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線型変換のイメージ
固有値、固有ベクトル
平賀譲(209研究室)
[email protected]
資料
http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~hiraga/LA/
話の概要
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線型写像、線型変換とは
線型変換と図形、ベクトル
固有値と固有ベクトル
線型変換と座標変換
線型変換・座標変換の応用
線型変換
• ベクトル x, y、行列 A によって:
y =Ax
で表される x → y の関係
• ( x, y は n 次元ベクトル、A は n×n 行列)
• 正比例 y=ax の一般化(多変数化)
「掛け算」で表せる関係
線型変換の(代数的)定義
• ベクトル空間 V 上の写像 f: V→V で:
足してから掛けても掛けてから足しても同じ:
f (x+y) = f (x)+f (y)
定数倍してから掛けても、掛けてから定数倍し
ても同じ:
f (ax) = af (x)
特に f (0) = 0 (0 はゼロベクトル)
• 行列積はこの条件を満たす(確かめよ):
 A(x+y) = Ax+Ay
 A(ax) = aAx
変換の合成、逆変換
• 2つの変換φ、ψ(変換行列 A, B)の合成
x → φ(x) → ψ(φ(x))
は、行列の積として表せる。
x → Ax → BAx
• 逆変換は逆行列で表せる。
x → y = φ(x)= Ax
⇒ x = A-1y
(ただし正則変換であることが条件)
(参考:「線形」と「線型」)
• “linear” の訳語で、どちらでもいいようなも
のだが、正確に言えば「線型」のほうが正
しいだろう。
• しかし世の中は「線形」のほうが優勢。
ここでは(趣味として)「線型」を用いる。
• 高校等で「1次結合」、「1次変換」、「1次独
立」などと言う場合の「1次」も同じ意味。
図形的な性質(1)
• 一般には、線型変換によってベクトルの向
きも大きさも変わる。
• どのように変わるかは、変換行列 A の性
質として決まる。
• 個別のベクトルでは特殊な性質が成り立
つものがある。
向きが変わらない⇒「固有ベクトル」
デモ1
図形的な性質(2):正則変換
• 直線 ⇒ 直線
 原点を通る直線 ⇒ 原点を通る直線
 平行な2直線 ⇒ 平行な2直線
• 同じ向きの線分は長さの比が変わらない
• 多角形 ⇒ 多角形
平行四辺形 ⇒ 平行四辺形
(長方形 ⇒ 平行四辺形)
三角形 ⇒ 三角形
図形的な性質(3):正則変換
• 円 ⇒ 円、楕円
• 放物線 ⇒ 放物線
• (一般に2次曲線は2次曲線に写る)
• 図形の面積 ⇒ 定数倍
(定数:行列式の値(の絶対値))
デモ2
図形的な性質(4):非正則な場合
• A x = 0(x≠0)となるベクトル x が存在する場
合、A は非正則行列。
• 非正則な場合、変換によって情報が失われ
る(復元不能である)。
• 例: (正)射影
1 0
0 0
x
x
=
y
0
0 0
0 1
x
0
=
y
y
デモ3
• 任意の x について、Ox = 0(O はゼロ行列)
(正則)線型変換の分類(2次元)
• 角 q の回転
cosq -sinq
sinq cosq
• 相似拡大
a 0
0 a
a 0
0 b
• 反転(鏡映)
1 0
0 -1
0 1
1 0
• ずらし変換(Shear 変換)
1 a
0 1
デモ4
(続き)
• どのベクトルの向きも変わらない変換
a 0 ←この場合だけ
0 a
• どのベクトルの大きさも変わらない変換
⇒ 直交変換(直交行列)
• 直交変換は回転と鏡映の2種類。
これに平行移動を加えたもの:「合同変換」
• 直交行列の列ベクトル同士・行ベクトル同士は互い
に直交する。
• 直交行列の行列式は±1。
固有値、固有ベクトル(1)
• 行列 A によって向きが変わらないベクトル
⇒ A の 固有ベクトル
• x が A の固有ベクトルなら、
Ax = lx
となる定数 l がある ⇒ A の 固有値
固有値、固有ベクトル(2)
• 一般に n 次正方行列には、複素数まで許
せば(重複も数えて) n 個の固有値がある。
• 回転行列の固有値は複素数(非実数)。
⇔ 回転はすべてのベクトルの向きを変える。
• 対称行列の固有値はすべて実数。
• A が非正則 ⇔ A は固有値 0 をもつ。
(Ax = 0・x = 0 だから)
デモ5
固有値、固有ベクトル(3)
• l が A の固有値なら、
Ax = lx = lI x (I は単位行列)
• したがって:
(AーlI ) x = 0
つまり行列 AーlI は非正則
⇔ det(A ーlI ) = 0 (det A は A の行列式)
• これを A の 固有方程式、
左辺を 固有多項式 と呼ぶ。
固有値、固有ベクトル(4)
a-l b
=
c d-l
• 2次元なら: AーlI
det(AーlI )
= (a-l)(d-l)-bc
= l2 -(a+d)l + ad-bc = 0
つまりl はこの2次方程式の根。
(一般に n 次行列なら n 次方程式になる)
• 参考: n 次方程式は複素数の範囲で必ず n 個
の根を持つ(代数学の基本定理)。
おまけ
• 行列A の固有多項式を f (l) とする。
このとき f (A) = O が成り立つ。
(Cayley-Hamilton の定理)
• f (l) は普通の多項式であるのに対し、
f (A) は行列の多項式であることに注意。
• 2次元の場合が高校で覚えさせられるもの:
A2 -(a+d) A + ad-bc = O
固有値・固有ベクトルの役割
• 行列 A による線型変換は、固有ベクトルの方向
には単なる定数倍として働く。
• したがって固有ベクトルを軸とする座標系では、
A は簡単な形で表せる。
 対角行列(対称行列の場合など)
 一般には対角化できない場合もあるが、その場合でも
「ジョルダン標準形」にはできる。
• ⇒ 座標変換
座標変換
• 座標系を固定して図形を変換するのと、図
形を固定して座標系を逆変換するのとは
実質的に同じこと。
例: 図形を角q 回転するのと、座標系を
角(-q) 回転するのとは同じ結果。
• 座標系の移動 ⇒ 座標変換
デモ6
座標変換(2)
•
x
1
0
=x
+y
が、一次独立なベクトル
y
0
1
a ,
b
c により x = X a + Y c と表せる
d
y
b
d
⇒(x,y) 座標系から (X,Y) 座標系への変換
x
• y
=
a c
b d
X
Y
a c
F= b d
:座標変換行列
座標変換(3)
• 行列(=線型変換)A により y = Ax とする。
• x = FX, y = FY として、FY = AFX、つまり
Y = F-1AF X (XY 座標系での変換)
• 同様に Y = BX なら y = FBF-1 x
• B = F-1AF: A の 相似変換
座標変換(4)
• xy 座標系での y = Ax を計算するには、
XY 座標系で Y = BX を計算して xy 座標系
に戻せばよい。
• B = F-1AF が簡単な形の場合に有効。
(特に B が対角行列の場合)
• 例えば An = (FBF-1)n
= (FBF-1) (FBF-1)...(FBF-1) = FBnF-1
であり、B が対角行列なら計算が簡単。
相似変換
• B = F-1AF が対角行列であるような F が存
在するとき:
B の対角成分は A の固有値
F の行・列ベクトルは A の固有ベクトル
• (一般には対角化できない場合もある。)
• A が対称行列の場合、固有値はすべて実
数、対角化可能で、F は直交行列。
線型変換・座標変換の応用
• 応用例はヤマのようにある。
漸化式(線型差分方程式)の解法
(線型)微分方程式の解法
統計解析(回帰分析、相関分析等々)
2次曲線・2次曲面の分類
コンピュータグラフィックス、計算幾何
• 正射影(平行投影)
• 透視射影
• 同次座標
事例紹介