PowerPoint プレゼンテーション

保育園での天文教育普及活動(天文あそび)
5 年間のまとめ
富田晃彦(とみた あきひこ)
(和歌山大学教育学部・和歌山大学宇宙教育研究所)
日本天文学会2011年秋季年会 Y09a
2011年9月19日、鹿児島大学
この研究の目的は:
園児・保育者・保護者に、
宇宙への興味をもっと膨らましてほしい。
現代の自然観につながる見方を持ってほしい。
そのための実践として:
保育園で、
宇宙(sky, space, universe)の話をしてきた。
この研究発表では:
5年間の実践を通し、
どのような手ごたえを感じたか。
どのようにすると効果的だったと感じたか。
保育園で、宇宙の話を始めた理由
保育園での遊び
(対象とやりとりし、没頭し、それを通して成長する活動)
として、宇宙は他の分野
(自然環境の区分で:植物、動物、食べ物、砂、石、水、モノ)
に比べて実践例が少ない
(「遊び」についての、報告された実践例から見て)
しかし
子どもにも大人にも、宇宙は人気分野
頭の上は、誰にでも手に入る大自然
都市部でも手に入る大自然
しかも保育園では:
園児、保育者、保護者の3者に会うことができる。
1. 園児にとって、おとぎの世界とつながりつつ、科学の世界への窓口
となる天文は大人気である。3歳では目立たないが、4歳では急に
黄道十二宮の話が好きになる。はやぶさの話は、男女問わず4歳
であればよく知っている。
3-5歳児クラス各25人ほど合同で。多くの園
児は星の話が好きで、各年齢数人は、かなり
好き。女の子も、ここに入ってくる。各年齢1
人くらいは、すでにマニアの域に達している。
Newtonを読みあさり、テレビの科学番組を見、
質問好きで、説得好きである。
はやぶさは親がはまっていて、親子で展示会
などに足を運んだようだ。
2. 園児は空の色、月、雲の形、雲の動きに大きな興味を持っている。
オリオンの三ツ星は、多くの園児がすでに見つけている。夕方遅くな
るお迎え、また帰宅まで時間がかかることは、このような気づきの機
会でもある。
担任の先生方からの報告:
う○ちの個室3人組が、窓から空を見、雲が
動くことに気がつく(3歳児)。
ISSを保護者・保育者とともに、夕方お迎えの
時、園から見て楽しむ(3-5歳児)。
オリオン座(三ツ星のことだろう)や冬の大三
角を、お母さんが子に指し示している(4歳児
になると)。
3. 園児は保護者にこの活動を伝え、保護者は、昔持っていた星への
興味を思い出すようだ。それぞれの家で、園児と保護者の間で星
の話が続く。
七夕祭り(午前中、保護者参加、親子制作)
で富田が保護者と直接話す機会あり。
毎月、葉書の半分のサイズのコレクション用
カードを作成。
4,5歳児は、家でお母さんが子に星座(小学
校で習うような話)を聞かせている。
うちゅうのおはなし
空の歳時記 「1月は…」
小寒、大寒
島根県での大雪
真冬ならではの、
天高く昇る満月(錦織佑太撮影)
おひつじ座ものがたり
4月頃の誕生星座ですが、
今、夕方に見えています。
お空、草木、そして夜空で
季節感を味わいます。
2月は:立春、雨水
2011年1月25日、富田晃彦
8がつの くさき
はなみずきの み
かきの み
さそりざ ものがたり
おりおんをさした
おおさそりの おはなし
2011ねん8がつ30にち
うちゅうのおはなし
あ ー く とぅ ー る す
きょうのいちばんぼしは、アークトゥール
べ が
ス
ベガ(おりひめ)
4. 保育者も、園児とともに星への興味を大きくさせている。園で、園児
と保育者の間で星の話が続く。
新聞記事などで気になるものを富田に質問
してくれる。
虹などの気象現象を積極的に写真に撮る。
虹の色数を数えると、7つ見えないことも見つ
けてしまっている。
園児からの質問を預かってきてくれる。
5. 園児は集中力がないと思われるだろうが、興味ある話であれば園児
は没頭し、半時間程度であれば話題数は2,3で十分である。
季節の移り変わり、天地人、を紹介している。
地の巡り、人(生活)の巡りに強い影響を与え
ているのは、天の巡りである。
「天」の話だけだと確かに園児の人気がいま
いちで、保育者からの評価も中程度にとどま
るが、「天地人」つなげると、その中で「天」の
人気が園児にも保育者にも高く出る。そうす
ると、遠慮せずに「天」の話ができる。
6. 園児はすでに理屈屋であり、見たもの、聞いたものを、とにかく説明
したがる。理屈内容が荒唐無稽なことはあるが、理屈をこねること自
体が頼もしい。
クレーターが「穴」なのは、なぜか?
(月の写真を見て)
太陽は夜、どこにあるのか?
(夜の写真から連想して)
地球が回っているとは?
(聞いてきた話を納得し直したくて)
荒唐無稽な理屈を正さないのかという批判があろ
う。総合的にモデル化したい、それを説明しあいた
い、という態度を頼もしく見守りたい。
7. 天体写真は、読み解き方を知っている者であれば、種々のものを見
抜くことができる。逆に、「素晴らしい」写真で園児に伝わらない場合
は、想像図を描いた方がいい。
8. 園児の中に入ってもみちゃにされながら話を聞くと、さまざまな質問
をしてくれる。天文学者になるという者も、すでにいる。天文学会員
は、この歳の時に天文の仕事をすると決めていたであろうか。
9. 大阪市内の保育園にアンケートを取ったところ、七夕やお月見の時
を中心に、星に関する活動がある園がある。その園では、保育者が
プラネタリウムやキャンプでの星の観察などの経験をお持ちだった。
アンケート方法
大阪保育問題研究会発行の年鑑「大阪の保育問題」(2008年度)の
付録名簿に記載のあった保育園(うち大阪市内、334園)に郵送(2009年10月24日)し、
アンケート用紙に書き込んでもらって富田まで返送(2009年11月30日までと依頼)する
方法を取った。アンケート作成では大阪保育問題研究会から助言を頂いた。
2010年1月26日までに、26園より情報をいただいた(回収率8%)。
アンケート内容
以下3項目、A4判片面1枚に、必要なら補足資料を添付いただいた。
質問1:貴園で、プラネタリウムや星を見る会など、星に関する催しものを
取り入れられていましたら、その内容について教えてください。
その場合、以下の質問2,3も、よろしくお願いします。
質問2:その後、園児さんの遊びや制作などで、
どんな展開があったでしょうか。教えてください。
質問3:このような活動を支援するに当たり、
担当の先生方にとって星に関する経験(小さい頃の体験など)が
もとになっているのでしたら、それについて教えてください。
1. 星に関する催しを取り入れていらっしゃった園は、26園
中、23園でした。その23園全てで、プラネタリウム見学
が含まれていました。
2. その後の展開例として、制作の内容に工夫が出たとお
答え下さったのが16園、子どもが星の図鑑をよく見るよ
うになったとお答え下さったのが7園、子どもが空を見
上げる機会が増えたとお答え下さったのが5園でした。
3. 担当の先生方のご経験で、このような活動支援に影響
のあったものがございましたかという質問に対し、半数
の園からご返答を頂きました。8園から、本物の星空を
見た経験、5園からプラネタリウムや科学館の訪問経験
と、お答えを頂きました。
たくさんの先生方が、
● 小さかったころ見た満天の星空
● 小さかったころ行ったプラネタリウム
● 小学校宿題で友達と一緒に星・月を見た
また、
● 流れ星を見た。
怒られ、すねて一人で屋上にいると、大流星が!「がんばろう」
● 宇宙人の絵などをよく描いた。
● 種子島宇宙センターに行ったことがある。
「園児がロケットにも興味」とお返事くださった先生ご自身が経験
● 2009年日食を見た。→ 2012年に再び日食
今も、
● ルナ(月)カレンダーを作っておられる先生も。
まとめ
天地人の季節の巡りを紹介する中で、宇宙(sky, space, universe)の
話は園児・保育者・保護者に大人気。難しすぎるといったことはない。
昼間の室内の活動だからたいしたことができないということはない。
昼間の散歩、夕方のお迎えの時、日常生活の中で、天文に関係し
た観察や、催しへの興味を示すようになる。
園児からの質問がどんどん出るようにするためには、べったりくっつ
いての活動が効果的。大判印字の上に乗るのは、その工夫の一つ。
園児が説明好きになるためには、保育者による事前事後活動が重
要。絵本にまとめて置いておくのは、その工夫の一つ。
園児・保育者・保護者、一緒に楽しんでもらうのが効果的。カード配
布は、その工夫の一つ。
臼田-佐藤 功美子さん、布施 哲治さんにもお世話になりました。
ひかり保育園には、大変お世話になりました。
http://www.wakayama-u.ac.jp/
~atomita/gartenj/