道版 〔心と体を一体としてとらえ,楽しく,明るい生活を育む保健・体育〕 保 体 ジ ャ ー ナ ル 特集「子どもの学びを育てる授業づくり」 ●子どもの学びを育てる授業づくり…………………………… (1) ●毎時間の感覚づくりから基礎的な動きを獲得する跳び箱運動の学習…… (2) ●子どもの学びを育てる授業づくり−ダンス「リズム縄跳び」−… … (4) No. ●体験的な活動を取り入れ,行動変容を目指した実践……… (6) ●授業に役立つ実践資料(小学校) … …………………………… (7) ●保体の窓………………………………………………………… (8) 37 2010/1 北海道保健体育研究会 子どもの学びを育てる授業づくり 旭川市立永山南小学校校長(北海道学校体育研究連盟副委員長) 青山 誠一 体力・運動能力調査報告書では,体育科の課題と 線に並ぶ 8 秒間走がある。 して,運動する子どもとそうでない子,子どもの体 この方法によって,本来競争型の運動を個人記録 力の低下傾向,運動への関心や自ら運動する意欲, への挑戦という達成型と競争型の二つの要素をもた 運動の楽しみや喜び,基礎となる運動の技術や知識 せた教材になったのである。 など生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の育成 一人一人の子どもたちの走力の差を考慮に学習意 が図られていないことなどが指摘されている。 欲や挑戦欲求をかき立てた教材に工夫されたのであ 学習指導要領改訂の中では, 「体育的学力」が再 る。この教材の実践者は,走るのが遅い子にもみん 検討され,技能学習の意義や価値の見直しなど, な,「全力走」とはこんなにもすばらしく,また, 「運動の楽しさ」についても再検討されている。 気持ちのよいものだということを実感させたいとい 問題解決学習,系統学習,グループ学習を経て体 う強烈な願いから取り組んだそうである。長年かけ 育における運動技術学習の位置づけの重要性も問わ て改良を重ね,短距離走という種目を一人一人の走 れている。 力を出発点にしたチャレンジを促す教材につくりあ 小学校教育において,運動に親しみをもち,日常 げている。 的に体力の向上に努めていく子を育てていくことは, 同じ学習活動,同じ課題に取り組みながら,それ 体育科に限らず大きな課題である。 ぞれの個人に適した目標を設定し,最大限の能力を そのために体育の学習の中で,一人一人に「運動 探求させていく方法がとられている。 の楽しさや喜び」を味わわせていくことはとても重 体育の授業では,すべての子どもたちに種目のお 要なことである。 もしろさとか,跳び箱を跳び越すそう快感を味わわ 体育の授業づくりの中では,教材の開発が非常に せる。マット運動や鉄棒運動のときに,「こんなこ 重要である。教師が教材に取り組む過程が,子ども とができるようになったんだ」という喜びを感じさ にとって楽しさを与え,学習意欲を大いに喚起する せる。子どもたちが新しい種目に挑戦し「やった ことにつながる。また,よりよい教材や指導法は, あ」という感動を体験させる。そのために,わたし 運動がうまくできない子,つまずいてしまう子にこ たちは,子どもの変化やつまずきを見抜く確かな目 そ焦点を当て,そこから学ぶことを通して改善・工 をもたなくてはなりません。 夫されるのである。 授業づくりの事例で,ゴール付近でみんなが一直 1 道版保体ジャーナル 毎時間の感覚づくりから 基礎的な動きを獲得する跳び箱の学習 札幌市立澄川南小学校教諭 樺澤 聡 1 2 クラスの実態から生まれた教材化 (1)事前アンケートの実施 単元の進め方 (1)基礎的な感覚が身に付くサーキット 体を動かすことが大好きな本校の 5 年生である 単元を通してサーキット形式の補助的な運動を行 が,跳び箱の話をするとさえない表情の子もいた。 うことにした。その中で,腕支持感覚や腰を上げる そこで,事前アンケートをとることとした。その結 感覚,空中での浮遊する感覚など,跳び箱に必要な 果,以下の実態が見えてきた。 運動感覚を養っていくことができる。 《事前アンケート結果》児童数27名 ●サーキットコースとそれぞれの場の説明● ◎跳び箱運動は好きですか? 好 き 16 名 嫌 い 11 名 ④ ① ② 【好きな理由】 ・高い段を跳ぶと,気持ちがいい ・いろいろな技が楽しめる など ①ヒマラヤ登山 ステージへ腕で支持し 【嫌いな理由】 て上がる運動,ステージ ・ただ跳んでいるだけで単調 上の段から跳び下りる運 ・跳ぶことに恐怖感がある 動を通して,腰を上げる ・上手にできない 感覚,空中感覚を養う場。 また,アンケートの結果から跳び箱から落ちて痛 い思いをしたり,低い段しか跳べなかったりするこ ②万里の長城 とに抵抗感を感じていることもわかった。 段差のついた跳び箱を (2)どの子にも「できた!」の喜びを 助走をつけずに進んでい 上記のアンケート結果をもとにして,本単元では く。体重を移動する感覚 跳び箱の高さや難易度のみを求めるのではなく,安 や腕支持感覚を養う場。 全で美しく跳ぶことも目的に加えた。そうすること で,どの子も自分に合った技や高さで,安定した動 ③宇宙の旅 きを意識して運動することができると考えた。また, 両足踏み切りで思い切 個々の習得段階に応じて,負荷の少ない練習の場を りウレタンマットにダイ 設け,スモールステップで学習を進められるように ブし,決められた位置ま 構成した。どの子も楽しみながら,「できた!」の でマットを進める。空中 喜びを味わわせたいと考えたのである。 感覚を養う場。 2 ③ ウレタン マット 道版保体ジャーナル ④乗り物コーナー てやるといいよ」「踏み切りではお尻を高く上げる 手押し車,平均台に といいよ」「腕でしっかり体を支えるといいよ」と, 両手を着いて踏み越す 毎時間,運動のコツを見つけていた。踏み切りの力 運動,バランスボール をしっかりと腕で支えることによって,安定した動 を足に挟んで後ろ向き 作で余裕をもって回転することができることに気づ に進む運動を通して, くことができたのであ 腕支持感覚を養う場。 る。 (2)台上前転を中心にした学習構成 そこで,実際にステ 今回の跳び箱学習の核として,台上前転を取り扱 ージ登りの場を使って うこととした。台上前転は腰を高く上げ,腕で体を 確かめの運動を行った。 支持することが必要な技である。台上前転を通して, 交流の中で,頭で「わ 助走,踏み切り,着手などの基礎的な技能をしっか かった」ことを体で りと身に付けることができる。また,単元の中盤か 「できた」につなげる らは発展的な技に挑戦していく時間も組み込んだ。 時間を設けることによ 台上前転で学んだ運動のコツは,そのまま発展的な り,より学習を深める 技の学習でも生かされると考えた。 ことができたのである。 台上前転で基礎的な技能を習得する「ベーシック 4 コース」と,より高度な技に挑戦する「マスターコ ース」により,確かな力や達成感をもたせ,学びを (1)成果 深めることができると考えた。 3 成果と課題 毎時間行ったサーキ 実際の学習場面では ットでは,上達した子 (1)学習のめあてづくり に回数制限やより高度 実際にサーキットを初めて な 場 を 使 用 さ せ た。 やってみると,いちばん楽し 「もっとできるよう く,いちばん恐怖心があるの に」と個々の目標をも がステージからの跳び下りだ つことができ,結果と った。この際に,上手な人の して基礎的な感覚づく 見本を見ることで,音を立てず,膝を使って安全に りの場に浸ることがで 着地することがコツだと気づくことができた。学習 きた。 の最後に子どもたちにめあてを聞いてみると,「安 また,台上前転はグ 全」 「きれい」 「挑戦」という 3 つのキーワードが ループでの学習形態を 出され,このめあてに基づいて学習を進めることと とった。友達の動きの変化を見つけたり,補助をし した。 ながら「おしい!」と声援を送ったりするなど,支 (2)腰を高く上げるには え合いながら取り組む姿が見られた。 (2)課題 安全にきれいに台上 発展的な技を磨く時間では,技別のグループを組 前転を成功させるには, 「腰を高く上げる」こ んで学習したが,お互いの技を見る視点がはっきり とが必要である。子ど と定まっておらず,技の深まった様子があまり見ら もたちは「助走の最後 れない子もいた。再構成が必要な部分であると感じ は思い切り“バンッ” た。 3 道版保体ジャーナル 子どもの学びを育てる授業づくり −ダンス「リズム縄跳び」− 北見市立高栄中学校教諭 葉葺 清敏 1 ●授業の流れ● はじめに ①オリエンテーション( 1 時間) これまで指導の難しさから,特に男性の教師から ・前年の発表会とインターネットなどで紹介されて 敬遠されがちであった「ダンス」が学習指導要領の いる「縄跳び」の模範演技を鑑賞する。 改訂に伴い,中学校では必修となった。 ・学習カードの記入例と技の跳び方を確認する。 北海道では「よさこい踊り」が盛んに行われるよ *生徒に「リズム縄跳び」のイメージを持たせる。 うになって久しいが,本校でも文化祭ともなると, *トビナワと新体操の 2 タイプを用意する。 こぞって「ダンス」の披露を希望する生徒を目にす ②「縄跳び」の技に挑戦( 3 時間) るようになった。こうした状況も手伝って「ダン ・ 「チャレンジカード」を使い,「前回し技」 9 種目, ス」の授業は,好意的に受け入れられているが,反 「後ろ回し技」 9 種目,「新しい技」 5 種目の技を 面,恥ずかしがる生徒や,ダンスが苦手な生徒に意 チェックし, 1 種目 5 点で個人評価をする。 欲を持たせることが課題に挙げられる。 高栄中 縄跳び チャレンジカード 本校では,学習指導要領の移行を見据え,数年前 年 組 班 名前 から「縄跳び」を用いた「リズムダンス」として, 出すことに重点を置いている。単元の目標としては, 生徒の意欲をかき立て,表現する喜びや達成感を味 両足跳び 両足跳び かけ足跳び 1回跳び 横開閉跳び 16回以上 縦開閉跳び 1回跳び 横開閉跳び 16回以上 縦開閉跳び わわせることのできる授業を目指している。 2回跳び 8回以上 意欲をかき立てる授業づくり あや跳び あや跳び 交差跳び 交差跳び 両足跳び 2回跳び 5回以上 あや跳び 交差跳び 個人 班 技跳び 喜怒哀楽を表現する「創作ダンス」を指導するに スローキャッチ 1回 左右あや跳び 8回以上 は,指導者側に相応のスキルが必要であり,尻込み をしてしまう一つの要因でもある。 そこで,新体操で使われている「ロープ,リボン, フープ,ボール」などの道具を活用することにより, 後ろ回り かけ足跳び 生徒の発想(アイデア)や工夫(デバイス)を引き 2 個人 班 前回し 「リズム縄跳び」の授業を行ってきた。授業では, 後ろかぶり 8回以上 足抜き 4回以上 方向転換 4回以上 個人 班 両足跳び あや跳び 交差跳び できた種目 23種目中 個人点 (1種5点) 種目 点 ③グループ編成と選曲( 1 時間) 「ダンス」を容易にとらえ,指導に結びつけること ・ 4 人以上のグループをつくり,「リーダー」「音 ができるのではないかと考えた。そして,小学校で 楽」「振り付け」などの役割分担をする。 も経験している「縄跳び」を用いることにした。 ・ 「音楽」担当者が事前に用意した CD の中から, まず, 1 学年で「縄跳び」の技とリズム(曲)に 自由に選曲させる。 合わせた跳び方を習得させ, 2 学年で振り付けを取 *4 拍子が理想的。流行曲などで意欲を高める。 り入れた「創作ダンス」の発表会を行ってきた。 *「ラジオ体操」の曲で教師が模範を見せる。 まだ課題は残されているが,これまでの本校の取 ④振り付け( 5 時間) り組みをここで紹介したい。 ・ 「振り付け」は,「ダンスの工夫」に重点を置かせ, フォーメーションやステップのパターンを紹介し, 4 道版保体ジャーナル 3 アレンジを加えながら決めさせる。 ・ 「振り付け」担当者は,事前に「振り付けカード」 達成感を味わわせるために ○「リズム縄跳び」の特性 に記入しておき,授業時には,グループで練習が できるように準備をしておく。 技に挑戦する 統一性 + 工夫 ダンスの工夫 リズミカルに跳ぶ 道具 動作 フォーメーション ステップ リズム 「リズム縄跳び」の特性は,男子生徒にも受け入 〈ステップ〉サイド,クロス,ボックス, れやすく,運動量の確保にもつながる。特に「技跳 ジャンプ,ツイスト び」は,運動が苦手な生徒でもコツをつかめばクリ アすることができ,中でも「後ろかぶり」は,手本 〈フォーメーション〉 を見せると,積極的に挑戦するようになり,達成感 を味わわせることができる。 生徒が「技」の習得に励むと,授業に活気が生ま I型 れ,休み時間に仲間と協力して振り付け練習をする グループも出てくる。また,リーダーが中心となり, 準備や片づけを積極的に行うようになる。 本校では,「創作ダンス発表会」を学年集会の形 V型 態で行っており,学校長や学級担任を招待して実施 O型 している。そのため緊張感に包まれ,生徒の士気も 高まる。発表後の生徒は,すがすがしい達成感と満 足感に満ちた表情で一杯になる。 充実した取り組みはすべての生徒に共通して見ら =型 れるが, 2 年間のカリキュラムをいかに発展させて X型 《ダンス発表会の実施》 いくかが今後の課題である。 ⑤中間発表会を実施( 2 時間) ・中間発表を見て,互いに評価させ合う。 ・ビデオ撮影後,グループごとに動きを確認させる。 *教師から中間発表の採点を伝え,特に工夫さ れている点を評価し,改善点を検討させる。 ⑥創作ダンスの発表会の実施( 2 時間) ・教師が各グループの採点と評価をする。 採点のポイント (1)リズミカルに動けているか。 (2)動きがそろっているか。 (3)振り付けに工夫が見られるか。 (4)技のミスがないか。 〈評価の基準〉 (1)楽しみながら,協力して取り組めたか。 (2)動作や構成に工夫が見られたか。 (3)リズミカルな動きや技を身に付けられたか。 創作ダンス発表会 (4)ダンスの動きや特性を理解することができたか。 5 道版保体ジャーナル 体験的な活動を取り入れ,行動変容を目指した実践 −6年 保健学習『病気の予防』− 札幌市立屯田北小学校教諭 谷 寧 養護教諭 松谷 初代 1 3 はじめに ふだんは見えないものが見える! 6 年保健学習『病気の予防』の指導内容は,次 ●蛍光クリームとブラックライト● のような 5 項目で構成されている。 インフルエンザの感染の一つの要因である接触感 ① 病気の起こり方 染を取り上げ,普段は目に見えないウイルスや細菌 ② 病原体がもとになって起こる病気の予防 がどのように人から人へと感染するのかを考えるこ ③ 生活行動がかかわって起こる病気の予防 とで,その予防法を理解させたいと考えた。 ④ 喫煙,飲酒,薬物乱用と健康 ⑤ 地域の様々な保健活動の取組 本校では,保健学習の中で自分の健康が日常生活 と深いかかわりがあることを知り,自分の生活を見 直したり,学んだことをこれからの自分の生活に生 かそうとしたりすることを目指して , 9 時間で単元 構成をして取り組んでいる。これからの生活に生か していこうとする意欲をもたせるためには,体験的 な活動を通して,実感し,子ども自身が納得できる そこで,蛍光クリームとブラックライトを使用し, ような学習活動を進める必要があると考え,担任と 病原体の広がりを体験できる活動を取り入れた。蛍 養護教諭が T・Tで指導にあたっている。 光クリームを病原体に見立て,日常の遊びや学習を している中で,それがどのように広まっていくのか 2 を見ることができるように,教師二人が感染者とな 単元構成と体験的な活動 り,児童はブラックライトで病原体の広がりを見つ けていった。 1 病気の起こり方について考えよう。 2 抵抗力って,何? 3 インフルエンザにはどのようにして かかるのだろう? 4 インフルエンザにかかるのを防ぐた めにはどうしたらよいだろう? 5 生活習慣病って,どんな病気だろう? 6・7 ふだんは見えないものがブラックライトで見える ことにより,病原体を意識し,予防法に対する具体 的な考えをもつことができ,日常生活に生かすこと ができると考えた。 4 蛍光クリームとブ ラックライトによ る体験的活動 学んだことを自分の生活に生かそうとする意欲が 行動変容の原動力になると考え,保健学習の教材を たばこにはどのような害があるのだ ろうか? 8 どのように断ればよいのだろう? 9 薬物って,どんな害があるのかな? 健康を守るための保健活動を知ろう。 まとめ 図るときには,限られた時間の中で体験的な学習を カイワレの発芽実験 ミミズの実験 断り方のロールプ レイング 取り入れながら,教師が教えていく基本的な内容と 児童が体験的な活動を通して実感していく内容を明 確にして,授業構築をしていく必要があると考えて いる。 6 道版保体ジャーナル 授業に役立つ実践資料(小学校) ◆◆『こんなとき,どうしたらよいのかな?』体育の授業Q&A◆◆ Q 子どもたちの体力低下の問題が話題になる昨今,授業の中でも体力向上につながる手だてを考 えたいのですが,手軽にできる体力づくりのヒントや,運動の例を教えてください。 子どもの体力向上に,学校体育が果たすべき 用小学校体育副読本『みんなの体育』(学研教育み 役割は大変大きいものです。しかし,だからと らい)には,さまざまな運動要素が図説入りで掲載 いって,子どもの意識を考えずに,数値の向上のみ されています。こうしたものを参考にしながら,授 を目指していては,ますます運動嫌いにさせてしま 業に取り入れていくことがよいでしょう。 うことになりかねません。ここでは,子どもの体力 向上に向けた基本的な考え方とその具体例を示して ●運動例●8 STEP 道具を使わずに,友達と楽しみながらできる運動の みます。 一つに「 8 (エイト)STEP」があります。 A エイト ① 1 から 8 までのカウントの 間に,右のように軽くジャン ●大切なのは,運動への意欲!● プします。 学習指導要領改訂の大きなポイントとして,低学 ②1人でできるようになったら, 年にも体つくり運動が位置づけられたことが挙げら 2人組で縦に並んで行います。 れます。本来日常の遊びを通して経験したり培われ 5 1 2・4 6・8 3 7 ③4 人,8人,16人…と,人数を増 やしていきます。 たりするべきさまざまな動きを,生活習慣や子ども ④「 5 」のカウントのときに,前か を取り巻く環境の変化から,授業を通して子どもた ら数えて偶数の人は右へ,奇数の ちに味わうことができるようにしたものです。 人は左へ,という工夫もできます。 しかし,この体つくり運動の必要性を,数値のみ ●運動例●サークルSTEP を向上させることに主眼をおいてしまっては,ひた もう一つ,2人組で行う運動を紹介します。 ①友達と向かい合います。 しまいます。子どもの意欲は高まりません。 ② 1 から 7 までのカウントの 間に,弧を描いて動き,戻っ 大切なのは,子どもたちがさまざまな運動に取り てきます。このとき,目線は 組むことで,体を動かす楽しさや心地よさを味わい, 1 ・ 2 ・ 3 ・ 4 同じ方向を向いたままです。 運動が好きになることです。そして,生涯にわたっ ③「 8 」のカウントのときに, て運動やスポーツにかかわっていこうとする意欲の スタート位置まで戻り手をた 素地を小学校の段階で育てることです。そうするこ たきます。 5 ・ 6 ・ 7 ④次 の 8 カウントで,反対回 とで,結果的に体力の向上につながることが大切な りをして,同じように手をた のです。 たきます。 ●低学年から多様な運動を● ⑤次は, 1 から 6 までのカウン 小学校低学年の子どもたちは,神経系の発達が成 ト で 戻 っ て き て, 「 7 , 8 」 人の 9 割程度のレベルまで発達するともいわれて で拍手。 いるように,とても大切な時期です。昨年度,文部 ⑥その次は, 1 から 5 まで…と 科学省から『多様な動きをつくる運動(遊び)パン いうように,回るカウントを フレット』が配布されました。また,平成22年度 短くします。 7 パン 8 2 回目は反対回りで すらトレーニング的な運動に終始する授業に陥って 道版保体ジャーナル 清水町立清水中学校教頭 尾崎 俊明 身体と心は自己責任 昨年秋には今まで体験したことのない新型インフルエ ンザの猛威により、各校は対応に追われた。本校でも学 校閉鎖に踏み切ったが、重篤な患者が出なかったのが幸 いであった。健康のありがたさを再認識することができ た。私もアスリートを自負していた時代は遥か昔、現在 は健診でメタボなどを言明される何ともなさけない身で ある。自慢できることは、目覚ましがなくても日の出よ り早く起きられるようになったことくらいか…。 昨今の健康ブームで、朝夕ウオーキングをされる方を 見かけることが多くなった。ちょっと前の日本では考え られない風景であろう。音楽を聴きながら黙々と歩く人、 夫婦で大きく手を振り元気よく歩く人、火ばさみ持参で ごみを拾いながら歩くご老人等々。夜明け前から季節・ 天候を問わずである。WHOの健康の定義ではないが、 完全な肉体的、精神的及び社会福祉の状態であり……を 思い出した。日々本当の意味で健康を維持することはな かなか難しい世の中になってきている。しかし、一生涯 付き合っていく自分の身体と心は自分でつくりあげるし かない。大地から昇る朝日を拝み、鳥や虫たちの声、雨 や風の音を聞き、生きていることの充実感を感じられる ウオーキングは手軽で効果的であろう。今年一年、鈍っ てきた感性を呼び覚まし、できることから健康を心がけ る年にするのも悪くない。 教頭になってから,子どもたちとの触れ合いや体 やく鉄棒に寄せる」「手首を返すタイミングを考え を動かす機会がめっきり減っている。せめて休み時 る」などのうち, 1 回の試技では,ポイントを絞っ 間にはと思って,校内・グラウンドを見てまわ て行わせるように話した。グラウンドに行き, るようにしている。 子どもたちに,分解写真のようにゆっくり 昨年秋,各学年で鉄棒運動に励む姿 師範して見せることもした。 が多く見られる時期があった。 『逆上 その結果,「新たに3人もできるよ 逆上がり考察 がり』では,繰り返し練習している うになり,みんなとても喜んでいま ものの, 「もう少しなのに…」と思わ れる子が多数見られた。できる・でき す」と,担任から感謝の言葉をいた 札幌市立明園小学校教頭 ないがはっきりするとともに,できたと 松田 昭雄 きの喜びが大きい技でもある。 だいた。子どもたちからも,「また教 えて!」と,声をかけられることも多く なった。 動きの習得のため, 『鉄棒補助ベルト』の使用を 技の習得は,体育を研究している者としてうれし 担任に勧めた。使い方を知らない者も多く,職員室 いことであり,『逆上がり』を通して,担任や子ど で教えたり,実際にやって見せたりもした。声かけ もたちとの距離が近づいたことも大きな喜びであっ も, 「わきをしめる」 「脚を高く上げる」 「腰をすば た。 保健体育教材 □みんなの体育 1〜6年 □中学体育実技 □デジタル版 中学体育実技 □中学生のスポーツ戦術シリーズ(DVD) □中学保健体育の学習 1〜3年 □中学保健体育ノート 1〜3年 道版 保体ジャーナル (第37号) 2010.1 発行 ・編集・発行 北海道保健体育研究会 代表 山越 正敏 ・事務局 〒141-8510 東京都品川区西五反田2-11-8 学研ビル ㈱学研教育みらい 学校教育事業部 TEL 03-6431-1153 http://gakkokyoiku.gakken.co.jp/ 8 9300002533
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