中国思想の2大体系 朱子学の理気論 総合政策学部非常勤講師・ 愛知文教大学国際文化学部助教授 川田 健 唐宋変革 唐代中葉ー安史の乱以降の混乱 門閥貴族の経済的基盤が脅かされる→相対的な地 位の低下 新興知識人層との激しい権力闘争 →牛(牛僧孺)李(李徳裕)の政争 いわゆる古文復興運動→中国のルネサンス 四六駢儷文に対する秦漢の古文 代表:唐宋八大家 唐 韓愈・柳宗元: 宋 歐陽脩・王安石・蘇洵・蘇 軾・蘇轍・曾鞏 士大夫階級の代表として新しい儒学の担い手となる 士大夫の時代 宋代:士大夫の時代ーいわゆる家産官僚制 皇帝専制の完成 (実際は 高級官僚子弟の特権も多数存在し たが、高級官僚となるには科挙の洗礼を受け る必要がある。) 士大夫ー読書人・知識人→儒家の教養=文 化を有するもの。 新儒家(朱子学)の興起 唐宋変革:世襲貴族の没落と官僚士大夫の勃興 ーいわゆる「先覚者」としてふさわしい教養と修養の方法 を模索 固定化された経典解釈(訓詁学)に対する不満 ー仏教に対抗できる儒家思想の構築 道家(道教)の本体論(宇宙論)/禅の修養論の昇華 なにより「士大夫としていかに生きるべきか」の探求 聖人学んで至るべし 朱子学の先達たち 周敦頤(1017-1073)道教の生成論を用いた万物生成 のプロセスの図(太極図説)が朱子にヒントを与える *心が動き始める前の状態を保つ(主靜)という修養論を 提示 張載(1020-1077)気の哲学を提示、気の核としての性 を天地の性と気質の性に分ける 程顥(1032-1085)「仁」を「万物が一体であることの自 覚」とする。 程頤(1033-1107)「性即理」の命題を立て、理一分殊を 説く。 理の探求としての窮理と修養法としての居敬を提示 ただし、これは朱熹が後に「系譜化」したもの 朱熹(1130-1200)朱子学の大成者 理の哲学ー万物にはそれを成り立たせている法 則「理」があり、それら万物の「理」は究極には一 つの「天理」に集約される 性即理ー性を本然の性と気質の性に分ける 本然の性=本来持っている性→至善 気質の性=情を含んだ個を形作る性→有善有不 善 *気質の性の不善の部分を去って本然の性を回 復することが人としてなすべきこと。 理 理:玉のすじめ 普遍的道理 治=理 程顥の「天理」説 「天理とは道理」 自然の法則の全 て→道家のいわゆる「道」に近い 程頤 「理は天下の至公、利は衆人の同じく欲すると ころ」→人欲と対立するものと捉える 「所以然」の理=万物を万物たらしめる「理 「所当然」=あるべき秩序 理一分殊ー一つの理が万物を貫き、しかも親疎の別 によって厳密な差等が存在する →天理とそれを受けた万物の理という概念となる 理一分殊 気 本来ー空気状のもの(息・風・雲) →人体の中にも充満している 万物の構成要素・気分のような心理作用 万物は気の集散(張載)→万物は一気 気に陰陽ありー陰陽の動きによって集散する 「モノ」の性格ー気の核である「性」による。 万物の生成 朱子が周敦頤の「太極 図説」を利用して説く 無極而太極→理が先 に存在「一陰一陽する 所以」 気の回転によって天地 ができ、やがてそれが 相互に混ざり合って万 物となる 理と気 理と気はどちらが先か *理は気を離れては存在せず、気も理を離れ ては成り立たない「不離不雑」 →しかし、価値としては理が優先 理ー天よりもたらされる→至善 気ー善・不善いずれにも向かうことがある 性即理 性ーもともともっているもの→天から授かって いる=理・・・当然「善」でなくてはいけない ならば「悪」はどこから存在するのか? 性を二つに分ける ☆本然の性ー人間が本来持っている(はず の)天とつながっている性 ☆気質の性ー気によってもたらされる個人の 性質ー気の清濁によって善不善がある。 復初 気質を克服して「初」にもどる →聖人に至る道 格物致知一つ一つの「理」を探ることによって 理を極める 理はすでに聖人によって明らかにされている →外に理を窮めることが本然の性を取り戻す ことにつながる 体系の確立ーその影響 自然界の生成論を人間の倫理観にリンクさせ る→あらかじめ「天理」が定められているとし たら? 性善説→定められた「天理」が実はその人の 本来の性 万物一体観・の宇宙論・倫理観が http://www.negima.ne.jp/ 例外を認めず、多元的価値観を否定し かねないことになる 参考文献 島田虔次(1967) 『朱子学と陽明学』(岩波新書)岩波書 店 荒木見悟(1974) 『朱子・王陽明』(『世界の名著』続4 ) 中央公論 佐藤仁(1985) 『朱子』(『中国の人と思想』8) 集英社 日原利国編(1987) 『中国思想史』(上下) ぺりかん社 岸本美緒(1999) 『明清交替と江南社会』東京大学出版 会 小島毅(2004)『朱子学と陽明学』放送大学教育振興会
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