定住外国人の参政権

定住外国人の参政権
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地域文化論講座
宇山 紗
「外国人」
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帰化(日本国籍取得者)←厳密にいうと「元外国人」
特別永住者(在日韓国・朝鮮人、など)
一般永住者
定住外国人
定住者(日系・難民・配偶者など)
長期滞在(ALT、研究者、外交など)
短期滞在(観光、出張など)
不法滞在者(認識されている、統計に現れる)
不法滞在者(認識すらされていない)
このような法的区分に加えて・・・
・日本語能力の有無
・定住-仮寓(かぐう)意識の違い
・日本社会との関わりの深浅
・参政への意欲
定住者/永住者/日本国籍取得者
永住者
帰化
定住者
一般永住者
国籍
在留期間
特別永住者
外国籍のまま
(日本国籍取得者)
日本国籍
3年又は1年で
更新必要
無期限
就労活動の制
限
なし
再入国許可
必要
2年以内なら不
要
不要
退去強制
対象となる
対象となる
(基準緩い)
対象と
ならない
必要
(7月から携帯
義務廃止)
不要
外国人登録
必要(必携)
納税義務
参政権
あり
なし
あり
(選挙権・被選挙権と
もに◎)
定住外国人が抱える問題
• 教育が保障されていない
• 医療保険未加入
• 介護、年金制度適用されない
などなど…
定住外国人の参政権
日本社会の中に生活の根拠をもち(職、住、人間関係
など)、恒常的なメンバーとなっている者で継続的居
住者
であるのに
国籍上は外国人であるがために参政権を得られてい
ない(アイデンティティとして元の国籍を残したいだけ
であって、日本で生活し貢献していく意志がないわけ
ではないのに・・・)
※在日韓国・朝鮮人82%が賛成の意志
(川崎市外国籍市民意識実態調査報告書1993)
海外の現状
滞在期間、在留資格、年収などの一定の制限は
あるが、外国人に参政権を与えている国が多い。
①国政の投票権/国籍制限 →11か国
②地方の投票権/国籍制限 →15か国
③
〃
/国籍不問 →24か国
④地方の投票権+被選挙権/国籍不問→14か国
⑤
〃
/国籍制限→12か国
→ EUなど相互主義によって
参政権を実現している国も多い
日本の現状
▼1990年代後半~:自民党時代(小渕~麻生)
→1995頃から定住外国人の参政権めぐる議論活発化
→永住外国人地方参政権法案が野党から何度も
提出されるも、自民党の反対により成立には至らず
▼1999-2000
韓国の金大中大統領、「相互主義」による参政権実現を自民党に
せまる
→連立政権の自由党(小沢)や公明党は積極的姿勢
→自民☓積極的、韓国で法案通らず
▼近年、議論の停滞・・・
民主党、野田内閣:反対。帰化手続きを簡略化すればいい
※小沢:基本的に賛成。永住外国人≒在日韓国・朝鮮人
賛成派/反対派の意見
<賛成>
• 納税の義務を果たしているのに参政権を与え
ないのは不当
• 労働力として受け入れたいのなら、待遇改善
などを求める手段として参政権与えるべき
<反対>
• 普通選挙制度のもとにあって納税を参政権
要求の根拠にするのはおかしい
• 選挙権を与えるのではなく、帰化手続きを簡
易にし、日本国籍をとればいい
法的根拠
• 反対派:憲法15条
公務員の選定・罷免権は、
「国民固有の権利」
• 賛成派:憲法93条
地方公共団体の構成員はその地方公共団体
の住民が直接選挙する
→「住民」とは「国民」だけなのか???
1993年最高裁判決:「住民」は「日本国民であることが前提」
→議論の停滞・・・
2つのモデルの間で
<外国人の政治参加実現の二つのモデル>
①外国人参政権モデル(欧州)
=外国人地方参政権実現をめざす
②帰化モデル(日本、野田さん)
=帰化の促進→国民化→完全な参政権付与をめざす
③諮問機関参加型モデル
(自治体における住民参加)
・外国人市民会議など
例:川崎市外国人市民代表者会議
外国人市民から公募
市の条例で市長の付属機関として設置(唯一の事例)
外国籍市民の視点を生かした提言を市長に提出
提言
将来的には、地方参政権の付与をめざす
が、第一ステップ(議論の停滞打破)として
・外国人の比率が3割を超える市町村の
すべてに外国人市民会議を設置する
・毎月定例会議を行い、継続的に意見を
市に提案する
・もしくは、小沢さんに参政権認める代わりに消費増税認めてください、とい
うセットでの提案をする
これまでとの違い
・年に1~3回程度の市民会議がほとんど
例:神戸市外国人市民会議
→定例化。問題提起をし続ける/フィードバックに対応
審議できる。
・神戸市、川崎市、などで限定的に実施されているだけ
→全国で一斉に実施することで、存在感を増す/多文
化都市としての競争を生み出す。
・提言をまとめるだけ
→提言を市が各担当部署に割り振るところまでやり、各
部署が取り組む
問題点
論点
• 定住外国人に参政権を与えるべきか
• 地方参政権/国政参政権←どこまで・・・?
• 選挙権/被選挙権←どこまで・・・?
• 相互主義で特定の国籍の人に与えるところ
から始めるべきか?
• 実現の難しい選挙権ではなく、新しい参政へ
の道(代替策…?)として諮問機関参加型の
モデルを模索すべきか?
参考文献
• 『日本の移民政策を考える』依光正哲(2005、
明石書店)
• 『共に生きられる日本へ』宮島 喬(2003、有
斐関)
外国人市民会議
発足時メディアにもとりあげられ脚光をあびたが、外国人の
状況を変えるクリーンヒットを打ち出せないでいる・・・
<問題点>
①法的地位
・「自治体の執行機関に付属する諮問機関」
・「要綱」による設置である場合、基盤が脆弱
②地方自治の最高機関である府県市義会との間
に有意味な関係を打ち立てられていない