電子ビームラインの構築と APDを用いた電子計測試験 東京大学理学部地球惑星物理学科 東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻 小野寺 暁 2015/9/30 1 研究目的 • 中間エネルギー電子 (1-100 keV) を測定す る検出器の較正を行うために電子ビームライ ンを構築する. • 実際に,電子ビームラインを稼働させ,検出 器 (APD) の特性を調べる. APD: アヴァランシェ・フォトダイオード Avalanche Photodiode の略. 2 中間エネルギー電子 • 1-100 keV 電子 • 電子の加速・加熱現象を象徴するエネルギー 帯の1つ – 磁気リコネクション領域およびその周辺 – 無衝突衝撃波面での電子加熱 – 放射線帯粒子の生成 3 電子計測技術 (1/2) • 低エネルギー (~ 数十keV) ・・・ MCP (Micro-Channel Plates) – 問題点:数keV以上で検出効 率が低下. 4 電子計測技術 (2/2) • 高エネルギー (数十keV ~) ・・・ SSD (Solid State Detector) e - 電子正孔対生成数:N PN接合ダイオード + - + - + エネルギー分解能 - 逆バイアス電圧 – 問題点:数十keV 以下でエネルギー分解能が低下,ノイズ. 低エネルギーと高エネルギーの電子計測技術の狭間 → 数十 keV の電子を精確に計測できる検出器. 5 Avalanche Photodiode; APD 内部増幅作用を持つSSDの一種. 対生成・加速 e- +Vb アヴァランシェ増幅 アヴァランシェ増幅により,SSDの数十倍以上の 信号を生み出す → 高エネルギー分解能が実現. 6 ビームライン構成図 PC1 電源制御系 PC2 WLAN 主加速電源 フィラメント用 電源 データ取得系 初期加速電源 3kV 電 流 4A 10-80 kV APD フィラメント =電子源 線形加速部 真空チェンバー バルブ ロータリー ポンプ ターボ分子 ポンプ 7 真空チェンバー 初期加速用電源 絶縁管(線形加速部) 初期加速部 8 真空チェンバー 絶縁管 ターボ分子ポンプ 9 電子のエネルギー・カウントデータの取得 チャージアンプ 電荷Q → 波高V 波形整形アンプ 波高V → 波高 V’ MCA 波高V’ → チャンネル --------------------- APD PC カ ウ ン ト 数 パ ル ス 高 時間 時間 チャンネル 10 電子ビームの波高分布 カウント/総カウント 0.006 0.005 13keV 23keV 33keV 0.004 43keV 53keV 63keV 0.003 73keV 83keV 0.002 0.001 0 チャンネル1 1001 2001 3001 4001 5001 6001 7001 電子のエネルギー大→信号のチャンネル大 高エネルギー側でピークが2つに分かれる. 8001 11 電子のエネルギーとピーク位置の関係 8000 7000 6000 チャンネル 5000 4000 2つのピークのそれ ぞれが入射電子エネ ルギーに対して線形 性を示した. 3000 2000 1000 0 5 25 45 65 エネルギー(keV) 85 12 ダブルピークの原因の推定 ビームラインの構造的問題か? →他のビームラインでもダブルピークが見られる. APD固有の問題. APD内部での電子増幅率が 非一様なのではないか? 13 電子ビーム入射角依存性 (1/2) 右回り30度 e 垂直入射(0度) e 左回り30度 e APDを取り付けた ケースの入射窓. 20mm 約11.5mm 32mm 14 カウント/総カウント 電子ビーム入射角依存性 (2/2) 0.003 43keV 0.002 0.001 0 チャンネル 3000 3200 3400 3600 3800 垂直入射では2つのピーク,±30度では1つのピーク. ピーク位置がそれぞれ近い. 内部の電子増幅率が,左右方向に差があるのではな 15 いかと推測できる. まとめ及び今後の課題 • 電子ビームラインの構築作業がほとんど. • 30keV を超える電子に対し,波高分析でダブ ルピークが見られた.APD内部の増幅率の 違いによるものと考えられる. • APDの手前にコリメータを設置して検証. 16
© Copyright 2024 ExpyDoc