9.ドイツ語、英語から日本語への

14.ドイツ語、英語から日本語へ
の
借用語と借用語の発音、文法の特徴
中西紗織(ドイツ語・ドイツ文化専攻)
1.借用語とは
他の言語から別の言語に取
り入れられ、日常的に使わ
れる語彙のこと。
外来語とは
日本語における借用語のうち、漢
語とそれ以前の借用語を除いたも
の。
外来語の方が借用語より割と新し
い。
2.借用語の発音
 借用語を仮名表記する時は言語の綴りをそのま
まローマ字にするか、原語の音を反映させるか、
という二つの方策があるが現代では前者を取る
ことによって原語とはかけ離れた音になる例の
方が多い。
“award”のように、前者を取った「アワード」から後者を
とった
「アウォード」に改められている例もある。
3.統計
日本語モモの中に出ている借用語の統
計。(P.34~P.49)
 固有名詞…57
 名詞…23
 動詞…1
 形容詞…1
4.文法の特徴
 品詞でみると名詞・動詞・形容詞が主
なもの。そして圧倒的に多いのが名詞
である。使用法もかなり日本語的に
なって日本語の形容詞語尾が付いたり、
形容詞のまま日本語の副詞語尾を付け
たり多様である。
1)限定的用法
㋐日本語の助詞を補って使用する場合
…な (例ルーズな… ナイーブな… シビアな…)
*色彩語ではほとんどが「…な」の用法はもたない。
…の (例ホームメイドのクッキー、オリジナルの製
品)
…い (例ナウい)
*日本語形容詞の典型的な語尾だが、この助詞が外来
形容詞に付かないのは音節上の問題のため。
㋑外来語の名詞を修飾する場合(助詞は付かない)
(例アースカラー、ミニカー、リクルートスーツ)
(独)》Ich weiß was《, sagte ein dicker Junge mit einer hohen
Mädchenstimme,》 (P.24 L.4)
(英)’I know,’ said a fat boy with a high-pitched voice. (P.25 L.4)
(日)「あるよ。」ふとった男の子がキンキンしたボーイ・ソ
プラノで言いました。(P.35 L.13)
*この用法は日本で造られた語、和製英語がかなりある。
㋒日本語の名詞を直接修飾する場合
(例ワゴン車、ビジュアル系、クラシック音楽)
(独)…《Argo》, alle Maschinen auf Volldampf…(P.29 L.20)
(英)With all engines running full ahead, …(P.29 L.29)
(日)〈アルゴ号はエンジンというエンジンをフル回転さ
せて…
(P.43 L.10)
2)述語的用法
(例彼はロマンチストだ。母親はマイペース
だ。)
*どの語もすべて限定用法と述語的用法をもつわ
けではないのは、ドイツ語・英語(外来語)本来
の用法と同じである。
*芸術に関するものromantic(浪漫的な)、
realistic(現実的な)の日本語はあるにはあるが十
分に意を尽くしているとは言えない。
*科学技術に関する用語、virtual, digitalなどは意
味内容を適切な日本語にするのは難しい。
3)副詞的用法
(例リアルに描写する。ストレートに述べる。)
(独)Die Maschinen laufen schon auf Volldampf. (P.31 L.7)
(英)’The engines are already running full ahead, …(P.31 L.7)
(日)「エンジンはもうフルに動いている。…(P.45 L.15)
*その他fresh, juicyなどが考えられる。ジューシーは「水
分たっぷりな」というよりその状態を心に描きやすいし短
い後で使いやすい。
4)外来形容詞の名詞化
(例野球用語のフェア、ファウル
科学技術用語のポータブル・パソコン)
*科学技術やスポーツに使われる語に代表さ
れる。
5)その他
㋐省略語の用法
(例デジカメ⇒デジタルカメラ、
ポルノ映画⇒ポルノグラフィ映画)
㋑専門用語
(例ウルトラCの→1964年に開催された東京オ
リンピックで生まれた言葉で、本来は体操の日本男
子チームが生み出した難易度C以上の技のことをい
う)
㋒誤用
(例ファンタジック⇒fantastic エネルギッシュ
⇒energetic ルーズ⇒loose)
外来語の使用理由
1)本来語にあるが外来語の方が適切
⇒デリケートな(繊細な)、マニアックな(狂乱的)など
心理的な語が多い。欧米語は心理的な表現をする語を豊か
にもつ。
2)本来語に適切な語がない。
3)外来語の方が使いやすい。
4)外来語の方が適切になっている。
5)外来語の方が時代の雰囲気にあっている。
6)外来語使用によって権威づけがなされる。
7)格好よさを図る。
まとめ
外来語は新しい文化体系の中に入り込んでいくため、
自然にその意味が変化していき、用法も変わってい
く。同じように借用言語もその国の内部で時間の経
過と共に意味が変化していくためますます借用原語
と借用語の距離は離れていく。科学、技術関係、健
康に関わる語は日本語に適切なものがないこともあ
り、新しい訳語を考えることなく便利に外来語を使
うようになった。また外来語は正確な情報を伝える
というよりは、感性に訴える目的に最適である。
参考文献
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http://homepage3.nifty.com/recipe_okiba/nifongo/065.htm (2012年6月8
日)
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http://www.nenshosha.co.jp/mybooks/ISBN978_4_88978_096_3.html
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http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-m/german/ess35.html (2012年5月15日)
A GUIDE TO MODERNJAPANESE LOANWORDS by James H.M. Webb
(1990 The Japan Times)