日本歯科大学新潟生命歯学部 敷地内禁煙への取り組み

日本歯科大学新潟生命歯学部
における禁煙推進
ー敷地内禁煙までの道程と問題点ー
大森みさき1,2)、山口 晃1,2)、関本恒夫1,2) 、
吉江紀夫1,2) 、長谷川勝彦1,2) 、筒井紀子2)
1)日本歯科大学新潟キャンパス禁煙推進実行委員会
2)日本歯科大学新潟キャンパス禁煙推進作業部会
目 的
日本歯科大学新潟キャンパス(新潟生命歯学部、
新潟短期大学)は、2007年4月1日から敷地内禁煙を
実施している。
実施に至る過程および実施後の問題点を洗い出し、
大学の敷地内禁煙実施のために効果的と思われる
方略について検討する。
日本歯科大学新潟キャンパスの概要
学部(1)、短大(1)、病院(2)、
研究センター(1)
学生数
新潟生命歯学部 597(576)名
新潟短期大学
海 岸
遊歩道
職員数
住宅地
小学校
大 学
中学校
172(150)名
396(625)名
学部・ARC
65
歯科臨床系
213
医科臨床系
56
事務系
42
短期大学
20
総数 1165(1351)名
本学敷地内禁煙までの道程
2003.
2003.10.
2004. 2.
2005. 5.
6.
健康増進法(受動喫煙の防止)
病院内売店でのたばこ販売中止
病院内禁煙
学部連絡会議で検討課題
施設内禁煙(病院、教室)
分煙化(屋外喫煙スペース、喫煙所)
学内禁煙化準備委員会
敷地内禁煙決定に向けての準備
2006. 4. 教授会承認、禁煙推進実行委員会
敷地内禁煙実施への準備
作業部会
2007 .4 敷地内禁煙実施
敷地内禁煙継続のための対策
作業部会、学生会
敷地内禁煙決定まで
•
学部連絡会議:2005年5月
(構成:学長、学部長、病院長、教務部長、学生部長、事務部長)
→ 敷地内禁煙 or 分煙の徹底、具体策
• 学内禁煙化準備委員会:2005年6月~2006年1月、計5回、委員7名
→ ①分煙ではなく敷地内禁煙
②禁煙指導を行うべき歯科医師、歯科衛生士を育成する使命
③病院機能評価を受けるための必須条件
④実現にはトップダウンが必要
⑤規制力のある実行委員会の設置が必要
• 学部長との直談判
大学としての理念が明確であれば方略は決定しやすい
準備段階での問題点
•
•
•
•
違反者に対する対応
→学生便覧に記載、歯科医師としての理念、病院機能評価
トイレ等の隠れ喫煙、火災発生の危険性
→分煙でも同じ、学生参加の委員会、巡回
入院喫煙患者(特にターミナル)への対応
→個人の問題と公的な問題の区別、個別対応
近隣住民、小中学校への対応
→町内会、小中学校への通達・協力依頼
1.敷地内禁煙の実施は、個人の禁煙と同じである。
2.宣言はスタートでありゴールではない。
3.継続することが重要である。
敷地内禁煙実施までの準備
•
教授会での承認(2006年4月)
→①病院機能評価のためには敷地内禁煙が必須
②歯科医師、医療従事者の本来あるべき姿
歯周病、口腔癌、歯科インプラント;喫煙は有害因子
禁煙指導の行える歯科医師の育成が急務
•
新潟キャンパス禁煙推進実行委員会および作業部会の設置
→①各部門の代表責任者を実行委員(21名、学生会代表1名を含む)
議論でなく通達、実施責任者
②作業部会(13名、喫煙者3名を含む)
調査、啓発、企画
•
敷地内禁煙実施(2007年4月1日)までの計画
敷地内禁煙までのスケジュール
2006年
4月
6月
7月
9月
10月
12月
「2007年4月1日敷地内禁煙開始」の宣言
健康診断時の喫煙状況アンケート調査(職員・学生)
講義科目における禁煙講義協力要請
禁煙推進ポスター募集と掲示
大学ホームページ、各種印刷物、学内掲示物への表記
隣接小中学校、近隣住民への報告と協力依頼
講演会(学生向け2回、教職員向け1回)、アンケート調査
石井正敏先生;「喫煙と口腔の健康」
埴岡 隆 先生;「歯科臨床で行う効果的な禁煙の導入と支援の技術」
2007年
1月
2月
3月
4月
第1次禁煙支援
第2次禁煙支援、学生向け追加講演会
喫煙スペースの撤去、喫煙室の閉鎖
敷地内禁煙実施
実施準備段階での問題点
•
•
•
•
•
禁煙推進実行委員会
→ 通達・実施責任のある委員、委員数が多い
作業部会の併設
◎喫煙未経験者は喫煙者に対し意外と寛容である
アンケート調査
→ 禁煙支援も目的としたため記名式とした。
正確に記載しない者の存在
講演会
→ 喫煙者を参加させる方略
学生は教育講演としカリキュラムの一環とし出席をとる
禁煙支援
→ 禁煙相談室、ニコチンパッチの無料配布(1か月分)
学生の活動
→ 巡回への参加
研究発表(SCP:禁煙補助器具の開発〜喫煙の悪影響可視化による
禁煙モチベーションの強化法〜)
(%)
敷地内禁煙実施前後の喫煙率
25
教職員
20
学生
15
10
5
0
2006.6.
(%)
35
2006.12.
2007.6.
30
2006.6.
2006.12.
2007.6.
25
20
15
10
5
0
N1
N2
N3
N4
N5
N6
T1
T2
T3
学生の喫煙率の推移
(%)
35
30
N1
N2
N3
N4
N5
N6
T1
T2
T3
25
20
15
10
5
0
2006.6.
2006.12.
2007.6.
敷地内禁煙実施後の問題点
4月 巡回(守衛による吸殻拾い)
→ 規制力(権限)なし、簡単な注意
路上は敷地外という観念(学生、教職員ともに)
5月 路上喫煙の急増(連休後)、苦情(小学校)
→ WGによる巡回強化と注意(各休憩時間、昼休み、就業後)
6月 路上喫煙は減少するも完全になくならない
→ 巡回の継続と巡回ボランティアの募集
第3次禁煙支援
7月 禁煙支援カード作成・配布
9月 路上喫煙の急増(期末試験前後から)
近隣住民からの苦情
10月 巡回強化、第4次禁煙支援
11月 敷地内喫煙の漸増(吸殻)、現行犯は未発見
→巡回ルートの変更、教員全員への協力依頼
路上喫煙と巡回指導
考 察
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・
大学の敷地内禁煙
→ 必要である;歓迎する声は確実にある
実現はトップダウン
→ トップを納得させる根拠
理想的理念と現実的根拠
→ 原理主義者と現実主義者
喫煙者は耳をかさない!?
教育・啓発の重要性
→ 講演会等への喫煙者の参加
非喫煙者の喫煙黙認・寛容の中止、注意促進
中長期的な計画
→ 学生が一巡するまで
冬季に向けて
→ 路上喫煙の減少の可能性と隠れ喫煙増加の可能性
全員で行う禁煙化
→ 学生・教職員全員を巻き込む方略
冷ややかな目
今後の展望
→ 市議会への禁煙区域申請(文教地区;小・中学校、大学)
結 論
1.敷地内禁煙の決定に必要な事項
・トップの決断、大学の理念
・理想的理念と現実的根拠
2.実施までの準備に必要な事項
・教育と啓発 → 喫煙者に対する卒煙教育
非喫煙者に対する禁煙推進のための教育
・喫煙者に対する禁煙支援
3.実施後に必要な事項
・教育・啓発
・巡回、注意、指導
・禁煙支援
・全体を巻き込むための方略
・継続