報告書 - 国立大学法人 北海道教育大学

別紙様式1
平成27年度学術研究推進経費 共同研究推進経費 研究成果概要報 告 書
個人研究支援経費
プロジェクトの名称
教科教育の教材研究・授業づくりに お け る 「実践的知識(授業を想定した教
科内容・教授方法・生徒知識等)」の解明
報告者氏名・所属・職名
三橋 功一・ 函館校 ・教授
プロジェクト担当者
(氏名・所属・職)
研究内容及び成果の概要
授業づくり(授業設計)は,教育目標達成のために設計対象知識(学習者,授業内容である教
材と授業方法等)について設計知識(設計対象知識を操作し,設計展開する知識)を用い,授業
の課題・質問等を考案し,教授・学習過程構成の活動である(吉川弘之 1977)
.
吉崎静夫(1988)は,「授業づくりにおけるpedagogical content knowledge(授業を想定し
た教科内容知識)」は,教師に特に必要とされる知識であり「①教材内容の知識,②教授方法
の知識,③生徒の知識」を基盤とした複合知識で,実践経験を通して獲得される「実践的知識
」としている。
本研究は,教育実習前に履修する教科教育(小学校算数科教育法,中学校数学科教育法)
の教材研究・授業づくりにおける「教師の授業づくり知(授業を想定した教科内容・教授方
法・生徒知識:pedagogical content knowledge)」の活用を対象に検討を行った。
教育実習前の教科教育における授業づくりは, (ア)学習指導要領,(イ)学習指導要領解説,(ウ)
教科書,(エ)算数・数学教育関係図書,(オ)教育方法・教育心理学等図書 等,とりわけ「(ア)(イ)(ウ)
(教材内容)
」の文献を手がかり・依拠した「何を教えるのか」活動が中心である。
学生は,
「(ア)学習指導要領,(イ)学習指導要領解説」の文献の読解・解釈と「(3)教科書」記述
等の課題・子どもの課題解決活動を検討し,文献の記述に埋め込まれている概念・性質等(例
えば「小学校算数では、直接比較,間接比較,任意単位の測定,量の保存」
)
,概念等に関わる
教材・教具の日常・具体性(測定対象容器の容量)
,課題解決活動(学習活動)方法等に注目し,
「教材内容」に焦点をあて「生徒(学習者)
」
「教授方法」との統合(
「複合知識」
)
・検討(
「批
判的思考」
)
・活用により「問い」を生成している。
この「問い」の生成には,学習者の「既知(前提知識等活用による考え等)
」と「未知(本
時のねらいとする考え)
」の差異における「同化、調節」という「理解過程」の認知・理解が
不可欠であるが,大学生には難しい。つまり,これまで習得・理解している(暗黙知的)教科
内容の知識・思考を,脇に置き,虚心坦懐に,あたかも新たな教材の学びへ取り組む小学生同
様の学習活動・知的活動を行うことが「既知・未知(同化・調節)
」の認知・理解へ繋がると
考えられる。これは授業当事者として行う小学生同様の学習活動・知的活動は,獲得した知識
・思考の「unlearning・学びほぐし・学習棄却」と併せ,小学生の新しい教材の学びにおける
「小学生の理解・認知過程」を辿り,さらには「問い」の生成に機能すると考えられる。
当該研究で残された課題と今後の展望
今後,教育実習履修後の学生の授業づくり知,現職教師の授業づくりの知を継続的に検討
することにより,教員養成から現職教師への授業づくりの知の変容が明らかになり,教員養
成カリキュラム検討,改善・充実への一助となると考えられる。
成果の公表の状況
【著書】
① 生田孝至・三橋功一・姫野完治(編著),未来を拓く教師のわざ,一莖書房,2016,220p
② 三橋功一 ,個人思考の段階での教師の働きかけpp.41-42,集団解決の段階での教師の働きかけpp.43-4,
算数・数学授業づくりハンドブック,北海道教育大学,2016,148p
【学術論文】
③ 三橋功一,授業研究・授業づくりを基盤とした教科教育プログラムの開発,日本教育工学会研究報告集,
Jset-3,2015:7-14
【口頭発表】
④ 三橋功一,教科教育における授業づくり活動,2015 年 日本教育工学会 第31回全国大会講演論文集:53
9-540
⑤ 三橋功一,教育実習前の教科教育における授業づくり活動過程,日本教育方法学会,第51回 大会発表要
旨,2015:73
⑥ 三橋功一,教育実践の捉えと実践経験,日本教育工学会 JSET:SIG-02 教師教育・実践研究 第2回研
究会「専門家の学びにおける経験と見え」
,2015
教育現場で活用可能な分野等
授業づくりにおける「①教材内容知識,②教授方法知識,③生徒(学習者)知識」を基盤とし,それぞれ相
互の知識が複合する「領域A(教材内容・教授方法知識),領域B(教授方法・生徒知識),領域C(生徒知
識・教材内容知識),領域D(教材内容・教授方法・生徒知識)」を含めた7つの知識領域を提案し,さらに
教師には実践経験を通し獲得・蓄積される領域A~Dの「複合知識(実践的知識)」を,とくに重要としてい
る。
教材研究の方法、教材研究に基づく授業づくりについて現職教員研修等において活用可能である。また、
教育実習指導教員が、教育実習生への指導において活用可能である。
配布又はダウン (1)【著書】 ① 図書館、一般書店にて閲覧・入手可能
② 本学から北海道内の全小・中学校へ配付予定。本学ホームページからダウンロード可能。
ロード可能な資
(2)【学術論文】日本教育工学会,日本教育方法学会 にて学術的公表
料
問い合わせ先
代表者:三橋功一
電 話:
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mail :[email protected]