中国思想の2大体系 天人相関説と朱子の理気論 総合政策学部非常勤講師・ 愛知文教大学国際文化学部助教授 川田 健 分裂から統一へ・・・戦国ー秦ー漢 『呂氏春秋』/『淮南子』 ーいわゆる「雑家」 →諸子(特に道家・法家・儒家・陰陽家) の思想の混在 儒家:倫理観+道家:宇宙論+陰陽家:生成 論+法家:中央集権的国家論 儒教の国教化 董仲舒(前176?-104?)の献策 漢朝に統一国家としての基本理念を提供 陰陽五行説を中心とした一つの「系統的世界 観」を作り上げ、儒教倫理と融合させる。 →「諸子の思想」の吸収の上に立つ新しい儒家 思想 陰陽五行説 陰陽:万物を生み出すもの、あるいは「モノ」そのもの、自 然法則の中にある2つの相対立する要素 陰・・・静/重/柔/冷/暗 陽・・・動/軽/剛/熱/明 →万物はこの消長のバランスで成り立っている 五行:木・火・土・金・水の五元素 水 黒矢印:相克説 金 木 土 火 橙矢印:相生説 天人相関説ー自然と人事は対応する 人体=小宇宙:人は天の法則と相応する 政治も自然の法則に沿って行うべきである ーex 「官制は天に象る」 罰は秋、刑は冬に行う 災異説 君主が過ちを犯すと天は「災」を起こして警告 し、さらに犯すと「異」を起こして譴責する 君主の権威を天に結びつける一方で、君主の 行為も自然法則の拘束を受けると考える 董仲舒理論のもたらしたもの 儒家の変質ー純粋な実践哲学から神秘的要 素を加え、皇帝権力を天と直結させる →帝権神授説 陰陽五行理論の万能化ー全ての自然・社会 現象を陰陽五行に当てはめて考察する →全ての現象を既存の理論の枠組みの中で 説明する。ーー現象より理論が優先される 新儒家(朱子学)の興起 唐宋変革:世襲貴族の没落と官僚士大夫の勃興 ーいわゆる「先覚者」としてふさわしい教養と修養 の方法を模索 固定化された経典解釈(訓詁学)に対する不満 ー仏教に対抗できる儒家思想の構築 道家(道教)の本体論(宇宙論)/禅の修養論の 昇華 聖人学んで至るべし 朱子の先達たち 周敦頤(1017-1073)道教の生成論を用いた万物生成 のプロセスの図(太極図説)が朱子にヒントを与える *心が動き始める前の状態を保つ(主靜)という修養論を 提示 張載(1020-1077)気の哲学を提示、気の核としての性 を天地の性と気質の性に分ける 程顥(1032-1085)「仁」を「万物が一体であることの自 覚」とする。 程頤(1033-1107)「性即理」の命題を立て、理一分殊を 説く。 理の探求としての窮理と修養法としての居敬を提示 朱熹(1130-1200)朱子学の大成者 理の哲学ー万物にはそれを成り立たせている法 則「理」があり、それら万物の「理」は究極には一 つの「天理」に集約される 性即理ー性を本然の性と気質の性に分ける 本然の性=本来持っている性→至善 気質の性=情を含んだ個を形作る性→有善有不 善 *気質の性の不善の部分を去って本然の性を回 復することが人としてなすべきこと。 体系の確立ーその影響 自然界の生成論を人間の倫理観にリンクさせ る→あらかじめ「天理」が定められているとし たら? 性善説→定められた「天理」が実はその人の 本来の性 http://www.negima.ne.jp/ 万物一体観・の宇宙論・倫理観が 例外を認めず、多元的価値観を否定し かねないことになる 参考文献 『春秋繁露』(中国古典新書)1977 日原利国 明徳出版 『朱子学と陽明学』島田虔次 1967 岩波新書 『朱子・王陽明』(『世界の名著』続4 )荒木見悟 1974 中央公論 『朱子』(『中国の人と思想』8)佐藤仁 1985 集英社 『中国思想史』(上下)日原利国編 1987 ぺりかん社 『明清交替と江南社会』岸本美緒 1999 東大出版会 『中国的人生観・世界観』内藤幹治 1994 東方書店 《李沢厚集》 李沢厚 1988 黒龍江教育出版社
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