天文教育フォーラム 2015 トランス・サイエンス時代の天文学 磯部洋明 京都大学宇宙総合学研究ユニット フリースタイルな僧侶たち 池口龍法代表 2015年6月17-‐19日 於 京都大学人文科学研究所 天文学(者)が関わるトランス・サイエンス的課題 • 科学者一般としての責任 – 原発事故、STAP騒動 – 巨額の税金を使うことの正当化 • 関連技術の安全保障とのデュアルユース – 飛翔体観測(ロケット・衛星) – 光学望遠鏡をつかう宇宙デブリ観測や、太陽観測が関わる宇宙天気 予報は、 軍が主要なユーザ • 望遠鏡設置への反対 – TMT起工式 • SETIの危険性 – 宇宙人が友好的とは限らない cf.ホーキング 天文学(宇宙科学)の思想史的インパクト • コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、ニュートン…近代科学の幕 開け • 宇宙論、恒星進化論…永遠でない宇宙(地球) • アポロが見た地球 – “決して終わらないと思われた冷戦を終わらせたのは、究極的には宇 宙から見た地球の姿”…立花隆 • 次のインパクトは地球外生命/知性の発見? 哲学者たちの危惧 • ブレーズ・パスカル – 「この無限の空間の永遠の沈黙は私を恐怖させ る」…パンセ • バートランド・ラッセル – “Why man should keep away from the moon” • ハンナ・アーレント – アルキメデスの視点と人間疎外…“人間の条件” “宇宙空間の征服と人間の身の丈” • • 創造に満ちた偉大な時代とは、遠く離れたパートナーと刺激を与え 合える程度に情報交換ができ、しかもその頻度と速度は、集団・個 人間に不可欠の壁を小さくしすぎて交換が容易になり、画一化が 進み多様性が見失われない程度に留まっていた時代 * 人類は、真の創造が、異なった価値観からの呼びかけにたいする ある意味の聴力障害を想定し、それが異なった価値観の拒否、あ るいはその否定にまでつながるものであることを、学ばなくてはな らない* レヴィ=ストロース *「レヴィ=ストロース講義」 **「はるかなる視線」 今西錦司『民族文化などは、人間が意識的につく りあげようとしてできたものではなくて、自然に そうなってきたものでしょう。こういう文化と、 サピエンスとして人間が意識的に努力して作り出 した文化とは、はっきり分ける必要がある』 梅棹忠夫『目的的発想は自然的所与とちごうてか なり自由度が高い。洋々たる可能性をはらんでい るとともに、一面大変恐ろしいところがある』 長島天文台(昭和24年〜30年代前半) 長島愛生園入園者・依田照彦氏から 山本一清・初代花山天文台長への手紙(抜粋) • 愛生学園にいた時は毎年夏期講習として、正座や星の話をプリン トしては児童達と一緒に星の世界を眺めて楽しく宵を過ごしたこと もあります。 • 私はこの島に一生を終わる運命にあり、生をかけてこのことをやり たい念願です。 • 今後同好の士を募り、この方面の趣味を開拓して園内の一般者に も自然科学に対する関心を昂め、少しでもうるほひのある生活が 出来ますれば望外の幸せと存じています。 • 斯かる事は、国を賭しての今日の戦の下で、どうかと思われます が、私共にとっては、無為徒食に堕することなく、何か為すことが、 せめてものみ国への御奉公と信じます。 冨田良雄 山本天文台モノ資料紹介 第3回天文台アーカイブプロジェクト報告会集録 (京都大学レポジトリKURENAIよりDL可) 現代に生きる普通の人にとっての科学 現代における天文学の意義 • 天文学は、近代科学であると同時に、宇宙論、宇宙 生物学、人間原理など、トランス・サイエンス的な課 題を自らの科学的課題として内包している • 「科学への入り口」としてだけでなく、「科学」と「科学 でないもの」が一人の人、一つの社会の中に重なり をもって共存するやり方を探るのに、天文学は何ら かの役割を果たせるのではないか
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