 アメリカの資本市場は効率が良く取引コストが安いことも、
株の売買をますます速くする
 経営者報酬は利益に基づくボーナス部分が大きい
四半期の収益上昇を優先した投資を選
択
個人の目標
 企業内の個人のモチベーションが、特定産業での成功を促
進または妨害することがある
 競争優位をつくり持続するのに必要な努力を費やすように、
動機づけられるかどうかが関心の中心となる
 報償システム
国の威信が目標に与える影響
 ある産業が国の重要産業と見られると、競争優位が生まれ
てくる
 アメリカー航空宇宙産業
 日本ー鉄鋼業、家庭用エレクトロニクス産業
 特定産業ではなく特定課題に、国の最重点がおかれること
もある。
 日本ー製品の質の向上とエネルギー消費削減
 威信と国の重点政策が産業に有利に働くと競争優位を得
るが、逆も真である
 イギリスー製造産業で働くことは低いステータス
 国の競争優位を刺激する点で、国の威信の果たす役割は、
さらに広範に延長できる
 国は賞賛され頼りにされる活動、すなわち英雄が生まれる
活動で、競争力を高めやすい
 イタリアーファッション
 スイスー銀行と医薬品
 アメリカー金融、娯楽産業
 輝ける産業は、有能な人間を引きつけると同時に新規参入
企業を呼び込み、競争優位を得る
国内のライバル間競争
 激しい国内ライバル間競争と、競争優位の創造および維持
には強い関係がある
イノベーションへの圧力
ライバル間競争
競争優位をグレードアップさせる
イノベーションを刺激
次回に向けて
 大学院入試も一安心(?)したところで、速度を上げて頑
張っていきたい。
 産業別、国別の事例を見ていくことで、今までの概念をより
深く理解していけると思われる
 日経PRISMについてCiNiiで検索したところ、有料の論文で
した。
以上で発表を終わります