2種類の変換行列

1/15
2種類の変換行列
学部1年生の「線形代数学」からの復習
電通大数学:山田
2/15
青文字は線形代数の用語
座標: n 次元の線型空間 V に
基底 B = {~b1 , ~b2 , · · · , ~bn }
を1つ固定する.
「基底」の定義(1次独立, 生成 性)から V の各ベクトル ~
vは
~
v = c1~b1 + c2~b2 + · · · + cn~bn
(各 ci ∈ R)
と 基底のベクトル達の1次結合の形に表される.
しかも, その表し方(係数 c1 . . . cn )は1つの ~
v に対して 1通り
に限られる.
3/15
そこで,~
v = c1~b1 + c2~b2 + · · · + cn~bn の係数を順に並べた
 
c1
 
 c2 
 
 .  ∈ Rn
 .. 
 
cn
をこう呼ぶ:
~
v の 基底 B に関する座標(記号:[~
v ]B )
重要点: 基底をとる ことで V と Rn の対応 が決まる.
B
V −→ Rn
4/15
[例文] V = R2 とする.
[
ベクトル
]
8
−1
{[
その意味は −1
1
3
−1
]
8
[ ]
2
の 基底
[
] [ ]}
[
=3
]
2
,
1
2
[ ]
+2
−1
に関する座標は
1
1
a2
O
a1
に他ならない.
.
5/15
2種類の変換行列について、まず 座標 変換行列
6/15
観察 V = R2 で次の2種類の基底 E, A を考える.
E = {~
e1 , ~
e2 }(標準基底)
[ ]
[ ]
~
e1 =
1
0
,~
e2 =
0
1
,
A = {~
a1 , ~
a2 },
[ ]
~
a1 =
2
−1
,~
a2 =
[ ]
1
1
,
いくつかの
V = R のベクトルについて,
それぞれの基底に関する座標を表にする.
2
~
v∈V
[ ]
基底 E = {~
e1 , ~
e2 }
に関する座標 [~
v ]E
[ ]
1
1
0
0
[ ]
~
a1 =
2
−1
[]
,~
a2 =
基底 A = {~
a1 , ~
a2 }
に関する座標 [~
v ]A
[ ]
1 1
[ ]
[ ]
0
0
3 1
[ ]
1 −1
1
1
3
2
[ ]
[ ]
1
1
0
1
1
1
[
]
[
]
[ ]
[ ]
8
8
3
−1
−1
2
1
1
7/15
いくつかの
V = R のベクトルについて,
それぞれの基底に関する座標を表にする.
2
~
v∈V
[ ]
基底 E = {~
e1 , ~
e2 }
に関する座標 [~
v ]E
[ ]
1
1
0
0
[ ]
~
a1 =
2
−1
[]
,~
a2 =
基底 A = {~
a1 , ~
a2 }
に関する座標 [~
v ]A
[ ]
1 1
[ ]
[ ]
0
0
3 1
[ ]
1 −1
1
1
3
2
[ ]
[ ]
1
1
0
1
1
1
[
]
[
]
[ ]
[ ]
8
8
3
−1
−1
2
1
1
8/15
{[ ] [ ]}
[]
確認1 基底 E = 10 , 01 に関する ~v = 10 の座標 [~v ]E
[ ]
[ ]
[ ]
1
1
0
=x
0
+y
0
1
[ ]
を解くと x = 1, y = 0 なので [~
v ]E =
1
0
{[ ] [ ]}
[]
2
1
1
確認2 基底 A = −1
, 1 に関する ~
v = 0 の座標 [~
v ]A
[ ]
1
[
=x
0
を解くと x =
1
3
, y=
1
3
]
2
−1
[ ]
+y
1
1
[ ]
なので [~
v ]A
1 1
=
3 1
9/15
10/15
次の規則性がある.

1 1
P = 
3 1

−1

2
とおくと, 任意の ~
v に対して
[~
v ]A = P [~
v ]E
[ ]
[
1 1 −1
=
3 1 2
2
3
例:
][
]
8
−1
そこで この行列 P を
基底 E から基底 A への(基底の変換に伴う)座標変換行列
とよぶ.
11/15
まとめ(復習)
(I) 基底を取り替えると, それに伴って基底に関する座標も変わる.
(II) その変わり方は, 左からある正則行列をかける, という変化となる.
(III) その行列は「(基底の変更に伴う)座標変換行列」と呼ばれる.
(IV) 求め方:基底 A から基底 B への(基底の変換に伴う)
座標変換行列 は
基底 A のベクトル ~
ai (i = 1, 2, · · · ) の
基底 B に関する座標を順に並べたもの
(V) 推移性(A から B, B から C の合成則)もある
12/15
次に、 基底 変換行列
13/15
観察 基底 A のベクトル ~a1 , ~a2 の基底 E による座標 を並べた行列
を作る.
~
a1 =
[
]
2
−1
[
= 2~
e1 −1~
e2
2
···
−1
[ ]
~
a2 =
1
1
]
[ ]
= 1~
e1 + 1~
e2
1
···
1
]
[
⇒
2
1
−1
1
この式達を見ると, 始めに基底 E = {~
e1 , ~
e2 } があって, それらの
1次結合によって新しい基底 A = {~
a1 , ~
a2 } を構成した,
その構成に用いた係数(データ)を並べたものが
[
]
行列 Q =
2
1
−1
1
とみることができる. そこで この行列を
14/15
そこで, この行列を
基底 E から基底 A への基底変換行列
という.
ここで「便利な記法」の紹介
~
a1 = 2~
e1 − 1~
e2
~
a2 = 1~
e1 + 1~
e2
を1つの式


2 1


(~
a1 , ~
a2 ) = (~
e1 , ~
e2 )
−1 1
と表す.
↑
基底 {~
e1 , ~
e2 } から {~
a1 , ~
a2 } への変換行列
15/15
注意しないと 必ず混乱する!
[
]
1 1 −1
基底 E から基底 A への 座標変換行列は
3 1 2
[
]
基底 E から基底 A への 基底変換行列は
2
1
−1
1
この2つの行列は、互いに 逆行列 である.
事実 実は, 一般に 次のことが成り立つ.
「基底 A から基底 B への 座標 変換行列 」は
「基底 B から基底 A への 基底 変換行列 」に 等しい.
「基底 A から基底 B への 基底 変換行列 の逆行列」にも等しい.