第4章 数学的reasoningと統計 的reasoningの比較 第3回勉強会 2006.1.14 内容 • • はじめに ヒトのもつreasoningの本質 – ヒトのreasoningの誤り • 数学的reasoningの本質 – 数学と記号と言語 – 教育方法と数学的reasoning – 統計的reasoningと考え方 • 統計的reasoningの難しさ – – – – • • 統計的な内容の中の抽象的な特性 論理的誤りと統計的reasoning 統計における形式推論 信頼区間のreasoning 統計的reasoningと数学的reasoningの比較 統計教育や研究にかかわること – 教育方法 – 統計教育の研究 Reasoningとは • 定義は難しい • 時には,thinking, problem solving, decision making, critical thinkingなどと交換できるものとして扱われる • Galotti(1989) – Reasoningとは,推測したり結論を表現するといった少なくとも1つの ゴールをめざして,当初の前提(時には修正することもあるが)に矛 盾せず,すべての仮定をチェックするときに論理的に矛盾しないよう な情報を変換する心的活動 – 必ずしも完全である必要はないし,演繹的に妥当である必要もない – 前提を修正したのかどうかを判断し,それによってreasoningの質を 判定する 人間の犯すreasoningの誤り • • • • • • • • 2重否定の解釈の誤り 前提の本質や意味を変えてしまう 条件付の記述を因果関係と解釈する 抽象的な議論の難しさ 抽象的な作業での前提の修正 形式論理をすべて受け入れるわけではない すべての可能性を考えているわけではない 正しいと信じていることは受け入れやすい 数学的なreasoningや統計的な reasoningにおいて重要なこと • 抽象的な推論を難しく感じる • 知識による決め付けを行うことがある • すべての可能性を考えようとはしない 2システム理論 • 人間の推論のひとつの説明 • 2つのシステムとは – 連想と規則 • • • • この2つのシステムを同時に動かす 結果が異なると,規則を重視 連想システムの方が先に終了 規則システムが終了する前に結論を出す場 合がある 数学的reasoningの本質 • 数学はパターンの学問 – 数学は,実際の世界や「人間の心の内部の働き」から抽 出された抽象的なパターンを扱っている.(Delvin,1998) • 抽象的な記述システムの利用 • 数学的内容と抽象的な記述の間を結ぶ心的なモデ ルが必要 • 数学は,「人間の心の中にある抽象的なもの」では なく,「物理的には存在しない,人間が作り出したも の」(Delvin,1998) 言語との違い • 言語も数学も人間の知性と文化が人工的に 作り出した抽象的なもの • 言語には,具体的にベースになるものが存在 することが多い. – 抽象的な概念(愛,幸せ,絶望など)でも,その意 味のベースとなる情緒や経験がある • 数学には,証明が必要となる 数学の教育方法と数学的reasoning • 抽象的な数学の概念を慣れ親しんでいる概念や過 程と関連付けることによって,生徒が学習することを 支援していく教育方法が重視されている • Sford(2000) – 「現実」から「仮想現実」へ まだ,きちっと説明できない • English(1997) – 4つのデバイス(analogy,metaphor,metonymy,imagery) – 4つのデバイスを活用して,具体的経験から心理的モデ ルや環境の表現へと変換する 統計的reasoningとthinking • 数学的reasoningとの違い – データに依存し,実際の文脈の中で成り立っているもので ある. – 数学は用いるが,それはほんの一部である. • Reasoningとthinkingの違い – 同じ問題の中で区別することは難しい – 作業の特性によって区別することは可能 • Thinking :統計的知識や手法をいつのどのように適用するのかを わかる • Reasoning:結果がなぜ得られたのか,ある結論がなぜ正しいの かを説明できる – Resoningには,選択したモデルと実際の話との間の妥当 性も含まれる 統計的reasoningの難しさ • 統計的な内容の中の抽象性 – 平均も「実際のデータの中には存在しないもの」 – グラフ技法もパターンの特定のために用いられる • パターンを見つけるために,ある特性に焦点を当てる • 測定値の中の細かな値は無視する – 測定されたもの自体が抽象的な場合もある(IQなど) • 論理的誤り – 複数の可能性を考えない場合がある • 不確かな状況で,別の選択肢を考えない • 統計の中の形式推論 – 統計的検定と信頼区間 – 確率的概念が必要 – 後件否定の考え方 • 「PならばQ」を用いて,「QでないならばPでない」 統計的reasoningと数学的reasoning の比較 • 抽象的な概念を用いたreasoningを必要とす る点は共通 • 数学においては,抽象的な概念を構成するた めに具体的な例を用いる • 統計においては,抽象的な概念と具体的な 例とのすり合わせが必要.最後は文脈に戻る • 統計においては,モデル選択の難しさが生じ る 統計的reasoningの教育方法 • 数学教育手法の活用 – 抽象的な概念を構成する上で,類比,隠喩,心象 の活用が必要である. • 経験の重視 – データの収集のプロセスや,データの振る舞いを 検索する経験をする必要性 – 2つのアプローチ • Frequency representation of situsations • Predict-and-test activities 統計教育の研究 • 入門コースの研究 – 教育内容,教授方法,テクノロジーの活用,統計 的な考え方に焦点を当てた方法 • 生徒のreasoningの理解は進んでいない – 確率概念の形成については,いろいろ研究され ている – その他の分野は遅れている – Classroom research や clinical interview methodorogies が利用され始めた 今後の課題 • 生徒が授業中に身につける認識過程や心的 構造をもっと詳しく記述し,教育的な介入の効 果を解釈するための基礎が必要 • そして,統計的reasoningを育成するための 教育アプローチのプランが必要
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