平成 23 年電気関係学会関西連合大会での発表報告書

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 16
平成 23 年電気関係学会関西連合大会での発表報告書
篁
直 樹
Naoki TAKAMURA
情報メディア学専攻修士課程
1.はじめに
2年
( λ[0]
,λ[1]
,λ[2]
)
Λx≡Diagonal
x
x
x
(5)
Ux≡(u[0]
,u[1]
,u[2]
)
x
x
x
(6)
本研究では時間を要せず,人間の技術や感覚に影
響を受けない色合い変換の手法として,画像の固有
対象画像と同様に,参照画像の画素値ベクトルを y
値および固有ベクトルを用いた色合い変換を提案す
[m, n],平均ベクトル μ y および自己共分散行列 Ry
る.また,本手法では参照画像と対象画像の中間の
として定義し,固有値 λ[k]
,固有ベクトル u[k
]
y
y
色合いに変換することも可能である.
を求め,それらから成る行列 Uy, Λy をそれぞれ定
義する.また,変換後画像についても,画素値ベク
2.色合い変換
トル x′
[m, n],平均ベクトル μ x′
,自己共分散行列
Rx′を定義し,固有値 λ x[k]
′ ,固有ベクトル ux[k
′]
2. 1.RGB 成分の固有値問題
対象画像の位置座標(m, n)における画素の RGB
から成る行列 Ux′
,Λx′を同様に定義する.
成分から成る画素値ベクトル x[m, n],その平均ベ
クトル μ x お よ び 自 己 共 分 散 行 列 Rx を , 式 ( 1 )
(3)で定義する.
対象画像の画素値ベクトル x[ m, n ]を変換後画
像の画素値ベクトル x′
[m, n]へ次式により線形変
n]
x[m,
R
x[m,
n]≡ x[m,
n]
R
G
x[m,
n]
B
(1)
!!
!!
換する.ここで行列 A は変換行列を,ベクトル b
は移動ベクトルを表す.
1 M −1 N −1
μ x≡
x[m, n]
(2)
MN m=0 n=0
1 M −1 N −1
(x[m, n]− μ x)
(x[m, n]− μ x)T
Rx≡
MN m=0 n=0
(3)
つぎに,次式に示す自己共分散行列 Rx に対する固
有値問題を解き,固有値 λ[k
]および固有ベクト
x
ル u[k]を求める.
x
≡ λ[k]
u[k]
Rxu[k]
x
x
x
2. 2.色の線形変換
x′
[m, n]=Ax[m, n]+b
(7)
対象画像,参照画像,変換後画像の各画素値ベクト
ルの確率密度関数がそれぞれガウス性を有している
と仮定すると,各画素ベクトルの周辺分布は 1 次モ
ーメントである平均ベクトルと 2 次モーメントであ
る自己共分散行列により規定される.したがって,
k=0, 1, 2
(4)
,固有ベクトル u[k]から成
ここで,固有値 λ[k]
x
x
る行列 Λx, Ux を次式で定義する.
変換後画像の平均ベクトル μ x′および自己共分散行
列 Rx′と,参照画像の平均ベクトル μ y および自己
共分散行列 Ry とが一致するように変換を行う.つ
まり,
― S-11 ―
(a)対象画像の色分布
(b)参照画像の色分布
図1
(a) ρ =0
(b) ρ =0.25
1
−
画像の色分布
(c) ρ =0.50
図2
(c)変換後画像の色分布
(d) ρ =0.75
(e) ρ =1
中間の色合い変換
1
T
x′
[m, n]=UyΛy2 Λx 2 U(x
− μ x)+ μ y
x [m, n]
(8)
陽花へ,周辺の葉の色が濃い緑へと色合いが変換さ
れている.このとき,色変換後の画像の色分布が参
照画像の色分布へと近づいていることが確認できた
2. 3.中間の色合い変換
対象画像と参照画像の中間の色合い画像の画素値
(図 1).また,式(9)を用いて ρ の値を変化させ
ベクトル z[
ρ m, n]への線形変換を以下で定義す
た場合の色合い変換の処理結果を図 2 に示す. ρ
る. ρ を対象画像と参照画像の色合いの比率を決
の値を 0∼1 の間で変化させることで,それぞれの
定するパラメータとし,変換後画像は ρ =0 で対象
値に応じた中間の色合いに変換された画像が得られ
画像, ρ =1 で参照画像の色合いとそれぞれ等しく
ることがわかる.
なる.
4.おわりに
1
−
1
z[m,
n]=Uzρ Λzρ 2 Λx 2 UxT(x[m, n]− μ x)+ μ zρ
ρ
(9)
本研究では,画像の色合いを変換するために,対
象画像と参照画像の固有値および固有ベクトルを用
いた色合い変換を提案した.また,本研究は,対象
画像を参照画像の色合いに変換するだけでなく,そ
ここで,
の中間の色合いに変換することも可能である.提案
μ zρ =(1− ρ )μ x+ ρμ y
(10)
手法は参考画像の色合いを参考に対象画像の色合い
Λzρ =(1− ρ )Λx+ ρ Λy
(11)
変換を計算機を用いて自動的に行うため,処理が速
Uzρ =(1− ρ )Ux+ ρ Uy
(12)
く,画像処理の経験が乏しい者でも容易にディジタ
ル画像の色合い変換を行うことができる.今回の発
3.計算機実験
表では主成分分析を用いて色合い変換を行った.今
式(8)を用いて青い紫陽花の画像をピンクの紫
陽花の画像の色合いを参照することで色合い変換を
後の展開として独立成分分析を用いて結果がどのよ
うに変化するかを確認したい.
行った.変換後の画像は,青い紫陽花がピンクの紫
― S-12 ―