東北の起業家の地域に対する意識 ~起業家にとっての地方の魅力・メリット~ 2006年6月15日、16日 株式会社デュナミス NEDOフェロー 石井力重 問題意識 • 日々さまざまな起業家支援者や起業検討者に接す る中で、「本格的にベンチャーをするなら、チャンス の多い東京圏へ行かないと。」といった声が時折聞 かれる。 • しかし、実際には地方にも優秀なベンチャー企業は 存在する。一見不利に思える「地方」の、何が起業 家を引き付けているのだろうか。 • 東北地域の起業家へのインタビュー調査データから、 その意識に見られる「地方の魅力・メリット」を抽出・ 整理し、地方の独自性を生かした支援スキーム開 発のための材料を得ることを試みる。 研究の方法 • 発表者が2005年度、東北大学の博士在籍時 に行った東北地域の起業家に対する創業の 要因についてのインタビュー調査記録から、 『何が起業家を引きつけるのか』という情報を 抽出し、KJ法にて分類した。 インタビューの内容 • 「創業に影響を与えたものは?」 産学官の具体的な10の要因(以下)を挙げて たずね、カテゴリー毎に自由回答も得た。 – – – – 産:一次、二次、三次産業、 学:大学、高専、 官:経産、文科省系プロジェクト、 支:共研セ、TLO、インキュベータ、公設試、 +自由回答 +自由回答 +自由回答 +自由回答 今回の研究の 分析対象 インタビューの対象 • 対象地域:東北+新潟 • 選定指針:ベンチャー企業(※)+大学発ベンチャー – ※東北圏の経済団体の支援するベンチャー • • • • • • 青森:2社・・・IT、部品 岩手:2社・・・機械装置、部品 宮城:5社・・・ナノテク2、IT2、新素材 山形:2社・・・機械装置、新素材 福島:2社・・・機械装置、IT 新潟:2社・・・機械装置、ナノテク 分類の結果の構造 • 15社から、抽出した情報要素の数:30 グルーピング • 小グループの数:7 +3 – 7つのグループ(2要素以上) – 3つの単独要素(1要素のみ) グルーピング • 大グループの数:3 7つの要因(小グループ) 1)人のつながり(10ポイント) • 地域のネットワークキーマン、ネットワーク組織 2)生活環境(5ポイント) • 故郷、豊かな生活の質 3)人材(3ポイント) • 低い流動性、安い賃金 4)ライバルの少なさ(3ポイント) • 事業機会の独占可能性、メディア効果、支援制度の採択可能性 5)土地・建物(2ポイント) • 安価で拡張性に優れた土地、割安な建築費 6)地場の産品(2ポイント) • 豊富な食材、伝統工芸品 7)サポート企業の存在(2ポイント) • 試作製造外注、経営のメンター ※括弧の中は回答者数。複数回答。 3つの単独要素(小グループ) • 1ポイントの回答には次のようなものもあった。 8)自県の市場構造、文化的土壌を良く知っていたこと 9)精密部品の加工にむく良質な気候 10)特定機関むけサービス事業に協力が得られたこと 3つの要因(大グループ) 地方で創業することの魅力・メリットは、、、、 • 「リスク・コストが低いこと」 – 3)4)5) (8ポイント) 人材・人財・身体知 • 「活用度のひくい良いリソースがあること」 – 6)7) (4ポイント) • 「豊かな生活環境があること」 – 2)9) (6ポイント) ストレスマネジメント 注:分類の除外 • 1,8,10は地方部だけでなく、都市部でも要 因たりえるものゆえ除外 (10ポイント+1+1ポイント) まとめ • 『何が起業家を引きつけるのか。』この問いについて は都市部と地方部では当然答えは異なる。 • 今回の調査データは“東北地域の”という限定つき ではあるが、その多くは、他の地方部でも共通して 見られると思われる要因である。 • 起業家・ベンチャー企業の輩出を通じて新産業創出 を図る地域にとっては、通常の起業家支援活動に 加えて、起業家の視点から見た地方部のポテン シャルを意識することで、地域独自の支援スキーム を開発してゆくためのヒントが得られる可能性があ る。本稿ではそうした議論の一材料を提供した。 参考文献 • 石井力重「大学発ベンチャー創出と地域環境に関する分析」『研究・技術 計画学会第19回講演要旨集』、2004年10月 • 石井力重「大学発ベンチャー創出とビジネス環境因子の相関に関する分 析」『産学連携学会第3回講演予稿集』2005年5月 • 石井力重「東北地域の技術型企業の創業と地域的要因に関する研究」 『研究・技術計画学会第20回講演要旨集』、2005年10月
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