北九州市における 高齢者虐待防止システムと 事例対応について (元)北九州市戸畑区統括支援センター 緒方有為子 北九州市の概要 人口 987,857人【平成18年3月31日現在】 高齢者数 221,441人(22.4%) 【平成18年3月31日現在】 介護保険要介護認定者数 46,983人 【平成17年3月】 *第1号被保険者に占める割合 21.7% 認知症高齢者数(認知症自立度Ⅱ以上)【平成16年度推計】 19,492人 *高齢者人口に対する出現率 9.2% 市民センターを中心とした地域活動 市民センター(小学校区レベルの活動拠点) 運 営: まちづくり協議会 (自治会、婦人会、老人クラブ、地区社協、 民生委員・児童委員、PTA、子ども会 等) 主な機能: ○コミュニティ活動 ・・・ 地域のボランティア活動など ○保健福祉活動 ・・・ ふれあい昼食会、健康診査など ○環境・リサイクル活動 ・・・ 資源化物の回収など ○生涯学習活動 ・・・ 市民講座、趣味の講座など ○地域防災活動 ・・・ 防災訓練、地域の見守りなど 高齢者の虐待防止に関する検討会 目 的 高齢者の虐待予防や、気づき・発見、迅速かつ 適切な対応から継続的な見守りにいたる、一貫した 虐待防止システムを構築することにより、高齢者が その人らしく、安心して暮らせるまちづくりに資する。 設置期間 平成16年11月~平成18年4月 検討内容 ①居宅における高齢者虐待の実態調査 ②本市における高齢者虐待防止システム ③虐待防止に係る啓発活動のあり方 ④居宅における高齢者の虐待防止マニュアル 委員長 西南女学院大学保健福祉学部 伊藤直子教授 高齢者虐待の早期発見・早期介入システム 地 域 気づき・発見 地域包括支援センター 統括支援センター 通報受理 緊急性判断 緊急・困難事例引継 事実確認 事実確認・調査 対応協議 対応協議 サービス調整 措置入所等 成年後見申立て 見守り 見守り 北九州方式による虐待防止・権利擁護システム 地域レベル かかりつけ医 ケアマネジャー 福祉協力員 高齢者・家族 ヘルパー ボランティア 民生委員 市民センター(小学校区) 連 携 地域包括支援センター(市内24ヶ所) ○介護予防ケアマネジメント ◎高齢者虐待防止、権利擁護 連 ○総合相談・支援 ○包括的・継続的ケアマネジメント 携 区レベル 区統括支援センター(各区役所) ○地域包括支援センターの支援(困難事例への対応等) ○地域包括ケア会議の開催 ○立入調査、警察署長への援助依頼、老人福祉法に基づく措置 など 区役所(生活支援課・保護課 ほか) 虐待防止ネットワーク (かかりつけ医、ケアマネ、介護サービス事業者、民生委員、警察、弁護士 等) 地域レベル・区レベルの役割 地域レベル(地域包括支援センター) ・虐待に係る相談・通報窓口 ・緊急性の判断(組織での判断)、事実の確認 ・対応策の協議(ケアマネ、民生委員、ケースワーカー等) ・サービス調整、継続的な見守り体制の構築 ・介護家族への支援 等 区レベル(統括支援センター) ・困難事例への対応(医師、弁護士、権利擁護専門機関 等) ・立入調査、警察署長への援助要請 ・老人福祉法に基づく措置 ・成年後見の市長申立て ・その他地域包括支援センターの支援 北九州方式による虐待防止・権利擁護システム 市レベル 精神保健福祉センター (認知症、精神障害など) 消費生活センター (消費者被害、詐欺など) 連携 保健福祉局 高齢者福祉課 介護保険課 保護課 北九州市権利擁護推進会議 (システムの評価、虐待防止に係る調査・研究 等) 市レベルの役割 市レベル(保健福祉局) ・各区間の連絡調整 ・統括支援センター・地域包括支援センターの支援 ・高齢者の虐待防止・権利擁護に係る啓発事業の実施 ・高齢者の虐待防止・権利擁護に係る職員研修の実施 等 市レベル(消費生活センター・精神保健福祉センター) ・消費者被害に係る専門的な支援 ・認知症及び精神障害等に係る専門的な支援 市レベル(北九州市権利擁護推進会議) ・高齢者虐待防止システムの評価 ・高齢者の虐待防止・権利擁護に係る調査・研究 等 緊急性の判断 生命が危ぶまれるような状況にある、もしくはその おそれ ・骨折、頭蓋内出血、重度の火傷など深刻な身体的外傷 ・極端な栄養不良、脱水症状 等 本人や家族の人格、精神状況に歪みを生じさせ ている、もしくはそのおそれ ・虐待により、本人の人格や精神状況に著しい歪みが生じている 等 虐待が恒常化しており、改善の見込みがない ・虐待が恒常化しているが、虐待者の自覚や改善意欲が見られな い等 高齢者本人が保護を求めている ・高齢者本人が明確に保護を求めている 【「高齢者虐待への対応と養護者支援について」より】 北九州成年後見センター「みると」 設置運営: 有限責任中間法人北九州成年後見センター (弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士、 老いを支える北九州家族の会、市社協等) 対 判断能力が不十分な高齢者等で、権利侵害 を受けている又は受ける恐れがあるもの 者: 事業概要: ①成年後見制度に関する相談 ②成年後見の申立て支援 ③法人後見業務 ④成年後見制度に係る研修、啓発 ⑤その他成年後見制度に関すること 権利擁護センター「らいと」 設置運営: 北九州市社会福祉協議会 対 市内の概ね65歳以上の高齢者等 象: 事業概要: ①金銭管理サービス (預貯金の出入、家賃等の支払い) ②生活支援サービス (サービスの利用手続き・調整等) ③財産保全サービス (通帳・証書等の保管など) ④その他 (弁護士紹介、遺言にかかる紹介など) 官民協働による権利擁護システム 三層構造による地域ケアシステム 民間の権利擁護専門機関 権利擁護センター 「らいと」 市民センターを中心とした 地域のネットワーク 通報 設置運営 対 象 地域包括支援センター 事業概要 ○事実確認、サービス調整、見守り等 支援 区統括支援センター ○困難事例に対する助言、調整 ○立入調査、警察署長への援助要請 ○老人福祉法に基づく措置 等 支援 保健福祉局 連携 連携 成年後見センター 「みると」 北九州 設置運営 対 象 ○情報提供、全体調整 消費生活センター・精神保健福祉センター ○専門的・技術的な支援 北九州市社会福祉協議会 判断能力の衰えた市内の 高齢者・障害者等 ①金銭管理サービス ②生活支援サービス ③財産保全サービス 等 事業概要 有限責任中間法人 北九州成年後見センター 判断能力の衰えにより権利や 財産の侵害を受けている 高齢者・障害者等 ①成年後見制度に係る相談 ②申立て手続きの支援 ③法人後見業務 等 家族介護支援事業 ささえあい相談会 目 的 概 要 高齢者を介護している家族の悩みや相談を 介護経験者が聞き、経験に基づく助言をしたり 気持ちに寄り添うことにより、家族の精神的・ 身体的な負担の軽減を図る 原則、各区で月1回(10:30~15:30)程度開催 高齢者見守りサポーター派遣事業 目 的 概 要 認知症や寝たきり等の高齢者を介護する家族 の介護疲れの緩和やリフレッシュのため、見守り サポーターを派遣する 9時~20時までの間、1日6時間まで利用可能 1時間30分あたり500円(交通費別途) 高齢者の虐待を疑うサインリスト① 身体的虐待が疑われるサイン ・身体に説明のつかない小さな傷が頻繁に見られる ・臀部や手のひら、背中等に火傷や火傷跡がある ・急におびえたり、恐ろしがったりする ・「家に帰りたくない」「蹴られる」等の訴えがある ・かかりつけ医や保健・福祉担当者の援助を躊躇する な ど 心理的虐待が疑われるサイン ・自傷行為が見られる ・過度におびえる、わめく、泣く、叫ぶなどの症状がある ・無力感、あきらめ、投げやりな様子になる ・食欲の変化が激しく、摂食障害が見られる など 高齢者の虐待を疑うサインリスト② 性的虐待が疑われるサイン ・不自然な歩行や座位を保つことが困難になる ・肛門や性器からの出血やキズが見られる ・人目を避け、多くの時間を一人で過ごすようになる など 経済的虐待が疑われるサイン ・年金や財産収入があるのに、急にお金がないと訴える ・資産の保有状況と衣食住等生活状況との落差が激しい ・本人不在の時も夜間点灯していたり、日中の出入りがある 介護・世話の放棄・放任が疑われるサイン ・住居が非衛生的で、異臭を放っている ・部屋に衣類やおむつ等が散乱している ・適度な食事が用意されておらず、栄養失調の状態 など 高齢者の虐待を疑うサインリスト③ 家族の状況に見られるサイン ・高齢者に冷淡な態度や無関心さが見られる ・保健・福祉の担当者と会うのを嫌がる ・経済的に余裕があるのに高齢者にお金を使わない ・介護疲れの著しい様子がうかがえる ・アルコール依存症、薬物依存である など 介護・世話の放棄・放任が疑われるサイン ・住居が非衛生的で、異臭を放っている ・部屋に衣類やおむつ等が散乱している ・適度な食事が用意されておらず、栄養失調の状態 など 戸畑区地域包括ケア会議 実施主体:統括支援センター 開催頻度:通常2ヶ月に1回、緊急時には臨 時的に開催 構成メンバー:医師2名、弁護士1名、民生委 員1名、ケアマネジャー1名、 介護施設代表1名、警察署1名 区社協1名、行政2名 検討内容:養護老人ホーム入所判定 処遇困難事例検討 まとめ~1年を振り返って 「虐待防止法・・・」が施行されたことにより、事業者や地域 (民生委員)の通報が増え、実態把握はやりやすくなった (掘り起しが出来る) 高齢者虐待対応について行政レベルで整備されたことで 相談窓口や対応機関が誰にでもわかるようになった 権利擁護センターや、成年後見センターなどの社会資源 の活用も解決の糸口になっている。 実際に「立ち入り調査」がすぐに出来るかは判断を要する。 本人や家族の思い、「虐待」に対する意識の違いや落差 を十分勘案し、聞き取りや関係者のカンファレンスなどに よる実態の把握を行い、擁護者への支援の視点で立ち入 り後の対応を見据える事が重要だと思う。 その為に優先順位や法的なうらづけを共通認識す ること 「高齢者の権利擁護」の視点は特に関係者に強く 意識されないと見過ごしや対応の遅れにつながる。 介護保険制度や行政対応などのフォーマルな資源 のみでは解決や防止にはつながりにくく、地域の見 守りや連携など地域ネットワーク作りで本人や家族 を孤立させないこと・・・・それでも支援者側がたじろ いでしまう事例はある。 「地域包括ケア会議」において客観的な判断や対 応について意見をもらうことで、支援活動が進展し ていくことにつながる。 事例について
© Copyright 2024 ExpyDoc