第3章 静止流体力学 - Aitai net

第3章
静止流体力学
3.1 重力場で静止した流体の圧力 54
静止流体の基礎方程式 56
3.2 様々な圧力の表示方法 58
絶対圧力,ゲージ圧力,U字管・マノメータ 59
パスカルの定理 60
3.3 壁面に働く流体力 63
垂直な壁,傾斜した壁,円筒容器,球隔 64
3.4 浮力とアルキメデスの原理 69
3.5 等圧力面 70
等圧力面方程式の導出,等圧力面の応用問題
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熱流体力学
1
3.1 重力場で静止した流体の圧力
☆静止流体の基礎方程式
z
重力場で静止している流体を考える。
座標系は図のようにとる。重力はZ
方向に,下向きに働くものとする。
微小液柱(高さdZ)の上面および下
面の圧力をそれぞれ,P1,P2とし,微
小液柱断面積をAとすれば,力のつ
りあい式はつぎのようになる。
圧力P1
断面積A
微小円筒高さdz
下向きに働く重力
P  f (z )
dz
ρgAdz
f(z+dz)
f(z)
P  P1
P  P2
P1 A  gAdz  P2 A
z
ここで,微小液柱上面の圧力P1は
Taylorの定理から
圧力P2
断面積A
dP
P1  P2 
dz
と表すことができる。
dz
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熱流体力学
z
dz
z
x
2
3.1 重力場で静止した流体の圧力(続き)
☆したがって,上面の圧力へ,この関係式を代入すれば,
dP
ただし
,
P1 A  gAdz  P2 A
P1  P2 
dz
dz
dP 

dz  A  gAdz  P2 A
 P2 
dz 

☆これより,静止流体の基礎方程式はつぎのように表される。
dP
  g
dz
これを静止水圧の基礎
方程式という。重要
3
3.1 重力場で静止した流体の圧力(続き3)
☆密度一定の条件下での静水圧の基礎方程式は,
dP
  g
dz
これを積分すると,積分定数をCとして,圧力Pは次式となる。
P   gz  C
☆境界条件:高さZ=0でP=P0(大気圧)として この場合のρの
単位は?何
2
P   gz  P0
N / m 
☆圧力の別の表現:密度のかわりに比重量γを用い,γ=ρgで
あることを考慮すれば,
P  z  P0 kgf / m 2 
(この式から得られる圧力Pは工学単位であることにくれぐれも注意するように)
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熱流体力学
4
☆3.1.1 静水圧の特徴
z
1.静止流体の圧力は液柱(タン
クなど)の断面積の大きさには
依存せず,単に高さ(深さ)のみ
の関数である。このことを図を
参照して証明せよ。
証明:タンク底面の圧力Pは
P
直径d
大気圧P 0
流体密度ρ
比重量γ
高さz
大気圧による力+流体 の自重による力
タンクの断面積
以下,自分で解き,証明しなさい。
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熱流体力学
5
3.1.2 静水圧基礎方程式の一般化
☆図に示す直交座標系において,
静止した微小な直方体の流体に
作用する力のつりあいについて考
える。この場合,微小直方体の体
積は
体積力加速度Z
z
P
P
dz
z
dy
であり,直方体には圧力の他に単位質
量あたり,例えば重力加速度のような
体積力加速度(質量力)(body force)
が働く。そこで,以下,その(x,y,z)方
向体積力加速度の成分を(X,Y,Z)
と表す。
なお,この体積力加速度(質量力)
の単位は
体積力加速度X
圧力P
dz
P
y
P
dx
x
圧力P
dx
x
である。さらに,圧力は一般に3次元的
に変化すると考えられるので,以後,
P=f(x,y,z)と表記して扱う。
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熱流体力学
6
3.1.2 静水圧基礎方程式の一般化(続き)
☆X方向の力のつり合いについて,
微小な直方体の質量:ρdxdydz
流体に作用するx方向の力:
(力=圧力・断面積)=質量・加速度
P


dx  P dydz  Xdxdydz
P 
x


,X:体積力加速度
☆x方向の静水圧基礎方程式は,
P
 X
x
☆一般化して,
P
 X ;
x
P
 Y ;
y
P
 Z
z
;
( N / m3 )
7
☆コーヒーブレイク:体積力加速度(質量力)とは?
体積力加速度(質量力)とは;重力,遠心力,コリオリ力
など質量(体積)があるがゆえに流体に作用する加速度
であり,その単位は(m/s2)である。これではその物理的
な意味が不明。そこで,分母・分子に流体質量1kgをか
けて,その意味を明らかにしよう。
m
kg  2
N
s
体積力加速度の意味(単位)

kg
kg
•なるほど,体積力加速度とは,
流体1kgに作用する力のこと
か。了解?
これで,体積力加速度の物理的な意味は理解できたかな。第6
章においてこの体積力加速度については質量力として再度学
ぶことにする。
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熱流体力学
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3.2 圧力の表示
3.2.1 様々な圧力の表示方法
☆図に示すように,水銀で
真空
満たされた容器に,細い
ガラス管
ガラス管を立て,その先
端部を真空にして,標準
760mmHg
大気圧をかけると水銀の
標準大気圧
柱は760mm上昇するこ
とがトリチェリの実験から
水銀
比重=13.6
明らかとなった。この実
験から圧力は液柱の高さ
で測定できることが判明
した。
☆様々な圧力の表示方法
2015/9/30
1)Pa, 2)mmHg, 3)mmAq,
4)atm(標準大気圧),5)at,6)torr(トル)
熱流体力学
9
☆コーヒーブレイク
1mmAqとは?
☆1mmAqとは;
図に示すように底面積1
高さ
2
1mm
m に高さ1mmの水を
ためたとき,容器の底面
底面積
に働く圧力をいう。水銀
1m
の比重はおおよそ13.6
高さ1mmの水の重さ=1kgf
であるので水銀柱1mm
1kgf

 1mmAq  9.8Pa
Hgの圧力は,1mmAq 底面の圧力  水の重さ(力)
底面積
1m
の圧力の13.6倍となる。
2
2
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熱流体力学
10
☆圧力の重要な換算関係式
・1標準大気圧=1atm=760mmHg=760torr(トル)
=10.33mAq=10332kgf/m2
左の四角の空
=101.325kPa
欄を各自で埋
2
・1工学気圧=1at=1kgf/cm
め,様々な圧力
換算ができるよ
=735.5mmHg=10mAq=98.07kPa
うにしよう。
・1bar=106dyne/cm2=105Pa
=750mmHg=10.2mAq
・1mmAq=1kgf/m2=0.0735mmHg
=9.807Pa
・1mmHg =1torr(トル)=13.6mmAq=133Pa
ただし,水銀の比重は13.6(=13.5951)として圧力換算を
行うこと。
11
3.2.2 絶対圧力とゲージ圧力
絶対圧力(absolute pressure):絶対真空を基準(=0Pa)とした圧力。
絶対圧力は常に正の値となる。
ゲージ圧力(gauge pressure):標準大気圧を基準(=0Pa)とした圧力。
標準大気圧以下の圧力は負で表される。
下図は,絶対圧力とゲージ圧力の関係を示しており,図から明らかなように
ゲージ圧力=絶対圧力-標準大気圧
ちゃんと
忘れずに
理解して
ね!
任意点圧力
ゲージ圧力
標準大気圧
760mmHg
101.3KPa
真空度 0%
任意の真空
絶対圧力
標準大気圧
絶対真空
0(Pa)
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真空度100%
熱流体力学
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☆3.1 静水圧の基礎方程式の研究課題
1.水深10000mの水圧はゲージ圧力でいくらか。また海水
10000mの深海における圧力はゲージ圧力でいくらか。ただし,
水の密度はρ=1000kg/m3とし,海水の比重は1.03とせよ。
2.地上10000mの空気の圧力を静水圧の基礎方程式から,絶対
圧力で求めよ。ただし,空気の密度はρ=1.293kg/m3一定と仮
定せよ。さて,実測された上空10000mの空気の圧力Pは標準
大気圧力をP0としたとき,P/P0=0.261であった。理論計算結果
と実際の差について考察せよ。
3.直径1mの球体容器内部に,それぞれ水,水銀,空気を充満さ
せたとき,球の内壁面に働く圧力分布を図示し,液体に比べて
気体の圧力変化は十分小さく,場合によっては無視できることを
学べ。
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熱流体力学
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☆コーヒーブレイク:地球上空の空気の密度はどのよう
に変化するの?
• 地球上空の空気密度は一定ではない。ラプラス
(Laplace)によって,つぎの実験式が提案されている。
Mg
(3.10)
h

 h  0e
RT
• ここで,式(3.10)に使用されている記号は,
M:分子量,T:絶対温度,h:地表からの高さ,ρ:地表
における空気密度,R:ガス定数である。なお,参考と
して,空気の分子量M,密度ρおよびガス定数Rはそ
れぞれ;
M=28.96,ρ=1.293kg/m3(0℃,1気圧)
R=0.287(kJ/(kg・k) ;である。
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熱流体力学
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大気圏の構造(密度・温度)
☆地球の大気は、高さ80km程度まではほぼ同じ組成 。O2,N2が主成分
☆対流圏(10Kmから17Km,温度0.6℃/100mで低下,ジャンボ飛行圏),成層圏(20Km
から50Km),中間圏(50Kmから80km,温度-80℃),熱圏(80Km以上,シャトル飛行
圏,温度は1000Kにもなる。)
15
大気圧力の実測値
実測値(機械工学便覧昭和52年)
上空高さz(m)
1.000
101.325
100
0.988
100.129
500
0.942
95.458
1000
0.887
89.865
2000
0.785
79.489
3000
0.692
70.107
0.60
4000
0.608
61.636
0.40
5000
0.533
54.026
0.20
6000
0.466
47.197
0.00
7000
0.406
41.087
8000
0.352
35.636
9000
0.304
30.783
10000
0.261
26.486
1.20
1.00
圧力比(P/P0)
圧力P(kPa)
0
空気の圧力変化の実測値
0.80
圧力比(P/Po)
0
5000
10000
15000
地表から上空までの高さz(m)
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圧力比(P/Po)
熱流体力学
16
大気圧の予測(続き)
☆完全ガスの状態方程式PV=RTから,密度はρ=1/Vで表され,
∴ρ=P/RT
さらに,P=-ρgz+P0へ,ρを代入して
P
上空高さz(m)
P0
gz 

1 

 RT 
のような実験式が提案で
きる。
空気の地表からの圧力P(kPa)の計算予測値
空気の圧力p(kPa)
120.0
圧力の実測値
温度T=一定
温度T=T0-1.0Z/100
温度=T0-1.8Z/100
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
0
2500
5000
7500
10000
地表から上空までの高さz(m)
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T=T0-(1.0z/100)
熱流体力学
温度(k)
圧力(kPa)
0
300
101.325
100
299
100.180
500
295
95.778
1000
290
90.644
2000
280
81.446
3000
270
73.441
4000
260
66.412
5000
250
60.190
6000
40
54.644
7000
230
49.670
8000
220
45.182
9000
210
41.114
10000
200
37.410
17
☆3.2 圧力の表示の演習問題
1.つぎの各種の圧力を括弧内に記した圧力の単
位に換算せよ。ただし,水銀の比重は13.6とする。
1)100kPa (mmHg)
2)10mAq (kgf/m2)
3)960 mbar (kPa)
4)2atm (kPa)
5)1.02at (mmAq)
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熱流体力学
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3.2.3 パスカルの原理
以下の1)から3)の流体圧力の性質をまとめて,
パスカルの定理という。
1)垂直性:圧力は流体が接している壁や,液体内に置
かれた物体の表面に垂直方向に力をおよぼし,物体
表面の接線方向には力をおよぼさない。
2)等方性:一点に集中する圧力は方向に無関係に一定
である。
3)密閉容器内の液体に加えた
圧力は全ての部分にそのまま
この意味はわかりま
すか。次の図で理解
の強さで伝わる。
してネ。
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熱流体力学
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例題:油圧シリンダ
☆右図は大小2個のシリンダ中に液体と
して油を封入した油圧シリンダにピスト
ンによって力を加えた例を示している。
パスカルの定理から,断面積A1のピスト
ンに加えられた圧力Pは,断面積A2のピ
ストンに同じ大きさで伝えられるから,断
面積に発生する力F2は,圧力をPとして
F
A
F2  PA2  1 A2  2 F1
A1
A1
であり,力F2は,A2/A1倍増幅される。
(大きい力を発生できる。てこの原理)
一方,力F2は増幅できるが,ピストンス
トロークL2(変位)は,流体が圧縮されな
い限り,つぎの連続の式が成り立つ必
要があるため,
L1 A1  L2 A2 ∴
L2 
A1
L1
A2
力F2
力F1
L2
L1
断面積
A1
断面積
A2
ストロークL2は
A1/A2 倍
減少することになる。(てこの原理とエネルギ
の保存関係を理解することが大事)
20
☆3.2.3 パスカルの定理の研究課題
1.先ほどの図の油圧シリンダにおいて,ピストン
小の直径が40mm,大の直径が200mmであ
るとき,
1)ピストン大にF2=1000kgfの力を発生させるた
めに必要なピストン小を押す力F1を求めよ。
2)上記1)の状態で,ピストン大を10cm上昇さ
せるには,ピストン小を何cm下降させればよ
いか。
2015/9/30
熱流体力学
21
3.2.4 U字管・マノメータ
☆液柱圧力計(マノメータ)と
は:右図に示すように,透明
なU字型のガラス管などに
液体を入れたものである。U
字管マノメータともいい圧力
測定に用いられる。
圧力P2
圧力P1
点A
高さh
点B
点C
密度ρ
1)U字管マノメータ(U-tube manometer)
図において,点Bと点Cの高さが等しいから,パスカルの定理より次式が
成り立つ。B点,C点の圧力をPB,PCとした時,
PB  PC  P2
2015/9/30
; なお,図から明らかなように
熱流体力学
PA  P1
22
3.2.4 U字管・マノメータ(続き)
☆U字管における液面の高さ
の差をh,液体の密度をρ,
比重量をγとすれば,静水
圧の基礎方程式dp/dz=-ρ
gから,U字管における圧力
差はつぎのようになる。
P2-P1=ρgh
圧力P2
圧力P1
点A
高さh
点B
点C
密度ρ
(Pa)
または,工学単位では
P2-P1=γh
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(kgf/m2)
熱流体力学
23
☆3.2.4 U字管・マノメータの研究課題(その1)
1.右図,左側の圧力Paを絶対圧
力およびゲージ圧力で求めよ。
ただし,高さはH=5m,密度ρa
=1000kg/m3とする。なお,標
準大気圧はP0=101.3kPaとす
る。
2.右図,右側の圧力Paを絶対圧
力およびゲージ圧力で求めよ。
ただし,高さはH1=5m,H2=7m, ヒント:同一点の圧力は等しいに着目
密度ρa=1000kg/m3 ,ρb=
Pa  a gH1  P0  b gH2 ;右側
13600kg/m3,標準大気圧は
P0=101.3kPaとする。
P  gH  P
標準大気圧P0
標準大気圧P0
圧力Pa
密度ρa
高さH2
高さ
H 高さH1
圧力Pa
密度ρb
密度ρa
0
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熱流体力学
a
;左側
24
☆3.2.4 U字管・マノメータの研究課題(その2)
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熱流体力学
12cm
A
石油
水
36cm
B
20cm
3.図に示すように,AB間
に石油,BC間に水,CD
間に水銀を入れたタンク
がある。各点の圧力を,
絶対圧力およびゲージ
圧力で求めよ。ただし,
石油の比重は0.8,水の
比重は1.0,水銀の比重
は13.6,標準大気圧は
760mmHgとせよ。
C
D水銀
水銀
25
3.3 壁面に働く流体力
☆図に示されるように,任意物体が静止流
体中に置かれたとき,物体壁面に働く全体
の力を全流体力という。
この全流体力は,物体壁面に垂直な外向
きの法線ベクトルをnとすれば,微小面積
dAに働く流体力はPdAであるから,これを
物体の表面について面積積分すればよい。
したがって,全流体力Fは
n
微小面積
dA
物体壁面
全流体力F
圧力
分布
F    P ndA
A
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熱流体力学
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3.3.1 垂直壁面に働く流体力(その1)
液表面
流体密度ρ
幅b(y)
y
yG
yC
微小面積
dA
dy
y座標は下向き
(重力方向)を正
にとるから注意し
てね。
重心
全流体力F
圧力の中心
圧力
P=ρgy
y
熱流体力学
27
3.3.1 垂直壁面に働く流体力(その2)
液表面
☆以下順次空欄を埋め,全流体
流体密度ρ
力を求める。
幅b(y)
y
図の楕円板における黄色い部分
の微小面dAは横幅をb(y)として,
yG
yC
微小面積
dA
dy
dA=b(y)dy
重心
全流体力F
圧力の中心
圧力
P=ρgy
液面からの深さy=yにおける
圧力Pは流体の密度をρ,重
力加速度をgとして
y
P=ρgy
さて,図示された液表面から図心(重心)ま
での高さをyGとすれば,断面1次モーメント
(図心)の定義から
したがって,全流体力Fは
F  A PdA   gyb ( y)dy

A
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yb ( y )dy   ydA  yG A ∴
A
熱流体力学
F  gyG A
28
3.3.1 垂直壁面に働く流体力(その3)
したがって,全流体力は
F  gyG A
・全流体力=(物体の図心位置の圧力)×(全物体壁面面積)
・全流体力の作用点yc:圧力の中心(center of pressure)
力の釣り合い式(全体のモーメント=∑個々のモーメント)から
FyC   gy 2 b( y )dy , gyG AyC  gy2b( y)dy  gy2dA


・断面2次モーメントの定義
から
I   y 2 dA
・圧力の中心位置yc:上の断面2次モーメントを用いて,
1
yC 
I
yG A
・なお,当然のことながら圧力の中心位置yc>図心の位置yGである。
29
3.3.2 傾斜壁面に働く流体力(その1)
液表面
傾斜角度θ
z
Zc
流体密度ρ
幅
zG
b(
y)
y
Zは重力の作用
方向を正にとっ
てあるからね。
yG
微
小
面
dA 積
dy
yC
重心
全流体力F 圧力
の中
心
z
2015/9/30
熱流体力学
30
3.3.2 傾斜壁面に働く流体力(その2)
☆任意位置Z=Z(y=y)におけ
る圧力p,全流体力Fおよび図
心位置ZGはつぎのようになる。
液表面
傾斜角度θ
P  gz  gy sin 
z
Zc
流体密度ρ
幅b
(y)
zG
y
F  g sin   yb ( y)dy
dA
Z G  yG sin 
G
面積
yC
dy
重心
全流体力F 圧力
の中
心
☆図心の定義式は
 yb( y)dy  y
yG
微小
z
A
である。
☆傾斜壁面における全流体力Fは, 微小面積が dA  b( y )dy であることから,
F   PdA   gzdA g sin   yb ( y)dy  gy A sin   gz A
F  gyG  z軸への投影面積 結局,傾斜板をz軸に投影
した面積(Asinθ)にy軸重
G
G
心点における圧力ρgyGを
かければよい。
31
3.3.2 傾斜壁面
に働く流体力(その3)
液表面
傾斜角度θ
z
Zc
☆圧力の中心Zc:全流体力が1点に集
中したと考え,その作用点を求める。
流体密度ρ
幅b
(y)
zG
y
微小
面
dA 積
Zc  yC sin 
I   y dA
dy
yC
重心
☆断面2次モーメントの定義式は,
2
yG
全流体力F 圧力
の中
心
である。
z
☆力の釣り合い式(全体のモーメント
=∑個々のモーメント)から
Fyc   PydA  gzyb( y )dy  g sin  b( y ) y 2 dy
☆全流体力が作用する圧力中心ycは
F  g sin  yb( y)dy  g sinyG A  gzG A で表されたから,結局ycは
yC 
1
yG
b( y) y
A
2
dy 
1
yG
y
A
2
dA
∴圧力中心
yC 
1
yG A
I
32
☆コーヒーブレイク:流体が壁面に与える力のパラドックス
下記図における全流体力に関するパラドックスを考えてみよう。
(1)水位はすべての容器において同じ高さであり,かつ容器の底面積もすべて等しい。
したがって容器の底の圧力はすべて同じである。
(2)容器の底面を押す力は,圧力×底面積で与えられる。したがってどの容器も同じ力
で底面を押している。
(3)それなのに,底面をおす力を実測すると,計量はかりの目盛りが違うのは,何故?
B
A
C
D
水位は同じ高さ
底面の圧
力も同じ
底面の容器
面積もすべ
て同じ
2015/9/30
流体が押す
力は
底面積*圧力
熱流体力学
なのに何故
はかりの指
示値はちが
う?
33
☆3.3 壁面に働く流体力の研究課題
1.下図(a),(b)の平板に働く全流体力および圧力の中心位置を求めよ。ただし,流
体の密度はρ=1000kg/m3とする。
2.上辺が100m,下辺が50m,高さ50mの台形形状をしたコンクリート製ダムが満
水時にかかる全流体力はいくらとなるか。またそのとき,圧力の中心は上辺から
何m下になるか。ただし水の密度は1000kg/m3とせよ。
水表面
a
y
y
dA=bdy
dy 長方形板
y
2015/9/30
水表面
h
h
b
dy
y
熱流体力学
dA 
by
dy
h
b
34
3.3.3 中空円筒に働く全流体力(その1)
☆下図に示すように半径r,長さLの半割中空円筒の内部に静止した流体があり,
その内部の流体圧力がPである場合の全流体力を考えてみる。
図に示されるように,円周の微小角度をdθとすれば,微小面積はdA=rdθLで
あり,この部分に働く紙面上方向の微小な力dFは,
dF  P sin dA
したがって,全流体力Fはつぎのようになる。

F   dF  A P sin dA  0 P sin rLd  Pr L cos 0

 2rLP  DLP
r方向全流体力 F
r
P
内部圧力P
dθ
θ
θ
dA=rdθL
微小面積dA
長さL
板厚 t
全流体力は,半割円筒の
投影面積(直径×長さ=
D×L)に圧力Pをかければ
よい。
半径r
35
3.3.3 中空半球(マグデブルグの半球)に働く
全流体力(その2)
☆中空の球体に働く流体力について考え
る。球の内半径をr,圧力Pは一定と考え
て問題を解く。このとき,図に示すように,
微小な帯状(灰色部分)の面積dAは,
微小面積dA
dA=2πrsinθrdθ
板厚t
dA  2r sin rd
半径r
r方向全流体力
内部圧力P
r
θ
半径r方向に働く微小な力 dFは
dθ
dF  P cosdA
rdθ
θ
したがって,全流体力Fは
F   dF  
A
 2
P cosdA  
0
P
 2
P cos 2r sin rd  r 2 P 
0
 r P 0 sin 2 d  r P cos 2 0
2
2015/9/30
 2
2
 2
1
 r 2 P
2
熱流体力学
2 sin  cosd
この場合も結局,投影
面積に圧力をかけれ
ばよい。
36
3.4 浮力とアルキメデスの原理
☆浮力(buoyancy)Fは物体が排除し
た全体積Vに比例する。
液体表面
浮力
h1
F  gV
☆証明
物体
h2
右図において,深さh1の点の圧力P1は流体
の密度をρとすれば,
P1  gh1
微小断面
積dA
流体密度
ρ
であり,深さの点(h1+h2)の圧力P2
物体の自重
P2  g h1  h2 
したがって,微小液柱(断面積dA)に上向きに働く微小な力dF(浮力)は,これま
での静止流体の圧力の考えをもとにすれば,つぎのようになる。
dF  gh1  h2   gh1dA  gh2dA
これを積分して,浮力は
2015/9/30
F   dF  gh dA   gdV  gV
A
A
熱流体力学
2
V
37
☆3.4 浮力の研究課題
1.一辺が10cm角の立方体形状をした木片を水
に浮かべたところ,水表面から2cm木片が浮
かび上がって静止した。木片の密度はいくらで
あるか。
2.密度ρの液体の中に密度ρsの物体が浮いて
いる。空気中に出ている物体の体積Vaがであ
るとき,液中部分の体積Vbを求めよ。
3.自分が風呂に全身を没したとき,どの位の浮
力を受けているか各自で推算せよ。
2015/9/30
熱流体力学
38
3.5 等圧力面
3.5.1 等圧力面の基礎方程式の導出
☆等圧力面の基礎方程式
圧力PがP=f(x,y,z)の関数であるとき,この全
微分をとると,微小圧力dPは
P
P
P
dP 
dx 
dy 
dz
x
y
z
 Xdx  Ydy  Zdz
X,Y,Zの名前とそ
の単位は
体積力加速度
(m/s2)
なぜならば,静水圧の基礎方程式から,
P
P
P
 X ,
 Y ,
 Z と書けたから。
x
y
z
39
3.5.2 等圧力面の応用例題(その1)
☆静止した容器内の流体の等圧面
Z
大気圧P0
この場合は,体積力加速度X,Y,
Zはそれぞれ,X=0,Y=0,Z=
-gであるから,等圧力面基礎
方程式は,
dP  Xdx  Ydy  Zdz  Zdz   gdz  0
等圧力面
Z=const
上式を積分して,等圧力面Zは,
z  Const
である。
2015/9/30
圧力一定の面は直感的
にどこになるかな?
熱流体力学
40
3.5.2 等圧力面の応用例題(その2)
☆等加速度,直線運動する台車内流体の等圧力面
台車の流体内に質量mの質点を考えると,
質点にかかる合力Rは,
a
R  m a 2  g 2  mg 1   
g
y方向
2
 mg 1  tan 2 
θ
等圧面
ma
加速度a
既に学んだ下記,等圧力面方程式において
dP  Xdx  Ydy  Zdz  0
合力R
mg
右のように等加速度運動する台車の場合,
体積力加速度は(流体側に注目して),
Y   g ; Z  0 より,
 adx  gdy  0
X
 a ;
x方向
z方向
dy
a


  tan
y軸に関する微分方程式は, dx
g
a
∴この問題の等圧面は, y   x  c   x tan  C
g
傾きが-a/gでx方向
に下がる直線が等圧
力面だよ!
41
3.5.2 等圧力面の応用例題(その3)
☆角速度ωが一定で回転する容器の流体の等圧力面
回転コップ内の流体の等圧力面を考えよう。直感的
に我々は,このような強制渦における等圧力面が放
物線になることを経験的に理解している。これを理
論的に証明しよう。
z
x
以下,設問に答えながら学習を進める。
h
1.x,y,z方向体積力加速度X,Y,Zは
X
 x 2
Y 0
Z  g
2.したがって,等圧面基礎方程式は
Xdx  Ydy  Zdz  x 2 dx  gdz  0
遠心力
mxω2
θ
流体
重力 mg
直径d
z=z0
x
合力Rの方向
3.ゆえに,この微分方程式は
dz x 2

dx
g
角速度ω一定で回転
4.上の微分方程式を解くと,結局,等圧力面は, ・積分定数Cを決めよ。
次のように,放物面となることが証明される。
・液面高さhを求めよ。
x 2 2
z
C
2g
・角速度ωをd,hの関数として求め,
何に使えるか考えよ。
42
3.5.2 等圧力面の研究課題
1.地球の自転に基づく海表面の等圧
面方程式の導出ならびに赤道と北極
または南極の極地との海表面の差
の導出しよう。
1)図に示した地球上の海表面の等圧
面方程式が,
 r 2  2
1 
 x  y 2  const
g 

という,楕円方程式で与えられることを
証明せよ。ここで,r:地球の半径,ω:地
球の自転角速度 を表す。
y
x
地球半径r=6375km
遠心力mxω2
重力mg
x
地球
海水の等圧力面
地球の自転ω
え!びっくり,赤道と極地とで
10 km以上,海の高さが変わ
るなんて。
2)地球の半径はr=6375kmである。北極(南極)の極地の海表面が地球の半
径rと等しい見なしたとき,赤道と極地との海表面の高さの差を求めよ。
☆答えは,おおよそ11kmだったと思う。
43
第3章 総合演習問題
1.底辺が一辺aの正方形をした四角い水槽に,密度ρ1と
密度ρ2の2種類の流体が混じりあわず,それぞれ深さh
で入っている。一つの側壁面に働く全流体力と圧力の中
心位置を求めよ。ただし,密度はρ1<ρ2とする。
2.直径dの円盤が密度ρの液体中に鉛直に固定されてい
る。円盤の中心が液面から深さz(z>d/2)のとき,圧力の
中心zρを求めよ。
3.内径500mm,深さ1000mmの円筒型水槽に,深さ500
mmまで水が入っている。円筒内の水がこぼれないよう
に円筒の中心軸まわりに回転させる時,最大回転数は
何rpmか。
2015/9/30
熱流体力学
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