* 研究テーマ 内分泌攪乱物質による生殖系への影響が様々な角度から研究されています。 さらに、甲状腺系、免疫系、神経系への影響も危惧されていますが、 未だ報告は多くありません。 そこで、この数年間は化学物質等による甲状腺ホルモン系への影響を調べるために 下記の3テーマについて研究を行っています。 1.(抗)甲状腺ホルモン様作用を評価するバイオアッセイ系の確立 2.各種化学物質による(抗)甲状腺ホルモン様作用の検討 3.甲状腺ホルモン受容体を介したシグナル伝達機構の解析 * 甲状腺ホルモン受容体を介した転写調節機構 甲状腺ホルモンはエストロゲンやアンドロゲンのようなホルモンと同じように、甲状腺ホルモン特異的な 受容体(TR)に結合し、甲状腺ホルモン応答因子(TRE)を介して転写因子として作用することにより、 ホルモン作用を発揮します。 Cytoplasm Corepressors RXR TR TRE General TFs No TF TATA 甲状腺ホルモン Coactivators Nucleus RXR TR General TFs TRE TATA mRNA Transcription protein 化学物質 甲状腺ホルモン系へ影響を及ぼす化学物質の作用点としては様々な部位が考えられます。 * 甲状腺ホルモン受容体高発現細胞株作成 はじめに、(抗)甲状腺ホルモン様作用を検出するために、甲状腺ホルモンのシグナルを伝 達可能で、取り扱いが容易な甲状腺ホルモン受容体高発現細胞株(HeLaTR)を作成し ました。 HeLa CMV-P HsTRa1 cDNA HeLaTR Reporter TRE SV40-P Luciferase cDNA TRE DR4: AGGTCANNNNAGGTCA DR0: AGGTCAAGGTCA T3 TR TRE Luciferase Luciferase activity (fold induction) 5 DR4 4 3 2 DR0 1 T3 - + - + この細胞に甲状腺ホルモン(T3)を添加すると、甲状腺ホルモン応答因子(DR4)を介 した転写活性化を検出することができました(上図参照)。 さらにDNAマイクロアレー法を用いて、甲状腺ホルモンを添加することにより発現が制御 されている遺伝子を明らかにしました。 * 内分泌攪乱物質の影響 ビスフェノールA(BPA)、フタル酸(DEHP)、ダイオキシン(TCDD)、 水酸化PCB(PCB-OH)を 単独あるいは甲状腺ホルモンと同時に添加し、レポーター活性を測定した結果、 甲状腺ホルモンによる作用をさらに増強する化学物質、減弱する化学物質を見出しました。 HeLaTR with DR4-SV40-Luc T3 +/- endocrine disrupting chemicals Luciferase activity また、甲状腺ホルモン添加によるレポーター活性を上昇させた内分泌攪乱物質は、 DNAマイクロアレーの結果、甲状腺ホルモンにより発現調節されている遺伝子の発現に 対して正に作用し、レポーター活性を減少させた内分泌攪乱物質は遺伝子の発現に対して 負に作用しました。 * (抗)甲状腺ホルモン様作用を評するバイオアッセイ系の確立 このように、 HeLaTR細胞を用いて、(抗)甲状腺ホルモン様作用を 評価することが可能であることを明らかにしました。 現在、Drs.堺&鹿島を中心に、 種々の化学物質のスクリーニングを行っています。 * 甲状腺ホルモン受容体を介したシグナル伝達機構の解析 DNAマイクロアレーの結果から、甲状腺ホルモンにより発現上昇が顕著な4-1BBに着目し 検討した結果、4-1BBの発現に伴いカスパーゼ活性が上昇し、アポトーシスに導くこと を明らかにしました。 Coactivators T3 RXR TR TRE General TFs mRNA Transcription TATA 甲状腺ホルモン添加により 発現が増加する因子 甲状腺ホルモン添加により 発現が変化しない因子 4-1BB TRAF1 Caspase Activity Apoptosis TRAF2 * 発表論文 ここで紹介させていただいた内容は下記の論文に掲載されております。 Yamada-Okabe, T., Satoh, Y. and Yamada-Okabe, H. (2003) Thyroid hormone induces the expression of 4-1BB and activation of caspases in a thyroid hormone receptor dependent manner. Eur. J. Biochem. 270: 3064-3073. Yamada-Okabe, T., Aono, T., Sakai, H., Kashima, Y. and Yamada-Okabe, H. (2004) 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin augments the modulation of gene expression mediated by the thyroid hormone receptor. Toxicol. Appl. Pharmacol. 194:201-210. * 検討課題 現在は、特に 1.スクリーニングの結果、(抗)甲状腺ホルモン様作用が疑われる化学物質 についての更なる検討と 2.甲状腺ホルモンにより発現調節されている遺伝子の機能と甲状腺ホルモン の生物作用の関連を培養細胞を用いて検討しています。 Home What's New Introduction Research Staff Contact Publications Link
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